百合斬首~晒しな日記~

ミケとポン太

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第3章 虚ろなる人形

第85話 次に狙うは・・・

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 明菜の首の切断面ーそこに舌を這わせ、その瞳をうっとりとさせる勅使河原。蔵の窓から入り込む淡い月の光を浴び、少女の生首を抱えながら快楽に身をゆだねる姿は、何よりも恐ろしく、そして同時に美しくもあった。
「はあああ・・・明菜、あなたの血の味って、すごくおいしいわよ。あなたの体の中を、こんなに甘美なものが流れていただなんて・・・本当に素敵だわ」
 明菜の首の切断面を舐め続けることで、彼女の内面にも直に触れていられるような気がした。
 自分と同じくらいの年頃の娘の首を切りたい。そうすることで、真に彼女たちと繋がっていられることを実感できる。
 教室での、「親友」という言葉の裏に隠されたうわべだけの関係ーしかし、今の明菜は、その死の寸前にを曝け出し、その表情に残している。
 学校での「親友」や「仲間」なんてものは、所詮は学校生活を円滑にするための、ただの表面上のものに過ぎない。環境が変われば、あっさりと崩れてしまうほどの、脆い脆い砂上の楼閣のようなものだ。
 今までの「親友たち」がまるっきり他の誰かと変わってしまったとしても、そこには何の問題もなかったーいくらでも代替可能な関係に過ぎないのだ。
 勅使河原の舌が、切断面の骨の部分に触れ、異質な感触に一瞬その美麗な眉を細めるものの、そのまま舐め続ける。その音が、卑猥なものとなって夜の蔵の中に響いた。
 見る者が見れば、激しい嘔吐感を催すその光景は、だが、後にアルカディア島に招かれた彼女がしでかしたことに比べれば大したことはなかった。
「・・・んふぅ」
 やがて、勅使河原は舌を休めると、今度は明菜の首を真正面から見据えた。その表情は、苦悶を通り越して、どこか眠たげなものにも見えた。さらには半開きの口が、最期に何かの言葉を発しようとしてそのまま途切れた形のものだということを如実に物語っている。何を言わんとしたのかもはや誰にも分らない。ありふれた言葉なら、「苦しい」だとか「やめて」とか「助けて」だろうかーそんなつまらない言葉でないことを、勅使河原は願ったーとはいえ、その答えを知るすべはない。
「川澄さんなら、最期はなんて言おうとするのかしら」
 川澄真由美は、勅使河原のことを警戒している人物だ。それゆえに、うわべだけの「親友気取り」の連中よりもよっぽど興味がある。
 そして、だからこそ、今、一番この手にかけてみたい少女でもあった。
 もちろん、ただ殺すのではないーやはりこの手で首を絞めて、緩慢に殺す。その苦痛を直に観察したいのだ。真理や明菜とは違う反応を示すのか、それとも、同じ人間なのだから、結局は同じ反応になるのかー
「・・・川澄さんか。おそらく彼女は・・・」
 勅使河原の推測では、おそらく川澄真由美は、真理と明菜の「失踪」(明菜についてはこれからその「失踪」が明らかとなるだろう)について、誰よりも早くその真相に近づくはずだ。
 つまりは、二人の「失踪」に関与しているのは、ほかならぬ勅使河原であることに。
「眠らせる必要があるわね・・・」
 学校で、彼女が一人きりになった瞬間を狙って、スキを見て眠らせるー相手の皮膚に触れることで眠らせることができる薬があるので、それを使うか。抱きつく形になりそうね。
 これから数日後、川澄真由美の殺害は現実のものとなるー
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