【完結】となりに引っ越してきた年下イケメンの性癖は、絶対にヒミツです!?

高野百加

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帰郷とおでんと砂浜と

帰郷とおでんと砂浜と③

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「いっぱいあって、どれ見たらいいかわからないですね」

「そうなの、そうなの。亮介は大道芸とか見たことある?」

「いや、ほぼ初めて」

「じゃあ、常磐公園いってみようよ。そこそこ大きなスペースだから、有名どころが出てると思う。青葉横丁も近いし」

静岡市役所から西へのびる青葉通り。その途中に静岡おでんの店が18軒連なる青葉横丁がある。常磐公園はそのつきあたりに位置していた。

青葉横丁は昭和を思わせる雰囲気が人気で、開店直後から満席になる店も多い。

まだ開店には早く、静かな青葉横丁を通り過ぎて常磐公園へと向かう。



常磐公園では、パントマイムのショーが始まっていた。未央のお気に入りの芸人だったので、テンションをあげて人だかりの後ろの方からわぁわぁと盛り上がった。少々それに圧倒されながらも、亮介もショーを見はじめる。

コメディパントマイムともいわれるジャンルで、そのシュールさに、だんだんひきこまれ、最後は亮介も涙を流して笑っていた。

「ねぇ、めっちゃおもしろかったよね」

「でしょ、私あの人が一番好きなの」

「よかったね、見れて」

「ほんと、久しぶりだったからたくさんお金出しちゃった」

ショーの最後には、賞賛の意味を込めて、投げ銭が行われる。好きなだけその人に払うシステムだ。

「未央、また来年も一緒にこようよ。もっとちゃんと計画していろいろ見たい」

来年。そっか、これからずっと亮介と一緒なんだ、そう思うだけで顔のにやにやは止まらなかった。

「うん、また来よう」

ふたりは手をつないで、青葉横丁へやってきた。もう開店している店もあってにぎやかな声が聞こえてきている。

「亮介、どこのお店がいい?」「うーん……未央のおすすめのお店あればそこで」

「じゃあ、おばあちゃんとよくきたここにしよう」

未央は紺色ののれんのお店に入った。カウンターのみの小さな店舗。きれいな女将さんに声をかけられて、入ってすぐのところに並んで座った。

「静岡おでん、僕はじめて」

「じゃあまずは、大根、黒ハンペン、牛すじだね!」

未央は手始めに3品を注文した。鰹節としょうゆベースの出汁で柔らかく煮込まれたおでんに、魚粉と青のりをかけていただく。

「色が黒いからすごい濃い味かと思ったら、そうでもないんですね。味染みてておいし」

ハフハフしながら亮介は牛すじを食べ、静岡割という緑茶で割った焼酎をのむ。

「……っ、こんなにうまいもんがこの世にあったとは」

「ははっ、気に入ってくれてよかった。ここね、ポテトサラダも美味しいんだよ」

わいわい話しながら2軒お店のはしごをし、お腹いっぱい食べて帰路につく。
新幹線こだま号はそれほど混んでおらず、自由席に並んで座った。

発車するとすぐ、亮介は気持ちよさそうに寝息をたてはじめる。手をつないだままなのが妙に恥ずかしく、嬉しくもあった。

「結婚……か」

未央は昼間の亮介のプロポーズを思い出していた。すごく幸せな時間だったな。
亮介を幸せにしてあげられる自信なんてないけど、一緒にいたら自分は間違いなく幸せだ。亮介と付き合いはじめて、ずっと幸せ。辛いこともあったけど、いつも一緒に乗り越えてくれた。

辛いときに、辛いと言い合える相手がいるというのことが、こんなにも心強いことなのか。いいようのない幸福感に未央は包まれて、ふわふわしたまま眠りに落ちた。

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