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呪われた子 17
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17
草原の中の一軒屋のドアを叩くと、グロウが元気よく飛び出してきた。セヴルの他にも人がいるのを見て変な顔をした。
「誰?」
「やあ」
ガリウスがしゃがんでグロウに笑顔で挨拶をする。しかし、グロウはそれを無視してセヴルを見上げる。
「セヴル入って」
それを後で見ていたサアラがガリウスの肩に手を置いて鼻で笑った。
「すぐに仲良くなれるよ」
セヴルはそう言うと家の中に入っていった。ガリウスとサアラも後から続いていく。右の部屋の扉からバリュフが顔を出した。
「案外早くやってきたね」
「誰?」
サアラはバリュフを胡散臭そうに見つめる。バリュフもサアラを見返す。
「君こそ誰?」
ガリウスは部屋の中に散乱した書物に興味を持ったようで、拾い上げて中身を読み始める。それをグロウが飛びついて本を奥の部屋に片付けてしまう。ガリウスはバリュフに笑顔を向ける。
「変わった本ばかりですね」
「変人の巣なんじゃないの」
サアラは椅子を引いてきてそれに座る。
「この口の悪いお嬢さんたちは誰かな?」
バリュフは明らかに作り笑いをしていた。目の端がひくついている。セヴルが声を落とす。
「見張りです」
「見張り?」
「町で捕まってしまって、マムルに会いました」
バリュフがガリウスたちから目を離し、セヴルを見る。
「無実の証明は出来なかったわけだ」
「はい」
視線を落とすセヴル。バリュフはセヴルの肩を叩き声を張る。
「さあ、まずは食事にしよう」
机の上があっという間に片付けられ、部屋の隅にあれよという間に荷物がたまる。
スープとパン、チーズとサラダがテーブルに並べられる。
席に着くとセヴルは話し始める。
「それでこの後、どうしようかと」
「手がなくなって、ここに来たと言うわけか」
「ねえ、この人蟲のこと知ってるんでしょ? だから来たのよね?」
サアラの問いにバリュフがあっさりと答える。
「知らないよ」
サアラがセヴルをつかみ上げる。
「ちょっとあんた、ふざけんじゃないわよ。あたしたちを無理矢理こんなところに連れて来て、何の成果もないなんて」
「ガリウス、ちょっとこいつ黙らせて」
セヴルはガリウスに助けを求める。
「こいつとは何よ!」
「はいはい、少し外れていようか」
「離せ! この馬鹿!」
ガリウスが、サアラを外に連れ出す。バリュフの目がそれを冷ややかに見送る。グロウは呆然と二人を見送った。
「なにあれ?」
「白の信徒か」
「はい」
パンを片手にグロウがセヴルに聞く。
「何? しろのしんとって」
バリュフが代わりに答える。
「世界を自分たちが救えると思っている頭のおかしい連中だよ」
「先生より?」
「比較がおかしいね」
バリュフの手がグロウのパンを指差す。
「パンで遊ばない」
「マムルを殺す」
食べ物に手を伸ばさないでいるセヴルに、バリュフは冷静に問いかける。
「殺すだって?」
「ああ」
「殺しても、意味がないと思うけど」
軽い口調でバリュフは言いながら、サラダを受け皿に乗せてグロウの前に置く。グロウは嫌な顔をする。セヴルは一人、両手を握り締めるだけだった。
「許せないだけだ。あいつだけは絶対に許せない」
「それで嘘をついて逃げ出してきたのか」
セヴルは驚いて顔を上げる。
「嘘はついてないし、逃げてもない」
バリュフは食事を淡々と続ける。
「知らない人を巻き込んでまでやる価値があるかい?」
「じゃあ、あいつらから逃げる方法を教えてよ」
「自分で考えなさい」
うつむくセヴル。バリュフは少し苛立っているようだった。
「それで、何を約束して出てきたの?」
「蟲を退治するって」
「無理でしょ」
あっさりと言葉を吐くバリュフにセヴルが食って掛かる。
「やってみなきゃわからないだろ」
バリュフは鼻で笑った。
「わかるよ。何百年も前からこの状態なのに、君一人で一体何が出来るんだい?」
「人を襲い始めたのは、最近だって言ったじゃないか。それにこの右手の力があれば……」
「呪いだって散々わめいていたのに、今度は力だって? 君は、自分の目的がはっきりしていない。マムルを殺すのと、蟲を殺すのどっちが君の目標だ?」
「マムルだ」
「なら何故、ここに彼らを連れて来た?」
口ごもるセヴル。
「それは……。あんたが、蟲の事を詳しかったからさ」
「違うね」
バリュフは腕を組んで背もたれにもたれかかりセヴルを見る。
「自分で決められないからさ。誰かに決めてもらって楽になろうとしているだけさ。逃げだな。逃避だ。負け犬だ」
セヴルはテーブルを殴りつける。
「俺は逃げてない!」
「彼らを殺してここで生活するっていう選択肢もあるよ」
セヴルは立ち上がる。
「もういい。あんたには力は借りない」
椅子を引くと、部屋の隅の荷物まで歩いていく。
「マムルを殺すこと。蟲を退治すること。この二つを成すことは不可能だ」
「やってみなくちゃわからない」
グロウは二人のやり取りを草食動物のようにサラダを食べながら見守る。
「わかるよ。君一人では、おそらくそのどちらか一方しか選ぶことは出来ないだろうな」
「なんで?」
振り返って真剣なまなざしを向けてくるセヴルをバリュフは見つめ返さなかった。
「マムルを殺した場合、君は追われて殺される。蟲を殺した場合、君は用済みになって殺される。どっちみち君は殺される。マムルや蟲に殺されることだってあるだろう」
「そうならないようにすればいい」
「なるよ」
「ならない」
「根拠がない」
「ならない!」
セヴルがバリュフの肩を掴んだのと同時に、サアラが入ってくる。
「ちょっといつまで待たせるのよ! 何で食べ始めてるのよ!」
「……なに、私も同行するからね。その打ち合わせさ」
「え?」
バリュフは、目でセヴルに合図を送るが、セヴルには訳がわからなかった。グロウがそれを聞いて慌て出す。
「先生、行っちゃうの?」
「グロウも一緒だよ」
バリュフがパンを掴む。ちぎっては口に持っていく。グロウはスープにスプーンを入れてぐるぐる回す。
「僕は嫌だな。ここにいる」
「そんなわがまま言うんじゃないの」
そのやり取りを見つめながら、サアラは空いている席に座る。
「じゃあ、やっぱりこの人が蟲の情報を持ってるのね?」
「知らないよ」
淡々としたバリュフの言葉にサアラの顔が真っ赤に染まる。再び立ち上がると今にもバリュフに飛び掛っていきそうな迫力を見せた。
「馬鹿にしてるの?」
「血の気の多い娘さんだね」
「気持ちの悪いしゃべり方しないで!」
「気持ちが悪い……」
パンがバリュフの手元から零れ落ちる。グロウがサアラの前に立ちふさがる。
「ダメだよ。みんな思ってるのにはっきり言っちゃ」
「思ってた……」
肩を落とし沈み込むバリュフ。セヴルが話題を変えるべく席に着く。
「それで、どこに行くの?」
「ブロウダー辺りまで行けば何かわかるんじゃないかな? 師匠がいるし、何か知ってるかもしれない」
バリュフの声は小さい。
「俺、そのブロウダーがどこにあるのか分からないんだけど」
サアラはセヴルに向かって自慢げに鼻を鳴らす。
「ふん、学がない奴は本当に使えないわね。ブロウダーはね」
「大分、南の町ですね」
ガリウスが席についてパンを手に取る。
「ちょっと、静かだと思ったら、いきなりしゃべりださないでよ」
「すまない」
そう言いながらガリウスはパンをほおばる。サアラがどすっと席に座る。
「そこに行けば何か分かるの?」
「占い師がいるから、占ってもらおう」
バリュフが笑顔を向ける。サアラが拳を握りこんで椅子の上に立ち上がる。
「こいつふざけるんじゃないわよ」
「本当にすぐ怒るね」
グロウが面白そうに笑うと、サアラは恥ずかしくなったのか椅子から降りて座りなおす。
「あたしはすぐに帰りたいのよ。本当なら、首都研修に行って、そのまま法学院に推薦されて、輝かしい未来が待っていたはずなのに。こんな馬鹿みたいな命令をされて……。あんたなんかさっさと死ねばいいのよ」
セヴルはサラダを口に放り込もうとしてやめる。
「じゃあ、帰れよ」
「は? 出来るわけないじゃない。そんなことしたら、あたしの未来は完全に真っ暗よ」
「帰らないなら、少し静かにしてろ」
セヴルは手当たり次第に食べまくる。それを見てサアラが鼻で笑う。
「何よ、人殺しの癖に」
「俺は誰も殺してない」
「聖導師パ様はそう言ってなかったわ」
二人のやり取りを見てバリュフが頭を押さえる。
「しかし、草原を行くときにそれは困るねぇ」
「静かにしなきゃいけない時は静かに出来るわよ」
「お姉さん、えらいねー」
グロウが拍手をする。サアラはパンを両手に取ると、一つをグロウの口の中にねじ込んだ。
「このガキ、むかつく。どっちにしても、足手まといだわ。こんなにぞろぞろと人数ばかり増えるなんて、断固反対」
「私がいれば、蟲除けの魔術で夜ぐっすり眠ることが出来るよ」
サアラは、バリュフの手をがっしりとつかむ。
「いいわ。一緒に行きましょう」
「俺、こいつとは絶対合わないな」
両手を挙げて舌を出しているセヴル。バリュフが声をかけてくる。
「セヴル。プロウダーにつくまでの間に色々教えてあげよう。そうすれば、世界のことがよく分かると思うよ」
草原の中の一軒屋のドアを叩くと、グロウが元気よく飛び出してきた。セヴルの他にも人がいるのを見て変な顔をした。
「誰?」
「やあ」
ガリウスがしゃがんでグロウに笑顔で挨拶をする。しかし、グロウはそれを無視してセヴルを見上げる。
「セヴル入って」
それを後で見ていたサアラがガリウスの肩に手を置いて鼻で笑った。
「すぐに仲良くなれるよ」
セヴルはそう言うと家の中に入っていった。ガリウスとサアラも後から続いていく。右の部屋の扉からバリュフが顔を出した。
「案外早くやってきたね」
「誰?」
サアラはバリュフを胡散臭そうに見つめる。バリュフもサアラを見返す。
「君こそ誰?」
ガリウスは部屋の中に散乱した書物に興味を持ったようで、拾い上げて中身を読み始める。それをグロウが飛びついて本を奥の部屋に片付けてしまう。ガリウスはバリュフに笑顔を向ける。
「変わった本ばかりですね」
「変人の巣なんじゃないの」
サアラは椅子を引いてきてそれに座る。
「この口の悪いお嬢さんたちは誰かな?」
バリュフは明らかに作り笑いをしていた。目の端がひくついている。セヴルが声を落とす。
「見張りです」
「見張り?」
「町で捕まってしまって、マムルに会いました」
バリュフがガリウスたちから目を離し、セヴルを見る。
「無実の証明は出来なかったわけだ」
「はい」
視線を落とすセヴル。バリュフはセヴルの肩を叩き声を張る。
「さあ、まずは食事にしよう」
机の上があっという間に片付けられ、部屋の隅にあれよという間に荷物がたまる。
スープとパン、チーズとサラダがテーブルに並べられる。
席に着くとセヴルは話し始める。
「それでこの後、どうしようかと」
「手がなくなって、ここに来たと言うわけか」
「ねえ、この人蟲のこと知ってるんでしょ? だから来たのよね?」
サアラの問いにバリュフがあっさりと答える。
「知らないよ」
サアラがセヴルをつかみ上げる。
「ちょっとあんた、ふざけんじゃないわよ。あたしたちを無理矢理こんなところに連れて来て、何の成果もないなんて」
「ガリウス、ちょっとこいつ黙らせて」
セヴルはガリウスに助けを求める。
「こいつとは何よ!」
「はいはい、少し外れていようか」
「離せ! この馬鹿!」
ガリウスが、サアラを外に連れ出す。バリュフの目がそれを冷ややかに見送る。グロウは呆然と二人を見送った。
「なにあれ?」
「白の信徒か」
「はい」
パンを片手にグロウがセヴルに聞く。
「何? しろのしんとって」
バリュフが代わりに答える。
「世界を自分たちが救えると思っている頭のおかしい連中だよ」
「先生より?」
「比較がおかしいね」
バリュフの手がグロウのパンを指差す。
「パンで遊ばない」
「マムルを殺す」
食べ物に手を伸ばさないでいるセヴルに、バリュフは冷静に問いかける。
「殺すだって?」
「ああ」
「殺しても、意味がないと思うけど」
軽い口調でバリュフは言いながら、サラダを受け皿に乗せてグロウの前に置く。グロウは嫌な顔をする。セヴルは一人、両手を握り締めるだけだった。
「許せないだけだ。あいつだけは絶対に許せない」
「それで嘘をついて逃げ出してきたのか」
セヴルは驚いて顔を上げる。
「嘘はついてないし、逃げてもない」
バリュフは食事を淡々と続ける。
「知らない人を巻き込んでまでやる価値があるかい?」
「じゃあ、あいつらから逃げる方法を教えてよ」
「自分で考えなさい」
うつむくセヴル。バリュフは少し苛立っているようだった。
「それで、何を約束して出てきたの?」
「蟲を退治するって」
「無理でしょ」
あっさりと言葉を吐くバリュフにセヴルが食って掛かる。
「やってみなきゃわからないだろ」
バリュフは鼻で笑った。
「わかるよ。何百年も前からこの状態なのに、君一人で一体何が出来るんだい?」
「人を襲い始めたのは、最近だって言ったじゃないか。それにこの右手の力があれば……」
「呪いだって散々わめいていたのに、今度は力だって? 君は、自分の目的がはっきりしていない。マムルを殺すのと、蟲を殺すのどっちが君の目標だ?」
「マムルだ」
「なら何故、ここに彼らを連れて来た?」
口ごもるセヴル。
「それは……。あんたが、蟲の事を詳しかったからさ」
「違うね」
バリュフは腕を組んで背もたれにもたれかかりセヴルを見る。
「自分で決められないからさ。誰かに決めてもらって楽になろうとしているだけさ。逃げだな。逃避だ。負け犬だ」
セヴルはテーブルを殴りつける。
「俺は逃げてない!」
「彼らを殺してここで生活するっていう選択肢もあるよ」
セヴルは立ち上がる。
「もういい。あんたには力は借りない」
椅子を引くと、部屋の隅の荷物まで歩いていく。
「マムルを殺すこと。蟲を退治すること。この二つを成すことは不可能だ」
「やってみなくちゃわからない」
グロウは二人のやり取りを草食動物のようにサラダを食べながら見守る。
「わかるよ。君一人では、おそらくそのどちらか一方しか選ぶことは出来ないだろうな」
「なんで?」
振り返って真剣なまなざしを向けてくるセヴルをバリュフは見つめ返さなかった。
「マムルを殺した場合、君は追われて殺される。蟲を殺した場合、君は用済みになって殺される。どっちみち君は殺される。マムルや蟲に殺されることだってあるだろう」
「そうならないようにすればいい」
「なるよ」
「ならない」
「根拠がない」
「ならない!」
セヴルがバリュフの肩を掴んだのと同時に、サアラが入ってくる。
「ちょっといつまで待たせるのよ! 何で食べ始めてるのよ!」
「……なに、私も同行するからね。その打ち合わせさ」
「え?」
バリュフは、目でセヴルに合図を送るが、セヴルには訳がわからなかった。グロウがそれを聞いて慌て出す。
「先生、行っちゃうの?」
「グロウも一緒だよ」
バリュフがパンを掴む。ちぎっては口に持っていく。グロウはスープにスプーンを入れてぐるぐる回す。
「僕は嫌だな。ここにいる」
「そんなわがまま言うんじゃないの」
そのやり取りを見つめながら、サアラは空いている席に座る。
「じゃあ、やっぱりこの人が蟲の情報を持ってるのね?」
「知らないよ」
淡々としたバリュフの言葉にサアラの顔が真っ赤に染まる。再び立ち上がると今にもバリュフに飛び掛っていきそうな迫力を見せた。
「馬鹿にしてるの?」
「血の気の多い娘さんだね」
「気持ちの悪いしゃべり方しないで!」
「気持ちが悪い……」
パンがバリュフの手元から零れ落ちる。グロウがサアラの前に立ちふさがる。
「ダメだよ。みんな思ってるのにはっきり言っちゃ」
「思ってた……」
肩を落とし沈み込むバリュフ。セヴルが話題を変えるべく席に着く。
「それで、どこに行くの?」
「ブロウダー辺りまで行けば何かわかるんじゃないかな? 師匠がいるし、何か知ってるかもしれない」
バリュフの声は小さい。
「俺、そのブロウダーがどこにあるのか分からないんだけど」
サアラはセヴルに向かって自慢げに鼻を鳴らす。
「ふん、学がない奴は本当に使えないわね。ブロウダーはね」
「大分、南の町ですね」
ガリウスが席についてパンを手に取る。
「ちょっと、静かだと思ったら、いきなりしゃべりださないでよ」
「すまない」
そう言いながらガリウスはパンをほおばる。サアラがどすっと席に座る。
「そこに行けば何か分かるの?」
「占い師がいるから、占ってもらおう」
バリュフが笑顔を向ける。サアラが拳を握りこんで椅子の上に立ち上がる。
「こいつふざけるんじゃないわよ」
「本当にすぐ怒るね」
グロウが面白そうに笑うと、サアラは恥ずかしくなったのか椅子から降りて座りなおす。
「あたしはすぐに帰りたいのよ。本当なら、首都研修に行って、そのまま法学院に推薦されて、輝かしい未来が待っていたはずなのに。こんな馬鹿みたいな命令をされて……。あんたなんかさっさと死ねばいいのよ」
セヴルはサラダを口に放り込もうとしてやめる。
「じゃあ、帰れよ」
「は? 出来るわけないじゃない。そんなことしたら、あたしの未来は完全に真っ暗よ」
「帰らないなら、少し静かにしてろ」
セヴルは手当たり次第に食べまくる。それを見てサアラが鼻で笑う。
「何よ、人殺しの癖に」
「俺は誰も殺してない」
「聖導師パ様はそう言ってなかったわ」
二人のやり取りを見てバリュフが頭を押さえる。
「しかし、草原を行くときにそれは困るねぇ」
「静かにしなきゃいけない時は静かに出来るわよ」
「お姉さん、えらいねー」
グロウが拍手をする。サアラはパンを両手に取ると、一つをグロウの口の中にねじ込んだ。
「このガキ、むかつく。どっちにしても、足手まといだわ。こんなにぞろぞろと人数ばかり増えるなんて、断固反対」
「私がいれば、蟲除けの魔術で夜ぐっすり眠ることが出来るよ」
サアラは、バリュフの手をがっしりとつかむ。
「いいわ。一緒に行きましょう」
「俺、こいつとは絶対合わないな」
両手を挙げて舌を出しているセヴル。バリュフが声をかけてくる。
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