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幸せの青い本 5
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「どうしよう」
マコは誰もいない廊下で一人ぼっちだった。教室を覗き込んでも誰もいない。どうやら準備室のようだった。反対側の壁はどこまでも続く高い壁のように窓が無かった。
「迷っちゃったみたい」
マコの右肩から男の腕が伸び、廊下の奥を指差した。
「ありがとうお父さん。でも、学校では一人にしてね」
マコの言葉を受けて男の腕は空気に消えていく。マコは右肩に笑いかけると指差された方向に向かって歩き出す。
「みんな幸せなのにね」
誰もが自分の不幸を自慢する。自分が一番不幸だと言う人間は、大抵の場合まだ余裕がある。本当に不幸な人間は、自分が不幸だと言うことを知らないのだ。
「幸せも同じか」
自分の身にそれがあるときには気がつかない。それを失って初めて人間は気がつく。自分が今までいかに幸せだったのかを。
「なんて自分勝手なんだろう。人間が一番いらないのかも知れない」
マコは地球に優しくと言う言葉が大嫌いだった。本当に地球のためを思うのだったら、人間なんて絶滅したほうがいいのだと思う。地球は、人間になど優しくしない。自然は常に生物を殺そうと試練を与える。そのために生物は生き残るための知恵と本能を授かるのに、人間はそれを他者にゆだねて怠惰に過ごす。便利という名の下に思考を失い、好奇心を鈍らせ、さらに便利さを要求する。
「もう、遅いよね」
マコのつぶやきは、廊下の暗がりが吸い込んでしまう。
「ここにいたんだ」
目の前にサクラが立っていた。肩を弾ませて、鼻で呼吸を繰り返していた。
「みんな探してるよ」
「ごめん。迷っちゃった」
サクラが手を出してきた。マコは不思議そうな顔を向ける。
「案内するよ」
「あ、あの名前をまだ知らなくて……」
躊躇するマコの手をサクラはぎゅっと握り締めた。
「サクラ。遠野サクラ。よろしくね!」
「よ、よろしく」
サクラは戸惑うマコの手を引いて廊下をかけていく。
「廊下を走るんじゃない!」
どこからか教師の怒鳴り声が聞こえた。
「ごめんなさーい!」
二人は笑いながら駆け去った。
「どうしよう」
マコは誰もいない廊下で一人ぼっちだった。教室を覗き込んでも誰もいない。どうやら準備室のようだった。反対側の壁はどこまでも続く高い壁のように窓が無かった。
「迷っちゃったみたい」
マコの右肩から男の腕が伸び、廊下の奥を指差した。
「ありがとうお父さん。でも、学校では一人にしてね」
マコの言葉を受けて男の腕は空気に消えていく。マコは右肩に笑いかけると指差された方向に向かって歩き出す。
「みんな幸せなのにね」
誰もが自分の不幸を自慢する。自分が一番不幸だと言う人間は、大抵の場合まだ余裕がある。本当に不幸な人間は、自分が不幸だと言うことを知らないのだ。
「幸せも同じか」
自分の身にそれがあるときには気がつかない。それを失って初めて人間は気がつく。自分が今までいかに幸せだったのかを。
「なんて自分勝手なんだろう。人間が一番いらないのかも知れない」
マコは地球に優しくと言う言葉が大嫌いだった。本当に地球のためを思うのだったら、人間なんて絶滅したほうがいいのだと思う。地球は、人間になど優しくしない。自然は常に生物を殺そうと試練を与える。そのために生物は生き残るための知恵と本能を授かるのに、人間はそれを他者にゆだねて怠惰に過ごす。便利という名の下に思考を失い、好奇心を鈍らせ、さらに便利さを要求する。
「もう、遅いよね」
マコのつぶやきは、廊下の暗がりが吸い込んでしまう。
「ここにいたんだ」
目の前にサクラが立っていた。肩を弾ませて、鼻で呼吸を繰り返していた。
「みんな探してるよ」
「ごめん。迷っちゃった」
サクラが手を出してきた。マコは不思議そうな顔を向ける。
「案内するよ」
「あ、あの名前をまだ知らなくて……」
躊躇するマコの手をサクラはぎゅっと握り締めた。
「サクラ。遠野サクラ。よろしくね!」
「よ、よろしく」
サクラは戸惑うマコの手を引いて廊下をかけていく。
「廊下を走るんじゃない!」
どこからか教師の怒鳴り声が聞こえた。
「ごめんなさーい!」
二人は笑いながら駆け去った。
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