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第2章 確かなもの
第51話 目覚め
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その日、紗耶香と咲那は、お互いの感情をぶつけ合うことで、より分かり合えたーと、当人たちは思っていた。少なくとも、咲那はそう信じていたし、紗耶香も、咲那の言うことを信じてみようかなという気にはなっていた。
しかし、わずかなことがきっかけで、綻びは生じるものだ。その小さな綻びが、より大きな悲劇を生む。
紗耶香が、妹弟子2人を殺害してしまった、あの悲劇を。
「う、うーん」
保健室のベッドで、ついさっきまで眠っていた葉月が目を覚ました。寝ぼけ眼をこすりつつ、周囲を見回す。先ほどまで、一緒にベッドで激しく行為に及んでいたはずの紗耶香の姿がない。先に起きたのだろうか。
「先輩は・・・どうやら先に起きたようっすね・・・あたしも早く着替えて合流するっすよ」
あの氷上という女ともすぐにやり合いたいところだが、まずは紗耶香の様子を確認しなくては。
「先輩に内緒で勝手に狩りに行ったら、後で絶対お仕置きされるっすからね~」
あらかじめ、保健室まで持ってきていた新しい制服を着用し、廊下へ向かう。
ちなみに、制服だが、戦いの後に新たなものを支給してもらえる仕組みとなっている。さすがに、返り血を浴びたままの制服では何かと不便があるということで、戦闘勝利者には、その戦闘終了後には運営側から同じデザインの制服を支給してもらえることになっていた。
「こういうところはマジで几帳面なんすよね、あの運営のやつらは」
保健室の扉を開け、廊下を覗き込む。どうやら、紗耶香はこの近辺にはいないようだ。もしかしたら、また屋上かもしれない。
「まあ、先輩はやたらと高いところが好きなお方ですし、やっぱりあそこしかいないっすよね」
誰もいない、ひっそりと静まり返った廊下を歩きながら、葉月はふと玄関口の下駄箱の方に目を向けた。
「・・・?」
何か、違和感を感じる。この学校には、自分と紗耶香しかいないはずで、他の人間が入り込んだ様子はないはず・・・だが。
「・・・あれは?」
一つの下駄箱に、何かの紙が挟まったように入れられていた。紙片が下駄箱から突き出ている感じだ。
あからさまに怪しい。
「・・・ラブレターでも入ってるんすかね?ずいぶんと古典的っす」
葉月は、その紙に手を伸ばそうとするが、
「・・・あまりむやみやたらと怪しげなものに手を出すのはまずいっすね・・・一旦先輩に確認してからでも遅くはないっす」
「それは、ずいぶんと悠長じゃないかしら」
「・・・!?」
背後から、誰かの声が聞こえ、とっさに身構える葉月。
振り返った先には、髪の長い一人の少女ー顔立ちが端正なのは言うまでもないが、何よりも目を引くのは、まるでからの濡れ羽色のような美しく長い黒髪ー。
ーあたしが、背後を取られたー
葉月は、内心の驚愕と不覚を取られた屈辱を何とか顔に出さないようにしながら、
「あんたは、いったい何者なんすか?」
セーラー服がお似合いの、どこか虚構じみた美しさを持つ黒髪長髪の少女を葉月は鋭い眼差しで睨みつける。その気になればいつでも戦えるように、準備はしている。
「私は勅使河原マヤ。この辺りに飛ばされて、ちょうどいいところに隠れ家になりそうなこの学校を発見したのだけれど、どうやらあなたが先に暮らしていたようね」
見た目は清楚なお嬢様だが、昨日戦ったあのお嬢様とはタイプが違う。何より、確かに気を抜いていたとはいえ、自分の背後を取るような相手だ。今、仮にやり合うことになったとしても、簡単に勝利とはいかない相手だろう。
「あたしと先輩が、この学校の主っすよ」
今度は油断なく勅使河原を見返す葉月。こいつは、かなりできる相手だー。
しかし、わずかなことがきっかけで、綻びは生じるものだ。その小さな綻びが、より大きな悲劇を生む。
紗耶香が、妹弟子2人を殺害してしまった、あの悲劇を。
「う、うーん」
保健室のベッドで、ついさっきまで眠っていた葉月が目を覚ました。寝ぼけ眼をこすりつつ、周囲を見回す。先ほどまで、一緒にベッドで激しく行為に及んでいたはずの紗耶香の姿がない。先に起きたのだろうか。
「先輩は・・・どうやら先に起きたようっすね・・・あたしも早く着替えて合流するっすよ」
あの氷上という女ともすぐにやり合いたいところだが、まずは紗耶香の様子を確認しなくては。
「先輩に内緒で勝手に狩りに行ったら、後で絶対お仕置きされるっすからね~」
あらかじめ、保健室まで持ってきていた新しい制服を着用し、廊下へ向かう。
ちなみに、制服だが、戦いの後に新たなものを支給してもらえる仕組みとなっている。さすがに、返り血を浴びたままの制服では何かと不便があるということで、戦闘勝利者には、その戦闘終了後には運営側から同じデザインの制服を支給してもらえることになっていた。
「こういうところはマジで几帳面なんすよね、あの運営のやつらは」
保健室の扉を開け、廊下を覗き込む。どうやら、紗耶香はこの近辺にはいないようだ。もしかしたら、また屋上かもしれない。
「まあ、先輩はやたらと高いところが好きなお方ですし、やっぱりあそこしかいないっすよね」
誰もいない、ひっそりと静まり返った廊下を歩きながら、葉月はふと玄関口の下駄箱の方に目を向けた。
「・・・?」
何か、違和感を感じる。この学校には、自分と紗耶香しかいないはずで、他の人間が入り込んだ様子はないはず・・・だが。
「・・・あれは?」
一つの下駄箱に、何かの紙が挟まったように入れられていた。紙片が下駄箱から突き出ている感じだ。
あからさまに怪しい。
「・・・ラブレターでも入ってるんすかね?ずいぶんと古典的っす」
葉月は、その紙に手を伸ばそうとするが、
「・・・あまりむやみやたらと怪しげなものに手を出すのはまずいっすね・・・一旦先輩に確認してからでも遅くはないっす」
「それは、ずいぶんと悠長じゃないかしら」
「・・・!?」
背後から、誰かの声が聞こえ、とっさに身構える葉月。
振り返った先には、髪の長い一人の少女ー顔立ちが端正なのは言うまでもないが、何よりも目を引くのは、まるでからの濡れ羽色のような美しく長い黒髪ー。
ーあたしが、背後を取られたー
葉月は、内心の驚愕と不覚を取られた屈辱を何とか顔に出さないようにしながら、
「あんたは、いったい何者なんすか?」
セーラー服がお似合いの、どこか虚構じみた美しさを持つ黒髪長髪の少女を葉月は鋭い眼差しで睨みつける。その気になればいつでも戦えるように、準備はしている。
「私は勅使河原マヤ。この辺りに飛ばされて、ちょうどいいところに隠れ家になりそうなこの学校を発見したのだけれど、どうやらあなたが先に暮らしていたようね」
見た目は清楚なお嬢様だが、昨日戦ったあのお嬢様とはタイプが違う。何より、確かに気を抜いていたとはいえ、自分の背後を取るような相手だ。今、仮にやり合うことになったとしても、簡単に勝利とはいかない相手だろう。
「あたしと先輩が、この学校の主っすよ」
今度は油断なく勅使河原を見返す葉月。こいつは、かなりできる相手だー。
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