アッフェットゥオーソ

こまつすず@WME

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本編

addolcendo 悲しげな声

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それは、遠い昔のこと。

何もない空間に、神様が生まれました。

ひとりぼっちで何もない、そんな空間を退屈に思った神様はセカイを作り出しました。

大きな大地を用意し、その東端に天使を、西端には悪魔を生み出し、その間に人間を作り出しました。

そして、神様は天使と悪魔に役割を与えました。

天使には人間への褒美と誕生を司らせ、
悪魔には人間への罰と死を司らせて、両者に人間を管理させました。

天使と悪魔は神の言葉の通りに、互いに協力し合い、助け合い、役割を果たしていました。

そのおかげかセカイは上手く回り、著しく発展していきました。

いつしか
セカイに未曾有の繁栄が訪れていました。

これからも、それが訪れ続けると思われました。

しかしそれはつかの間。
春の夢のように去って行きました。

人間は愚かだったのです。

人間は愚かで、罰よりも褒美を好んだのです。

人間は自分たちに不幸をもたらす悪魔たちを嫌い、残虐に殺していきました。

「私たちは好きでこんなことをやっているのではない」

「お前たちが罪を犯すから私たちは嫌でも罰を与えなければならないのだ」

「私たちはお前たちを不幸にしたいわけではない」

悪魔たちは必死に叫びました。

しかし、自分たちの犯した罪にさえ気づかない愚かな人間には、その言葉を受け入れられるほどの知性を持っていませんでした。

悪魔たちはそれからもずっと迫害を受け続けます。

ある時、ひとり悪魔が言いました。

「いっそ、すべての人間を殺してしまおうか」

周りの悪魔たちはその言葉に賛同し、盛り上がり始めます。

「そうだな、それがいい」

「人間が先にやったことだ」

ひとり、またひとりと賛同の意見を述べ、盛り上がりが絶頂に達した時でした。


「お待ちください」

どこからか鈴のように綺麗な、でも少し悲しげな声が響きました。

小さな声は、大きく響き、あたりは一瞬で静まりかえりました。

そして、ひとりの少女が姿を現しました。
まだ幼く、あどけない天使の少女です。

盛り上がりに水を差された悪魔の中には敵意を剥き出すものもいました。

しかし、幼いながら彼女は凛として一歩も引きません。

そんな彼女を見て、ひとりの悪魔が訪ねました。

「あなたは?」

彼女は答えます。

「私は天使の長の娘です。みなさんにおねがいがあってここへ参りました」

悪魔たちはみな不思議そうな顔をしました。

「おねがい…とは…?」

彼女はほんの一瞬だけうつむき、一呼吸おいてからこう答えました。

「私を殺してほしいのです」
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