ブレイク:カース 〜呪われし力を持つ俺たちは監獄教育機関から脱獄する〜

在星透琉(Arihosi Sukeru)

文字の大きさ
2 / 6

1章『閉ざされた歴史の観測者』

しおりを挟む
1章『閉ざされた歴史の観測者』
 
 1『監獄教育機関』
 
「起きろ!灯火 零!」
 号令と同時に、灯火零の肩がわずかに上下した。机に伏せていた顔を持ち上げ、前髪を指で払う。椅子の脚が床を擦る音が小さく響いた。
「お前が頭良いのはわかるが、授業態度くらい正してくれ」
 零は背もたれに体重を預けたまま、教壇の方へ視線だけを向ける。
「はあ……わかりました」
「じゃないと単位獲れないぞ。1になるぞ1」
 零は返答せず、机の端に指先を置き、一定のリズムで軽く叩いた。いつもの脅し文句が展開されている。
「そもそも進学システムの無いこの”監獄教育機関”で、単位を取るのに何の意味があるのですか」
 零は椅子から立ち上がらず、正面を見据えたまま口を開いた。
「いつも言ってるだろ、二十歳になれば外の世界で就職ができる。そのための土台作りだ」
「それは噓だ。それがもし本当なら」
 零は顎をわずかに引き、教室全体に通る声量で言葉を続けた。
「ああもういいめんどくさい。わかったわかった」
 カルネが黒板に向き直ると、零は肩をすくめ、再び椅子の背に寄りかかった。長い赤髪がふわりと靡く。
 灯火零は授業態度が酷くても、試験結果によって評価を維持してきた生徒である。
「そんじゃ授業再開するぞ。あんな面倒な奴は放っておいてな~」
 授業中、零はノートを開かず、机の上に置いた教科書も一度もめくらなかった。
 放課後、生徒が教室を出ていく中、零は先生に言われて席に残り、鞄の肩紐を整えて立ち上がった。
「なぁお前、どこまで勉強終わってんだ?」
 零は鞄を床に置き、両手を下ろしたまま立っている。
「監獄教育機関の十二年分、全てです。教科書は寮の自室への持ち出し可能なので」
「はぁー? 全部? いつやってんだよ」
 カルネが頬杖をつく間、零は微動だにしない。
「寮に帰ってから消灯時刻の夜十時まで。実際は風呂や食事の分、そんなにやってないですが、そもそも中学生のころは内職してましたし」
「十分すぎるわ馬鹿」
「理不尽ですね、先生」
 零は一礼することもなく、淡々と応じた。
「ま、つまり勉強嫌いで授業を聞いていない訳ではないんだな?」
「まあそうですね」
 零は視線を逸らし、窓の外へ一瞬だけ目を向けた。
「なら、明日の授業は聞いてくれ。教員歴六百年の私の、最高の授業を見せてやる」
「それいつも言ってますけど自分の事”おばさん”って言ってるのと同義ですよ」
「口の利き方には気をつけろよー灯火。私はこの監獄の総教官看守だぞ?」
 零は一歩も退かず、その場に立ったまま応じる。
「こんな大人が総合管理職とは世も末ですね」
「懲罰房にぶち込むぞ、このカース人のクソガキが」
 その言葉が発せられた瞬間、零は肩を落とし、床に視線を固定した。
 数秒の沈黙の後、カルネが口を開く。
「まあ、灯火。明日絶対にお前のためになる授業をしてやるから、聞いてくれ」
「誰が人種差別者の話なんて聞きますか」
 零は踵を返し、教室の出口へ向かう。
「あーそうかよ。もう話は終わりだ。帰った帰った」
 零は振り返らず、扉を静かに閉めた。

 ***
 
「起きろ、灯火」
 教卓を叩く音が鳴り、零の肩が小さく揺れた。カルネの声も若干呆れ気味だった。伏せていた上体を起こし、机の端に肘をつく。視線は黒板の下部に向けられている。
「さて、優等生も起こしたことだし、今から歴史の授業を始めようか」
 カルネは教壇の中央に立ち、ゆっくりと教室全体を見渡した。生徒たちは私語を止め、椅子の軋む音だけが残る。
 零は椅子に深く腰掛けたまま、背筋を伸ばしもしなければ崩しもしない姿勢を保っていた。
「うーん、どこから話したものか」
 カルネはチョークを手に取るが、黒板には何も書かず、指先でそれを転がす。前列の生徒が身じろぎし、後列では足を組み替える音がした。
「まぁ、私は六百歳くらいなんだか、詳しい年齢は覚えてない」
 数人の生徒が互いに顔を見合わせ、ざわつきが広がる。零は反応せず、机の上の教科書に手を置いたまま動かない。
「驚くのも無理はないし、嘘だと思うならそれで結構。ギウス人は魔法使いだ。そのなかでも、一人一人扱える魔法や分野が違う。私の場合は、【時間】に関する魔法だ。羨ましいだろ? 男子共」
 カルネは口角を上げ、教室の左右を交互に見る。数人の男子生徒が苦笑し、視線を逸らした。
 零は顎を引き、教壇をまっすぐに見据えている。
「私の肉体の老化時間を極限まで遅くして、"停止させた"というわけ。正直うまくいくとは思わなかったけどなぁ。ちなみにまぐれだ。理論もあんまりわかってない」
 チョークが教卓に置かれ、軽い音がした。
「お前たちは六百年前に、何が起こったか覚えてるよなぁ……灯火、答えてみろ」
 教室の視線が一斉に零へ向く。零は一拍置き、椅子から立ち上がった。
「"監獄教育システム"の導入です」
「御名答。流石優等生君。まぁ今行われてるこの体制は、およそ六百年前に出来たものだ。改めてシステムをおさらいしようか。灯火、頼んだ」
「俺に振らないでください」
 零は教壇を見上げたまま、足の位置を揃える。
「いいじゃねぇかぁ。頭の良いお前の方が私より上手い説明できるだろ」
 促され、零は一歩前に出た。机の列の間を抜け、教壇の横に立つ。
「わかりました。監獄教育システムは、生活のその全てを監獄の中で行うという物です。生まれてから二十歳まで、我々は監獄の中でギウス人により管理される。起床と就寝時刻から食事の時間、入浴の時間まで、寸分の狂いも無く行動させられる。ギウス人の言い分は、規則正しい生活を定着させること。でも、これはあくまで今の話です。監獄教育システムが敢行された"30xx年以前"はそんな生活じゃなかった、というのが僕の見解です」
 説明が進むにつれ、教室内の動きは減っていく。誰も口を挟まず、ノートを取る者もいない。
「ああ、その通り。それより以前は歴史の教科書にも記されていない。なんでだと思う?」
 カルネは腕を組み、零を見下ろす。
「ギウス人がもみ消したからでしょう」
「思想が強いわ。とも言い切れないんだなぁこれが」
 カルネは一度だけ咳払いをし、教卓に手をついた。
「今から30xx年頃の話をしようか。ノートはとるなよ絶対にだ。あと寝てた奴は成績落とすからなぁ」
 数人の生徒が慌てて姿勢を正す。零は指示を受け、元の席へ戻った。
「これはおよそ六百年前、ここがまだ”日本”と呼ばれていた時代の話だ」
 カルネの声が落ち、教室は静まり返った。

 2『観測記録』

 30xx、私達ギウス人は遥かな空に数十機の飛行物体を見つけた。
 目の前の未知から感じる恐怖に私達は怖気づいた。国王、ベテルギウス様のご命令の下、撃ち放った大魔法。
 今思えばその選択が、全ての始まりだったのかもしれない。
 後にその飛行物体は、破片や性質から、それが異世界の物だと判明した。その頃はそこそこ技術も発展していて、異世界の存在は既に明らかであった。
 国王方も流石に不味いと思ったのか、未知なる来訪者に謝罪をすべく、全技術を用いてその地を探した。
 およそ数か月くらいかかっただろうか。やっと見つけた未開の地。その名を”地球”
 さっそく私達は地球に赴くことにした。私達の言葉は通じるのか。そんな不安なんて、一切脳裏によぎらなかった。
 数時間掛けて、私達は地球に降り立った。そこにはガラスとコンクリートで覆われた塔のようなものが無数に建っていた。人が住んでいるというのがひと目でわかる。
 人々が私達を敵だと認識する。それもそのはず。私達はもはや宇宙人だから。
 私達も動揺していると、声をかけられた。いや、違う。正確には「動くな!」と拳銃を向けられ脅された。
 奇跡的にこの国と言語が同じなようで、その意味ははっきりと伝わる。しかし、仲間の一人がパニックになり、杖を取り出した。
「やめろ!!」と、声を出すはずだった。その前に、鼓膜を裂くような轟音が叫ぶ。
 発砲された。辺りに血飛沫が散る。
 それが、始まりの合図だった。私達は魔法を用いる。そんなことを、彼らは予想しただろうか。
 そこからはもう、住民や警官、建物なんて関係ない。私達はただ「殺されないため」に抵抗した。最終的に、全てを破壊する結果になっても。
 あとから知ったのだが、私達が破壊したのは東京都という地らしい。数十分も経てば仲間が到着し、辺りは焼け野原になっていた。
 最初に発砲したのは日本。だが、その前に撃ち落としたのは私達ベテルギウス帝国の一員だ。私達にも非はある。そう思っていたのは、どうやら私だけだった。
 第三皇帝、プリズナ・ベテルギウスは、この世界を乗っ取った。彼はこの世界の「全て」を破壊し尽くした。そして以降、日本は監獄と化したんだ。その戦争を【異界侵攻戦争】と呼んだ。
 それから数百年後のことだ。私達ギウス人に【呪い】が降りかかったのは。
 いつ頃だろうか。たしか、物凄く陽射しの強い日だったことを覚えている。日本の区分は北部、南部、中部の3つに隔てられた。
 たしか南部、当時で言う九州辺りで大爆発が起こった。監獄も、ギウス人も日本人も関係なく、全てが爆散した。その破壊力は、魔法よりも遥かに強力で、凶悪だった。そしてギウス人はその力を恐れた。その力はやがて、【カース】と呼ばれるようになった。その力が発現するのは日本人だけだった。そのため日本人はいつしか【カース人】と呼ばれるようになり、迫害の被害も増えてしまった。

 ***

「っていう話だ。わかったか?特に灯火」
「愚かな話だ。それで、俺達に何を求める」
「天才はお察しのようだな。私はお前ら生徒に、反逆を求める」
「馬鹿ですか? 先生」
「私は愚か者か? 貴様の眼にはそう映るか?」
「ええ。とても」
「そうか、一番期待した世代なんだがなぁ」
「まて、もしかして何世代に渡ってこんな事を?」
「ああ。それが私の生きる意味だ」
「それは愚か者のすることです。そんなことが何になる」
「私はカースの真髄を知っている」
「……叛逆者か」
「そう。私の目標は叛逆者の育成だ。軍事単位でもいいから、現在の国家を転覆することを目標としてる」
「反対だ。命を無駄にできるか」
「おーっと残念灯火君。不正解だ」
「はい?」
「生徒は他にもいる。多数決を獲ろうじゃないか」
「勝手にしろ」
 気に食わないものの、多数決を要求されては仕方がない。終了後の黒板には、正の字が4つと、少し余白を置いて2つ書かれていた。
「反逆するのが二十名か。決まりだな。さて灯火よ。お前には頼みがある」
「無理だ。俺は反対派だ」
「私がこの世代に期待してる理由の大半はお前の頭脳だ」
「俺に軍師にでもなれというのか」
「ああ、その通りだ。それにお前は」
 俺を嘲笑うように先生は続ける。
「カースを持って無いだろう」
 そうだ、その通りだ。俺はカースを与えられ無かった。かといって魔力も持っていない。神様に嫌われたのだろう。
「俺はやらない」
「ふざけんな、零!」
 俺の隣の席から拳が飛んできた。
「痛ッ!?何をする、星」
 隣の席のコイツは黒宮 星。一言で言うなら親友だ。
「お前はいつまでも支配下でいいのか!?勉強は出来ても頭はお堅いようだな!」
「じゃあお前がやればいいだろう」
「お前にしか出来ねぇから言ってるんだろうが!」
「私も星君に賛成」
 そう言って手を挙げたのは友人の氷室 未来だ。
「未来まで……」
 俺も人間だ。そこまで言われると流石に飲まざるをえない。
「しょうがない。軍師でもなんでもやってやろう」
「よっし!決まりだな。灯火。お前はさっきも言った通り軍師をやってもらう」
「待て。クラスメイトのカースが分からないと策は講じられない」
「そういうと思って全員のカースを纏めたノートをやる」
「こうなることを見越してたのですね」
 嵌められたか、先生に。星も未来も、クラスメイト達も。
 
 ***

 零は取り敢えず全てのカースを頭に入れた。先生の言う通り、中々攻撃向けなカースが揃っている。これならもしかしたら本当に? とはいえ零自身、戦略など初めて建てるんだ。教科書にも書かれてなければ参考資料もない。流石に無理がある。
「おうおうしっかりやってんねぇ優等生くぅん」
「集中している。黙ってくれないか」
「優等生には最初の課題を寄越してやる」
「……聞こうか」
「カースを従え私を殺してみろ」
「日頃の恨みを晴らせるいい機会ってわけですか」
「そうなるな」
「……本当に殺しても?」 
「いや冗談だ。まぁ身動きを取れなくしたら勝ちってことでいい」
「わかりました。その条件、飲んでやる」
「対決は明後日だ。楽しみにしてるぞ」
「明日で結構。今からでも生徒に説明しておいてくれ」
「ちゃんと寝なきゃ戦局に響くぜぇ?」
「消灯時間まで3時間もあるんだ。十分すぎる」
「余裕かよ。もう勝機を思いついてたり?」
 ニヤりと狡猾な笑みを浮かべた。
「先生、将棋でもいかがですか?たしか教室にありましたよね?」
「もしかしてお前本当に?」
「俺に勝ったら教えて差し上げましょう」
「大人舐めるなよ。クソガキ」
「六百歳越えの魔女でしょうに」
「貴様……」
 勝負が決したのは試合が始まってから十分も経ってないくらいのことだった。
「王手」
「……お前強すぎないか?」
「ルールを知ってるだけだ」
「こいつ……」
「気分がいいので教えてあげます。とはいえ、明日あなたに贈る言葉はもう贈ってしまいました」
「それは……?」
「王手という言葉をあなたに」
 そう言って、彼は独房へと戻っていった。
「どこまでもムカつく奴だ」
 そう愚痴を言うのと裏腹に、カルネは高揚していた。
 
 3『ショウタイム』

 翌日、朝食を摂ってから先生との決闘が始まる……
「さて、お前らに出す課題は1つ。カースを使いこなし私を身動きが取れない状態にできれば勝ちだ。傷害や骨折などは禁止。人海戦術を避けるため、私に攻撃できる人数は三人までだ。そして私は攻撃しない。自己防衛と、時間停止の魔法だけだ。制限時間は15分とする」
「先生、1ついいですか?」
「お、なんだ?怖じ気付いたか?優等生君」
「タバコのライターだけ貸してくれないですか?」
「燃やすんじゃねぇぞ?」
「どうせ燃えないんでしょ?この教室は」
「ああ、ご明答。それくらいくれてやる」
「ありがとうございます。お礼に二人の駒で勝利して見せますよ」
「言ったな?」
「ええ、勿論」
 自信満々の零に反して見る見るうちに表情が曇って行く生徒達。
「さて始めましょうカルネ先生」
「お前、作戦は話したのか?生徒に」
「いいえ。即興でやってもらいます。信用できるクラスメイトですから」
「ふーん。そうか、余裕そうだな」
「さっさと始めましょう」
 先生の思考配分を乱すために雑な比喩でも落とし込んでみるかな。
「ベッドのお時間です。スモールブラインドは黒宮 星。ビックブラインドは氷室 未来!  アンダー・ザ・ガンはカルネ先生、あなたです」
「ふーん、テキサスホールデムポーカーか。そうこなくっちゃなぁ。いいよベッドしてやるわ」
「ポーカーのアンダー・ザ・ガンは言ってしまえば全員から銃口を向けられてる存在だ。猛者である程スターティングハンドはタイトに絞ってくる」
「おい、さっきから何を言ってるんだ零」
 ポーカーをやったことのない黒宮星からしたら訳が分からないだろう。だがこれは言葉による揺動だ。そんなに意味はない。
「タイト、つまり強気でなく堅いということ。星はコール。カルネ先生を捕えろ。正面から崩すぞ。未来はフォールド。つまり待機だ。あとこっちにこい」
 そう言って零は未来に耳打ちする。
「そんなんじゃ捕まえられないぜ?」
「殴ってもいいんですか!?先生」
 黒宮が不安そうに言う。
「ああ。殺しにこい」
「わかりました。お覚悟を」
 しかし黒宮の拳はことごとく空を切る。決して黒宮の拳が遅いわけじゃない。カルネ先生が早すぎるんだ。時間を操るという魔法の前では、人の速度など静止してるに等しい。
 カルネ先生は、拳が飛んでくる度に時を止め、思考する。
 ――あいつのことだ。何か策があるんだろうが、まさか黒宮を使うとは。当然私はクラスメイト全員のカースを把握しているが、こいつのカースは【感情】だ。身体能力はクラス随一だといえるが、一番戦闘向きじゃない。もう一人の氷室は【温度】を操るカースだ。こいつが一番厄介だ。身動きの取れない状態、即ち氷漬けの状態でもこの条件は満たされる。まず私の体力や魔力を削る気か)
 ……とでも考えてるんだろう。先生がライターを渡した時点で零の勝利は確定していた。未来への指示も終え、先生の思考をかき乱そうとする。
「先生、氷漬けにされると負けでしょうから、それだけは勘弁してあげましょう」
「そんな情けは要らないが、貰えるものは病気以外貰ってやるよ」
 ――お前の唯一の勝ち筋だぞ?なんでわざわざ捨てる)
「俺の手札はスペードのKとQです」
「ポーカーで開示とは勝つ気あるのか?」
「この手札なら当然、レイズしますが、あなたは?」
 カルネ先生は攻撃をすべて避けながら息切れもせず答える。
「コールしよう。ゲームマスターさん」
「了解しました」
 そうして指を鳴らした瞬間、氷室から冷気と熱気が発せられる。その二つが合わさった瞬間、爆発音と共に濃霧が発生した。
「霧……いや水蒸気か。流石優等生君だ。応用力がある。まさか温度のカースをこんな使い方するとは。だがこれでは黒宮も見えないだろう」
 フッと笑って決め台詞のように吐き捨てる。
「愚かだな」
「うお!?滑って!?」
 カルネ先生の足元が凍り付き、滑った。
「来い!星!!」
 カルネ先生の後ろでライターの火が揺らめいた。それを合図に星が先生を捕らえた。あまりの唐突さにカルネは魔法を発動できなかった。
「捕まったが、まだ動けるぞ。」
「さて先生、聞いてください。チェックの時間です。それ以上動いたら次は水蒸気爆発で全員殺します」
「なっ!?」
「これは脅迫です。ショウダウンとでもいいましょうか。降参してください」
「……わかったわかった。降参だ」
 クラスメイトから歓声と拍手が巻き起こる。
 
 ***

 カルネ先生が決まりの悪そうな顔で言う。
「お前、水蒸気を出したときになんで私が時を止めることを計算に入れなかった?」
 ニタァと素敵な笑みを浮かべる。
「それ聞きますか?カルネ先生、本当はわかっていらっしゃるでしょう」
「念の為だ」
「あなたの時間停止、使ってるとこをみたことがないんですよ」
「ほう?」
「見てないとこで使ってるのかも知れませんが、そんな便利な能力を日常に組み込まない理由がわからない。だからそれはデメリットがあるのかなと。例えば体力や魔力……というものがあるかは不明ですが、消費が激しい物と推測しました。
 未来のカースで動きを止めても時間停止で氷が溶けるまで待つ……みたいなのは出来ない。だがそれだと未来任せになってしまうし、何かの間違いで未来がやられたらおしまい。リスクが高すぎる。
 だから何らかの方法で視界を奪うことができれば対処しようがないと思ったんです。そして、あなたは氷で動きを止められることを自らの負け筋だと考えたはずです。そりゃそうです。こちらの唯一の勝ち筋なのですから。
 制限時間を設けたのも自分の魔力切れや体力切れを狙わせないためですよね。ってことはつまり、氷で動きを止められたらどうにもできないということですよね。
 制限時間がなければ一生氷漬けにされて体力や魔力が切れます。そして視界の奪い方はカースを見たときに決めていた。
 時を止めても唯一関係無い方法が視界を埋めてしまうこと。
 そこにどうやって黒宮を突撃されるか。これが迷いましたが、先生がよくタバコを吸ってるのは周知の事実。だからライターをもらったんです。この時点でほとんど勝ちなんですよ」
 零以外、全員唖然とした表情だ。
「なんで水蒸気の中で滑った私の居場所がわかる?」
「先生は知らないかもですが、カースには応用力があります。未来のカースは【温度】に関することが大抵出来ますので、自らの視界をサーモグラフィー的にすることが可能なのかと。まぁぶっちゃけ、そんなん無くても滑った後の場所なんて俺なら予測出来ます。逃げ惑う王の位置を当てるなんて、将棋やチェスなんかよりも簡単なことです」
「そうか……完敗だ。お前らならもしかするかもな。実は前の世代まではこの課題すら突破できなかったんだ」
 零はまるでそんなことどうでもいいかのような顔をする。
「そんなことより、この後どうするんですか?」
「意外とやる気あるんだな、お前」
「親友にぶん殴られましたのでね」
「ごめんって……」
 と、黒宮は零に謝った。
「別にいい。そこまで気にしてない」
「その割には言ってくるのな」
 まあまあ、とカルネ先生が場を収める。
「よし、それじゃあ次は脱獄だな!」
「待て待て気が早い気が早い!もっと段階踏まないか?」
「なんだ優等生君、びびってんのかぁ?」
 とニタニタしながら言う。内心、零はイラっとしている。
「無謀と挑戦は違いますよ、先生」
 黒宮は先生を睨みつける。
「逆に聞くが、それ以外何ができるって言うんだ?」
 辺りを静寂が包む。
「……せめて情報が欲しいです。警備は何人いるとか、相手はどんな武器を持っているかとか、そもそも内部構造とか」
「それもそうだなぁ」
 うーむと先生は腕を組み椅子に腰かける。
「よしわかった。明日、情報を集めてお前たちに渡そう。というか今からやるから欲しい情報を教えてくれ」
「情報って、そんな引き出しを開けるように出てくるものなんですか?」
「私はこの監獄の幹部だぞ。それくらい余裕さ」
 幹部がこんなんとか世も末だな。と零は思った。
「欲しい情報は警備員の数と使用できる魔法の種類、武器、配置、内部構造かな。爆弾とか武器あったら。通信用のインカムとマイクとかあれば」
「ほーうそれがあれば脱獄できるっていうのか?何個持ち出せるかは不明だが一応全部あるぞ」
「十分だ。やって見せる」
 一瞬、先生が驚きとも笑顔とも言えない微妙な表情をした。
「了解!やってみろ優等生ぇ!今から資料作ってきてやるよ」
 カルネ先生は今まで以上にやる気を感じた。
 
 ***
 
 翌日、教科書くらいの分厚さのある資料を持って来た。
「ふぅー疲れたぜ。ほら、全部頭に叩き込んどけ」
「ありがとうございます」
 零は早速資料に目を通す。警備員の数は総勢20名ほど。なんだ、思ったより楽に勝てそうじゃないか。武器は魔法と警棒、BB弾を入れたおもちゃのような銃。模した種類はワルサーPPKで装填数は8+1発。BB弾なのは恐らく殺害を避けるためなのだろう。あとは魔法か。危険そうなのは【爆発】【水流】【旋風】【電撃】【監視】くらいかな。あとは戦闘向きじゃない。これなら行けるかもしれない。
「あ、先に行っておくが全員で脱獄することが目標だから捨て駒的な扱いは絶対禁止な」
「……わかりました」
 零は本当は黒宮辺りをヘイト役として使おうとしていた。
「構造を頭に入れるのが一番大変だなぁ」
 なんてぼやいている。それでも目を通していく。
「あ、ちなみに私は脱獄に参加しないからな」
「まぁ、どうせそうだと思いましたよ。先生を使って良いなら余裕すぎますし、それを許すなら前の世代とかで達成してるはずですし」
「私はもうすぐ辞職する」
 予想もしない言葉だった。
「……は?」
「……ってことにするんだ」
「何言ってるんですか?」
「まぁ落ち着け。私が辞職するってことは、ここの看守は私じゃなくなる」
「そんな無責任な……!」
「だからお前は、私の代わりに来る看守の対策まで対策しておくことだな」
「何十人もいる看守から一人を当てろと!?」
「んなもん全員対策すりゃいいだろ」
 零はグッと言葉を飲み込んだ。
「まぁ大丈夫だ。私は次の担当になった看守を殺してくれたら帰ってくる」
「一体何言ってるんですかあなたは……」
「まぁとやかく言わずに、策略を練ってくれよ優等生。脱獄作戦が終わるまでは見といてやるからよ」
 本当に意味かわからなかった。この時は……。
「それさらっと失敗するって言ってません?」
「私は1回で脱獄できるだなんて思ってないが?」
「1回で脱獄できなかったら終わりでしょう」
「お、流石の優等生君にも、先入観ってやつには勝てないか」
「もったいぶらずに説明してください」
「あいつらがBB弾を使用する理由はなんだ?」
「無駄な殺生を避けるため……?」
「75点。完答はそれと、お前らを育てるためだ」
「まぁ……監獄教育システムだから納得はいくが……」
 この時はまだ、この違和感に気が付かなかった。
「そんで、いつ行けそうだ?脱獄」
「銃を持ってきてくれたら一気に決行が早まります」
「はい、持ってきたぜ」
 時を止められるって便利だな……協力してくれたらどれだけ楽か。
「先生、星と未来を呼んできてください」
「ん? ああ、わかった」
 零は馬鹿げた作戦を思いついた、が、一旦はこれに賭けてみることにした。
「きたよー!零ちゃーん!」
 ――相変わらず元気だな未来は。
「未来、【カース:温度】で溶けない氷とか生成できるか?」
「んー?多分できるけど?」
「氷の形って決められるか?」
「うん、できるよ」
「時間かけてもいいから、それで剣を作って欲しい」
「え、わかった」
 ……数分後
「こんな感じ?」
 それは綺麗な両刃の剣だった。
「それを数本作って欲しい」
「はーい!」
「星、お前の身体能力を見込んで頼みがある」
「なんだ?殴り飛ばしたお礼だ、何でも聞いてやる」
「あれはカルネ先生の指示だろ?」
「げ!? ばれた!」
「俺の親友は温厚なのでそんな簡単に人を殴りませんよ。そして、罰として先生にも手伝ってもらいますか」
「お前、ここまで仕組んだな……優等生」
 いや、カルネ先生の自業自得である。
「先生は、そのBB弾入った銃二丁を使って星を撃ってください」
「「……は?」」
 二人が口を揃えて言う。
「星はその氷の剣で避けるか弾くかしてくれ」
「え、ちょっと待て」
「それが出来たら今回の脱獄は行ける。頑張ってくれ」
「おい待て!無茶言うな零!」
「俺は作戦の穴がないか詰めるから、出来たら教えてくれ。その翌日決行するから」
「おい!待て!」

 4『空の青さを知らない僕ら』

「なぁ零、流石にきついって……」
「じゃあ遊ぶか?」
「え、いいのか?」
 すると、先生が銃を撃つのをやめて言う。
「もともと今日はうちのクラスが使っていい日だから遊んできていいぞ」
「もう授業はしないんですもんね」
「その代わり、体力付けてもらうからな」
 すると星がむっとした顔をした。
「なんで零はやってないんですか」
「頭使う役だからいいかなって」
「……言い返せない」
 零はさも当然のことだと言わんばかりの顔をした。そして、先生が校庭への外出許可を下ろした。次々と校庭へと駆けていく。先生は元気だなーと言いゆっくりと廊下に出た。星は同級生に腕を引っ張られている。流石運動児だな。
「あれ?零は行かないの?」 
 未来がそう言う。ちなみに彼女も中々の運動神経と体力だ。女子の中だとトップレベルだろう。
「俺は体力使うこと嫌いだからパス」
 今、この教室には二人しかいない。二人で窓際の席に座っている。一つの机を前後で挟む形だ。
「へー、完璧な生徒に意外な弱点だね」
「俺は完璧なんかじゃない。天才や優等生というのはあくまでの象徴だ。数学におけるxやpみたいなものなんだ」
「じゃあ私が、あなたの欠けてる部分を埋めてあげるよ」
 零はちょっと意外そうな顔をした。仲の良い未来でも、初めて見る顔だった。まるで仮面が剝がれたかのような。そして、すぐに笑顔を作る。
「……なんだよ、それ」
「私なりのプロポーズ」
「脱獄出来たらまた言ってくれ」
「え……」
 今度は未来が面食らったような表情になった。
「冗談だ。お前もそうだろ?」
「当然じゃん! 誰があんたなんかにプロポーズするか!」
「冷たいな」
「もう知らない!」
 ふんっ!と言い赤らめた頬を膨らます。
「ごめんって」
「嫌だ!」
 参ったなぁ。こうなると翌日まで許してくれない。寝たら忘れてくれるけど……。
 暫く二人で、閉ざされたこの教室の外を見る。すると、クラスメイトが元気に遊んでる。日の当たらない校庭と言うべきか。俺達は監獄の内部は鉄の壁で覆われているため、日光の暖かさを知らない。更に言うなら、草原の緑や、空の青さすら知らない。ただそういう写真や、似た色を見たことがあるだけなんだ。
「なぁ、未来」
「何!」
 まだ怒ってるな。流石に揶揄いすぎたか。
「空の青さを知りたくないか?」
「何言ってんの?零ちゃん」
「そうだよな……こんな馬鹿げたことの為に脱獄しようだなんて、誰も思わないよな」
 未来が意外そうな顔をした。
「それが零ちゃんの”夢”なんだ」
「夢? いや、うん……そうかもな」
「私にも、夢があるの」
 悲しそうな顔をしていた。俯いた横顔だったが、それは確かに、見飽きた幼馴染みの顔だった。
「なんだ?」
 彼女は殊更、明るい顔で語る。
「お花を見たいの」
「なんだそれ。まあでも、俺と似たようなものだな」
 と言って二人で吹き出す。まるで昔に戻ったような感覚に陥る。もう怒ってないかな……なんて不安になった。同時に、こんな時間がもっと続けばいいのにだなんて陳腐なことを思ってしまう。暫く雑談をしてると、クラスメイト達が帰ってきた。
 二人でいたため、案の定、星や他クラスメイト、カルネ先生にも茶化された。先生が生徒に混じっていじるな。
「それじゃ星、引き続き頑張ってくれ。未来もな」
「嫌なこと思い出したわ……現実は残酷だ」
 星は人一倍楽しんだのにも関わらず、息を切らしてない。それどころか自身の今後を憂いている。
 二人が行ったころ、カルネ先生が問いかける。
「なぁ、本当に星一人だけが銃弾回避出来たら脱獄出来るのか?」
「ええ、それさえ達成したら恐らく脱獄出来ます」
「監獄の鍵すら見てないのにか?」
「……作戦の穴に気づいてたんですか、先生」
「ああ、鍵の在り処すらわかってないのにどうするのかなって」
「先生から一本取った時みたいに脅します」
「そうだと思ったわ。それは無理だぞ」
「なんでそう思うんですか?」
「”あいつ”にはカースを無効化する技術がある」
「あいつ?」
「鍵の守護者だ」
「そういうことは早く言ってくれませんか!?」
「悪い悪い。余裕そうだったもんで」
 お陰で練り直しだ。今夜は徹夜かな。鍵は看守が持っているのか。いや、恐らく看守長だろうな。ある程度の地位じゃないと鍵の管理なんて任せられない。
「あっ……」
「どうした?柄にもなく間抜けな声出しやがって」
「先生、放送室のマイク、ジャック出来ませんか?」
「放送室の看守ぶっ飛ばしたらいいんじゃないか?」
「……了解です」
「お前、何する気だよ……」
「囮ができなくても、揺動なら出来ます」
「ふーん。私はてっきり、銃弾回避が出来るようになった星に囮をさせるのかと」
「そんな血も涙もないことしませんよ。囮ができた方が確実ですが」
「なるほどな。まぁ、楽しみにしてるぜ。星もいい動きしてきてるし」
「あいつ、やる気あったんですね。サブプランを使うつもりだったんですが」
「友人のこと信頼しろよ……」
「してますよ。無理難題を言った俺が悪いんです」
「意外と自責の念があるんだな」
 零は押し黙ってしまった。椅子に倒れるように腰かけた。
「あ、そうだ。お前、天才優等生なんだから彼女くらいは守れよ」
「は? 彼女?」
 ついに中途半端な敬語が外れる。
「未来だよ」
「彼女じゃないです」
「もどかしいなー! 早く付き合っちまえよ」
「中学生のノリやめません?」
「600年以上も生きてるともはや若返るんだよ」
「そうですか……」
「元気ないなぁ。そろそろ本番だろうし、頑張れよ」
「勿論です」
 ――空の青さを知りたいからな。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。

ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。 真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。 引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。 偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。 ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。 優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。 大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。

再婚相手の連れ子は、僕が恋したレンタル彼女。――完璧な義妹は、深夜の自室で「練習」を強いてくる

まさき
恋愛
「初めまして、お兄さん。これからよろしくお願いしますね」 父の再婚によって現れた義理の妹・水瀬 凛(みなせ りん)。 清楚なワンピースを纏い、非の打ち所がない笑顔で挨拶をする彼女を見て、僕は息が止まるかと思った。 なぜなら彼女は、僕が貯金を叩いて一度だけレンタルし、その圧倒的なプロ意識と可憐さに――本気で恋をしてしまった人気No.1レンタル彼女だったから。 学校では誰もが憧れる高嶺の花。 家では親も感心するほど「理想の妹」を演じる彼女。 しかし、二人きりになった深夜のキッチンで、彼女は冷たい瞳で僕を射抜く。 「……私の仕事のこと、親に言ったらタダじゃおかないから」 秘密を共有したことで始まった、一つ屋根の下の奇妙な生活。 彼女は「さらなるスキルアップ」を名目に、僕の部屋を訪れるようになる。 「ねえ、もっと本気で抱きしめて。……そんなんじゃ、次のデートの練習にならないでしょ?」 これは、仕事(レンタル)か、演技(家族)か、それとも――。 完璧すぎる義妹に翻弄され、理性が溶けていく10日間の物語。 『著者より』 もしこの話が合えば、マイページに他の作品も置いてあります。 https://www.alphapolis.co.jp/author/detail/658724858

覚悟は良いですか、お父様? ―虐げられた娘はお家乗っ取りを企んだ婿の父とその愛人の娘である異母妹をまとめて追い出す―

Erin
恋愛
【完結済・全3話】伯爵令嬢のカメリアは母が死んだ直後に、父が屋敷に連れ込んだ愛人とその子に虐げられていた。その挙句、カメリアが十六歳の成人後に継ぐ予定の伯爵家から追い出し、伯爵家の血を一滴も引かない異母妹に継がせると言い出す。後を継がないカメリアには嗜虐趣味のある男に嫁がられることになった。絶対に父たちの言いなりになりたくないカメリアは家を出て復讐することにした。7/6に最終話投稿予定。

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

処理中です...