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カフェラテの人
カフェラテの人②
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ただ、もっと自由な料理の選択肢がほしいと思い始めたのは事実だった。スタジオ限定メニューの開発をさせてもらえるようになった頃からそれは顕著だ。
枠にとらわれず、もっとみんなが楽しめるメニューを。そう思っても、どこかで妥協してメニューを決める。もちろん生徒さんは喜んでくれるけど、もっともっと、と貪欲になってきた。
実際、そのしがらみが嫌でやめていく先生も多い。新しく独立して、成功している先生も。それもいいなと思いつつも、そんな勇気などない。ジリジリとその摩擦が熱を帯びて、そろそろ血が出そう。そう思うことも増えた。「ヤンニョムチキンにせよ」
「難しいな」
「おまえは、コスト関係ないとすればどれがやりたい」
「や……ヤンニョムチキンです」
思いのほかヤンニョムチキンがおいしくできてしまった。コスト関係なければこれがいい。それは未央も同じだ。
「そらみろ。ヤンニョムチキンのコストを抑えられぬか? 他に方法はないのか? おぬしはそれを考えるのが面倒だから、簡単カヌレにしようとしておらぬか?」
全部図星だ。
「わかりました。何か方法を考えます。郡司くんも知恵をかしてほしいです」
「承知した」
「じゃあこれ食べちゃお! 作戦はそのあと」
こうして部屋で食事をするのはきょうがはじめて。ちゃぶ台の前に座って食べているとなんか恋人同士みたい。そうなれたらいいのだけど。亮介は儀式が終わると帰っていってしまうので、未央はさみしく思っていた。
もぐもぐ食べながら、亮介の視線が部屋のすみにいっている。仏壇が気になっているようだ。
「未央、あの仏壇の方はどなたか……?」
「祖母だよ。去年亡くなったんだ。サクラはもともとおばあちゃんの飼ってたネコで、そのとき譲り受けたの」
「隣の若い写真の方は?」
「両親だよ。小さい時に病気で死んじゃったから、あんまり覚えてなくて。私は祖母に育てられたんだ。勝気な人だったから、いつも怒られてばっかり。でも大好きだった」
「そうか、未央。口づけてもよいか?」
まじめな話になると、キスして元に戻って素の自分で話したがるのも、亮介のお決まりのパターン。沖田総司のままでは嫌らしい。
「うん──」
そう未央が言い終わらないうちに、亮介はチュッと軽くキスをする。
「未央さん、おばあさんのお話、もっと聞かせてください」
「うん、いいよ。おばあちゃんは、両親を亡くしてたったひとり残された私を引き取って、育ててくれたの。おばあちゃんは、おじいちゃんを早くに亡くしてて、そのうえ息子夫婦まで死んでしまったものだから、あまりのことに途方にくれてたんだって。私はまだ2歳くらいだったと思う」
枠にとらわれず、もっとみんなが楽しめるメニューを。そう思っても、どこかで妥協してメニューを決める。もちろん生徒さんは喜んでくれるけど、もっともっと、と貪欲になってきた。
実際、そのしがらみが嫌でやめていく先生も多い。新しく独立して、成功している先生も。それもいいなと思いつつも、そんな勇気などない。ジリジリとその摩擦が熱を帯びて、そろそろ血が出そう。そう思うことも増えた。「ヤンニョムチキンにせよ」
「難しいな」
「おまえは、コスト関係ないとすればどれがやりたい」
「や……ヤンニョムチキンです」
思いのほかヤンニョムチキンがおいしくできてしまった。コスト関係なければこれがいい。それは未央も同じだ。
「そらみろ。ヤンニョムチキンのコストを抑えられぬか? 他に方法はないのか? おぬしはそれを考えるのが面倒だから、簡単カヌレにしようとしておらぬか?」
全部図星だ。
「わかりました。何か方法を考えます。郡司くんも知恵をかしてほしいです」
「承知した」
「じゃあこれ食べちゃお! 作戦はそのあと」
こうして部屋で食事をするのはきょうがはじめて。ちゃぶ台の前に座って食べているとなんか恋人同士みたい。そうなれたらいいのだけど。亮介は儀式が終わると帰っていってしまうので、未央はさみしく思っていた。
もぐもぐ食べながら、亮介の視線が部屋のすみにいっている。仏壇が気になっているようだ。
「未央、あの仏壇の方はどなたか……?」
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「そうか、未央。口づけてもよいか?」
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「うん──」
そう未央が言い終わらないうちに、亮介はチュッと軽くキスをする。
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