立方世界 呪われた子

大秦頼太

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呪われた子 16

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 草原を前にして三人の顔は引き締まっていた。セヴルが右手を吊っていた布を外してマスクにする。ガリウスとサアラも同じようにマスクにする。
 青い葉っぱを取り出して手のひらに載せる。
「何してるの? ふざけてないで行くわよ」
「大きな声でしゃべるなって言っただろ。黙ってついて来い」
 葉っぱの先端が草原の奥を指す。セヴルは葉っぱをしまって代わりに折れた剣を抜く。そして、歩き始める。二人も武器を手に草原の中に入っていく。
 セヴルは、しばらく歩くと後ろを必ず振り返る。セヴルが振り返ると、真ん中を歩いているサアラも振り返る。すると、最後尾を歩いているガリウスが手を振る。
それを何度か繰り返すと、セヴルは足を止め、二人の耳元でささやく。
「休憩しよう。深呼吸はするな」
 二人は意味が分からなくても従うしかなかった。その場に座り、足を揉み解す。その間にセヴルは青い葉っぱで、方角を修正する。
 空の太陽の光が弱くなってくると、セヴルは歩くのをやめた。草を切り、広場を作り出す。ガリウスもそれを見て真似をするが、サアラはマスクを外して、その場に転がって眠ってしまう。
 セヴルは下唇を噛み締めながら、サアラを中心に草を刈る。
 セヴルは、サアラの近くに座る。その側にガリウスも座る。ガリウスに向かってつぶやく。
「そっち側を見てて」
 ガリウスは手を上げて応える。
 周囲に耳を澄ますセヴル。サアラの寝息が聞こえた。振り返るとサアラの寝顔が見えた。
「(のんきな奴……)」
 側に寄って軽く開いた口の中に草を入れかけたが、思い直してやめた。
「(殺人者の側でよく寝られるもんだ)」
 キュイキュイ。
「(来た)」
 セヴルはゆっくり立ち上がると、ガリウスに合図をする。
 ガリウスは、サアラの口をふさいで肩を叩いた。
「な!」
 ガリウスはあわてて静かにするように指を立てる。事態が飲み込めていないようだった。
「何よ」
 セヴルは回りを警戒した。
「だから何よ?」
 セヴルは、サアラに向かって突進すると彼女を突き飛ばした。
「静かにしてろ! 死にたいのか!」
 サアラが起き上がるより早く、セヴルに向かって黒い影が飛びかかった。皿型の蟲だった。セヴルは、身を翻して蟲の腹に折れた剣を突き刺す。血を噴出しながら、蟲は弧を描いて草原に沈む。
 新しくなったシャツは蟲の体液で汚れてしまった。
 セヴルは、深い息を吐いてすぐに移動した。移動した先で折れた剣を構えるが何事も起こらなかった。
「もう大丈夫かな」
 セヴルは剣をおろした。
「あんたが呼んだんじゃないの?」
 ガリウスがサアラの腕をつかみ、首を振る。サアラの非難は続く。
「だって、輪があるのに、信じられないわ」
「次は助けない」
 セヴルは草の上に横になった。
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