百合斬首~晒しな日記~

ミケとポン太

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第4章 更なる戦い

第335話 小川明子15

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 ところ変わって、202室ー
「ふう・・・」
 藤原優里がバスタブにつかりながら、今日の疲れを癒している最中だった。
「今日、この街で戦いがあったようですね・・・」
 藤原優里は、結構長くこの街に滞在している。小川明子を探しまわっている中、見慣れない生首が駅の構内の通路に転がっているのを確認した。
 その首は、眼鏡をかけた長い黒髪の女のものだった。その表情はどこか諦めたような、納得したような・・・少なくとも無念を感じさせるようなものではなかったのは確かだった。
 この大会に出ている以上、美しい顔立ちなのは間違いないが、少なくとも自分好みの娘ではない。どちらかというと、嫌いなタイプだー首だけで相手を判断するのは早計かもしれないが。
「まさか、あの眼鏡の子をやったのが・・・」
 そう言いかけて、それはないかと頭を振る。
 あのボーイッシュな少女ー優里自身は相手の名前も知らないのだがー小川明子は自分から逃げ回るだけで精一杯だったはずだ。とてもではないが、その後に誰かと戦い、殺害する余裕などなかっただろう。
「あの看守姿の子たちかしら・・・?」
 確かに、あの2人ならやれるだけの実力はあるだろうーだが、何となくだが、彼女たちがやったようにも見えなかった。確たる根拠はないものの、彼女たちではない気がする。
「多分彼女たちではないですね・・・となると、まだ私が出会っていない子がこの辺りに潜伏している可能性がある、と」
 優里は、まさかその犯人がこのホテルの上の階で看守トリオに囲まれて女子トークに無理やり参加させられているとは夢にも思わなかった。
「・・・果たして、もしその方と遭遇した場合、私は勝つことができるのでしょうか」
 誰も答えることのない問いかけを思わず口にしてしまう優里。
 あの首を見つけた後、程なくして彼女の胴体も見つかった。そして、その周辺の地面の様子も目にしていた。
 地面は、無残にも抉られていた。ただの斬り合いでは、こうなることは絶対にない。何か凄まじい力で、地面のタイルを削ったような跡がある。それこそ、竜巻が発生した後みたいだったーと言っても、優里自身は竜巻のことはよく知らなかったのだが。
 確実に言えることは「ただの戦闘」ではなかったということだ。明らかに、擬体プラス異能の戦いだった。そして、恐らくではあるが、異能を使ったのは片一方ーつまりはあの眼鏡の少女を殺した相手だけのはずだ。それは、地面の抉れ具合から判断できる。
 詳しい戦闘状況は不明だが、恐らく最後は一方的な殺戮に近いものだったのではないだろうか。
 大会運営側は公式には認めていないものの、まれに参加者の中には異能と呼ぶしかないそれを発揮するものがいるという。
「もし出会ったら、少々厄介ですね」
 この街に、そういう化け物がいるのなら、一旦ここを離れた方がいいかもしれないーが。
「あの子のこともありますしね」
 そう独り言ちた優里の瞳には妖しげな光が宿っている。
 彼女ー小川明子は、このまま見逃すのも惜しい相手だ。ぜひとも自分の手で仕留めてやりたかった。
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