幸せの青い本

大秦頼太

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幸せの青い本 4

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 チアキは図書室に走りこんでくる。大島マコがここに逃げこむのを見たからだ。
 肩で息をしているチアキを他の女子生徒が迷惑そうに見つめた。チアキはゆっくりと獲物を狙うハンターのように図書室の中を歩いていく。
 本棚の横から奥を鋭くにらむ。その先にある探し物は本ではない。通路に立つ生徒が時々そのチアキに気がついて、おびえた表情で逃げていく。
 違う。
 チアキの足音は足元の絨毯によって消されている。それでも、チアキは足音をさせないように気をつけていた。
 私は、暗殺者だ。大島マコを捕まえて、全部吐かせてやるんだ。あいつは何かを知っている。知っているのに黙っている奴は、ただの卑怯者か臆病者だ。私は臆病者は許せない。そうだ。臆病な父親のせいで私たち家族がどれだけの苦痛を味わっているのか、あいつは知らないんだ。大島マコから青い本のことを聞き出して、あいつに思い知らせてやるんだ。
全ての本棚の間を覗き込んでも誰も見つからなかった。
 ここじゃなかったか。
 チアキは本棚に手をついた。深いため息がこみ上げてくる。
 何をやっているんだ。私はただのバカじゃないか。
 本棚に並べられた本を指でなぞっていく。その目が、青い背表紙の本に留まる。チアキは息を呑んでその本を手に取ろうとする。
あ、なんだ。
 三冊ほど同じ様な本が並んでいた。背表紙には金字で外国人の名前が書いてあった。ただの詩集だ。チアキはため息をついて図書室の入り口に足を向けた。
 ばさ。
 チアキの背中の方で本が床に落ちる音が聞こえた。背表紙には触れたが、本を出したりはしなかった。それなのになんで本が床に落ちた音がしたのだろうか。
 チアキは、ゆっくりと振り返る。
 女子生徒が床に落ちた本を拾い上げている。
 チアキは思わず舌打ちをした。その音に驚いて女子生徒がチアキを見る。ばつが悪くなり、チアキは図書室から逃げ出した。
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