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冬のあほうつかい
冬のあほうつかい 27
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27
ちりちりちり……。
シミュラの左手の指先に何かが触れた。それは左手の作る影の中にいた。黒よりも黒い黒。人差し指と中指の間からシミュラの中に入り込んでくる。
シミュラは左手を持ち上げて振り払おうとした。しかし、そこには何もいなかった。目の前には父の杖が前と変わらない位置で転がっている。
「答えてくれないのなら、答えさせるしか無いのね」
シミュラは再び杖に向かって左手を伸ばす。同時に左手から入り込んだモノがシミュラの淡く赤い髪を黒よりも黒い黒に染め上げる。
「来なさい。ハシュケイオン」
象牙色の長大な杖は溶けるようにシミュラの左手の中に滑り込んだ。シミュラはそれを握り込むと先を右手首の白い塊に当てた。瞬間、白い塊は輝く粉になってしまう。
シミュラは杖を右手に持ち替えると黒い道衣の男に狙いを定める。
「お父様の杖をホウキのように使って……」
象牙色の長大な杖を振り上げると、数本の大きな氷柱がそこに生み出される。
「氷の槍(アイスランス)!」
氷柱は黒い道衣の男に向かって飛んでいく。最初の二本は上手く躱すが、そこから伸びた氷筍に足や道衣を巻き込まれ三本目が体に突き刺さり、その後次々に襲い掛かってくる氷柱にグシャグシャにされてしまう。
「お前……、味方なのか?」
イラリがシミュラに呼びかけるが彼女は無視した。その視線の先には大蜘蛛がいる。
「なんで出来損ないのお前にそんな魔法が使えるんだ?」
「理由をお聞かせてください」
「お前なんかに!」
大蜘蛛の腹から白い塊が射出される。シミュラが杖をひねると白い塊はシミュラに届く前に輝く粉へと変わってしまう。
「お前なんか!」
再び大蜘蛛の腹から白い塊が撃ち出される。これでもかと言うほどの数だった。しかしそれもシミュらには届かず輝く粉になってしまうのだった。
「降りてきて」
シミュラは杖を横に振るうと柄尻で床を叩いた。
「雪崩(アバランチ)」
シミュラの前に山のような量の雪が大蜘蛛を巻き込みながら落ちてくる。山になった雪は不安定で周囲にも広がるがシミュラの前では光の粉に変わる。
「こんなバカなことが」
雪山の中から這い出してきたのは紅いドレスのナミュラだった。
「なんでお前なの? なんで」
雪の上を膝まで埋もれながらナミュラは降りてくる。途中、足を取られ雪の上を転がってシミュラの前に倒れ込む。
「お前なんて……」
シミュラに向かって伸ばした右手が光の粉に変わってしまう。慌てて右手を引くがナミュラの手首から先はすっかりなくなっていた。切り取られたのではない。その証拠に傷口からは血が出ておらずただ紫色に凍っていた。
見下ろすシミュラにナミュラは懇願した。
「お願い殺さないで」
シミュラは一筋の涙を流した。そしてゆっくりとナミュラに近づいていく。
「あなたを許します」
ナミュラの体はシミュラが近づいた分だけ光の粉に変わっていく。肘の先まで粉になった時、ナミュラはシミュラから逃げるように体を引きずって下がっていく。
「あなたがわたくしを愛しているなら、あなたはわたくしの側に来れるはず」
左足のつま先が消え、膝が消え、右足も消える。左腕でシミュラから逃げようとする。
「お前を愛しているよ。だからこんなことはやめておくれ」
けれどシミュラは立ち止まらなかった。腰も背中も肩も光の粉に変わっていく。
「わたくしは愛していたのですよ」
ナミュラは光の粉になって消えた。
「お前一体なんなんだ」
「側に来たら死ぬわよ。あなたはわたくしの味方ではないのだから」
近づいてくるイラリにシミュラは言った。イラリは怯む。
「俺をどうするつもりだ」
「帰るんでしょ? だったら、好きにすればいいわ」
「お前は?」
「この迷宮を壊すわ。こんな物があるから争いが無くならないのよ」
「出来るのかそんなこと」
「さあ? でも、帰るなら早いほうが良いわ」
「お、俺を雇う気はないか?」
「あなた、わたくしのために死ねる?」
「それは……」
「やめておくわ」
シミュラが歩くとそれに合わせて彼女の周囲の雪山も消えていく。
大広間の最奥の扉の前に立つと扉はシミュラが立つと自然に開いていった。目の前には白い空間がどこまでも広がり、階段が下に向かって伸びている。階段を降りきった先で白い光を飲み込む黒い渦が見えた。下の方から風が吹き上がって来る。階段を降りていくと長い黒髪を波打たせた。
「あれを壊せばここは消えるはず」
象牙色の長大な杖の先を黒い渦に向ける。杖の先端が輝きその光が渦の中心に吸い込まれていく。
「消えろ」
強く願うたびに杖の輝きは増していく。
「消えろ!」
渦はシミュラの魔力を飲み込みながらどんどん大きくなっていく。黒い渦の中にもっと黒い渦が見えた。
「こんな物があるからいけないのだ。皆ただ平和に健やかに暮らしたいだけなのに」
杖に込める力が増していくにつれて最も黒い渦の動きが鈍くなる。
「止まれ。止まって跡形もなく塵となれ」
シミュラの願いも虚しく、渦は動きを止めることはなかった。杖は光を失っていき、シミュラは力なく後退すると階段の上に座り込んだ。
「渦を消すことさえも出来ない。どうしてなの。そんなに平和が憎いの? 戦争がなければ妹もあんな死に方をしなかった。父もあんなふうな最後にならなかった。母や兄も狂いはしなかった。ここで命を落とした者たちも、動物も、みんな生を全うできた。争いを捨てるということはそんなに困難なことなの?」
渦は問いかけには答えない。
「他人の物を欲しがらない。他人を傷つけたりしない。たったこれだけのことさえわたくしたちには難しいことなの? 動物や植物を殺して食べることで生きていく。それが人間の性質であるならば、それは生き物として仕方がないのかもしれない。けれど、誰かが持っているものを欲しがることは違う。弱い者を虐げることも違う。争いが生まれるのは強い欲望に支配されそれに負けてしまったからよ。わたくしは争いのない世界を作りたい」
渦の中から放たれた黒い光がシミュラを差す。
「人を殺し奪う者をすべて殺してしまおう。争う心を持つ者をすべて殺してしまおう。そして最後に自分が死ねばこの世界は争いのない世界になるだろう」
それが自分の意志なのか黒い渦の意志なのか分からなかった。
シミュラは迷宮の主となった。
ちりちりちり……。
シミュラの左手の指先に何かが触れた。それは左手の作る影の中にいた。黒よりも黒い黒。人差し指と中指の間からシミュラの中に入り込んでくる。
シミュラは左手を持ち上げて振り払おうとした。しかし、そこには何もいなかった。目の前には父の杖が前と変わらない位置で転がっている。
「答えてくれないのなら、答えさせるしか無いのね」
シミュラは再び杖に向かって左手を伸ばす。同時に左手から入り込んだモノがシミュラの淡く赤い髪を黒よりも黒い黒に染め上げる。
「来なさい。ハシュケイオン」
象牙色の長大な杖は溶けるようにシミュラの左手の中に滑り込んだ。シミュラはそれを握り込むと先を右手首の白い塊に当てた。瞬間、白い塊は輝く粉になってしまう。
シミュラは杖を右手に持ち替えると黒い道衣の男に狙いを定める。
「お父様の杖をホウキのように使って……」
象牙色の長大な杖を振り上げると、数本の大きな氷柱がそこに生み出される。
「氷の槍(アイスランス)!」
氷柱は黒い道衣の男に向かって飛んでいく。最初の二本は上手く躱すが、そこから伸びた氷筍に足や道衣を巻き込まれ三本目が体に突き刺さり、その後次々に襲い掛かってくる氷柱にグシャグシャにされてしまう。
「お前……、味方なのか?」
イラリがシミュラに呼びかけるが彼女は無視した。その視線の先には大蜘蛛がいる。
「なんで出来損ないのお前にそんな魔法が使えるんだ?」
「理由をお聞かせてください」
「お前なんかに!」
大蜘蛛の腹から白い塊が射出される。シミュラが杖をひねると白い塊はシミュラに届く前に輝く粉へと変わってしまう。
「お前なんか!」
再び大蜘蛛の腹から白い塊が撃ち出される。これでもかと言うほどの数だった。しかしそれもシミュらには届かず輝く粉になってしまうのだった。
「降りてきて」
シミュラは杖を横に振るうと柄尻で床を叩いた。
「雪崩(アバランチ)」
シミュラの前に山のような量の雪が大蜘蛛を巻き込みながら落ちてくる。山になった雪は不安定で周囲にも広がるがシミュラの前では光の粉に変わる。
「こんなバカなことが」
雪山の中から這い出してきたのは紅いドレスのナミュラだった。
「なんでお前なの? なんで」
雪の上を膝まで埋もれながらナミュラは降りてくる。途中、足を取られ雪の上を転がってシミュラの前に倒れ込む。
「お前なんて……」
シミュラに向かって伸ばした右手が光の粉に変わってしまう。慌てて右手を引くがナミュラの手首から先はすっかりなくなっていた。切り取られたのではない。その証拠に傷口からは血が出ておらずただ紫色に凍っていた。
見下ろすシミュラにナミュラは懇願した。
「お願い殺さないで」
シミュラは一筋の涙を流した。そしてゆっくりとナミュラに近づいていく。
「あなたを許します」
ナミュラの体はシミュラが近づいた分だけ光の粉に変わっていく。肘の先まで粉になった時、ナミュラはシミュラから逃げるように体を引きずって下がっていく。
「あなたがわたくしを愛しているなら、あなたはわたくしの側に来れるはず」
左足のつま先が消え、膝が消え、右足も消える。左腕でシミュラから逃げようとする。
「お前を愛しているよ。だからこんなことはやめておくれ」
けれどシミュラは立ち止まらなかった。腰も背中も肩も光の粉に変わっていく。
「わたくしは愛していたのですよ」
ナミュラは光の粉になって消えた。
「お前一体なんなんだ」
「側に来たら死ぬわよ。あなたはわたくしの味方ではないのだから」
近づいてくるイラリにシミュラは言った。イラリは怯む。
「俺をどうするつもりだ」
「帰るんでしょ? だったら、好きにすればいいわ」
「お前は?」
「この迷宮を壊すわ。こんな物があるから争いが無くならないのよ」
「出来るのかそんなこと」
「さあ? でも、帰るなら早いほうが良いわ」
「お、俺を雇う気はないか?」
「あなた、わたくしのために死ねる?」
「それは……」
「やめておくわ」
シミュラが歩くとそれに合わせて彼女の周囲の雪山も消えていく。
大広間の最奥の扉の前に立つと扉はシミュラが立つと自然に開いていった。目の前には白い空間がどこまでも広がり、階段が下に向かって伸びている。階段を降りきった先で白い光を飲み込む黒い渦が見えた。下の方から風が吹き上がって来る。階段を降りていくと長い黒髪を波打たせた。
「あれを壊せばここは消えるはず」
象牙色の長大な杖の先を黒い渦に向ける。杖の先端が輝きその光が渦の中心に吸い込まれていく。
「消えろ」
強く願うたびに杖の輝きは増していく。
「消えろ!」
渦はシミュラの魔力を飲み込みながらどんどん大きくなっていく。黒い渦の中にもっと黒い渦が見えた。
「こんな物があるからいけないのだ。皆ただ平和に健やかに暮らしたいだけなのに」
杖に込める力が増していくにつれて最も黒い渦の動きが鈍くなる。
「止まれ。止まって跡形もなく塵となれ」
シミュラの願いも虚しく、渦は動きを止めることはなかった。杖は光を失っていき、シミュラは力なく後退すると階段の上に座り込んだ。
「渦を消すことさえも出来ない。どうしてなの。そんなに平和が憎いの? 戦争がなければ妹もあんな死に方をしなかった。父もあんなふうな最後にならなかった。母や兄も狂いはしなかった。ここで命を落とした者たちも、動物も、みんな生を全うできた。争いを捨てるということはそんなに困難なことなの?」
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