テキトーすぎな《ユグドラシル》の皆さん

日向荘にて（第20話）

　早苗の繰り出した竜巻をものともせずに突進してくる憤ドラゴラー。

　だが、当の早苗自身は全く動じる様子はなく、余裕の笑みさえ浮かべていたー。

「さあ、扇女！覚悟するでやんすよ！！」

　竜巻を軽々と乗り越え、憤ドラゴラが早苗の目の前に到達した。

　その時、憤ドラゴラと、後ろで様子を窺っていた杏里は、不思議な感覚にとらわれた。

　いやー魔力の素質が高い杏里は気が付いた。これが早苗の繰り出した第二の魔法なのだということに。

「！！」

　憤ドラゴラは、早苗を突き飛ばしたーはずが、実際には何もない場所を素通りする形となったのだ。

「おお！？」

　憤ドラゴラには、何が起きたのかさっぱりわからなかった。ただ、自分の渾身の一撃が、全くの不発に終わったということだけには気が付いた。

「・・・ど、どういうことでやんすか！？あの扇女はどこでやんす？」

　今度は急ブレーキをかけて止まる憤ドラゴラ。驚きを隠せない様子で、辺りをきょろきょろし始めた。

　その時ー。

「ふっふっふ・・・」

　今度は、憤ドラゴラが、早苗の不敵な笑いに驚愕させられたのだった。

「甘いよ・・・憤ドラゴラ君。そんなことじゃ、私を倒すことなんて絶対にできやしないよ・・・」

「な、なんと・・・！！」

　憤ドラゴラの背後に、早苗が現れたのだった。

「い、いつの間にあっしの背後をとったでやんすか！？扇女・・・！！」

　こちらの攻撃を回避する余裕などなかったはずだ。それなのに、これは一体どういうことなのだ！？

　憤ドラゴラが焦りを感じながら、自分の背後を取った早苗を凝視した。

「ふっふっふ・・・」

　早苗は、余裕の笑みを浮かべたまま、少しずつ憤ドラゴラへと近づいていくー。

　思わず後退りそうになる憤ドラゴラ。しかし、ここでこの宿敵になめられるわけにはいかんと、何とか踏みとどまったー。