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第四十六話 お礼のお礼
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蕩けるような温もりに包まって、心地よい気怠さと幸福に浸りたさとで、浮上してきた意識に気付かないふりをして眠気に身を任せる。
アルベロスパツィアレの用意してくれた桶の水を火魔法で温めたエウフェリオが、丁寧に身体中を拭ってくれたおかげで肌もさっぱりと心地よく、惰眠を貪るのにこの上ない具合だ。
思い返すだけで顔から火を吹いて飛び起きそうな甘すぎる記憶には一旦蓋をして、ただこれ以上無い幸せを噛み締める。名残で体のあちこちが軽い筋肉痛のように痛むけれど心配していた裂傷は無く、それもそのはず、怪我をしてはいけないからと麻痺魔法を応用して秘部の筋肉を弛緩させられ、身体強化魔法を施され、腹を壊してはいけないからと密着型の防壁魔法も纏わされたのだから。
「…っどう考えても魔法の無駄遣い…!」
連動して思い出したら突っ込まずにおれず、つい口にした。
すると同じく浮上と微睡の間を行き来していたらしきエウフェリオに目を閉じたまま抱き込まれ胸に口を塞がれる。
「まだ言うんですか?良いじゃないですか、切れ痔の上に下痢だなんて悲惨ですよ」
「…えっ、なったことあるの?」
どうにか顔をずらして聞き返すと軽く吹き出された。
「ふふっ。いいえ。無いですけれど。下痢はともかく切れ痔は痛い上に何度も繰り返すらしいですよ。そんな思いを貴方にさせてなるものですか」
「だからって…」
「それにシェスカに診てもらう羽目になりますよ?」
「うわわっ!もう勿体無いって言いません!」
回復魔の名前を聞いてオリンドは両手で口を塞いだ。
あんな可愛らしい人に治療のためとはいえお尻を見られるだなんて考えただけで耐え難い。
それでなくても昨夜こんな綺麗な人におし…ああああ。
釣られて思い出しかけた行為に急いで蓋をし直して茹で上がり、湧き上がる種々の感情にひとりで四苦八苦していると、全てを宥めるように背中をゆっくりと撫であやされて溜め息と共に焦りじみた羞恥を吐き出した。
「わかっていただけたようで何よりです。…さ。もう少し寝ましょう?まだ疲れているんじゃないですか?」
「うん…。疲れ、というか、色々気持ちよくて寝てたい感じがする」
ほう。と、残りの些細な引っ掛かりや何やらを吐き尽くせば、また羊毛に包まれるに似た感触に心身が浸る。
「ふふっ。私もです」
ぽわぽわと浮遊する思考を遊ばせていると小さく笑ったエウフェリオに額に口付けられて、安堵から再び眠気に誘われ目を閉じる。手を伸ばさなくてもそこにある温もりに頬を寄せ、心を揺蕩わせているうちに呆気なく二度目の眠りについていた。
それからどのくらい眠っただろうか。ふわりと鼻を擽った腹の空く匂いにそっと瞼を上げるとすでに陽は真上を少し過ぎる頃で、ぼんやりと起こした上半身を窓から差し込む光が温めた。
「…お腹すいた…」
「確かに。…私も、そろそろ…」
と、言いつつ布団から出ようとしないエウフェリオが腰元に抱き付いてきてオリンドの膝を枕にする。
「あ。オリオー草の匂いがする。あと、ベーコン。…と、牛乳、か、な?じゃあ、ミルクスープかなあ」
流れ続けてくる香りを吸い込んで、美味しそうだ。と相好を崩すオリンドを見上げてから、エウフェリオものそりと身を起こしてくすくすと笑った。
「鼻が効きますねえ。…やはり長年の調理経験から?」
ようやく起き上がってきたかと思えば今度は上体に抱き付かれて肩に顔を埋められた。甘えているのだとそこでようやく気付いて、それからエウフェリオが自分に?と頬を熱くする。
「う…ん。わかりやすいやつ、だけなら」
「大したものですよ。牛乳の香りは判別がつきませんでした」
なんて褒めながら首筋や頬をまさぐる鼻先を意識で追っていると、やがて鼻先同士を擽らせて唇が触れ合った。
可笑しくて嬉しくて全身で大好きと言われているようで幸せで、オリンドも夢中で抱き付いて全霊で大好きと返した。
二人の腹が同時に抗議の声を上げるまで。
「…っ、ふふ!…起きますか」
「うん。す、すごい音出ちゃった」
「それはそうですよね。あれだけ体力を使っておいて飲まず食わずで昼ですから…」
「んぎぃ!」
幸せの記憶だけど!もうちょっと落ち着くまで思い出させないで!
両手でべちべちと背中を叩かれてエウフェリオが大笑いする。それからベッドを降りて着替えにかかるのを見たオリンドも、真っ赤な膨れ面を収めて着替えた。
仕上げにもう一度口付けを交わしてから手を繋いで部屋を出る頃には、すっかりと機嫌も向上していた。
「うわあ、いい匂いぃ」
廊下には料理の香りがさらに濃く漂っていて、否応なしに食欲を刺激される。
「アルたちはもう食べ終わった頃ですかね」
「うん、たぶん…。あっ。早目に行かないと食器洗うの手間になっちゃう」
できれば食器は纏めて洗いたかろうとアルベロスパツィアレのことを考えたオリンドはエウフェリオの手を引いて食堂へ急いだ。その足音が聞こえていたのだろう、ウッドビーズカーテンを潜ると二人の料理をつけた皿がまさにテーブルに置かれるところだった。
「おお。確かにミルクスープですね」
優しい乳白色のスープにとりどりの野菜とベーコンが浮かんでいる。オリンドの鼻の正確さに感心しながらエウフェリオは席につき、顔があればきっと暖かい目で見詰めてきたことだろうアルベロスパツィアレのつるりとした頭部に負かされたような心地で照れた笑みを返した。
正味のところこのハウスキープゴーレムの気の利き具合といったら無い。昨夜はオリンドのスフマカンゴーレムを倒したという冷めやらぬ興奮と、命の危機に瀕したエウフェリオの昂りとが相乗効果を生み、今までに無くお互いに強く惹かれ合ったことを見抜かれたのだろう。
やり方としてはいささか打っ千切りで打っ飛んでいたが。
「…ベル。ありがとうございます。タオルは後で洗濯に出しておきますね」
「うあっ、そうだ。お、俺も、あの、ありがとう…。いっぱい、助かった…」
きっとあそこまで用意してもらわなければ二人ともまだ動かなかっただろうなあと無意識に感じていたオリンドも非常に照れながら礼を言い、温かな食事に癒され平らげるとご馳走様を告げて食堂を辞す。
軽いステップを踏むご機嫌な木の音を背に、自然と手を繋ぎ直して居間へ向かった。
「あらっ。起きてこられた?おはようー!」
ノックをして扉を開けるとまず目に飛び込んできたのは、道化師でもここまでの笑顔は披露できないと思わせられるほどの見事に下がり切った目尻と上がり切った口角だった。アルベロスパツィアレのことだ、まさかタオルや壺を部屋に持っていくところを見られるようなヘマもすまいに、どこから嗅ぎつけたのか。頭が痛い。
ウェンシェスランの背後ではいつもの定位置に座るイドリックが努めてこちらを見ようとせず、アレグに至っては思い切り背を向けて真っ赤になっている。おのれ、勘付いた上に吹聴したな?と、エウフェリオは目をすがめた。
「こういうのは無視すればいいんですよ」
背中に隠れようとするオリンドを引き留め、かわいそうに茹だりすぎてうっすらと汗ばむ頭を優しく撫でた。
「んまっ!無視だなんて酷いわ!それよりリンちゃんに無理なんかさせてないでしょうね!?」
「誰がするものですか、擦り傷のひとつも負わせてません!」
「だっ、大丈夫!フェリすごく優しかったし身体強化魔法も防壁魔法もかけてくれたから!」
「過保っ…ごっふ!」
聞いた途端にウェンシェスランは吹き出し腹を抱えて床に転がった。人とは極限まで可笑しさを感じると声も出せなくなるのかとエウフェリオは更にすがめた目で見下ろす。
視線を移せばイドリックもソファに転がり肘掛けに拳を打ち付けている。気のせいでなければ無駄遣いだのなんだの聞こえた。
「…えっ。身体強化はわかるけど、防壁はなんで?」
羞恥に疑問が打ち勝ったらしい。アレグが純粋な目を向けて問うてきた。なによりも眩しくて胸が潰れる。
「ええと。お腹壊さないようむぶっ」
素直に説明しようとするオリンドには肝を潰される。
「…さて!ブーファンで顔を借りた人たちにお礼をしに参りましょうか!!」
可愛い恋人の口を両手で塞いだまま、エウフェリオは敵でも討ちに行くような調子で言い放った。
ということで土産をたっぷりと携え、ギルドに向かった一行はまずオリンドに描いてもらった古代魔法の陣を鑑定に出し、それから執務室を借りてブーファンで定番の花を模った焼き菓子などの甘味をクレリエにどっさりと差し出した。その場でカロジェロに頼んで四翼竜と白の巨星に連絡を入れてもらったところ、残念ながら四翼竜はお抱え打診を受けている貴族からの任務を遂行中で戻れないということだった。
通信器の向こうからフィリッポのオリンドくんに会って探査の話をたくさん聞きたいと蚊の鳴くような嘆き声が聞こえてきたが都合が付かないものは仕方ない。
「そんなわけで!お邪魔するわ!ご招待ありがと…って、これじゃお礼にならなくない!?」
一方、白の巨星の都合は付いたが彼らに夕飯だ酒だを奢ろうにもアレグたちとしてはグラプトベリアの壁内で飲み食い騒ぐのは避けたい。そんな事情を汲んでくれたムーツィオがそれならば私たちの拠点で飲んではいかがと提案してくれた。そんなわけにはいかないと思う暇もあらばこそ、通信器の向こうの遠くから来客を歓迎するデチモの嬉しそうな声が届いて絆された。
というわけでグラプトベリアでも閑散とした地区に建つ白の巨星の拠点、清潔感溢れる白を基調とした石造りの家にお邪魔したのだった。
「貴方たちと食事を囲めるだけで十二分にありがたい話です。差し障り無ければ冒険譚などお聞かせ願いたい」
居間まで案内しつつ、取っ掛かりでもあれば勇者一行の技や工夫を盗もうとムーツィオは笑みの奥に虎視眈々とした目を潜ませる。
そんな貪欲な男、嫌いじゃない。アレグとイドリックの目が光った。
「おーっ!来たかおまえら!堅っ苦しい挨拶は無しだ!まあとりあえず座れ座れ!」
十五時はとっくに過ぎたが客が来たからには茶だ。と、辿り着いた居間では紅茶にパウンドケーキを用意して意外なまめさでもってデチモが迎えてくれた。
「ありがとうございます。失礼しますね」
勧められたソファに腰掛け、全員が座って落ち着いたところを見計らい、エウフェリオは鞄を開いた。
「早速…と、いうか、話の種にさせていただきたく出すのですけれど」
言ってブーファン特産の果実酒と、切り分けたキメラの肉、それからもし入り用なら分けるとスフマカンゴーレムから採取した鉱石をテーブルの上に並べ置く。
「うおおっ!マジか、キメラ肉!?…っかぁあ、それにブーファンの酒ったら美味えわ度数高いわで有名じゃねえかよ、わかってんなおい!」
「ふふ。喜んでいただけたようで何よりです」
「…スフマカン鉱石…ですって…?」
「おや、興味がおありで?」
デチモの反応は少なからず予想していたが、ムーツィオの食い付きぶりは予想外でエウフェリオは目を丸めた。彼の戦闘スタイルは確か、得意の防御魔法で攻撃を弾きつつ接敵からの重力魔法を併用した戦鎚による一撃必殺だったと記憶している。スフマカンはどちらかといば鎧向きの金属であるからして、意外と言えば意外だった。
「ええ。実はこのところ戦鎚の柄が曲がったり打面が窪んだりすることが増えてきまして。この上は世界最高強度を誇るスフマカンに重りを仕込むなりしてはどうかと考えていたのですが、どうしても物が手に入らず諦めていたのです」
「…今使ってる戦鎚も相当のモンじゃなかったっけ?それが力負けするんですって?」
まさかでしょ?とウェンシェスランは目を驚愕に見開いた。
「それがなあ。とうとうムゥズの腕力と重力魔法が上回っちまってよ。壊れないよう扱ってんのが側から見てもわかる有様なんだ」
「マジかあ。すげえなムゥズ。強化魔法が使えたら良かったのになあ」
しみじみとアレグが言うのに当のムーツィオも深く頷いた。魔法ばかりは適性が無いのでは仕方ない。
「ならばちょうど良い土産を持ってくることができましたね」
収納魔法鞄から次々とスフマカン鉱石を取り出したエウフェリオは、製作の助けになればと核の破片もいくつか添える。
「ちょ待ーっ!待て待て待て!おい、何だその量は!?それに核!?…うそだろ?まさかゴーレム倒したってのか!?あんな割に合わねえ相手も無えだろが!」
「えっ、そうなの?」
デチモの言にオリンドは目を見開いた。アレグが嬉々として受けるものだから、魔物の強さもさることながら身入りも良いのだろうと思っていたと驚いてエウフェリオたちを見る。
「そうねえ、普通なら割に合わないと思うわ。なにしろまず需要が少ないから報酬が低いのよ。なのに見付けにくいし、見付かっても倒すのが難儀だし、討伐数も少ないから情報も無いのよね。近付くだけでダメージが入るなんてことも、リンちゃんの持ってた鶴嘴で倒せるだなんて話も、あたしたち知らなかったもの」
「鶴嘴で倒せるんですか!?」
初耳だ。とムーツィオはこれ以上無く驚いた顔でオリンドを凝視する。
「えあっ!…う、うん。あの…ぱ、パキフィツムのこう、鉱山で、短期労働し、して、してるときに、おやかっ、親方たち、が、話してた…」
ほんの少しエウフェリオに隠れるようにして焦って話すオリンドに、失礼しましたというように片手を上げたムーツィオは、一度胸に手を当てて短く息を吐くと再びスフマカン鉱石に目を向けた。
「…なるほど。パキフィツムと言えばオーニソガラムに並ぶ鉱山地帯。必然、鉱石ゴーレムの出没頻度も高くなるでしょうけれど…」
にわかには信じがたい。と、知らず寄る眉間に指先を当てる。
「お、俺も、最初はまさかっておもっ、思ってたんだ、けど、鉱山の元締め…ええと、領主様、か。その、領主様が懇意にしてる、鍛治師のとこに、つる、鶴嘴で仕留めて持ち込んだ、ベテランの鉱員が居るって、飲むたび言ってて。最後には、げん、げんば、現場監督から本人に、会わせ、ろって詰め寄られて、一緒に鍛治師のとこ行ったみたい」
ぜはー。と、そこでオリンドは苦しくなった息を一旦吐き出した。
「…はふ。それで、鍛治師のとこ行ったら、鶴嘴で仕留めたって人の、とこまで、話が行って、親方と、監督と、その人で、飲み交わしたっていう、じま、自慢話に変わったら、あっという間に鉱山中に広まって、採掘でゴーレム倒すことが、みんなの憧れになった」
つっかえながらも話し切ったオリンドにムーツィオは申し訳なさそうな柔らかな笑みを向ける。
「すみません、無理をさせてしまったようで」
それから少々記憶を探る顔付きで視線を天井に向けた。
「パキフィツムでスフマカンを扱う鍛治師というと…、ふむ。ジョーゴ・ガナニックかムタルハ・ケスネでは?」
「あっ。その人。えっと、け、ケスネ。…甲冑師、だっけ…?」
あの時聞いた名だ。思い出したオリンドが喉に刺さった小骨の取れたような顔で相槌を返すのに、ムーツィオも破顔して頷いた。
「そうですか、ケスネですか!あの人ならば抱えの採掘師にスフマカンゴーレムを倒すほどの者が居ても不思議ではない」
どうやらケスネとは旧知の仲らしく、懐かしそうな顔を見せるムーツィオの隣でデチモも手を打った。
「おお、あのジジィか!なるほどな。…そんで?オリンドのそんな情報があったっつっても、ゴーレムなんざ、どこにあるかも知れん核を一発で打ち抜かなきゃ倒せんだろ。どうやったんだか聞かせろよアル」
なかなか楽しそうな話じゃないかとデチモは冒険譚の続きを催促した。半分ほど身を乗り出す勢いにアレグは困ったような顔をする。
「って、言われても。それはオーリンがやっ」
「おい、アル!」
オリンドがスフマカンゴーレムを倒したことは内密にするはずだ。それをアレグが言いさしかけてイドリックは慌てて止めたのだが。
「…ってない。俺だ俺。俺がこう、…オーリンに…そう、オーリンに核の場所、教えてもらって!袈裟懸け?に、一発?」
ひゅん。
アレグは大変下手くそに誤魔化し、空を斜めに斬ってみせた。
嘘の吐けない子だ。
大層白々しい空気が流れる。
「…えー、この口止め料といたしましても、こちら全てお納めいただきたく」
困ったような笑みで更にスフマカン鉱石を積み上げたエウフェリオは、とどめに金属類の強化に使用できる上級魔石をも鞄から取り出して鉱石の横に添えた。
「おやまあ。破格の口止め料ですね…」
が、しかし。あまりにももらい過ぎだとムーツィオは口元に手を当てて唸る。
「これはおいそれと頂くわけにも…」
「そんならジジィに口利きでもしてやりゃ良いんじゃねえの?」
「おや。たまには貴方も有益なことを仰る」
言えば机の下でデチモに小さく足を蹴られたが、何食わぬ顔でムーツィオは続けた。
「いかがでしょう?この口止め料の過多分相殺として、貴方がたをケスネに紹介するというのは。鎧は無理でも盾あたりなら数ヶ月ほどで作らせますよ」
ケスネの名高さはアレグたちもよく知るところだ。過去に一度、製作の依頼を検討したことがあったが向こう十数年は予約で埋まっていると聞いて諦めたのだから。
それほどの人気甲冑師を紹介はともかく『作らせる』とはどういう物言いだ。
ありがたくはあるが訝しくもあり、イドリックは首を捻る。
「いや、そりゃ願ってもねえが。…なんだ、あんたらケスネとは随分と懇意なのか?」
「ええ。ケスネは私の師匠です」
「…師…?」
ますますもって『作らせる』とはどういう物言いだ。
イドリックのみならず、全員が首を傾げることになった。
アルベロスパツィアレの用意してくれた桶の水を火魔法で温めたエウフェリオが、丁寧に身体中を拭ってくれたおかげで肌もさっぱりと心地よく、惰眠を貪るのにこの上ない具合だ。
思い返すだけで顔から火を吹いて飛び起きそうな甘すぎる記憶には一旦蓋をして、ただこれ以上無い幸せを噛み締める。名残で体のあちこちが軽い筋肉痛のように痛むけれど心配していた裂傷は無く、それもそのはず、怪我をしてはいけないからと麻痺魔法を応用して秘部の筋肉を弛緩させられ、身体強化魔法を施され、腹を壊してはいけないからと密着型の防壁魔法も纏わされたのだから。
「…っどう考えても魔法の無駄遣い…!」
連動して思い出したら突っ込まずにおれず、つい口にした。
すると同じく浮上と微睡の間を行き来していたらしきエウフェリオに目を閉じたまま抱き込まれ胸に口を塞がれる。
「まだ言うんですか?良いじゃないですか、切れ痔の上に下痢だなんて悲惨ですよ」
「…えっ、なったことあるの?」
どうにか顔をずらして聞き返すと軽く吹き出された。
「ふふっ。いいえ。無いですけれど。下痢はともかく切れ痔は痛い上に何度も繰り返すらしいですよ。そんな思いを貴方にさせてなるものですか」
「だからって…」
「それにシェスカに診てもらう羽目になりますよ?」
「うわわっ!もう勿体無いって言いません!」
回復魔の名前を聞いてオリンドは両手で口を塞いだ。
あんな可愛らしい人に治療のためとはいえお尻を見られるだなんて考えただけで耐え難い。
それでなくても昨夜こんな綺麗な人におし…ああああ。
釣られて思い出しかけた行為に急いで蓋をし直して茹で上がり、湧き上がる種々の感情にひとりで四苦八苦していると、全てを宥めるように背中をゆっくりと撫であやされて溜め息と共に焦りじみた羞恥を吐き出した。
「わかっていただけたようで何よりです。…さ。もう少し寝ましょう?まだ疲れているんじゃないですか?」
「うん…。疲れ、というか、色々気持ちよくて寝てたい感じがする」
ほう。と、残りの些細な引っ掛かりや何やらを吐き尽くせば、また羊毛に包まれるに似た感触に心身が浸る。
「ふふっ。私もです」
ぽわぽわと浮遊する思考を遊ばせていると小さく笑ったエウフェリオに額に口付けられて、安堵から再び眠気に誘われ目を閉じる。手を伸ばさなくてもそこにある温もりに頬を寄せ、心を揺蕩わせているうちに呆気なく二度目の眠りについていた。
それからどのくらい眠っただろうか。ふわりと鼻を擽った腹の空く匂いにそっと瞼を上げるとすでに陽は真上を少し過ぎる頃で、ぼんやりと起こした上半身を窓から差し込む光が温めた。
「…お腹すいた…」
「確かに。…私も、そろそろ…」
と、言いつつ布団から出ようとしないエウフェリオが腰元に抱き付いてきてオリンドの膝を枕にする。
「あ。オリオー草の匂いがする。あと、ベーコン。…と、牛乳、か、な?じゃあ、ミルクスープかなあ」
流れ続けてくる香りを吸い込んで、美味しそうだ。と相好を崩すオリンドを見上げてから、エウフェリオものそりと身を起こしてくすくすと笑った。
「鼻が効きますねえ。…やはり長年の調理経験から?」
ようやく起き上がってきたかと思えば今度は上体に抱き付かれて肩に顔を埋められた。甘えているのだとそこでようやく気付いて、それからエウフェリオが自分に?と頬を熱くする。
「う…ん。わかりやすいやつ、だけなら」
「大したものですよ。牛乳の香りは判別がつきませんでした」
なんて褒めながら首筋や頬をまさぐる鼻先を意識で追っていると、やがて鼻先同士を擽らせて唇が触れ合った。
可笑しくて嬉しくて全身で大好きと言われているようで幸せで、オリンドも夢中で抱き付いて全霊で大好きと返した。
二人の腹が同時に抗議の声を上げるまで。
「…っ、ふふ!…起きますか」
「うん。す、すごい音出ちゃった」
「それはそうですよね。あれだけ体力を使っておいて飲まず食わずで昼ですから…」
「んぎぃ!」
幸せの記憶だけど!もうちょっと落ち着くまで思い出させないで!
両手でべちべちと背中を叩かれてエウフェリオが大笑いする。それからベッドを降りて着替えにかかるのを見たオリンドも、真っ赤な膨れ面を収めて着替えた。
仕上げにもう一度口付けを交わしてから手を繋いで部屋を出る頃には、すっかりと機嫌も向上していた。
「うわあ、いい匂いぃ」
廊下には料理の香りがさらに濃く漂っていて、否応なしに食欲を刺激される。
「アルたちはもう食べ終わった頃ですかね」
「うん、たぶん…。あっ。早目に行かないと食器洗うの手間になっちゃう」
できれば食器は纏めて洗いたかろうとアルベロスパツィアレのことを考えたオリンドはエウフェリオの手を引いて食堂へ急いだ。その足音が聞こえていたのだろう、ウッドビーズカーテンを潜ると二人の料理をつけた皿がまさにテーブルに置かれるところだった。
「おお。確かにミルクスープですね」
優しい乳白色のスープにとりどりの野菜とベーコンが浮かんでいる。オリンドの鼻の正確さに感心しながらエウフェリオは席につき、顔があればきっと暖かい目で見詰めてきたことだろうアルベロスパツィアレのつるりとした頭部に負かされたような心地で照れた笑みを返した。
正味のところこのハウスキープゴーレムの気の利き具合といったら無い。昨夜はオリンドのスフマカンゴーレムを倒したという冷めやらぬ興奮と、命の危機に瀕したエウフェリオの昂りとが相乗効果を生み、今までに無くお互いに強く惹かれ合ったことを見抜かれたのだろう。
やり方としてはいささか打っ千切りで打っ飛んでいたが。
「…ベル。ありがとうございます。タオルは後で洗濯に出しておきますね」
「うあっ、そうだ。お、俺も、あの、ありがとう…。いっぱい、助かった…」
きっとあそこまで用意してもらわなければ二人ともまだ動かなかっただろうなあと無意識に感じていたオリンドも非常に照れながら礼を言い、温かな食事に癒され平らげるとご馳走様を告げて食堂を辞す。
軽いステップを踏むご機嫌な木の音を背に、自然と手を繋ぎ直して居間へ向かった。
「あらっ。起きてこられた?おはようー!」
ノックをして扉を開けるとまず目に飛び込んできたのは、道化師でもここまでの笑顔は披露できないと思わせられるほどの見事に下がり切った目尻と上がり切った口角だった。アルベロスパツィアレのことだ、まさかタオルや壺を部屋に持っていくところを見られるようなヘマもすまいに、どこから嗅ぎつけたのか。頭が痛い。
ウェンシェスランの背後ではいつもの定位置に座るイドリックが努めてこちらを見ようとせず、アレグに至っては思い切り背を向けて真っ赤になっている。おのれ、勘付いた上に吹聴したな?と、エウフェリオは目をすがめた。
「こういうのは無視すればいいんですよ」
背中に隠れようとするオリンドを引き留め、かわいそうに茹だりすぎてうっすらと汗ばむ頭を優しく撫でた。
「んまっ!無視だなんて酷いわ!それよりリンちゃんに無理なんかさせてないでしょうね!?」
「誰がするものですか、擦り傷のひとつも負わせてません!」
「だっ、大丈夫!フェリすごく優しかったし身体強化魔法も防壁魔法もかけてくれたから!」
「過保っ…ごっふ!」
聞いた途端にウェンシェスランは吹き出し腹を抱えて床に転がった。人とは極限まで可笑しさを感じると声も出せなくなるのかとエウフェリオは更にすがめた目で見下ろす。
視線を移せばイドリックもソファに転がり肘掛けに拳を打ち付けている。気のせいでなければ無駄遣いだのなんだの聞こえた。
「…えっ。身体強化はわかるけど、防壁はなんで?」
羞恥に疑問が打ち勝ったらしい。アレグが純粋な目を向けて問うてきた。なによりも眩しくて胸が潰れる。
「ええと。お腹壊さないようむぶっ」
素直に説明しようとするオリンドには肝を潰される。
「…さて!ブーファンで顔を借りた人たちにお礼をしに参りましょうか!!」
可愛い恋人の口を両手で塞いだまま、エウフェリオは敵でも討ちに行くような調子で言い放った。
ということで土産をたっぷりと携え、ギルドに向かった一行はまずオリンドに描いてもらった古代魔法の陣を鑑定に出し、それから執務室を借りてブーファンで定番の花を模った焼き菓子などの甘味をクレリエにどっさりと差し出した。その場でカロジェロに頼んで四翼竜と白の巨星に連絡を入れてもらったところ、残念ながら四翼竜はお抱え打診を受けている貴族からの任務を遂行中で戻れないということだった。
通信器の向こうからフィリッポのオリンドくんに会って探査の話をたくさん聞きたいと蚊の鳴くような嘆き声が聞こえてきたが都合が付かないものは仕方ない。
「そんなわけで!お邪魔するわ!ご招待ありがと…って、これじゃお礼にならなくない!?」
一方、白の巨星の都合は付いたが彼らに夕飯だ酒だを奢ろうにもアレグたちとしてはグラプトベリアの壁内で飲み食い騒ぐのは避けたい。そんな事情を汲んでくれたムーツィオがそれならば私たちの拠点で飲んではいかがと提案してくれた。そんなわけにはいかないと思う暇もあらばこそ、通信器の向こうの遠くから来客を歓迎するデチモの嬉しそうな声が届いて絆された。
というわけでグラプトベリアでも閑散とした地区に建つ白の巨星の拠点、清潔感溢れる白を基調とした石造りの家にお邪魔したのだった。
「貴方たちと食事を囲めるだけで十二分にありがたい話です。差し障り無ければ冒険譚などお聞かせ願いたい」
居間まで案内しつつ、取っ掛かりでもあれば勇者一行の技や工夫を盗もうとムーツィオは笑みの奥に虎視眈々とした目を潜ませる。
そんな貪欲な男、嫌いじゃない。アレグとイドリックの目が光った。
「おーっ!来たかおまえら!堅っ苦しい挨拶は無しだ!まあとりあえず座れ座れ!」
十五時はとっくに過ぎたが客が来たからには茶だ。と、辿り着いた居間では紅茶にパウンドケーキを用意して意外なまめさでもってデチモが迎えてくれた。
「ありがとうございます。失礼しますね」
勧められたソファに腰掛け、全員が座って落ち着いたところを見計らい、エウフェリオは鞄を開いた。
「早速…と、いうか、話の種にさせていただきたく出すのですけれど」
言ってブーファン特産の果実酒と、切り分けたキメラの肉、それからもし入り用なら分けるとスフマカンゴーレムから採取した鉱石をテーブルの上に並べ置く。
「うおおっ!マジか、キメラ肉!?…っかぁあ、それにブーファンの酒ったら美味えわ度数高いわで有名じゃねえかよ、わかってんなおい!」
「ふふ。喜んでいただけたようで何よりです」
「…スフマカン鉱石…ですって…?」
「おや、興味がおありで?」
デチモの反応は少なからず予想していたが、ムーツィオの食い付きぶりは予想外でエウフェリオは目を丸めた。彼の戦闘スタイルは確か、得意の防御魔法で攻撃を弾きつつ接敵からの重力魔法を併用した戦鎚による一撃必殺だったと記憶している。スフマカンはどちらかといば鎧向きの金属であるからして、意外と言えば意外だった。
「ええ。実はこのところ戦鎚の柄が曲がったり打面が窪んだりすることが増えてきまして。この上は世界最高強度を誇るスフマカンに重りを仕込むなりしてはどうかと考えていたのですが、どうしても物が手に入らず諦めていたのです」
「…今使ってる戦鎚も相当のモンじゃなかったっけ?それが力負けするんですって?」
まさかでしょ?とウェンシェスランは目を驚愕に見開いた。
「それがなあ。とうとうムゥズの腕力と重力魔法が上回っちまってよ。壊れないよう扱ってんのが側から見てもわかる有様なんだ」
「マジかあ。すげえなムゥズ。強化魔法が使えたら良かったのになあ」
しみじみとアレグが言うのに当のムーツィオも深く頷いた。魔法ばかりは適性が無いのでは仕方ない。
「ならばちょうど良い土産を持ってくることができましたね」
収納魔法鞄から次々とスフマカン鉱石を取り出したエウフェリオは、製作の助けになればと核の破片もいくつか添える。
「ちょ待ーっ!待て待て待て!おい、何だその量は!?それに核!?…うそだろ?まさかゴーレム倒したってのか!?あんな割に合わねえ相手も無えだろが!」
「えっ、そうなの?」
デチモの言にオリンドは目を見開いた。アレグが嬉々として受けるものだから、魔物の強さもさることながら身入りも良いのだろうと思っていたと驚いてエウフェリオたちを見る。
「そうねえ、普通なら割に合わないと思うわ。なにしろまず需要が少ないから報酬が低いのよ。なのに見付けにくいし、見付かっても倒すのが難儀だし、討伐数も少ないから情報も無いのよね。近付くだけでダメージが入るなんてことも、リンちゃんの持ってた鶴嘴で倒せるだなんて話も、あたしたち知らなかったもの」
「鶴嘴で倒せるんですか!?」
初耳だ。とムーツィオはこれ以上無く驚いた顔でオリンドを凝視する。
「えあっ!…う、うん。あの…ぱ、パキフィツムのこう、鉱山で、短期労働し、して、してるときに、おやかっ、親方たち、が、話してた…」
ほんの少しエウフェリオに隠れるようにして焦って話すオリンドに、失礼しましたというように片手を上げたムーツィオは、一度胸に手を当てて短く息を吐くと再びスフマカン鉱石に目を向けた。
「…なるほど。パキフィツムと言えばオーニソガラムに並ぶ鉱山地帯。必然、鉱石ゴーレムの出没頻度も高くなるでしょうけれど…」
にわかには信じがたい。と、知らず寄る眉間に指先を当てる。
「お、俺も、最初はまさかっておもっ、思ってたんだ、けど、鉱山の元締め…ええと、領主様、か。その、領主様が懇意にしてる、鍛治師のとこに、つる、鶴嘴で仕留めて持ち込んだ、ベテランの鉱員が居るって、飲むたび言ってて。最後には、げん、げんば、現場監督から本人に、会わせ、ろって詰め寄られて、一緒に鍛治師のとこ行ったみたい」
ぜはー。と、そこでオリンドは苦しくなった息を一旦吐き出した。
「…はふ。それで、鍛治師のとこ行ったら、鶴嘴で仕留めたって人の、とこまで、話が行って、親方と、監督と、その人で、飲み交わしたっていう、じま、自慢話に変わったら、あっという間に鉱山中に広まって、採掘でゴーレム倒すことが、みんなの憧れになった」
つっかえながらも話し切ったオリンドにムーツィオは申し訳なさそうな柔らかな笑みを向ける。
「すみません、無理をさせてしまったようで」
それから少々記憶を探る顔付きで視線を天井に向けた。
「パキフィツムでスフマカンを扱う鍛治師というと…、ふむ。ジョーゴ・ガナニックかムタルハ・ケスネでは?」
「あっ。その人。えっと、け、ケスネ。…甲冑師、だっけ…?」
あの時聞いた名だ。思い出したオリンドが喉に刺さった小骨の取れたような顔で相槌を返すのに、ムーツィオも破顔して頷いた。
「そうですか、ケスネですか!あの人ならば抱えの採掘師にスフマカンゴーレムを倒すほどの者が居ても不思議ではない」
どうやらケスネとは旧知の仲らしく、懐かしそうな顔を見せるムーツィオの隣でデチモも手を打った。
「おお、あのジジィか!なるほどな。…そんで?オリンドのそんな情報があったっつっても、ゴーレムなんざ、どこにあるかも知れん核を一発で打ち抜かなきゃ倒せんだろ。どうやったんだか聞かせろよアル」
なかなか楽しそうな話じゃないかとデチモは冒険譚の続きを催促した。半分ほど身を乗り出す勢いにアレグは困ったような顔をする。
「って、言われても。それはオーリンがやっ」
「おい、アル!」
オリンドがスフマカンゴーレムを倒したことは内密にするはずだ。それをアレグが言いさしかけてイドリックは慌てて止めたのだが。
「…ってない。俺だ俺。俺がこう、…オーリンに…そう、オーリンに核の場所、教えてもらって!袈裟懸け?に、一発?」
ひゅん。
アレグは大変下手くそに誤魔化し、空を斜めに斬ってみせた。
嘘の吐けない子だ。
大層白々しい空気が流れる。
「…えー、この口止め料といたしましても、こちら全てお納めいただきたく」
困ったような笑みで更にスフマカン鉱石を積み上げたエウフェリオは、とどめに金属類の強化に使用できる上級魔石をも鞄から取り出して鉱石の横に添えた。
「おやまあ。破格の口止め料ですね…」
が、しかし。あまりにももらい過ぎだとムーツィオは口元に手を当てて唸る。
「これはおいそれと頂くわけにも…」
「そんならジジィに口利きでもしてやりゃ良いんじゃねえの?」
「おや。たまには貴方も有益なことを仰る」
言えば机の下でデチモに小さく足を蹴られたが、何食わぬ顔でムーツィオは続けた。
「いかがでしょう?この口止め料の過多分相殺として、貴方がたをケスネに紹介するというのは。鎧は無理でも盾あたりなら数ヶ月ほどで作らせますよ」
ケスネの名高さはアレグたちもよく知るところだ。過去に一度、製作の依頼を検討したことがあったが向こう十数年は予約で埋まっていると聞いて諦めたのだから。
それほどの人気甲冑師を紹介はともかく『作らせる』とはどういう物言いだ。
ありがたくはあるが訝しくもあり、イドリックは首を捻る。
「いや、そりゃ願ってもねえが。…なんだ、あんたらケスネとは随分と懇意なのか?」
「ええ。ケスネは私の師匠です」
「…師…?」
ますますもって『作らせる』とはどういう物言いだ。
イドリックのみならず、全員が首を傾げることになった。
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