幸せの青い本

大秦頼太

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幸せの青い本 11

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 アキオは、退院してから家の中で青い本を見つけた。誰かの忘れ物なのか中を見てみると、最後のページに「猿島エリカ、アキオよりもっと素敵な彼が出来るように」と書かれていた。
 誰かのいたずらだと思った。アキオはエリカに電話をしたが、携帯電話の番号もメールのアドレスも変更されていた。
 それでも希望を捨てきれずに再び学校へ登校するようになると、エリカを追い続けた。
 返事をしないエリカにアキオは待ち伏せをするようになった。それでも、エリカは彼を相手にしなかった。
 そうしてある日、アキオは見知らぬ男に暴行され、エリカに二度と近づかないことを約束させられた。
 アキオは部屋の壁を叩き続け、青い本の存在を思い出した。
 エリカが死ねばいい。と、青い本に書き込んだ。そして、そのすぐあとに、苦しんで死ねばいいと付け加えた。
 エリカが事故死した後、アキオは誰かの視線を感じるようになった。
 初めは気がつかなかったが、視界の隅や奥に死んだはずのエリカがいたことに気がついた。エリカは近づくことも無く、ただアキオを見ているだけだった。
 次の日、エリカの姿が近くなっていることに気がついた。
 その次の日、さらに近くなっていることに気がついた。瞳が入っていた目は、空洞で真っ黒い暗闇が詰まっていた。
 そうしていくうちにエリカが常に隣にいるようになった。
 彼女はしゃべらなかった。
 アキオは頭がおかしくなりそうだった。部屋中をかき回し、青い本を探した。青い本は見つからずアキオは家を飛び出した。
 立ち止まると隣にエリカが立つ。アキオはそれを振り払うように走り続け、こんどこそ振り切ったと後ろを振り返った時、横から来たトラックにはねられて死んだ。
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