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呪われた子 29
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29
横穴の先に広がっていたのは、巨大はホールだった。細長い階段がその底へとつながっている。
底に向かっていくにつれ、地面にあるものがはっきりと見えてくる。
左には蟲の死骸や人間の死体、右には本や薬ビンが散らばり、赤や黄、紫の煙が火にかけられた細長いビンから昇っている。
セヴルたちがたどり着いた先で待っている者がいた。机にかじりつくように年老いた男が、書物に読みふけっている。
「サイロー師」
バリュフの声に老人が反応する。片目の潰れた顔には、感情がないようだった。
「久しいなバリュフ。ようやく我が元で働く気になってくれたか」
「な」
セヴルとガリウス、サアラがバリュフを見つめる中、グロウだけは驚いていなかった。
「師よ。御変わりなさそうですね」
「どういうことだよ」
「変わったよ。何もかも変わってしまった」
サアラが、片目の老人の言葉を聴くバリュフを肘で突く。
「これはどういうことなのよ」
バリュフは、サイローから目を離さない。
「この蟲使いは、私の師だ」
サアラは、ガリウスの手を引きバリュフから離れる。
「騙したの?」
「すまない。この目で確かめたかった」
「あいつが蟲使い……」
セヴルは、折れた剣を構える。
「あっちに形成体の本がある。取って来い。話はそれからだ」
サイローは再び書物に目を落とす。目が悪いのか影が出来るほどの近距離で本を読んでいる。バリュフがサイローに近づいていく。
「まだ、復讐をするのですか?」
「あれのことは言うな。心が痛む」
「痛む心がまだ残っているのなら、闇に手を貸すことはやめてください」
「その話はもう良い。さあ、こちらに来い。研究の成果を見せてやろう」
サイローがゆっくり立ち上がる。セヴルはその動きを注視する。
「あいつが蟲を使って、人を襲ってたのか」
「そうだ。誰かが、わしの娘を殺そうとしておる。治療せねば」
サイローはブツブツつぶやきながら蟲の死骸の方へ向かっていく。
「ガリウス、帰ろう」
サアラが、ガリウスの手を引く。突然サイローがサアラたちをにらむ。黄色い歯をむき出して、身も凍らせるような叫び声を上げる。
「材料がこんなところで何をしている!」
「師よ、落ち着いてください」
「あぁ、あいつらは娘を焼き殺した……。わしの娘を……」
サイローは、サアラに向けて掌を見せる。
「やめろ!」
バリュフが、サアラを抱えて倒れこむ。火の矢がその上を通り過ぎる。
炎の矢は階段に突き刺さり階段の一段を燃やす。それを見てバリュフは、力なくつぶやく。
「堕ちたのか……」
サアラは、バリュフを弾き飛ばす。
「触らないで!」
「バリュフよ。さあ、研究を続けよう」
サイローは優しげな声を出す。サアラはバリュフをにらみつける。
「あんたは信用できないわ」
「すまない」
バリュフは立ち上がる。
「お前を倒せば、蟲はいなくなる!」
セヴルは、サイローに飛び掛る。伸ばしてくるサイローの左腕を折れた剣が切り飛ばす。乾いた音がして左腕は地面の上で転がった。サイローの傷口からは、何も出てこなかった。
「はあっ!」
セヴルは、サイローの懐にもぐりこむと、その体を突き上げようとした。サイローが首をかしげる。
「邪魔をするな」
サイローの右手が折れた剣に突き刺さる。黄色い歯を見せてセヴルに言葉を吐きかける。
「お前を知っているぞ……」
セヴルは折れた剣を手放して、サイローから距離をとる。
「私のかわいい娘を、殺そうとした奴だ」
サイローの一つしかない目から、緑色の涙がこぼれ出した。
「いや、下の子はお前に殺された」
蟲の死骸が震えだす。死骸の山を崩しながら、足長蟲が現れる。長い足の多くが切られ、残っている一本には、剣が刺さっている。
セヴルは、近寄ってくる蟲と老人を交互に見る。そこへバリュフが割って入る。
「こっちはまかせろ。蟲は君が倒してくれ」
「セヴル! そんな奴、信用できないわ! 逃げましょう」
「先生!」
「そんな」
ガリウスとグロウが、階段の上を見て驚愕する。細長い階段の上から、丸蟲の大群がゆっくりと転がり降りてくる。
「やるしかない」
ガリウスがメイスを握る。サアラもメイスを引き抜く。
「バリュフ」
「師よ」
右の掌をかざすサイロー。折れた剣が突き刺さっている。首をかしげて、折れた剣を黄色い歯でくわえ、右手から引き抜く。その間に、バリュフの印が完成する。
「『火(ファイ)』」
二本の火の矢がサイローに向かっていく。右腕と足に当たり、サイローの体を焼く。
ガリウスとサアラは上から迫ってくる丸蟲を待つ。
「どうするのよ! あんな数、どうにかなるわけないでしょ?」
「だからって、見てるわけにも行かないだろう!」
そこにセヴルが吹き飛ばされてくる。
「長い棒か何かない?」
周りを見るが、それらしいものは何も無い。
「とりあえず、こっちを先に倒そうぜ」
「あっちはどうするのよ!」
グロウが、階段を上っていく。
「こっちは僕に任せてよ」
「え? 何を馬鹿の事言ってるのよ」
「魔術でも使えるのか?」
「へへ、そんなところ」
グロウが両手を広げたかと思うと、その体が一気に膨れ上がり、服が弾け飛ぶ。一瞬で毛むくじゃらになると、一匹の熊がそこに現れる。
「もう、なんでもありね……」
呆れるサアラは両手を空に向けた。セヴルはベルトを外し、それを拳に巻く。
「こっちも行くぞ」
セヴルたちは足長蟲に突撃する。
「メルティアが死んだのは私のせいです。師のせいではありません」
バリュフは、印を組んでサイローの火の矢を受け止めにいく。
「邪魔をするな」
「狙うなら、私にしろ!」
サイローの顔が、バリュフを見る。
「あの日、あなたに会いに行った日。メルティアは、信徒と貧しい者たちの間に入って、信徒に捕まったんです」
「娘は生きている。見ろ、あそこだ」
サイロはー足長蟲を指差す。
「もう、二度と傷つけさせるものか」
サイローは、火の矢をセヴルに向かって撃つ。バリュフがその線上に立ち、火の矢を受け止める。
「制限なく術を……。やはり堕ちたのですね」
「違う。真理にたどり着いたのだ」
「あなたは、あの時の逆上した信徒たちと何も変わらない!」
「黙れ! 聖導師の娘を焼く者たちが、信徒であるわけがない。あれは、暴徒だ。闇の手先だ」
サイローの掌に火の玉が生まれる。バリュフは、先ほどとは異なる印を結ぶ。
「どかぬと貴様も灰にするぞ」
「教団がおかしくなっていたのはご存知のはずだ。だから、私たちを町の外へと出した」
「金の亡者に成り下がった信徒どもなど、救う価値もない」
「罪もない人たちを蟲の餌にした」
「もうよい。貴様は破門だ。消えろ」
サイローの手から、火の玉が打ち出される。バリュフは、両手を広げて火の玉を受け止める。掌に水ぶくれが生まれ、すぐに破裂する。皮膚を破って出てきた水と混ざった血が、腕を伝う。
「私は、メルティアの死を復讐の道具にはしない! それが彼女の望みだったはずだ」
バリュフは火球を横へそらす。火球は、本やビンを跳ね飛ばし燃え上がらせる。
「あなたは逃げた。それだけだ」
サイローをにらむバリュフの体が固まる。サイローの手に、火の玉がまた生まれていた。
「その手では、もう印も組めまい。消えろ……」
坂のような階段の上から飛び掛ってくる丸蟲を、熊が撃ち落し叩き潰す。叩いて落とし潰す。叩いて落として、また潰す。それでも、丸蟲の数は減らなかった。
轟音がして、後ろを見れば本の山が燃えている。熊は、首をかしげた。
「!」
熊の腕に丸蟲が噛み付いた。ゴワゴワの毛で覆われた熊の防御力は侮れない。丸蟲の顎は、熊の手を噛み千切れなかった。
熊は怒りの雄たけびを上げて、蟲を潰しまくる。時には、蟲を下の火にめがけて投げ入れるのだった。
「切れない!」
手に握ったベルトでは、足長蟲に深手を負わせることは出来なかった。ガリウスもサアラも、足の攻撃を避けるのに必死だった。
セヴルはベルトを緩める。長い状態でベルトを握ると、鞭のように振るって蟲の胴体を切り裂く。
「これならどうだ!」
足長蟲が、身をのけぞらせて叫びを上げる。サアラとガリウスを無視して、セヴルに襲い掛かる。セヴルは、ベルトで振り落とされて来る足を撃ち落す。二本目の足を振り払おうとして、体が流れた。
「あ」
セヴルの背に鋭い爪が突き刺さる。瞬間、セヴルは横から衝撃を受け足長蟲の攻撃を避けることが出来た。
サアラが、セヴルを押し飛ばしたのだ。その刹那、サアラのメイスが転がり、虫の長い足の影に消えた。
時間が、ゆっくりになった。轟音がして、周囲をオレンジ色に染める。セヴルはメイスを拾い上げると、蟲に向かって突撃する。横から飛んで来た足長蟲の足に、体をすくわれる。メイスが右手から離れていく。
セヴルの体が、ふわりと体が浮かび上がった。下から突き上げられた蟲の足が、セヴルを宙へ投げ飛ばした。地中のホールの天井が間近にまで見えた。
「(世界が小さくなっていく)」
人も蟲も、何もかも遠ざかっていく。
セヴルは見た。顎を広げて落ちて来るセヴルを飲み込もうとする足長蟲を。そして、その足元で、ガリウスがサアラを背負って離れていくのを。
「武器、武器! 嘘だろ……。何かあるだろ!」
時間が戻ってくる。
「急げ、急げ」
シャツをつかむ、ズボンをつかむ。
つかめても刃として取り出すことが出来なかった。
左に浮かぶ光の玉を見る。
「頼む!」
セヴルは、光の玉を右手に握り締める。光の玉が右手の中で光り輝く。青白い眩しさの中に、一振りの長剣が現れる。
「光の剣……」
セヴルがつぶやくと、光はセヴルを包み込んだ。
巨大なホールの中に光があふれる。
足長蟲の体が、煙のように光の中に溶けていく。
熊に飛び掛ってくる蟲も霧になって消えてしまう。熊の毛が抜け、裸のグロウがお尻から階段をゆっくりと転がっていく。
「なんだ、この光は!」
サイローは光に向かって火の玉を放つ。火の玉は爆発することなく光の中に飲み込まれていく。
光の玉は、輝きを放ったままゆっくりとホールのそこにたどり着く。
光の中にセヴルがいる。セヴルが手を開くと、光は一気に収束し、右手の中に光の玉が浮かぶ。
「何が……?」
バリュフたちの視線がセヴルに集中する。
「……真実の光? まさか、あれは」
バリュフは、セヴルの元に向かう。
サイローが再び火の玉を生み出す。セヴルに向かって火の玉が撃ち出される。
「握れ!」
セヴルが手を握ると、光の剣から光が放出され、火の玉が吸い込まれる。
「そのまま握っててくれ」
バリュフは、地面に落ちていた幅広の剣を拾う。足長蟲に刺さっていたレハの剣だ。
「うぅ」
火膨れた手のひらの痛みで剣を取り落としそうになるが、もう一度しっかりと握りなおす。引きずるように剣を持つ。
「どういうことだ! わしの娘はどこだ!」
セヴルは、バリュフの隣につきサイローに近づいていく。
サイローは火の矢をセヴルに向かって何本も放つ。しかし、火の矢も光の中に飲み込まれてしまう。
サイローの右手から、火の矢が出なくなると、彼の動きが止まる。セヴルをじっと見つめたまま動かなくなった。サイローも気がつけば、もう光の中にいた。
「この光は……。真実の光か。……あぁ、なんと言うことだ」
サイローの膝が折れ、切られた右腕から緑の血が流れ出す。血は光に触れると掻き消えていく。
バリュフがサイローの側に近寄る。片膝をついて、頭を垂れる。
「隻眼の聖導師サイロー様」
サイローは身を震わせて、バリュフを見る。
「メルティア様は、先に行かれました」
「……そうか。いや、わかっておった。お前には迷惑をかけたな」
サイローの目に、一つの光が灯った。
「ご案内いたします」
「お前は来るのか?」
「私にはまだ、仕事が残っておりますので」
「そうか……」
寂しそうに微笑むサイロー。先ほどまでの顔が嘘のように穏やかな表情を見せる。バリュフは顔を上げる。唇は何かを言いかけて閉じ、再び何かを発しかけてバリュフは身を震わせた。手の甲で何度も流れ出る涙を拭き取った。
「申し訳ございません。隻眼の聖導師サイロー様、あちらの階段をご覧ください」
サイローの目が、バリュフの指した指の先にいた階段の上に転がるグロウに留まる。
「なんだ? ……子どもがいるな。かわいい子だ。どこかで見たことがあるような……」
「メルティア様の御子です」
サイローの唇が震える。何度もうなずきながら、バリュフを見る。バリュフもサイローを見上げていた。
「ああ、そうか……。そうか。……立派に育てろよ」
「……はい」
「案内しろ」
サイローは、右手で自分の胸を指差した。
「ここを刺せ。魔素の根だ」
「はい」
バリュフは、立ち上がると幅広の剣をサイローの胸に押し当てた。バリュフの手が嗚咽に震え定まらない。
「泣くな馬鹿者……」
「すみません」
サイローは、バリュフの腕をつかむと、自らの腕に剣を突き入れた。
「さらばだ」
サイローの体が光の中に溶けていく。
セヴルの手の光が、徐々に小さくなっていく。そして、ついには消えてしまう。
「うわああああああ」
真っ裸のグロウが、バリュフに向かって飛び込んでくる。
「先生、大変だよ!」
「何が?」
ガリウスに背負われたサアラの顔が蒼白だった。見れば、その片足が潰され千切れかかっている。
「これは大変だ。すぐに止血をしよう」
「そうじゃなくて!」
グロウが指差す階段から、蟲が流れるように転がり落ちてくる。
「どっちも大変だ」
「光の玉出してくれ。アレなら蟲が消せる」
セヴルが、蟲の前に立つ。バリュフは両手を見せて、苦笑いを浮かべる。
「悪いね。しばらく使えそうにない」
「え」
「止血しないと」
バリュフがサアラに近づく。
「触らないで……」
サアラの声は、力がなかった。ガリウスがサアラの足を布で押さえる。
「僕が食い止めるから……」
走り出そうとしたグロウをバリュフが抱え込む。
「戻れなくなったらどうするんだ。もうだめだ。使うんじゃない」
「でも、このままじゃ」
バリュフはガリウスにサアラの足を縛らせる。
「急ごう。放っておいたら危険な状態になる」
「急ごうったって、蟲があんなにいたんじゃ」
セヴルたちはあっという間に丸蟲たちに取り囲まれていた。だが、丸蟲たちは飛び掛ってくる様子もなくセヴルたちを遠巻きにしているだけだった。
「セヴル、骨を拾ってたいまつを作るんだ」
「こいつらは?」
「蟲使いを失ったんだ。たぶん襲ってこないよ」
「……輪っかか」
ガリウスがサアラを背負う。セヴルは骨を拾うと、バリュフの指示で紙を巻いたり薬品を塗ったりして、たいまつを何本か作り上げる。
セヴルたちが固まって進むと、蟲たちは進んだ分だけ下がる。セヴルたちを避けるように穴の奥を目指しているようだった。
丸蟲たちは、螺旋階段まではついて来なかった。
地上に出ると、太陽は小さかった。もうじき夜が来る頃なのだろう。森は静かだった。
横穴の先に広がっていたのは、巨大はホールだった。細長い階段がその底へとつながっている。
底に向かっていくにつれ、地面にあるものがはっきりと見えてくる。
左には蟲の死骸や人間の死体、右には本や薬ビンが散らばり、赤や黄、紫の煙が火にかけられた細長いビンから昇っている。
セヴルたちがたどり着いた先で待っている者がいた。机にかじりつくように年老いた男が、書物に読みふけっている。
「サイロー師」
バリュフの声に老人が反応する。片目の潰れた顔には、感情がないようだった。
「久しいなバリュフ。ようやく我が元で働く気になってくれたか」
「な」
セヴルとガリウス、サアラがバリュフを見つめる中、グロウだけは驚いていなかった。
「師よ。御変わりなさそうですね」
「どういうことだよ」
「変わったよ。何もかも変わってしまった」
サアラが、片目の老人の言葉を聴くバリュフを肘で突く。
「これはどういうことなのよ」
バリュフは、サイローから目を離さない。
「この蟲使いは、私の師だ」
サアラは、ガリウスの手を引きバリュフから離れる。
「騙したの?」
「すまない。この目で確かめたかった」
「あいつが蟲使い……」
セヴルは、折れた剣を構える。
「あっちに形成体の本がある。取って来い。話はそれからだ」
サイローは再び書物に目を落とす。目が悪いのか影が出来るほどの近距離で本を読んでいる。バリュフがサイローに近づいていく。
「まだ、復讐をするのですか?」
「あれのことは言うな。心が痛む」
「痛む心がまだ残っているのなら、闇に手を貸すことはやめてください」
「その話はもう良い。さあ、こちらに来い。研究の成果を見せてやろう」
サイローがゆっくり立ち上がる。セヴルはその動きを注視する。
「あいつが蟲を使って、人を襲ってたのか」
「そうだ。誰かが、わしの娘を殺そうとしておる。治療せねば」
サイローはブツブツつぶやきながら蟲の死骸の方へ向かっていく。
「ガリウス、帰ろう」
サアラが、ガリウスの手を引く。突然サイローがサアラたちをにらむ。黄色い歯をむき出して、身も凍らせるような叫び声を上げる。
「材料がこんなところで何をしている!」
「師よ、落ち着いてください」
「あぁ、あいつらは娘を焼き殺した……。わしの娘を……」
サイローは、サアラに向けて掌を見せる。
「やめろ!」
バリュフが、サアラを抱えて倒れこむ。火の矢がその上を通り過ぎる。
炎の矢は階段に突き刺さり階段の一段を燃やす。それを見てバリュフは、力なくつぶやく。
「堕ちたのか……」
サアラは、バリュフを弾き飛ばす。
「触らないで!」
「バリュフよ。さあ、研究を続けよう」
サイローは優しげな声を出す。サアラはバリュフをにらみつける。
「あんたは信用できないわ」
「すまない」
バリュフは立ち上がる。
「お前を倒せば、蟲はいなくなる!」
セヴルは、サイローに飛び掛る。伸ばしてくるサイローの左腕を折れた剣が切り飛ばす。乾いた音がして左腕は地面の上で転がった。サイローの傷口からは、何も出てこなかった。
「はあっ!」
セヴルは、サイローの懐にもぐりこむと、その体を突き上げようとした。サイローが首をかしげる。
「邪魔をするな」
サイローの右手が折れた剣に突き刺さる。黄色い歯を見せてセヴルに言葉を吐きかける。
「お前を知っているぞ……」
セヴルは折れた剣を手放して、サイローから距離をとる。
「私のかわいい娘を、殺そうとした奴だ」
サイローの一つしかない目から、緑色の涙がこぼれ出した。
「いや、下の子はお前に殺された」
蟲の死骸が震えだす。死骸の山を崩しながら、足長蟲が現れる。長い足の多くが切られ、残っている一本には、剣が刺さっている。
セヴルは、近寄ってくる蟲と老人を交互に見る。そこへバリュフが割って入る。
「こっちはまかせろ。蟲は君が倒してくれ」
「セヴル! そんな奴、信用できないわ! 逃げましょう」
「先生!」
「そんな」
ガリウスとグロウが、階段の上を見て驚愕する。細長い階段の上から、丸蟲の大群がゆっくりと転がり降りてくる。
「やるしかない」
ガリウスがメイスを握る。サアラもメイスを引き抜く。
「バリュフ」
「師よ」
右の掌をかざすサイロー。折れた剣が突き刺さっている。首をかしげて、折れた剣を黄色い歯でくわえ、右手から引き抜く。その間に、バリュフの印が完成する。
「『火(ファイ)』」
二本の火の矢がサイローに向かっていく。右腕と足に当たり、サイローの体を焼く。
ガリウスとサアラは上から迫ってくる丸蟲を待つ。
「どうするのよ! あんな数、どうにかなるわけないでしょ?」
「だからって、見てるわけにも行かないだろう!」
そこにセヴルが吹き飛ばされてくる。
「長い棒か何かない?」
周りを見るが、それらしいものは何も無い。
「とりあえず、こっちを先に倒そうぜ」
「あっちはどうするのよ!」
グロウが、階段を上っていく。
「こっちは僕に任せてよ」
「え? 何を馬鹿の事言ってるのよ」
「魔術でも使えるのか?」
「へへ、そんなところ」
グロウが両手を広げたかと思うと、その体が一気に膨れ上がり、服が弾け飛ぶ。一瞬で毛むくじゃらになると、一匹の熊がそこに現れる。
「もう、なんでもありね……」
呆れるサアラは両手を空に向けた。セヴルはベルトを外し、それを拳に巻く。
「こっちも行くぞ」
セヴルたちは足長蟲に突撃する。
「メルティアが死んだのは私のせいです。師のせいではありません」
バリュフは、印を組んでサイローの火の矢を受け止めにいく。
「邪魔をするな」
「狙うなら、私にしろ!」
サイローの顔が、バリュフを見る。
「あの日、あなたに会いに行った日。メルティアは、信徒と貧しい者たちの間に入って、信徒に捕まったんです」
「娘は生きている。見ろ、あそこだ」
サイロはー足長蟲を指差す。
「もう、二度と傷つけさせるものか」
サイローは、火の矢をセヴルに向かって撃つ。バリュフがその線上に立ち、火の矢を受け止める。
「制限なく術を……。やはり堕ちたのですね」
「違う。真理にたどり着いたのだ」
「あなたは、あの時の逆上した信徒たちと何も変わらない!」
「黙れ! 聖導師の娘を焼く者たちが、信徒であるわけがない。あれは、暴徒だ。闇の手先だ」
サイローの掌に火の玉が生まれる。バリュフは、先ほどとは異なる印を結ぶ。
「どかぬと貴様も灰にするぞ」
「教団がおかしくなっていたのはご存知のはずだ。だから、私たちを町の外へと出した」
「金の亡者に成り下がった信徒どもなど、救う価値もない」
「罪もない人たちを蟲の餌にした」
「もうよい。貴様は破門だ。消えろ」
サイローの手から、火の玉が打ち出される。バリュフは、両手を広げて火の玉を受け止める。掌に水ぶくれが生まれ、すぐに破裂する。皮膚を破って出てきた水と混ざった血が、腕を伝う。
「私は、メルティアの死を復讐の道具にはしない! それが彼女の望みだったはずだ」
バリュフは火球を横へそらす。火球は、本やビンを跳ね飛ばし燃え上がらせる。
「あなたは逃げた。それだけだ」
サイローをにらむバリュフの体が固まる。サイローの手に、火の玉がまた生まれていた。
「その手では、もう印も組めまい。消えろ……」
坂のような階段の上から飛び掛ってくる丸蟲を、熊が撃ち落し叩き潰す。叩いて落とし潰す。叩いて落として、また潰す。それでも、丸蟲の数は減らなかった。
轟音がして、後ろを見れば本の山が燃えている。熊は、首をかしげた。
「!」
熊の腕に丸蟲が噛み付いた。ゴワゴワの毛で覆われた熊の防御力は侮れない。丸蟲の顎は、熊の手を噛み千切れなかった。
熊は怒りの雄たけびを上げて、蟲を潰しまくる。時には、蟲を下の火にめがけて投げ入れるのだった。
「切れない!」
手に握ったベルトでは、足長蟲に深手を負わせることは出来なかった。ガリウスもサアラも、足の攻撃を避けるのに必死だった。
セヴルはベルトを緩める。長い状態でベルトを握ると、鞭のように振るって蟲の胴体を切り裂く。
「これならどうだ!」
足長蟲が、身をのけぞらせて叫びを上げる。サアラとガリウスを無視して、セヴルに襲い掛かる。セヴルは、ベルトで振り落とされて来る足を撃ち落す。二本目の足を振り払おうとして、体が流れた。
「あ」
セヴルの背に鋭い爪が突き刺さる。瞬間、セヴルは横から衝撃を受け足長蟲の攻撃を避けることが出来た。
サアラが、セヴルを押し飛ばしたのだ。その刹那、サアラのメイスが転がり、虫の長い足の影に消えた。
時間が、ゆっくりになった。轟音がして、周囲をオレンジ色に染める。セヴルはメイスを拾い上げると、蟲に向かって突撃する。横から飛んで来た足長蟲の足に、体をすくわれる。メイスが右手から離れていく。
セヴルの体が、ふわりと体が浮かび上がった。下から突き上げられた蟲の足が、セヴルを宙へ投げ飛ばした。地中のホールの天井が間近にまで見えた。
「(世界が小さくなっていく)」
人も蟲も、何もかも遠ざかっていく。
セヴルは見た。顎を広げて落ちて来るセヴルを飲み込もうとする足長蟲を。そして、その足元で、ガリウスがサアラを背負って離れていくのを。
「武器、武器! 嘘だろ……。何かあるだろ!」
時間が戻ってくる。
「急げ、急げ」
シャツをつかむ、ズボンをつかむ。
つかめても刃として取り出すことが出来なかった。
左に浮かぶ光の玉を見る。
「頼む!」
セヴルは、光の玉を右手に握り締める。光の玉が右手の中で光り輝く。青白い眩しさの中に、一振りの長剣が現れる。
「光の剣……」
セヴルがつぶやくと、光はセヴルを包み込んだ。
巨大なホールの中に光があふれる。
足長蟲の体が、煙のように光の中に溶けていく。
熊に飛び掛ってくる蟲も霧になって消えてしまう。熊の毛が抜け、裸のグロウがお尻から階段をゆっくりと転がっていく。
「なんだ、この光は!」
サイローは光に向かって火の玉を放つ。火の玉は爆発することなく光の中に飲み込まれていく。
光の玉は、輝きを放ったままゆっくりとホールのそこにたどり着く。
光の中にセヴルがいる。セヴルが手を開くと、光は一気に収束し、右手の中に光の玉が浮かぶ。
「何が……?」
バリュフたちの視線がセヴルに集中する。
「……真実の光? まさか、あれは」
バリュフは、セヴルの元に向かう。
サイローが再び火の玉を生み出す。セヴルに向かって火の玉が撃ち出される。
「握れ!」
セヴルが手を握ると、光の剣から光が放出され、火の玉が吸い込まれる。
「そのまま握っててくれ」
バリュフは、地面に落ちていた幅広の剣を拾う。足長蟲に刺さっていたレハの剣だ。
「うぅ」
火膨れた手のひらの痛みで剣を取り落としそうになるが、もう一度しっかりと握りなおす。引きずるように剣を持つ。
「どういうことだ! わしの娘はどこだ!」
セヴルは、バリュフの隣につきサイローに近づいていく。
サイローは火の矢をセヴルに向かって何本も放つ。しかし、火の矢も光の中に飲み込まれてしまう。
サイローの右手から、火の矢が出なくなると、彼の動きが止まる。セヴルをじっと見つめたまま動かなくなった。サイローも気がつけば、もう光の中にいた。
「この光は……。真実の光か。……あぁ、なんと言うことだ」
サイローの膝が折れ、切られた右腕から緑の血が流れ出す。血は光に触れると掻き消えていく。
バリュフがサイローの側に近寄る。片膝をついて、頭を垂れる。
「隻眼の聖導師サイロー様」
サイローは身を震わせて、バリュフを見る。
「メルティア様は、先に行かれました」
「……そうか。いや、わかっておった。お前には迷惑をかけたな」
サイローの目に、一つの光が灯った。
「ご案内いたします」
「お前は来るのか?」
「私にはまだ、仕事が残っておりますので」
「そうか……」
寂しそうに微笑むサイロー。先ほどまでの顔が嘘のように穏やかな表情を見せる。バリュフは顔を上げる。唇は何かを言いかけて閉じ、再び何かを発しかけてバリュフは身を震わせた。手の甲で何度も流れ出る涙を拭き取った。
「申し訳ございません。隻眼の聖導師サイロー様、あちらの階段をご覧ください」
サイローの目が、バリュフの指した指の先にいた階段の上に転がるグロウに留まる。
「なんだ? ……子どもがいるな。かわいい子だ。どこかで見たことがあるような……」
「メルティア様の御子です」
サイローの唇が震える。何度もうなずきながら、バリュフを見る。バリュフもサイローを見上げていた。
「ああ、そうか……。そうか。……立派に育てろよ」
「……はい」
「案内しろ」
サイローは、右手で自分の胸を指差した。
「ここを刺せ。魔素の根だ」
「はい」
バリュフは、立ち上がると幅広の剣をサイローの胸に押し当てた。バリュフの手が嗚咽に震え定まらない。
「泣くな馬鹿者……」
「すみません」
サイローは、バリュフの腕をつかむと、自らの腕に剣を突き入れた。
「さらばだ」
サイローの体が光の中に溶けていく。
セヴルの手の光が、徐々に小さくなっていく。そして、ついには消えてしまう。
「うわああああああ」
真っ裸のグロウが、バリュフに向かって飛び込んでくる。
「先生、大変だよ!」
「何が?」
ガリウスに背負われたサアラの顔が蒼白だった。見れば、その片足が潰され千切れかかっている。
「これは大変だ。すぐに止血をしよう」
「そうじゃなくて!」
グロウが指差す階段から、蟲が流れるように転がり落ちてくる。
「どっちも大変だ」
「光の玉出してくれ。アレなら蟲が消せる」
セヴルが、蟲の前に立つ。バリュフは両手を見せて、苦笑いを浮かべる。
「悪いね。しばらく使えそうにない」
「え」
「止血しないと」
バリュフがサアラに近づく。
「触らないで……」
サアラの声は、力がなかった。ガリウスがサアラの足を布で押さえる。
「僕が食い止めるから……」
走り出そうとしたグロウをバリュフが抱え込む。
「戻れなくなったらどうするんだ。もうだめだ。使うんじゃない」
「でも、このままじゃ」
バリュフはガリウスにサアラの足を縛らせる。
「急ごう。放っておいたら危険な状態になる」
「急ごうったって、蟲があんなにいたんじゃ」
セヴルたちはあっという間に丸蟲たちに取り囲まれていた。だが、丸蟲たちは飛び掛ってくる様子もなくセヴルたちを遠巻きにしているだけだった。
「セヴル、骨を拾ってたいまつを作るんだ」
「こいつらは?」
「蟲使いを失ったんだ。たぶん襲ってこないよ」
「……輪っかか」
ガリウスがサアラを背負う。セヴルは骨を拾うと、バリュフの指示で紙を巻いたり薬品を塗ったりして、たいまつを何本か作り上げる。
セヴルたちが固まって進むと、蟲たちは進んだ分だけ下がる。セヴルたちを避けるように穴の奥を目指しているようだった。
丸蟲たちは、螺旋階段まではついて来なかった。
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