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コラボ企画
コラボ企画⑥
しおりを挟む未央は、うんうんうなりながら目をつぶって、コラボメニューに想いを巡らせていた。
秋だったらやっぱり芋かな。栗……も好きだけど売れるというものを考えれば芋。しかもちょっとこだわったお芋がいいな、安納芋とかシルクスイートとか。
ぶつぶつ考えているその姿を亮介はほほえましく思いながら見ていた。
「未央さん」
「え? なに?」
集中していたのでそれがパチンと切れ、パッと亮介の方を向いた。
「僕、ちょっと用事があるので次の駅で降りますね。きょうはありがとうございました。またよろしくお願いします」
「う……うんよろしくね」
亮介が傾きかけた太陽の色に染まっている。その気だるい雰囲気がたまらなくかっこよくて、うまく言葉が出てこない。
じゃ、と手を振って亮介は電車を降りて行った。未央はその姿を見送るとボスンと背もたれにもたれて天を仰いだ。
なにかはじまったわけじゃない、でも確実になにかはじまったのだ。
未央は自宅の最寄り駅に着くと、自転車をこいで遠回りして家に帰った。
亮介が電車を降りたあと、うれしくて顔がにやけて仕方なかったので、ずっと太ももをつねっていた。電車を降りても顔のふにゃふにゃがなおらない。
落ち着けええええええーーーーーっ!!心の中で叫びながら全速力で近所の公園(1周約3キロ)を3周もして、汗だくヘロヘロになって家に帰ってきた。家の前に自転車を止めると、隣に住む大家の林がちょうど出てきた。
身よりもなくなったいま、未央は大家ととても親しくしていた。お互い独り暮らしなので、おかずを作りすぎた時にはおすそ分けもよくする仲だ。
「大家さんこんばんは。きょうは暑かったですね」
大家は、元気いっぱいの83歳。公園での太極拳が毎朝の日課だ。早くに夫を亡くしていて、子どもはいない。以前より耳が遠くなったが、まだまだ若い。
「そうね、きょうはずっと家にこもってたのよ。時間があったから寒天つくったんだけど、食べる?」
「わーい! ありがとうございます。いただきます」
寒天の入ったタッパーをありがたく頂戴した。自分の部屋の冷蔵庫からおみやげにもらった大きめのゼリーをふたつとってきて、大家に渡す。
「大家さん、これどうぞ。もらいものですけど」
「いいのよ、私はもらってくれれば嬉しいんだから」
「いつもお世話になってますので」
ガシャン──通りの向こうから自転車に乗った亮介が帰ってきた。
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