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冬のあほうつかい
冬のあほうつかい 25
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25
「なんだなんだ?」
「お前らか? 独占をしてたのは?」
「つまんねー真似をしやがって」
「ここを誰の縄張りか知っての所業だろうなぁ」
「兄ちゃんショギョーって何だ?」
「仕業ってことだよ」
「ああ、ぞうか。シワザって?」
「仕業は所業のことだろ」
「ああ、ぞうか」
怒号と罵声を上げながら坂のような階段を下りてくるのは三人の男たちだった。金属鎧に身を包む彼らはメイスや大斧を肩に担いでやってくる。
「返答次第では、生きて帰さねえぞ」
一番前を来た髭面で髪を一本にまとめた男はメイスを肩から下ろすと、階段の上でシビトと目線を同じに合わせた。段数で言えば五段の高さの違いがあった。
「独占?」
ナサインが脇から声を上げると髭面の右横に立っていた赤ら顔が大斧を振り上げて威嚇する。振り乱した長い髪が炎のように揺らめいている。
「してただろうが! 独占だ」
「兄ちゃんドクセンってなんだ」
赤ら顔の男に尋ねるのは眉毛の無い三つ編みの男だった。男たちは背丈も表情もどこか類似していた。赤ら顔が眉無しに顔を向ける。
「独占って言うのは、独り占めだ」
「ぞうか、独り占めか」
ナサインが後の二人にかまわずに前の男に話しかける。
「俺たちはここで休んでただけだ。ここにずっといるつもりは無い」
髭面が大声で笑った。
「あんなに荒らしやがって、しらばっくれるつもりか?」
「あれじゃあ、復旧に三日はかかる」
「兄ちゃん、フッキュウって?」
「復旧は元通りに再生するってことだ」
「ああ、ぞうか。サイセイって?」
「復旧のことだ」
「ああ、ぞうか」
「緊急だったんだ」
ナサインの言葉に髭面が笑いを止める。
「で、出たのか?」
「何が?」
「大丸蟲だよ」
「普通のより一回りくらい大きいのなら」
「ふうむ」
髭面は考え込む。赤ら顔が周囲を見回す。
「兄貴」
「なんだ?」
赤ら顔は階下を顎で指す。髭面はすぐに表情を和らげた。
「なんだよ。悪かったな、俺たちはお前たちに危害を加える気なんて無いんだよ。そんなに身構えるなよ」
「兄ちゃん、キガイって?」
「お前は黙ってろ」
「教えてよぉ」
「危害って言うのは、暴力だ」
「ぞうか、暴力は知ってるよ。兄ちゃんたち得意だもんね。特に相手が後ろを向いたときとか」
髭面と赤ら顔が眉無しを見る。眉無しは不思議顔でそれを見返す。髭面と赤ら顔の拳が同時に眉無しの腹に命中し、眉無しは階段に座り込む。
「痛いよぉ」
眉無しは一瞬無言になった。
「鎧着てるから大丈夫だった」
そう言って頭をかく。髭面が咳払いをして仕切りなおす。
「大丸蟲はまだ出てないんだな?」
「俺たちが見たのは一回り大きい奴だけだ」
「そんなにデカイのか?」
シビトが口を開く。ナサインがそれをにらむが、シビトは無視した。
「デカイなんてもんじゃないぜ。家だなあれは」
ナサインはシビトに耳打ちする。
「俺はそんなの知らないぞ」
「何だ?」
髭面に指を指されてナサインは口を開く。
「そんな丸蟲が出ることなんて知らない」
「レアモンスターだからな。知らなくても当然だ」
「書き換えなんて出来ないはずだぞ」
ナサインは独り言を呟く。
「兄貴、二年か三年前にも同じようなことが無かったか?」
「なに?」
髭面は顔を抑えながら考え込む。ナサインが声を上げる。
「おい、大丸蟲っていつからいるんだよ」
「昔からに決まってんだろ」
赤ら顔が吐き捨てるように言うと、ナサインも腕を組んで考え込む。髭面とナサインのうなり声が不愉快なハーモニーになって辺りに響いていく。
「や、こいつは俺の勘違いだったようだ」
髭面が急に笑顔を作った。
「戻るぞ」
そう言うと赤ら顔と眉無しの肩を叩いて坂のような階段を上っていく。
「待て」
ナサインは男たちを呼び止める。止まらない男たちになおも声をかける。
「おい」
「大丸蟲なんかいねえよ。冗談だー」
声は立ち止まっていないことを教えてくれる。
「え? いないの? 俺見たことあるよ」
「お前は黙ってろ。俺たちが独占出来なくなるだろうが」
「え? ドクセンっていけないんじゃなかったの?」
「俺たちはいいんだよ」
声はやがて聞こえなくなった。
「ミクモの野郎、嘘ばっかりじゃねえか」
「なんだなんだ?」
「お前らか? 独占をしてたのは?」
「つまんねー真似をしやがって」
「ここを誰の縄張りか知っての所業だろうなぁ」
「兄ちゃんショギョーって何だ?」
「仕業ってことだよ」
「ああ、ぞうか。シワザって?」
「仕業は所業のことだろ」
「ああ、ぞうか」
怒号と罵声を上げながら坂のような階段を下りてくるのは三人の男たちだった。金属鎧に身を包む彼らはメイスや大斧を肩に担いでやってくる。
「返答次第では、生きて帰さねえぞ」
一番前を来た髭面で髪を一本にまとめた男はメイスを肩から下ろすと、階段の上でシビトと目線を同じに合わせた。段数で言えば五段の高さの違いがあった。
「独占?」
ナサインが脇から声を上げると髭面の右横に立っていた赤ら顔が大斧を振り上げて威嚇する。振り乱した長い髪が炎のように揺らめいている。
「してただろうが! 独占だ」
「兄ちゃんドクセンってなんだ」
赤ら顔の男に尋ねるのは眉毛の無い三つ編みの男だった。男たちは背丈も表情もどこか類似していた。赤ら顔が眉無しに顔を向ける。
「独占って言うのは、独り占めだ」
「ぞうか、独り占めか」
ナサインが後の二人にかまわずに前の男に話しかける。
「俺たちはここで休んでただけだ。ここにずっといるつもりは無い」
髭面が大声で笑った。
「あんなに荒らしやがって、しらばっくれるつもりか?」
「あれじゃあ、復旧に三日はかかる」
「兄ちゃん、フッキュウって?」
「復旧は元通りに再生するってことだ」
「ああ、ぞうか。サイセイって?」
「復旧のことだ」
「ああ、ぞうか」
「緊急だったんだ」
ナサインの言葉に髭面が笑いを止める。
「で、出たのか?」
「何が?」
「大丸蟲だよ」
「普通のより一回りくらい大きいのなら」
「ふうむ」
髭面は考え込む。赤ら顔が周囲を見回す。
「兄貴」
「なんだ?」
赤ら顔は階下を顎で指す。髭面はすぐに表情を和らげた。
「なんだよ。悪かったな、俺たちはお前たちに危害を加える気なんて無いんだよ。そんなに身構えるなよ」
「兄ちゃん、キガイって?」
「お前は黙ってろ」
「教えてよぉ」
「危害って言うのは、暴力だ」
「ぞうか、暴力は知ってるよ。兄ちゃんたち得意だもんね。特に相手が後ろを向いたときとか」
髭面と赤ら顔が眉無しを見る。眉無しは不思議顔でそれを見返す。髭面と赤ら顔の拳が同時に眉無しの腹に命中し、眉無しは階段に座り込む。
「痛いよぉ」
眉無しは一瞬無言になった。
「鎧着てるから大丈夫だった」
そう言って頭をかく。髭面が咳払いをして仕切りなおす。
「大丸蟲はまだ出てないんだな?」
「俺たちが見たのは一回り大きい奴だけだ」
「そんなにデカイのか?」
シビトが口を開く。ナサインがそれをにらむが、シビトは無視した。
「デカイなんてもんじゃないぜ。家だなあれは」
ナサインはシビトに耳打ちする。
「俺はそんなの知らないぞ」
「何だ?」
髭面に指を指されてナサインは口を開く。
「そんな丸蟲が出ることなんて知らない」
「レアモンスターだからな。知らなくても当然だ」
「書き換えなんて出来ないはずだぞ」
ナサインは独り言を呟く。
「兄貴、二年か三年前にも同じようなことが無かったか?」
「なに?」
髭面は顔を抑えながら考え込む。ナサインが声を上げる。
「おい、大丸蟲っていつからいるんだよ」
「昔からに決まってんだろ」
赤ら顔が吐き捨てるように言うと、ナサインも腕を組んで考え込む。髭面とナサインのうなり声が不愉快なハーモニーになって辺りに響いていく。
「や、こいつは俺の勘違いだったようだ」
髭面が急に笑顔を作った。
「戻るぞ」
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「待て」
ナサインは男たちを呼び止める。止まらない男たちになおも声をかける。
「おい」
「大丸蟲なんかいねえよ。冗談だー」
声は立ち止まっていないことを教えてくれる。
「え? いないの? 俺見たことあるよ」
「お前は黙ってろ。俺たちが独占出来なくなるだろうが」
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「俺たちはいいんだよ」
声はやがて聞こえなくなった。
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