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第四十八話 妙縁
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ブルローネという男が居た。同世代の誰よりも早く順調にCランクへ上がった彼はこのままBランクにも楽々上がれるものだと思っていた。
ところがBランクに上がるための条件、Cランクの最高難易度を二十件こなそうにも、それ以前に高難易度依頼の段階で梃子摺る自分に愕然とした。
魔物相手でも賊相手でも攻撃が通じず防御も弾かれ強化魔法を振り絞り命辛々撤退し、任務失敗の報告を繰り返すこと二十四度目で彼は折れた。パーティに入り高難易度に挑んで己の壁を乗り越えることを考えないでは無かったが、誰と組んでも反りが合わないのか喧嘩別ればかりで結局はソロのまま冒険者を続けていた。Dランク以下のように決められた期間内に決められた回数の依頼を請け負わずとも降格されることは無い。そういう一線を画したランクなのだという、ただそれだけを拠り所に現状を良しとして、中難易度の依頼をこなすに留めた。それにCランクともなれば町人や商人の護衛を請け負うこともあって街の人々やギルドにも受けが良い。定期的に受けねばならなくなる素行調査や精神鑑定などの信用調査は煩わしいが、それも半年に一度のことだ。
食うに食われずということも無し、たまに懐事情が悪くなることもあれど運の悪い時だけ。そのうち運が向いてツキが転がり込んでくるだろう。そう考えて似たような日々が過ぎていくのを座して眺めていた。
よくある話だ。掃いて捨てるほどに。
そんなよくある人生をやり過ごしているうちに、気付けばベテランと呼ばれるようになっていた。数えれば四十は目前で、そろそろ引退の後のことを考える歳だ。
そうと気付いてふと自分を見れば、冒険者という職を長く続けてきた体はいつの間にかあちこち無理が祟り始め、稼ぎは装備や備品に消えて蓄えも心許ない。
ブルローネは焦った。
今のままでは体を酷使する雑務のような職を転々とし貧しい暮らしを細々と続け野垂れ死ぬ未来しか見えない。
なんとか儲ける切っ掛けを掴まなくては。
「…そんな焦りにかられていた時分に目にしたのが、坊主の地図だったそうな」
「…坊主…」
あっ。俺か。
ケスネに坊主呼ばわりされたオリンドは一拍の間を置いて自分のことだと理解した。そんな呼び方をされたのは垂れた鼻を父親に袖で拭われるような小さな頃以来だ。
「だからって騙し取って良いわけないじゃないのよ!」
憤慨するウェンシェスランにオリンドはあわあわと空を掻く手を向け、首を振る。
「だ、騙し取られてないよ。大銀貨二枚で売った…」
「似たようなもんだ!おまえさんの地図にゃディオスコレア冒険者ギルドが、大金貨ニ枚の値を付けたんだろう!?」
が、イドリックに強めに叱られて首を竦めた。
「…ふははは。話の通り随分なお人好しのようだな。そりゃあブローの奴も凹むわけだ」
からからと笑ってケスネはこれはいいと膝を叩く。
「えっ、凹ん…凹んだって、なんで?…あっ!俺の描いた地図、なんか間違ってた!?」
売れた後で文句でも付いただろうか。どうしよう、と頭を抱えるオリンドにケスネは更に笑声を大きく上げた。
「ふはーっはっはっは!おっ…、お主、…主、ぶふぅ…!…ま、間違いなんぞ無かったよ。間違いどころか、銅鉱脈を描き込んでおったろう。あれがピタリと命中するものでな。面白うなって、お主の描き込んだ記号のどれが何やら、全部掘り返させてもらったわ」
「……っへ?」
きょとり。と、オリンドはケスネを見た。
いや、オリンドだけではない。今や誰もがケスネを凝視していた。そんな驚愕の視線の集中を物ともせず涼しい顔で受け流し、彼は歳に見合わず白い歯を剥き出して見せた。
「ふはは。お主の地図、なかなか楽しませてもらったぞ」
「貴方がリンドの地図を!?」
やけに詳しいと思っていたら、そのブルローネなる男から話を聞いたというだけでなく地図の購入者であったとは。
「あうあぁあ…!は、恥ずかしい…!」
「なんで恥ずかしいんだよ!…えっ!?その地図は!?なあ、その地図今どこにあんの!?俺も見てみたい!」
アレグがテーブルの上に這いつくばらん勢いで身を乗り出してケスネに迫る。
「おお。すまんが、今は持っておらん。額に入れて工房に飾っとるでな」
「なんで飾るの!?」
「なんでもなにも、仕事柄、坑道地図はよう見るが、あれほど楽しませてもらった地図も無い。記念に取っておこうと思ってな。…そうか、お主の描いた地図であったか。なんとも世の中狭いものよ」
「…飾っ…か、…えっ、…け、ケスネさんの、工房に飾…?」
世界屈指の甲冑師、ムタルハ・ケスネその人の工房に自分の描いた地図が、あろうことか額縁に入れられ飾られているという事実が今ごろようやくオリンドの脳に染み渡りかけた。
いかん、これは理解したら倒れる。咄嗟に判断したイドリックは大きめに膝を打ち鳴らした。
「いやあ、貴方の言う通り世界は狭い!…で、そのブルローネとかいう輩、凹んだってことは反省したってことか?」
彼の意図するところを悟ったウェンシェスランもすぐさま後に続いた。
「ほんとにねえ。まさか、リンちゃんが働いてた鉱山が近かったとはいえ、こんなとこで繋がるなんて。っていうか、それよ。反省したの?そのクソやろ…んんっ!ブルローネって男は!」
「ほう。なんだお主、ディオスコレア鉱山で働いておったのか」
「えぁっ、う、うん。…あの、ぐ、グラプトベリア、までの、旅費をなんとか、しようと思って…。だから、短期、だけど」
短期労働者向けにも宿は用意されていたが無料では無く、少しでも浮かせるべく野宿してまで工面した旅費は、その後強奪されてしまったが。苦い思いと共に伏せてオリンドは少しだけ笑う。
「そうかそうか。それでブローに出会ったわけだな。あやつめ、元来肝っ玉の小さい小僧でな。お主から買うた地図に記された印のひとつを確かめた後で、この地図は本物だとギルドに売ってみたらば、滅法な値段が付いたと腰を抜かしたそうな。その翌日だ。とっくに旅立ってるはずのお主がギルドに現れて、まずったと思いきや、おまえさんブローに、縋るに縋れない素振りで今にも世を儚みそうな顔を向けたそうじゃないか」
「…ええっ!?…え、俺、挨拶、して…、き、気にしてないよって、笑っただけ…なんだ、けど」
「ふはっはっは!そうだったか!…いや。お主、ならば当時は相当に散々な目に逢っておったのだな…。ブローめ、えらいお人好しを騙したせいで死ぬかもしれんと思い込んで、凹んでおったというわけよ」
謎は解けたが、当時のオリンドの境遇を垣間見られる言葉に笑い事ではないと頭をひとつ振ったケスネは、真面目な顔付きに戻り痛ましさを乗せて短く息を吐いた。
「そっ、そんな、そんなことくらいで…」
死ぬなんて。
そんなことは無いと、オリンドに言えるはずもなかった。
そうしてもう一度噛み締める。そんなことくらいで死なない、なんて、今の自分だから言えるのだ。
勇者一行の仲間にしてもらえるまで、命を投げ出そうとしていたのは己ではないかと振り返る。地図の転売どうのの以前から生きるのをやめたい思いに駆られ、最期に憧れの人をこの目で見てみたいという願いだけを支えに時間が流れていくのを堪えていた。当のエウフェリオに助けられて共に過ごす幸運に恵まれても、しばらくは死ぬことばかり考えていた。
そんなことくらいで死ぬなんて、ほんの少し何かが違えば、確実に実行されたことだ。
床板と絨毯の境目を何度も目で辿るオリンドにアレグは潤む目を向け、エウフェリオはその背をそっと撫でる。ウェンシェスランとイドリックは客人に気付かれないよう天井に視線をやって滲んでこようとするものを抑えた。
「ま。というわけでな。お主の地図を買うたのは私だ。ついでにブローは今頭を丸めて私のところで専属採掘屋をやっておる」
何かを感じ取らないはずも無く、しかしながらケスネは気付かないふりで戯けた声を出す。
「へぁっ!?け、ケスネさんのところで採掘師!?」
脊髄反射のごとくにオリンドは綺麗さっぱり雰囲気も表情もころりと切り替わって伸び上がる。
あまりの素直さと単純さにケスネも流石に苦笑したが、これこそ苦境にありながら彼が生き続けてこれた強さかもしれないと感じた。
「採掘『屋』だ。あんなものまだまだ師とは呼べん。…しかし、主らの話を聞く限りでは、騒ぎにならんうちに回収しておいて正解だったようだな」
「回収…、ああ!もしや、地図を買ってくださったのは、リンドの名が悪戯に広まらないようにするため…?」
「まさか。このジジィがそんな手間ぁ考えやしねえよ」
すわ、と頭を上げたエウフェリオに、片手を振って、無い無い、と、にべもなくデチモは鼻で笑った。その隣で苦虫を噛み潰したような顔をしてムーツィオも深く頷く。
「どうせ今取って付けた理由です。先ほど言っていたでしょう、九割九分九厘、自分が楽しむためですよ」
「ぬっ!そんなことは無い!七…八割方くらいのものだ!」
「ほとんどじゃねえかよっ!」
ほとんどと言えばほとんど手刀じみたデチモの突っ込みがケスネの脇腹を捉える。めしぃ。鈍い音にオリンドは竦み上がったが、一拍の後に手の平で防がれていることに気付き尊敬の眼差しを甲冑師に向けた。
「…チッ。腐ってもムゥズの師かよ」
返す返すも何という物言いかと思う傍ら、ここまでのやり取りでさぞかし苦労させられてきたのだろうという気もして誰ともなく苦笑が漏れた。居た堪れない空気にケスネがこれ以上なく唇を尖らせる。
「お主ら後で覚えておれ…。さておきだ。オリンドとやら。私はお主に感謝すると共に礼もせねばならん。なにしろあの地図を手に入れたおかげでドリアド石がたっぷり採れたのだからな」
「ドリアド石…。え、と。金属を緑…だっけ、染めるやつ?」
さほどの需要も価値も無く、染料として使えることもあまり知られていないが、探査スキルひとつで生活していたオリンドにとっては手に入れやすい鉱石のうちのひとつであり、有り難い飯の種だ。ディオスコレア鉱山付近にあった、件のなんとかいうダンジョンで見付けた折に地図に記していたはず。
「それだそれだ。なんだ、知っておるのなら話が早いではないか!私の甲冑には証の緑が欠かせんでな。なのに鉱山の連中め、やれ金鉱石だ銀鉱石だと目先の儲けを優先しおって…。そんなわけだ、地図を描いた者を辿れるなら礼をしたいと常々考えておったところよ」
「ふぇあ…お、お役に立てたなら何より…です」
「っかぁあー!謙虚すぎて背中痒くなってくらあ!このジジィに恩を売れるなんざそうそう無えぞ!?なによりかにより言ってる場合かよ、今のうちに笠に着とけ!なんだっけか盾だっけか?リックとお揃いの」
確か昨日そんなようなことを希望してたよな、とデチモが言えばケスネは鼻で笑った。
「ふん。これほど縁があったのだ、しみったれたことを言うでない。お主らの防具、まとめて請け合おうではないか」
「えぇええぇっ!?…えーっ!?マジで!?ほんとに!?」
これにはまさか自分にも話が及ぶとは思っていなかったアレグも仰天して飛び上がる。
「願っても無い…!しかし、本当に良いのか!?」
嬉しくありがたい反面、手放しで頼んでいいものか、あまりにも美味すぎる話に多少の気後れをしたイドリックは念の為の伺いを立てた。
「もちろんだ。と、言うてもフルオーダーならば出来上がるまで半年…いや、もう少しかかるやもしれん。辛抱してもらうことになるぞ。現行の鎧を強化するならばふた月ほど寄越せ。盾の新調ならひと月もあれば事足りるか。それから坊主、お主にはスフマカンを使った鶴嘴をくれてやろう。ふふ。岩が蒸かし芋に思えるぞ」
「ひゃえぇえ!?っえ、…俺!?」
次から次へと驚くことばかりで声もひっくり返させてオリンドは両手の人差し指で自分を指した。
「うむうむ。坊主だ。ブローに持って来させるでな。受け取ったら奴めを思い切り詰るなり蹴り飛ばすなり試し掘りするなりするが良い」
「あえっ、そ、それは、もう気にしないでって、言う…っ試し掘り!?」
試し掘りって鶴嘴の!?
思わず想像しかけてオリンドは身を震わせ、頭を強く振って脳内に結ばれかけた映像を払った。
「ふははは。試し掘りは冗談としても、情けを掛けてやるのならまず叱ってやれ。あやつの立つ瀬が無くなるわ。お主から安く巻き上げて差額で儲けてやろうとしたのは事実なのだから」
「っ、あ…。うん。そ、そうします」
ケスネの温くも厳しい眼差しに、オリンドは自省からも少々頬を染めて頷いた。
その後はしばし和やかに歓談し、切りのついたところで鮮やかなメジャー捌きでもって全員の採寸を念入りに行なったケスネは現行の防具類を確認して希望も書き留めると、ブルローネに向けて伝書鳥を飛ばしてからアルベロスパツィアレの焼いたクッキー詰め合わせを土産にムーツィオたちと戻っていった。
「なんだか今日も充実した一日でしたね」
午後の勉強会は取り止めになりはしたものの回路調整の感覚はそろそろ取り戻さねばなるまいと、夕飯を済ませたエウフェリオは早目にオリンドを伴って自室へ篭った。
「うん。調査中止でしばらく鍛錬とか勉強だけになるのかなあと思ってたんだけど…。暇になる暇もなくて楽しい」
温水式中央暖房の恩恵をありがたく受け半裸の肌を触れ合わせて、数日ぶりに互いの魔力を巡らせ溶け合うような感触を味わう。
体の奥底までじわりと温まる心地にオリンドはゆっくりと息を吐いた。
「ふふ。暇も無いとは確かに。…しかし、少々お疲れのようですね?」
魔力の質は嘘を吐かない。特に精神面は現れやすく、流れ込んでくる魔素のわずかにざらついた感触を気遣ってエウフェリオは腹の上に乗せたオリンドの背を柔らかく撫でた。
「うん…。こんなにいっぺんに、色んな人と、初対面でたくさん話するの初めてで…」
きめの細かな胸元に耳を擦り寄せて、確かな心臓の音を聞きながらオリンドはしばし目を閉じる。
目まぐるしい毎日は楽しいけれど少々刺激が強すぎて息切れしそうだ。
「お疲れ様です。…なんでしたら明日は鍛錬もやめておいて、二人でゆっくり過ごしましょうか」
「えっ、…でも」
でも、と言いつつ流れ込んでくる魔素が明るみと丸みを帯びた。
「なに、構いませんよ。ベルに言付けておきますから」
癖のある黒髪を撫で付けて頬に口付けると、エウフェリオはサイドテーブルに置かれた小さな植物紙の束から一枚取って何事か書き付けた。それを手の平に乗せて軽く魔力を込める。すると紙はたちまち折り畳まれ鳥に似た形を取って空に浮いた。
「ふあ。すごい」
「家屋内程度の距離にしか届けられませんけれど。伝言には最適ですよ」
「へええ…。えっ、何系統の魔法なの?」
「系統で言うなら生活魔法ですね。と、ひと口で言っても内容は多岐にわたります。その内の操作魔法、それほど大きな力は込められないのですけれど、物を動かすことのできる魔法です」
「生活魔法かあ。…んんと、俺は適性無いんだったっけ」
使えたら便利そうなんだけどな。と、以前判定し直してもらったことを思い返しつつオリンドはエウフェリオの胸に預けた頬の左右を入れ替えた。
「残念ながら…」
「そっかあ。まあでも俺が使ったら魔法でやるより自分で動く方が早そう」
「ふふっ。人それぞれですね。私などズボラなので、これこの通り」
言ってエウフェリオは手の平の上に留まっていた折り鳥を扉へ向けて飛ばした。滑るように舞ったそれは途中で一旦解けて広がり、元の紙に戻って扉の隙間を鮮やかに擦り抜け去っていった。
「うわ…走るより速そう」
「速いですよ。本気を出せばアルよりも」
「ええーっ、すごい!」
それはかなり極まっているのではなかろうか。感心して顔を上げると蕩けそうな笑顔とかちあって息を呑んだ。ひたむきに包み込んでくるその眼差しが一昨日の夜に見た表情と重なって腰の奥に甘痒い疼きを覚える。
「…っ」
ひくり。と、身を震わせたのは二人同時だった。それはそうだろう。今は互いの状態が手に取るようにわかるのだから。
「リンド…」
「…フェリ…」
明日は部屋で休んでいるとアルベロスパツィアレに伝えた事実が、エウフェリオとオリンドの背を細やかに押して距離を近付けた。
「……ん…ぁ」
触れ合わせ絡めた舌先からも魔素は流れ行き入り込んでくる。
これまで味わったこともない、深く深く繋げた奥底から境界も何もかも溶けて無くなりそうな多幸感に全身が満たされ胸が打ち震えた。
「…これは…まずったかもしれませんね…」
事の終わりに満足しきって身を敷布に投げ出し、陶然と天井を眺める傍ら、呆けた顔でエウフェリオはぽつりと溢した。
「うん?」
なにかまずいことがあっただろうか?
台詞のわりに緊迫感の無いエウフェリオを不思議に思ったオリンドが聞き返すと、困ったような悪戯を思いついたような笑みが返ってくる。
「今後は貴方と魔力を交換するたびに、今夜のことを思い出すでしょうから」
「……、っ!?…はぅあ!?」
うわああああ!?そうだ!?そうなるよね!?だって、だってさっきの、チューだけでもすごく幸せで溶けちゃいそうなくらい気持ち良かった。
「そ、そんなの、回路調整するたび、ちゅーとかえっちなことしたくなっちゃう…」
どうしよう。…どうしようぅうぅう…!
真っ赤な顔を枕に押し当ててもだもだと唸るオリンドに、それはこちらの台詞だ。と、エウフェリオは笑顔のまま固まった。
ところがBランクに上がるための条件、Cランクの最高難易度を二十件こなそうにも、それ以前に高難易度依頼の段階で梃子摺る自分に愕然とした。
魔物相手でも賊相手でも攻撃が通じず防御も弾かれ強化魔法を振り絞り命辛々撤退し、任務失敗の報告を繰り返すこと二十四度目で彼は折れた。パーティに入り高難易度に挑んで己の壁を乗り越えることを考えないでは無かったが、誰と組んでも反りが合わないのか喧嘩別ればかりで結局はソロのまま冒険者を続けていた。Dランク以下のように決められた期間内に決められた回数の依頼を請け負わずとも降格されることは無い。そういう一線を画したランクなのだという、ただそれだけを拠り所に現状を良しとして、中難易度の依頼をこなすに留めた。それにCランクともなれば町人や商人の護衛を請け負うこともあって街の人々やギルドにも受けが良い。定期的に受けねばならなくなる素行調査や精神鑑定などの信用調査は煩わしいが、それも半年に一度のことだ。
食うに食われずということも無し、たまに懐事情が悪くなることもあれど運の悪い時だけ。そのうち運が向いてツキが転がり込んでくるだろう。そう考えて似たような日々が過ぎていくのを座して眺めていた。
よくある話だ。掃いて捨てるほどに。
そんなよくある人生をやり過ごしているうちに、気付けばベテランと呼ばれるようになっていた。数えれば四十は目前で、そろそろ引退の後のことを考える歳だ。
そうと気付いてふと自分を見れば、冒険者という職を長く続けてきた体はいつの間にかあちこち無理が祟り始め、稼ぎは装備や備品に消えて蓄えも心許ない。
ブルローネは焦った。
今のままでは体を酷使する雑務のような職を転々とし貧しい暮らしを細々と続け野垂れ死ぬ未来しか見えない。
なんとか儲ける切っ掛けを掴まなくては。
「…そんな焦りにかられていた時分に目にしたのが、坊主の地図だったそうな」
「…坊主…」
あっ。俺か。
ケスネに坊主呼ばわりされたオリンドは一拍の間を置いて自分のことだと理解した。そんな呼び方をされたのは垂れた鼻を父親に袖で拭われるような小さな頃以来だ。
「だからって騙し取って良いわけないじゃないのよ!」
憤慨するウェンシェスランにオリンドはあわあわと空を掻く手を向け、首を振る。
「だ、騙し取られてないよ。大銀貨二枚で売った…」
「似たようなもんだ!おまえさんの地図にゃディオスコレア冒険者ギルドが、大金貨ニ枚の値を付けたんだろう!?」
が、イドリックに強めに叱られて首を竦めた。
「…ふははは。話の通り随分なお人好しのようだな。そりゃあブローの奴も凹むわけだ」
からからと笑ってケスネはこれはいいと膝を叩く。
「えっ、凹ん…凹んだって、なんで?…あっ!俺の描いた地図、なんか間違ってた!?」
売れた後で文句でも付いただろうか。どうしよう、と頭を抱えるオリンドにケスネは更に笑声を大きく上げた。
「ふはーっはっはっは!おっ…、お主、…主、ぶふぅ…!…ま、間違いなんぞ無かったよ。間違いどころか、銅鉱脈を描き込んでおったろう。あれがピタリと命中するものでな。面白うなって、お主の描き込んだ記号のどれが何やら、全部掘り返させてもらったわ」
「……っへ?」
きょとり。と、オリンドはケスネを見た。
いや、オリンドだけではない。今や誰もがケスネを凝視していた。そんな驚愕の視線の集中を物ともせず涼しい顔で受け流し、彼は歳に見合わず白い歯を剥き出して見せた。
「ふはは。お主の地図、なかなか楽しませてもらったぞ」
「貴方がリンドの地図を!?」
やけに詳しいと思っていたら、そのブルローネなる男から話を聞いたというだけでなく地図の購入者であったとは。
「あうあぁあ…!は、恥ずかしい…!」
「なんで恥ずかしいんだよ!…えっ!?その地図は!?なあ、その地図今どこにあんの!?俺も見てみたい!」
アレグがテーブルの上に這いつくばらん勢いで身を乗り出してケスネに迫る。
「おお。すまんが、今は持っておらん。額に入れて工房に飾っとるでな」
「なんで飾るの!?」
「なんでもなにも、仕事柄、坑道地図はよう見るが、あれほど楽しませてもらった地図も無い。記念に取っておこうと思ってな。…そうか、お主の描いた地図であったか。なんとも世の中狭いものよ」
「…飾っ…か、…えっ、…け、ケスネさんの、工房に飾…?」
世界屈指の甲冑師、ムタルハ・ケスネその人の工房に自分の描いた地図が、あろうことか額縁に入れられ飾られているという事実が今ごろようやくオリンドの脳に染み渡りかけた。
いかん、これは理解したら倒れる。咄嗟に判断したイドリックは大きめに膝を打ち鳴らした。
「いやあ、貴方の言う通り世界は狭い!…で、そのブルローネとかいう輩、凹んだってことは反省したってことか?」
彼の意図するところを悟ったウェンシェスランもすぐさま後に続いた。
「ほんとにねえ。まさか、リンちゃんが働いてた鉱山が近かったとはいえ、こんなとこで繋がるなんて。っていうか、それよ。反省したの?そのクソやろ…んんっ!ブルローネって男は!」
「ほう。なんだお主、ディオスコレア鉱山で働いておったのか」
「えぁっ、う、うん。…あの、ぐ、グラプトベリア、までの、旅費をなんとか、しようと思って…。だから、短期、だけど」
短期労働者向けにも宿は用意されていたが無料では無く、少しでも浮かせるべく野宿してまで工面した旅費は、その後強奪されてしまったが。苦い思いと共に伏せてオリンドは少しだけ笑う。
「そうかそうか。それでブローに出会ったわけだな。あやつめ、元来肝っ玉の小さい小僧でな。お主から買うた地図に記された印のひとつを確かめた後で、この地図は本物だとギルドに売ってみたらば、滅法な値段が付いたと腰を抜かしたそうな。その翌日だ。とっくに旅立ってるはずのお主がギルドに現れて、まずったと思いきや、おまえさんブローに、縋るに縋れない素振りで今にも世を儚みそうな顔を向けたそうじゃないか」
「…ええっ!?…え、俺、挨拶、して…、き、気にしてないよって、笑っただけ…なんだ、けど」
「ふはっはっは!そうだったか!…いや。お主、ならば当時は相当に散々な目に逢っておったのだな…。ブローめ、えらいお人好しを騙したせいで死ぬかもしれんと思い込んで、凹んでおったというわけよ」
謎は解けたが、当時のオリンドの境遇を垣間見られる言葉に笑い事ではないと頭をひとつ振ったケスネは、真面目な顔付きに戻り痛ましさを乗せて短く息を吐いた。
「そっ、そんな、そんなことくらいで…」
死ぬなんて。
そんなことは無いと、オリンドに言えるはずもなかった。
そうしてもう一度噛み締める。そんなことくらいで死なない、なんて、今の自分だから言えるのだ。
勇者一行の仲間にしてもらえるまで、命を投げ出そうとしていたのは己ではないかと振り返る。地図の転売どうのの以前から生きるのをやめたい思いに駆られ、最期に憧れの人をこの目で見てみたいという願いだけを支えに時間が流れていくのを堪えていた。当のエウフェリオに助けられて共に過ごす幸運に恵まれても、しばらくは死ぬことばかり考えていた。
そんなことくらいで死ぬなんて、ほんの少し何かが違えば、確実に実行されたことだ。
床板と絨毯の境目を何度も目で辿るオリンドにアレグは潤む目を向け、エウフェリオはその背をそっと撫でる。ウェンシェスランとイドリックは客人に気付かれないよう天井に視線をやって滲んでこようとするものを抑えた。
「ま。というわけでな。お主の地図を買うたのは私だ。ついでにブローは今頭を丸めて私のところで専属採掘屋をやっておる」
何かを感じ取らないはずも無く、しかしながらケスネは気付かないふりで戯けた声を出す。
「へぁっ!?け、ケスネさんのところで採掘師!?」
脊髄反射のごとくにオリンドは綺麗さっぱり雰囲気も表情もころりと切り替わって伸び上がる。
あまりの素直さと単純さにケスネも流石に苦笑したが、これこそ苦境にありながら彼が生き続けてこれた強さかもしれないと感じた。
「採掘『屋』だ。あんなものまだまだ師とは呼べん。…しかし、主らの話を聞く限りでは、騒ぎにならんうちに回収しておいて正解だったようだな」
「回収…、ああ!もしや、地図を買ってくださったのは、リンドの名が悪戯に広まらないようにするため…?」
「まさか。このジジィがそんな手間ぁ考えやしねえよ」
すわ、と頭を上げたエウフェリオに、片手を振って、無い無い、と、にべもなくデチモは鼻で笑った。その隣で苦虫を噛み潰したような顔をしてムーツィオも深く頷く。
「どうせ今取って付けた理由です。先ほど言っていたでしょう、九割九分九厘、自分が楽しむためですよ」
「ぬっ!そんなことは無い!七…八割方くらいのものだ!」
「ほとんどじゃねえかよっ!」
ほとんどと言えばほとんど手刀じみたデチモの突っ込みがケスネの脇腹を捉える。めしぃ。鈍い音にオリンドは竦み上がったが、一拍の後に手の平で防がれていることに気付き尊敬の眼差しを甲冑師に向けた。
「…チッ。腐ってもムゥズの師かよ」
返す返すも何という物言いかと思う傍ら、ここまでのやり取りでさぞかし苦労させられてきたのだろうという気もして誰ともなく苦笑が漏れた。居た堪れない空気にケスネがこれ以上なく唇を尖らせる。
「お主ら後で覚えておれ…。さておきだ。オリンドとやら。私はお主に感謝すると共に礼もせねばならん。なにしろあの地図を手に入れたおかげでドリアド石がたっぷり採れたのだからな」
「ドリアド石…。え、と。金属を緑…だっけ、染めるやつ?」
さほどの需要も価値も無く、染料として使えることもあまり知られていないが、探査スキルひとつで生活していたオリンドにとっては手に入れやすい鉱石のうちのひとつであり、有り難い飯の種だ。ディオスコレア鉱山付近にあった、件のなんとかいうダンジョンで見付けた折に地図に記していたはず。
「それだそれだ。なんだ、知っておるのなら話が早いではないか!私の甲冑には証の緑が欠かせんでな。なのに鉱山の連中め、やれ金鉱石だ銀鉱石だと目先の儲けを優先しおって…。そんなわけだ、地図を描いた者を辿れるなら礼をしたいと常々考えておったところよ」
「ふぇあ…お、お役に立てたなら何より…です」
「っかぁあー!謙虚すぎて背中痒くなってくらあ!このジジィに恩を売れるなんざそうそう無えぞ!?なによりかにより言ってる場合かよ、今のうちに笠に着とけ!なんだっけか盾だっけか?リックとお揃いの」
確か昨日そんなようなことを希望してたよな、とデチモが言えばケスネは鼻で笑った。
「ふん。これほど縁があったのだ、しみったれたことを言うでない。お主らの防具、まとめて請け合おうではないか」
「えぇええぇっ!?…えーっ!?マジで!?ほんとに!?」
これにはまさか自分にも話が及ぶとは思っていなかったアレグも仰天して飛び上がる。
「願っても無い…!しかし、本当に良いのか!?」
嬉しくありがたい反面、手放しで頼んでいいものか、あまりにも美味すぎる話に多少の気後れをしたイドリックは念の為の伺いを立てた。
「もちろんだ。と、言うてもフルオーダーならば出来上がるまで半年…いや、もう少しかかるやもしれん。辛抱してもらうことになるぞ。現行の鎧を強化するならばふた月ほど寄越せ。盾の新調ならひと月もあれば事足りるか。それから坊主、お主にはスフマカンを使った鶴嘴をくれてやろう。ふふ。岩が蒸かし芋に思えるぞ」
「ひゃえぇえ!?っえ、…俺!?」
次から次へと驚くことばかりで声もひっくり返させてオリンドは両手の人差し指で自分を指した。
「うむうむ。坊主だ。ブローに持って来させるでな。受け取ったら奴めを思い切り詰るなり蹴り飛ばすなり試し掘りするなりするが良い」
「あえっ、そ、それは、もう気にしないでって、言う…っ試し掘り!?」
試し掘りって鶴嘴の!?
思わず想像しかけてオリンドは身を震わせ、頭を強く振って脳内に結ばれかけた映像を払った。
「ふははは。試し掘りは冗談としても、情けを掛けてやるのならまず叱ってやれ。あやつの立つ瀬が無くなるわ。お主から安く巻き上げて差額で儲けてやろうとしたのは事実なのだから」
「っ、あ…。うん。そ、そうします」
ケスネの温くも厳しい眼差しに、オリンドは自省からも少々頬を染めて頷いた。
その後はしばし和やかに歓談し、切りのついたところで鮮やかなメジャー捌きでもって全員の採寸を念入りに行なったケスネは現行の防具類を確認して希望も書き留めると、ブルローネに向けて伝書鳥を飛ばしてからアルベロスパツィアレの焼いたクッキー詰め合わせを土産にムーツィオたちと戻っていった。
「なんだか今日も充実した一日でしたね」
午後の勉強会は取り止めになりはしたものの回路調整の感覚はそろそろ取り戻さねばなるまいと、夕飯を済ませたエウフェリオは早目にオリンドを伴って自室へ篭った。
「うん。調査中止でしばらく鍛錬とか勉強だけになるのかなあと思ってたんだけど…。暇になる暇もなくて楽しい」
温水式中央暖房の恩恵をありがたく受け半裸の肌を触れ合わせて、数日ぶりに互いの魔力を巡らせ溶け合うような感触を味わう。
体の奥底までじわりと温まる心地にオリンドはゆっくりと息を吐いた。
「ふふ。暇も無いとは確かに。…しかし、少々お疲れのようですね?」
魔力の質は嘘を吐かない。特に精神面は現れやすく、流れ込んでくる魔素のわずかにざらついた感触を気遣ってエウフェリオは腹の上に乗せたオリンドの背を柔らかく撫でた。
「うん…。こんなにいっぺんに、色んな人と、初対面でたくさん話するの初めてで…」
きめの細かな胸元に耳を擦り寄せて、確かな心臓の音を聞きながらオリンドはしばし目を閉じる。
目まぐるしい毎日は楽しいけれど少々刺激が強すぎて息切れしそうだ。
「お疲れ様です。…なんでしたら明日は鍛錬もやめておいて、二人でゆっくり過ごしましょうか」
「えっ、…でも」
でも、と言いつつ流れ込んでくる魔素が明るみと丸みを帯びた。
「なに、構いませんよ。ベルに言付けておきますから」
癖のある黒髪を撫で付けて頬に口付けると、エウフェリオはサイドテーブルに置かれた小さな植物紙の束から一枚取って何事か書き付けた。それを手の平に乗せて軽く魔力を込める。すると紙はたちまち折り畳まれ鳥に似た形を取って空に浮いた。
「ふあ。すごい」
「家屋内程度の距離にしか届けられませんけれど。伝言には最適ですよ」
「へええ…。えっ、何系統の魔法なの?」
「系統で言うなら生活魔法ですね。と、ひと口で言っても内容は多岐にわたります。その内の操作魔法、それほど大きな力は込められないのですけれど、物を動かすことのできる魔法です」
「生活魔法かあ。…んんと、俺は適性無いんだったっけ」
使えたら便利そうなんだけどな。と、以前判定し直してもらったことを思い返しつつオリンドはエウフェリオの胸に預けた頬の左右を入れ替えた。
「残念ながら…」
「そっかあ。まあでも俺が使ったら魔法でやるより自分で動く方が早そう」
「ふふっ。人それぞれですね。私などズボラなので、これこの通り」
言ってエウフェリオは手の平の上に留まっていた折り鳥を扉へ向けて飛ばした。滑るように舞ったそれは途中で一旦解けて広がり、元の紙に戻って扉の隙間を鮮やかに擦り抜け去っていった。
「うわ…走るより速そう」
「速いですよ。本気を出せばアルよりも」
「ええーっ、すごい!」
それはかなり極まっているのではなかろうか。感心して顔を上げると蕩けそうな笑顔とかちあって息を呑んだ。ひたむきに包み込んでくるその眼差しが一昨日の夜に見た表情と重なって腰の奥に甘痒い疼きを覚える。
「…っ」
ひくり。と、身を震わせたのは二人同時だった。それはそうだろう。今は互いの状態が手に取るようにわかるのだから。
「リンド…」
「…フェリ…」
明日は部屋で休んでいるとアルベロスパツィアレに伝えた事実が、エウフェリオとオリンドの背を細やかに押して距離を近付けた。
「……ん…ぁ」
触れ合わせ絡めた舌先からも魔素は流れ行き入り込んでくる。
これまで味わったこともない、深く深く繋げた奥底から境界も何もかも溶けて無くなりそうな多幸感に全身が満たされ胸が打ち震えた。
「…これは…まずったかもしれませんね…」
事の終わりに満足しきって身を敷布に投げ出し、陶然と天井を眺める傍ら、呆けた顔でエウフェリオはぽつりと溢した。
「うん?」
なにかまずいことがあっただろうか?
台詞のわりに緊迫感の無いエウフェリオを不思議に思ったオリンドが聞き返すと、困ったような悪戯を思いついたような笑みが返ってくる。
「今後は貴方と魔力を交換するたびに、今夜のことを思い出すでしょうから」
「……、っ!?…はぅあ!?」
うわああああ!?そうだ!?そうなるよね!?だって、だってさっきの、チューだけでもすごく幸せで溶けちゃいそうなくらい気持ち良かった。
「そ、そんなの、回路調整するたび、ちゅーとかえっちなことしたくなっちゃう…」
どうしよう。…どうしようぅうぅう…!
真っ赤な顔を枕に押し当ててもだもだと唸るオリンドに、それはこちらの台詞だ。と、エウフェリオは笑顔のまま固まった。
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