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第4章 更なる戦い
第189話 悦楽の代償3
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あれだけ驟雨も、気が付けばいつのまにかやんでいた。
だが、廃墟の中では逆に鮮血の雨が降り注いでいた。
「・・・ごめんなさい」
もはや物言わぬ3人の少女たちに、ただただ謝罪の言葉を繰り返す薄紫の髪の少女。
そして、その傍らでは、首を失った3人の胴体が鮮血を噴き上げていたのだった。
血だまりの中に転がるのは、先ほどまで薄紫の髪の少女を犯し、そして彼女と戦っていた3人の少女の生首。
いずれの生首の瞳も見開かれており、もはや何も映すこともなくただ一点のみを見据えている。
決して朽ちることのない屍ーそれが大会運営側が実現した技術だった。ゆえに、彼女たちの首や胴体が腐敗することはない。その死の直後の生々しい、しかし美しい姿をそのまま保存し続けるのだ。
考えてみれば、大会運営側は死者すら蘇らせ、さらには戦わせる技術を有している。その気になれば半永久的に腐敗しない遺体保存技術など、たやすく実現できるだろう。
「・・・勝利者、ーーー」
ジャッジが勝利者である薄紫の髪の少女の名前を読み上げる。だが、勝利を告げられたとしても、そこには何の感慨もない。あるのは、大罪に手を染めてしまったことへの果てしなき罪悪感。
「・・・ううっ」
思わず口元を抑える薄紫の髪の少女。胃液が逆流する感覚が彼女の体を支配する。
だが、何とか嘔吐だけは思い留まった。これ以上、自分も彼女たちも汚したくはなかったからだ。
「私は・・・」
薄紫の髪の少女は、ゆらりと立ち上がると、そのままおかっぱ頭の少女の首の方に目を向ける。
初めて自分が殺した相手だった。
「私は・・・どれだけの大罪を犯したとしても、ここで立ち止まるわけにはいかないのです」
自分に言い聞かせるように独り言ちる薄紫の髪の少女。もし、生きていたならば、真っ先に文句を言われそうな相手は、既に永遠の沈黙を貫くだけでしかない。
大会ルールでは、相手の首を刎ねた後に、その首を高らかと掲げることになっている。これがいかに、死者を冒涜していようとも、ルールに違反すれば自分がペナルティの対象となる。
もはや、自分の命が惜しいとは思っていない薄紫の髪の少女だったが、せめて彼女に再会するまではなんとしても生き延びなければならなかった。
愛しい者同士の誓いだからだ。
そのためならば、例え最期どれだけ悲惨な末路を迎えようとも、ただひたすら進むしかない。
「・・・」
血だまりの中に転がっていたおかっぱ頭の少女の首に触れる。その瞳に既に命の輝きはないが、まるで自分を殺した薄紫の髪の少女を睨みつけているようにも思えた。
「いずれ、あなた方と同じ場所へと向かいます。恨み言は、その時に・・・」
もはや答えるはずもない相手に、静かに語り掛ける薄紫の髪の少女。そして、その首を高らかと掲げ、自らの勝利を宣言した。
だが、廃墟の中では逆に鮮血の雨が降り注いでいた。
「・・・ごめんなさい」
もはや物言わぬ3人の少女たちに、ただただ謝罪の言葉を繰り返す薄紫の髪の少女。
そして、その傍らでは、首を失った3人の胴体が鮮血を噴き上げていたのだった。
血だまりの中に転がるのは、先ほどまで薄紫の髪の少女を犯し、そして彼女と戦っていた3人の少女の生首。
いずれの生首の瞳も見開かれており、もはや何も映すこともなくただ一点のみを見据えている。
決して朽ちることのない屍ーそれが大会運営側が実現した技術だった。ゆえに、彼女たちの首や胴体が腐敗することはない。その死の直後の生々しい、しかし美しい姿をそのまま保存し続けるのだ。
考えてみれば、大会運営側は死者すら蘇らせ、さらには戦わせる技術を有している。その気になれば半永久的に腐敗しない遺体保存技術など、たやすく実現できるだろう。
「・・・勝利者、ーーー」
ジャッジが勝利者である薄紫の髪の少女の名前を読み上げる。だが、勝利を告げられたとしても、そこには何の感慨もない。あるのは、大罪に手を染めてしまったことへの果てしなき罪悪感。
「・・・ううっ」
思わず口元を抑える薄紫の髪の少女。胃液が逆流する感覚が彼女の体を支配する。
だが、何とか嘔吐だけは思い留まった。これ以上、自分も彼女たちも汚したくはなかったからだ。
「私は・・・」
薄紫の髪の少女は、ゆらりと立ち上がると、そのままおかっぱ頭の少女の首の方に目を向ける。
初めて自分が殺した相手だった。
「私は・・・どれだけの大罪を犯したとしても、ここで立ち止まるわけにはいかないのです」
自分に言い聞かせるように独り言ちる薄紫の髪の少女。もし、生きていたならば、真っ先に文句を言われそうな相手は、既に永遠の沈黙を貫くだけでしかない。
大会ルールでは、相手の首を刎ねた後に、その首を高らかと掲げることになっている。これがいかに、死者を冒涜していようとも、ルールに違反すれば自分がペナルティの対象となる。
もはや、自分の命が惜しいとは思っていない薄紫の髪の少女だったが、せめて彼女に再会するまではなんとしても生き延びなければならなかった。
愛しい者同士の誓いだからだ。
そのためならば、例え最期どれだけ悲惨な末路を迎えようとも、ただひたすら進むしかない。
「・・・」
血だまりの中に転がっていたおかっぱ頭の少女の首に触れる。その瞳に既に命の輝きはないが、まるで自分を殺した薄紫の髪の少女を睨みつけているようにも思えた。
「いずれ、あなた方と同じ場所へと向かいます。恨み言は、その時に・・・」
もはや答えるはずもない相手に、静かに語り掛ける薄紫の髪の少女。そして、その首を高らかと掲げ、自らの勝利を宣言した。
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