3 / 6
2章『劣弱の革命者』
しおりを挟む
2章『劣弱の叛骨者』
5『抵抗の始まり』
監獄の中からは見えないが、この日はとても晴れた日だった。脱獄日和とでも言うべきか。
青き空の下、魔法もカースも持たない、劣弱の人間が、二回目の革命を起こした。
「戦略は一つ。まず、俺は別の部屋からマイクや通信で指揮を執る」
「別の部屋?」
星が首を傾げる。
「そりゃあ、看守が優秀ならばここに来るからな。俺が死んだらお前らの希望は潰えることになるぞ」
「普段は割と謙虚なくせに」
続けて、未来が不満そうな顔をした。
「安心しろ、お前たちの命も保証してやる。勿論星、お前もだ」
「……は? じゃああんな訓練を俺にさせたのは?」
「しいて言うなら未来への投資、かな。カルネ先生の言う通り、初回で脱獄なんて出来ない。だから、今回は比較的安全策を取っている。あの訓練は今後絶対に必要となる鍵だ。とはいえ、今回必要になる可能性があるということは考慮しておいてくれ」
「ふざけるなよ、俺がどんな思いで、痛みで、文字通り血の滲む努力したか……」
「そうだよ!星ちゃんは頑張ってた!」
「愚か者が!!」
静寂が辺りを支配した。
「逃げ出したい者だけ、俺についてこい!それ以外は置いて行く。俺の下に付く限り忘れるな、誰かの下に身を置く限り、抵抗と言う名の呪いから逃げることは許さない」
「じゃあ、お前の下からも逃げていいんだよな?」
「ああ。ただし、お前らが俺の首を縦に振らせたんだ。その清算くらいしてくれよ」
「わかった。私がしてやろう」
カルネ先生が言う。
「元はと言えば私が仕向けた事なんだ。申し訳ない」
零は、少し考える。
「……裏切るなよ」
そして零は別室に移動した。クラスメイトに指揮を執るため個室に入っていった。
***
クラスメイトが、星に話しかける。
「星や未来は零のこと友達だと思ってそうだからいいけどよぉ……俺達はそうはいかないんだ」
「でも、あいつ以外やれそうな奴はいない」
「それは……そうなんだけどよ、でも」
その言葉を搔き消すかのように、開戦の警鐘が鳴り響いた。
「うわっ!?」
鼓膜を突き刺すリリリリと言う若干低い騒音。これは、火災報知器の音だ。
【お前らは待機しろ!】
隣の部屋から聞こえてくる、くぐもった声。
「まあ、従ってみようぜ」
いつも楽観的な生徒が言う。
「私もそうするわー」
いつも明るい生徒が言う。
***
鳴り響く火災報知器の前に、佇む男がいた。そいつは少し細身だが、瘦せ型という訳ではない。身長は大体、百七十ぐらいか。
混乱する看守たちは、彼に気が付かなかったみたいだ。そのまま彼は、トイレに入っていった。
偶々そこに居合わせてしまっただけの生徒だと思った。だけど一応、僕はトイレ前で張ってみた。
胸元に貼られた名札を見ることが出来なかったのが悔やまれる。そして約五分後にその生徒は出てきた。
「待て!」
身柄を確保しようと、その少年に腕を伸ばす。しかしその手は、虚しく空を切るばかりだった。
その少年の姿に、ノイズがかかる。全身が蠢く黒い粒に覆われて、直後に霧散していった。
「……消えた?カースの一種か」
すると、細身の男の看守が話しかけてきた。
「どうした、篝看守」
「ああ、バトロ主任看守。こちらに生徒が逃亡してきたのですが、消えてしまいました」
「ほう?消えたと?」
「ええ、カースによる効果だと思われます」
「ふむ……幻影のカースか。一体どのクラスの……」
うーん、と少し考える。
「カルネ主任看守のクラスではないでしょうか」
「ああ、あの人ですか。カースを2つ所持している者がいましたね」
バトロ看守が呆れたような顔をする。
「参ってしまうね、こうもイレギュラーが発生すると。私の眼が届かぬ場所で、事が起こってしまうやもしれません」
「こうも?ということは、他にもそんな生徒が?」
「ああ、そうでしたね。貴方はついこの前まで病に臥していましたから、存じ上げないのも無理はない」
「この前の遊戯大会で、シド主任看守に全勝した者がいましてね」
遊戯大会……生徒達と看守が交流する場だ。演目はボードゲームやカードゲーム等々。
「……あの、すみません。自分、シド主任看守と面識がなくって。一体どういうお方なのか」
「ふむ……所属から1ヶ月なら仕方がないか。彼女は……あ……その……」
困った顔をして言葉を濁す。
「狂人なのですよ……」
「……はぁ」
「ちなみに、君と一歳差の少女です」
「え?15歳で主任に?」
「腕は確かなんだが、性格がちょっとな」
「狂人……」
「……はい、可憐な少女を表す言葉としては相応しくないのですが、彼女はギャンブル依存症なのです。といっても、賭け事にはめっぽうお強い。ポーカー等のカードゲームや、チェスやオセロ等のボードゲームにも深く精通しています」
「そんなお方に、生徒が全勝……?」
「私の眼があるので、イカサマなんて当然出来ません。あれは実力、いや、知力と勝負強さでしょう。加えて彼には異名があります」
そう言うと、バトロ主任看守が視線を落とす。
「その生徒のはカースの力がありません。それに加えて、毎回のように実力試験で満点を取っています。その名は……」
***
火災報知器が止まったか。”音”を聞く限り、動き方は五十秒前にここの上を集団が通過、ここから見て左廊下と右廊下を三十秒前に集団が通過。1分と少し後に後方廊下を通過。火災報知機の周りを取り囲むように集団が派遣されている。
――やはり脱獄を疑っているな。当然だ。ここにスプリンクラーが消すような火種はないからな。そして身柄の拘束もできない。さっきここに来た看守が証明してくれるだろう。見事に幻影に釣られたな。さて、残る問題は一つ。バトロとかいう主任看守だ。あくまで推測だが、【監視】の魔法に幻影は効かない、というのを逆手に取ってやるよ……。
6『劣弱の天才』
【星、インカムを付けろ。氷の剣は持ったな】
そう言われると、星はカルネ先生からインカムを渡された。
【付けたか。なら廊下に出て右に進め。そしたら付近に階段があるはずだ。3階に上がったら教えてくれ】
「上がったぞ、零」
【よし、ならば直進した部屋に放送監視室がある】
「ここか!」
【鍵は開けてある】
「開けて……?」
その言葉に、少しだけ引っ掛かる。
【そのモニターを全て剣で破壊しろ】
「了解した」
そう言うと星は、感情に任せてモニターを破壊し始めた。
【もしかしたら刺客が来るかもしれない。警戒しておけ】
そう言った矢先、破壊音を聞きつけた看守がやって来た。
「何をしている!?お前!」
「看守!?まずいな」
「こいつモニターを……ただじゃおかないぞ、懲罰房行きだ」
「しょうがない、突破する!」
星は不溶の氷剣を構える。
「氷の剣?囚人共が……調子に乗りやがって!」
すると、その看守は人差し指を前に出す。
「爆発魔法【インフェルノブラスト】」
一瞬にして、室内が熱気に包まれる。溶けないはずの氷の剣から、雫が零れていく。
「焼き尽くせ。俺の魔法よ!」
その指先に、火球が灯る。眩い黄昏色の閃光を発し、刻々とその火球は肥大化し、全てを飲みこんでいった……。
***
「あ、起きた!」
未来がパーッと嬉しそうな顔をする。
「零は……?」
心配と若干の怒りを感じる声色だ。
「まだ帰ってきてないよ。隣の部屋にもいなくってさ」
未来が泣きそうな顔をする。
「そっか……」
すると、教室の扉が開いた。
「帰ってきたー!零ちゃーん!」
未来が零に抱きつこうとする。しかし、それを零は身軽にかわす。
「なぁ、零!あれはどういう……」
その言葉を遮るようにカルネ先生が叫ぶ。
「零!これはどういうことだ!」
「俺がどういう戦略を建てるかわからないそっちが悪い」
「……っ!」
カルネ先生にとって、その言葉は図星だった。カルネ先生はある程度の線引きをしてしまったからだ。”全員で脱獄する”というゴールライン。そこを守っていれば事実上、零は何やってもいい。それに気付いたカルネ先生は激しく後悔した。
「……待て、お前はどこにいたんだ?」
「流石の先生でもお気づきになられませんでしたか」
「ああ、隣の空き部屋にあったのはこれだからな」
それは、小さなカセットテープだった。
「このテープは私が貸したものだ。まさかこんな使い方をするなんてな。音量がやけに大きかったが、あれはもしかしてカースか?」
零が澄ました顔をする。
「ご名答。叢雲 魁斗君のカース:【情報伝播】です」
そういうと、教室の後ろの方を指さす。少しミステリアスで無口な子だ。
「……で?お前はどこにいたんだ?」
「トイレです。三階の」
大半のクラスメイトが頭にハテナを浮かべている。
「因みに三階は、看守寮や監視室がある階だ」
カルネ先生が補足する。
「カセットテープ……僕にインカムで指示してたのも、全部録音だったと!?」
「ああ、その通り。お前の歩幅からおおよそのタイミングを予測しただけだ」
「だけって……」
星が呆れた顔をする。もはや自分の命を危機に曝したことなんて気にかけていない様子だ。
「脱獄するために必要な情報は”相手の出方”。言わば戦略です。それを探るための火災報知機です」
まだ、大半のクラスメイトが頭にハテナを浮かべている。
「火のない所に煙は立たない。噂は、たった一つの微量な事実から生まれる。火災が起きたとなって監視する魔法を持ってる看守が、カメラを見ないはずがない。それは自らの力の利便性故です。」
カルネ先生がこくりと頷く。
「カメラを観ても火事なんて起きていない。真っ先に脱獄を疑うでしょうね。そして、俺は火災報知機を鳴らし、近くのトイレに入った。目聡い追手が来てもいいように、星のカース:【幻影】を使った」
「僕に幻影の軌道を作らせたのはそれか……」
「その隙に、手薄になった監視室のモニターを星に破壊してもらう。追手が来たのはまぁ予想の範疇だった」
すると、カルネ先生が怒鳴る。
「予想の範疇? どういことだ」
「……それも含め、全てお話ししましょう。俺が火災報知機を鳴らして、トイレにいる間、俺の存在は消えるんですよ。星のカースは自らの幻影がこの世に存在する場合、幻影の対象はあらゆる人やカメラから存在を阻害される。それを利用すると、火災報知機はひとりでに鳴り出す。そこに脱獄犯はいない。
かつ、トイレの場所の都合上、看守達がどうやって犯人を捕まえようとするか知ることができる。俺が帰るときも、星に幻影を作らせて存在を隠す手はずだったが、星が気絶したみたいだな」
「ああ、そうだ。お前の馬鹿みたいな戦略のせいでな」
「いいや? 俺は彼を見殺しにする気はありませんでしたけど?」
「今更何を言ってやがる」
「だって、カルネ先生が助けるじゃないですか」
「……は?いやまぁ、確かに私は助けたが」
「そう。この中で生徒に死なれたら一番困るのはあなたです。生徒に危害が及ぶとなれば、魔法を使ってでも、あなたは助けます。俺にはその確信があった」
「こいつめ……星は友達じゃないのかよ」
「親友ですよ。裏を返せば、親友”だから”彼を選んだ。並外れた身体能力と、俺への信頼。この二つが今回の戦略の前提条件だった」
「それで星を失ったらどうするつもりだったんだ」
「ん?先生自分で言ってたじゃないですか。この監獄の看守たちに殺意はない。だから実弾を使わないんでしょう?だとしたらまだ助けられます」
「正直俺は、星か未来、どちらかが俺の手札にあったら脱獄を成し遂げられる」
「え……」
未来が頬を赤らめる。
「わかったわかった。で、星が寝てる中お前はどうやって帰ってきたんだ?」
「簡単です。普通にトイレ行ってたフリしてましたけど」
「……は?そんなんで騙せるわけ、」
「監視カメラは壊れてるんですよ。看守は授業中の見回りはしない。監視の魔法なしに、僕の真実を捕捉できるわけないじゃないですか」
言われても想像のつかない戦略を、生徒達は黙って聞いていた。
「あ、そういえば俺がトイレから出るときに、こんな話を聞いたんですよね」
そう言って、零は再び話をする。
***
バトロ主任看守との話を終えて、篝看守は看守寮へと戻ろうとする。すると、トイレの水を流す音が聞こえた。出てくるのを待ってみる。トイレから出てきたその生徒は、先程の幻影とよく似ていた。
「ちょっと、君、そこで何してたの?」
「何って、トイレですけど……二階が満員だったので仕方なく。すみません」
「ああ。そうか。ところで君、名前は?」
「灯火 零です」
その名前は異名と共に、脳裏に刻まれた記憶から蘇る。
「君が……”劣弱の天才”か」
すると零は不思議そうな顔をする。
「なんですか?それ」
「君の二つ名だよ、凄いね。試験満点だなんて」
「恐縮です」
「カルネ主任看守も喜ぶね」
「そうですね。ところで、貴方の名前は?」
「ああ、僕は篝。最近ここに異動してきたんだ」
「なるほど、篝看守、よろしくお願いいたします」
火災報知機、劣弱の天才、何か怪しい感じがした。あとでバトロ主任看守に伝えておこう。
7『脱獄の時』
「劣弱の天才……か、そういえばそんなこと言ってる奴がいたわー」
「そんなことより、奴らの出方は伺えた。これならパターン4で詰められるはずだ。不味いのは、星の顔を看守に見られたことだ。そして問題は、資料に載っていなかった看守長の魔法が分からなかったことだ。表に出てこなかったのか?」
「まぁそれは私も答えを知らないんだけどなぁ」
「どういうことだ? カルネ先生」
「言葉の通り、私も知らないんだよ、看守長の魔法はな」
星が不思議そうな顔をする。
「僕へ放った魔法はたしか、インフェルノブラストとか言ってた……」
「インフェルノブラスト……恐らく扱った魔法は”爆発”だ。それならそいつは篝という名のはずだ。そして、さっき俺が話してたのは篝看守だ。状況からして、ほぼ同時刻だ」
「……二人いたのか?」
「そういう魔法があるということだ。これは非常に厄介な物だ。そいつの頭脳次第で、俺の戦略は一瞬にして瓦解する」
零がそっと目を閉じる。
「ふーん。そこまで言うとはね」
「俺の想定はあくまで資料に載っている魔法一つずつを同時に相手する場合だけだ。それが例えば、氷結と爆発魔法の二つずつとか来られるとちょっと厳しい」
「お前みたいな頭脳派はイレギュラーが弱点だからなー」
煽る様な態度だ。
「あと処理しきれる情報が多すぎると俺の頭が破裂します」
「お前にしては人間らしいこと言うじゃねえか」
カルネ先生がケラケラと笑う。
「どんな魔法使いも分身出来るとなっては、組むべきパターンが多すぎる。時間が足りない……。なるべく全てのケースに対応できる最小限のパターンを用意しよう」
「……リスクは?」
珍しく、零の喉元に言葉が詰まる。
「……リスク無き戦略にミライは無いんだ」
「零お前、少し謙虚になったみたいだな」
昔と変わった親友を見てニコッと笑う。
「はぁ?何を言ってるんだ、星」
「戦略を伝える時の大口はどこ行った?」
「あれは心理効果を狙ったまでだ」
「心理効果?」
零はこくりと頷く。
「大声かつ強い口調で話されると、人は従うだろ」
「だからカースで音量を……」
「隣の部屋にどのくらい音が通るかわからなかったからな」
星が意外そうな顔をする。
「案外細かいところまで考えてたんだな……ごめん怒って。零一人に戦略を任せているのに」
「ああ、別に良いんだ。俺はそんなの気にしない」
零はただ一点を見つめていた。
「……寝てないんだろ?」
「2時間は寝てる」
「死ぬぞお前!もっと自分の体を労れよ」
「愚か者が。そんなことしてたら時間が足りないんだ」
「……お前は何をする気なんだ?」
「脱獄を決意した時から、俺には目標が出来てしまった」
「零ちゃんは前まで脱獄なんて興味なかったもんね」
未来が付け加える。
「命は有限だからな」
「なのにお前、リスクを負わせるんだな」
星がいつもの調子で皮肉る。
「出来るだけ少なく済ませるよ」
「いつ決行するんだ?」
「今パターン五十四まで組めたのだが……もうちょっとスマートかつ低リスクな戦略がありそうなものなんだがな……」
「待て待て待て、この話してるうちに組んでたのか?」
星だけじゃなく、カルネ先生や未来まで驚いている。
「まぁ三十個程度かな」
「やっぱ人間じゃねえわ。コイツ……」
「「同感」」
カルネ先生と未来が口を揃えて言う。
「星」
ん?と星が零の方を向く。
「明日、決行する」
その場にいた三人が驚いた。
「死ぬなよ」
「そうならないように戦略を練っておけ」
「無論だ」
――分身の魔法は、資料になんてなかったはずだ。となるとあれは、看守長なのか?
***
――翌日。
「これより、クラスメイト全員での脱獄を決行する」
教室がざわついた。誰もが夢のまた夢だと思ってたから。それは、零達でさえも。
「作戦は星と未来の二人に行ってもらう」
「たったの二人……?」
「誰かさんが囮作戦は駄目って言うからな……」
「とは言え流石に少なすぎるんじゃ」
「今回は全員脱出させることが最終目標だ。よって、全員インカムと未来の氷剣を着用してもらう。そして今回は、殺害まで視野に入れてもらう。辛い役目だが、この役目は星に命じる。他生徒は襲撃された場合のみ殺害を許可する」
「本当に出来るのかー?」
「貴女の六百年生きた知恵に俺の知略は敵わないのでしょう。ですがこれは言っておきます」
「なんだ若僧。言ってみろ」
「犠牲を伴わずして結果は生まれない」
「私の尊敬するかの戦略家はこう言ったよ」
「……ほう」
「犠牲を生まない戦略を考えるのが戦略家の仕事だ」
「その戦略に応えるのが兵士の役目だ」
「な……お前……」
「もし俺がその戦略家なら、きっとそう続けます」
「ああ、そうか。好きにしろ……」
「作戦概要は、未来の水蒸気爆発による監獄上階の爆破と恐喝、人質作成。対象に青緑色の看守を選ぶ」
「選ぶって言ったって、どうやって」
「誘導するんだよ。それが戦略だ」
「まぁ、とっととみせてくれや、奇跡を。みんなもそれを望んでいる」
「奇跡がそう簡単に起きたら苦労しない。イレギュラーが発生しない限り、すべて計算だ」
そう言うと、零は隣の教室へ入って行く。
「少し待っててくれ。最後の準備がある。星、手筈通りに」
「了解」
***
私はヒサメ。ヒサメ・アルテミス。兄以外のすべての人間を”ゴミ”だと思っている。特に女の子。
事が起きたのは、見回りをしていたある日のことだった。
……ん?あれがお兄ちゃんの言っていた氷の剣を持った”ゴミ”か。すぐに始末してやりましょう。
「おい、そこで何をしている……待て!」
私は氷の剣を持った”ゴミ”を追い、階段を駆け降りていく。
しかし余りにも彼の足が速すぎて、距離は一向に縮む気配がない。仕方なく私は発砲する。彼は壁や剣を駆使して弾丸を振り払う。そうした末に、空き教室に逃がしてしまった。
私は勢いよくその教室の扉を開け、右手に銃を構える。
扉を開けた直後、私は右手を掴まれ、不意に銃を落としてしまう。
「ようこそヒサメ・アルテミス看守、咎人達の住む檻の中に。お兄様はお元気ですか?」
お兄ちゃんの名前を”ゴミ”が呼ぶなという憤怒は、私の手足が凍らされた冷たさによって冷静さを取り戻す。
「お前、よくも……」
「しばらくそこで待っていろ」
どうする……手を凍らされてしまっては、通信機器を使えない。
「今だ未来、地点Aを爆破しろ!」
とある男子生徒の声を受け、「未来」と思わしき生徒が廊下に出る。その直後、心臓を揺るがすかのような爆発音が轟いた。地震でも起こったかのような振動が全身に響く。
「ああっ」
私は揺れに耐えられず転んでしまった。
「お兄ちゃん……”ゴミ”共を……排除……」
そのまま意識が暗闇の向こう側に吸い込まれて行った。
***
「今だ未来、地点Aを爆破しろ!」
激しい轟音と共に、天井が崩落する。
「うわっ!?」「なんだ!?」
指示した地点を爆破すると、崩れた足場から看守たちが降ってきた。人が降る場面を目撃したは初めてだ。
「やはりそこが看守室か……予想通り。特徴的な青緑色の髪の看守、見回り時間を覚えておいて正解だったな。資料を見るにヒサメ看守はブラザーコンプレックス。というか資料に好きなものを記載するな、しかもお兄ちゃんとか書くな……」
「さて、後は交換条件で大好きなお兄様を支配してやる」
そう考えていた時だった。恐れていた事態が発生した。
「まずい、星!」
「了解!!」
教室に向かってくる人影は、紛れもなく看守だった。しかし他の看守とは違い銃じゃなくて剣を持っている。恐らく木刀なのだろう。
「なんでこんなに早く……一定の範囲に星の幻影を見せているはず。そもそも無駄に高いこの場所から不意打ちで落としたのに何故生きている?」
【星、相手の魔法は”瞬間移動”だ】
「瞬間移動!? ……やってやる」
「わたくしはリンドウ。看守として貴方を迎え撃つ。黒宮 星、ご覚悟を」
そう言って、星とリンドウ看守は刃を交える。数回、互いに空を切る。両者の実力は伯仲している。互いの命運を賭けて鎬を削りあう。
「こいつ、強い……」
「監獄育ちの子供とは思えない強さだな」
互角の両者勝敗は、事前準備によって明暗を分けた。
【星、間合いを取れ】
「……わかった」
星は身軽に後方へ跳んだ。
【初撃は間合いを詰めて真横に斬ってくる。回避しつつ隙ができた左半身に叩き込め】
そう、零が鋭いのは相手の癖や細かい動きも同様だ。
「喰らえ!」
星はがら空きになった脇腹に渾身の一撃を叩きこむ。
「ガアッ!?……ッハァ……」
余りの痛みに、リンドウは吐血した。お腹を抱えて俯せになっている。
【星、そのまま廊下を直進して校庭に行くぞ】
「え、みんなは?」
【とりあえず二人だけで行くぞ。あんな大人数で抜け道すら無いのに脱獄なんか出来るか。未来と俺は先に行っている】
「ああ、わかった」
8『戦果』
校庭では未来がヒサメ看守を抱えている。
「ヒサメを離せ」
「条件を飲んでくれたらいいぞ」
「ふざけるな。どの立場で言ってる」
「それ以上喋ったら大事な妹の命は無い」
「お前……看守を舐めるな!!」
「爆発魔法:【インフェルノブラスト】!!」
辺りを途轍もない熱気が包む。そして、零はニヤリと微笑む。
「未来、あれを頼む」
「わかった。カース:温度【絶対零度】」
「篝看守、化学はお好きですか?」
「何言ってんだこんな時に……」
「その炎と彼女の氷が交わったとき、水蒸気爆発が起こり、妹も監獄も、ましてや俺達も吹き飛ぶ」
「そんなのハッタリだ!」
「先程看守室の床を爆破したのは超小規模の水蒸気爆発です。それでも信じられないのですか?」
「クソッ……お前らなんかに……」
篝が炎を司った右腕を振り上げたのと同時に、星が後ろから切りかかる。
「ガアッ!?」
「さてと、こいつも人質にするか……」
すると、遠くから岩が飛んできた。
「危ない!!」
星が剣で撃ち落とす。
「いやー長らく脱獄なんて起きていなかったからねぇ。完全に油断したよ」
「お前は……」
その顔を見たとき、零はハッとした。こいつは資料に載っていない。即ち、看守長だ。
「おやおやこれは看守長様……。まさかお目にかかれる日が来ようとは夢にも思いませんでした」
「そのようだな、劣弱。さて、弱者の君は何がお望みだ?」
「監獄の鍵を頂くとしましょう。さもなければ……」
「全員爆破するんだろ?」
「わかってるじゃないですか。なら早く……」
「私は一向に構わない。困るのは君達さ」
「ほう?というと?」
「まだわからないか天才。所詮ガキだな。大人の厳しさを知らない」
「カルネ主任看守に唆されたのかな?」
「……まさか!?裏切ったのか、カルネ!?」
「正確にはちょっと違う。裏切ったのは彼だよ」
「叢雲……魁斗!?なんでお前が……」
「彼は看守側のスパイだ。君達を見張っていたんだよ」
「残念でしたーwww」
「ちなみに、カルネも失望してたさ……期待されていたのにね」
「違う、俺は……」
「もういいよ!……もういいよ零ちゃん。負けたんだよ、私達は……」
「ただ、お前は腐っても”劣弱の天才”と呼ばれるだけのことはあるんだ」
「何をする気だ、独房か?それとも懲罰房か?」
「出番だよ、トリネコ」
「はぁーい。待ってましたー」
トリネコ……その名前を聞いて悪寒が走る。
「まずい、こいつの魔法は……逃げろ、星、未来!」
その時、零の目には、そそくさとトリネコから離れていく看守長が映った。
「服従魔法:【ハートチェーン】♡」
零は二人を突き飛ばした。自らの犠牲を厭わずに……。
第一次脱獄戦争、結果
首謀者:B組
断罪者:篝・トリネコ
概要:灯火 零【行方不明】
5『抵抗の始まり』
監獄の中からは見えないが、この日はとても晴れた日だった。脱獄日和とでも言うべきか。
青き空の下、魔法もカースも持たない、劣弱の人間が、二回目の革命を起こした。
「戦略は一つ。まず、俺は別の部屋からマイクや通信で指揮を執る」
「別の部屋?」
星が首を傾げる。
「そりゃあ、看守が優秀ならばここに来るからな。俺が死んだらお前らの希望は潰えることになるぞ」
「普段は割と謙虚なくせに」
続けて、未来が不満そうな顔をした。
「安心しろ、お前たちの命も保証してやる。勿論星、お前もだ」
「……は? じゃああんな訓練を俺にさせたのは?」
「しいて言うなら未来への投資、かな。カルネ先生の言う通り、初回で脱獄なんて出来ない。だから、今回は比較的安全策を取っている。あの訓練は今後絶対に必要となる鍵だ。とはいえ、今回必要になる可能性があるということは考慮しておいてくれ」
「ふざけるなよ、俺がどんな思いで、痛みで、文字通り血の滲む努力したか……」
「そうだよ!星ちゃんは頑張ってた!」
「愚か者が!!」
静寂が辺りを支配した。
「逃げ出したい者だけ、俺についてこい!それ以外は置いて行く。俺の下に付く限り忘れるな、誰かの下に身を置く限り、抵抗と言う名の呪いから逃げることは許さない」
「じゃあ、お前の下からも逃げていいんだよな?」
「ああ。ただし、お前らが俺の首を縦に振らせたんだ。その清算くらいしてくれよ」
「わかった。私がしてやろう」
カルネ先生が言う。
「元はと言えば私が仕向けた事なんだ。申し訳ない」
零は、少し考える。
「……裏切るなよ」
そして零は別室に移動した。クラスメイトに指揮を執るため個室に入っていった。
***
クラスメイトが、星に話しかける。
「星や未来は零のこと友達だと思ってそうだからいいけどよぉ……俺達はそうはいかないんだ」
「でも、あいつ以外やれそうな奴はいない」
「それは……そうなんだけどよ、でも」
その言葉を搔き消すかのように、開戦の警鐘が鳴り響いた。
「うわっ!?」
鼓膜を突き刺すリリリリと言う若干低い騒音。これは、火災報知器の音だ。
【お前らは待機しろ!】
隣の部屋から聞こえてくる、くぐもった声。
「まあ、従ってみようぜ」
いつも楽観的な生徒が言う。
「私もそうするわー」
いつも明るい生徒が言う。
***
鳴り響く火災報知器の前に、佇む男がいた。そいつは少し細身だが、瘦せ型という訳ではない。身長は大体、百七十ぐらいか。
混乱する看守たちは、彼に気が付かなかったみたいだ。そのまま彼は、トイレに入っていった。
偶々そこに居合わせてしまっただけの生徒だと思った。だけど一応、僕はトイレ前で張ってみた。
胸元に貼られた名札を見ることが出来なかったのが悔やまれる。そして約五分後にその生徒は出てきた。
「待て!」
身柄を確保しようと、その少年に腕を伸ばす。しかしその手は、虚しく空を切るばかりだった。
その少年の姿に、ノイズがかかる。全身が蠢く黒い粒に覆われて、直後に霧散していった。
「……消えた?カースの一種か」
すると、細身の男の看守が話しかけてきた。
「どうした、篝看守」
「ああ、バトロ主任看守。こちらに生徒が逃亡してきたのですが、消えてしまいました」
「ほう?消えたと?」
「ええ、カースによる効果だと思われます」
「ふむ……幻影のカースか。一体どのクラスの……」
うーん、と少し考える。
「カルネ主任看守のクラスではないでしょうか」
「ああ、あの人ですか。カースを2つ所持している者がいましたね」
バトロ看守が呆れたような顔をする。
「参ってしまうね、こうもイレギュラーが発生すると。私の眼が届かぬ場所で、事が起こってしまうやもしれません」
「こうも?ということは、他にもそんな生徒が?」
「ああ、そうでしたね。貴方はついこの前まで病に臥していましたから、存じ上げないのも無理はない」
「この前の遊戯大会で、シド主任看守に全勝した者がいましてね」
遊戯大会……生徒達と看守が交流する場だ。演目はボードゲームやカードゲーム等々。
「……あの、すみません。自分、シド主任看守と面識がなくって。一体どういうお方なのか」
「ふむ……所属から1ヶ月なら仕方がないか。彼女は……あ……その……」
困った顔をして言葉を濁す。
「狂人なのですよ……」
「……はぁ」
「ちなみに、君と一歳差の少女です」
「え?15歳で主任に?」
「腕は確かなんだが、性格がちょっとな」
「狂人……」
「……はい、可憐な少女を表す言葉としては相応しくないのですが、彼女はギャンブル依存症なのです。といっても、賭け事にはめっぽうお強い。ポーカー等のカードゲームや、チェスやオセロ等のボードゲームにも深く精通しています」
「そんなお方に、生徒が全勝……?」
「私の眼があるので、イカサマなんて当然出来ません。あれは実力、いや、知力と勝負強さでしょう。加えて彼には異名があります」
そう言うと、バトロ主任看守が視線を落とす。
「その生徒のはカースの力がありません。それに加えて、毎回のように実力試験で満点を取っています。その名は……」
***
火災報知器が止まったか。”音”を聞く限り、動き方は五十秒前にここの上を集団が通過、ここから見て左廊下と右廊下を三十秒前に集団が通過。1分と少し後に後方廊下を通過。火災報知機の周りを取り囲むように集団が派遣されている。
――やはり脱獄を疑っているな。当然だ。ここにスプリンクラーが消すような火種はないからな。そして身柄の拘束もできない。さっきここに来た看守が証明してくれるだろう。見事に幻影に釣られたな。さて、残る問題は一つ。バトロとかいう主任看守だ。あくまで推測だが、【監視】の魔法に幻影は効かない、というのを逆手に取ってやるよ……。
6『劣弱の天才』
【星、インカムを付けろ。氷の剣は持ったな】
そう言われると、星はカルネ先生からインカムを渡された。
【付けたか。なら廊下に出て右に進め。そしたら付近に階段があるはずだ。3階に上がったら教えてくれ】
「上がったぞ、零」
【よし、ならば直進した部屋に放送監視室がある】
「ここか!」
【鍵は開けてある】
「開けて……?」
その言葉に、少しだけ引っ掛かる。
【そのモニターを全て剣で破壊しろ】
「了解した」
そう言うと星は、感情に任せてモニターを破壊し始めた。
【もしかしたら刺客が来るかもしれない。警戒しておけ】
そう言った矢先、破壊音を聞きつけた看守がやって来た。
「何をしている!?お前!」
「看守!?まずいな」
「こいつモニターを……ただじゃおかないぞ、懲罰房行きだ」
「しょうがない、突破する!」
星は不溶の氷剣を構える。
「氷の剣?囚人共が……調子に乗りやがって!」
すると、その看守は人差し指を前に出す。
「爆発魔法【インフェルノブラスト】」
一瞬にして、室内が熱気に包まれる。溶けないはずの氷の剣から、雫が零れていく。
「焼き尽くせ。俺の魔法よ!」
その指先に、火球が灯る。眩い黄昏色の閃光を発し、刻々とその火球は肥大化し、全てを飲みこんでいった……。
***
「あ、起きた!」
未来がパーッと嬉しそうな顔をする。
「零は……?」
心配と若干の怒りを感じる声色だ。
「まだ帰ってきてないよ。隣の部屋にもいなくってさ」
未来が泣きそうな顔をする。
「そっか……」
すると、教室の扉が開いた。
「帰ってきたー!零ちゃーん!」
未来が零に抱きつこうとする。しかし、それを零は身軽にかわす。
「なぁ、零!あれはどういう……」
その言葉を遮るようにカルネ先生が叫ぶ。
「零!これはどういうことだ!」
「俺がどういう戦略を建てるかわからないそっちが悪い」
「……っ!」
カルネ先生にとって、その言葉は図星だった。カルネ先生はある程度の線引きをしてしまったからだ。”全員で脱獄する”というゴールライン。そこを守っていれば事実上、零は何やってもいい。それに気付いたカルネ先生は激しく後悔した。
「……待て、お前はどこにいたんだ?」
「流石の先生でもお気づきになられませんでしたか」
「ああ、隣の空き部屋にあったのはこれだからな」
それは、小さなカセットテープだった。
「このテープは私が貸したものだ。まさかこんな使い方をするなんてな。音量がやけに大きかったが、あれはもしかしてカースか?」
零が澄ました顔をする。
「ご名答。叢雲 魁斗君のカース:【情報伝播】です」
そういうと、教室の後ろの方を指さす。少しミステリアスで無口な子だ。
「……で?お前はどこにいたんだ?」
「トイレです。三階の」
大半のクラスメイトが頭にハテナを浮かべている。
「因みに三階は、看守寮や監視室がある階だ」
カルネ先生が補足する。
「カセットテープ……僕にインカムで指示してたのも、全部録音だったと!?」
「ああ、その通り。お前の歩幅からおおよそのタイミングを予測しただけだ」
「だけって……」
星が呆れた顔をする。もはや自分の命を危機に曝したことなんて気にかけていない様子だ。
「脱獄するために必要な情報は”相手の出方”。言わば戦略です。それを探るための火災報知機です」
まだ、大半のクラスメイトが頭にハテナを浮かべている。
「火のない所に煙は立たない。噂は、たった一つの微量な事実から生まれる。火災が起きたとなって監視する魔法を持ってる看守が、カメラを見ないはずがない。それは自らの力の利便性故です。」
カルネ先生がこくりと頷く。
「カメラを観ても火事なんて起きていない。真っ先に脱獄を疑うでしょうね。そして、俺は火災報知機を鳴らし、近くのトイレに入った。目聡い追手が来てもいいように、星のカース:【幻影】を使った」
「僕に幻影の軌道を作らせたのはそれか……」
「その隙に、手薄になった監視室のモニターを星に破壊してもらう。追手が来たのはまぁ予想の範疇だった」
すると、カルネ先生が怒鳴る。
「予想の範疇? どういことだ」
「……それも含め、全てお話ししましょう。俺が火災報知機を鳴らして、トイレにいる間、俺の存在は消えるんですよ。星のカースは自らの幻影がこの世に存在する場合、幻影の対象はあらゆる人やカメラから存在を阻害される。それを利用すると、火災報知機はひとりでに鳴り出す。そこに脱獄犯はいない。
かつ、トイレの場所の都合上、看守達がどうやって犯人を捕まえようとするか知ることができる。俺が帰るときも、星に幻影を作らせて存在を隠す手はずだったが、星が気絶したみたいだな」
「ああ、そうだ。お前の馬鹿みたいな戦略のせいでな」
「いいや? 俺は彼を見殺しにする気はありませんでしたけど?」
「今更何を言ってやがる」
「だって、カルネ先生が助けるじゃないですか」
「……は?いやまぁ、確かに私は助けたが」
「そう。この中で生徒に死なれたら一番困るのはあなたです。生徒に危害が及ぶとなれば、魔法を使ってでも、あなたは助けます。俺にはその確信があった」
「こいつめ……星は友達じゃないのかよ」
「親友ですよ。裏を返せば、親友”だから”彼を選んだ。並外れた身体能力と、俺への信頼。この二つが今回の戦略の前提条件だった」
「それで星を失ったらどうするつもりだったんだ」
「ん?先生自分で言ってたじゃないですか。この監獄の看守たちに殺意はない。だから実弾を使わないんでしょう?だとしたらまだ助けられます」
「正直俺は、星か未来、どちらかが俺の手札にあったら脱獄を成し遂げられる」
「え……」
未来が頬を赤らめる。
「わかったわかった。で、星が寝てる中お前はどうやって帰ってきたんだ?」
「簡単です。普通にトイレ行ってたフリしてましたけど」
「……は?そんなんで騙せるわけ、」
「監視カメラは壊れてるんですよ。看守は授業中の見回りはしない。監視の魔法なしに、僕の真実を捕捉できるわけないじゃないですか」
言われても想像のつかない戦略を、生徒達は黙って聞いていた。
「あ、そういえば俺がトイレから出るときに、こんな話を聞いたんですよね」
そう言って、零は再び話をする。
***
バトロ主任看守との話を終えて、篝看守は看守寮へと戻ろうとする。すると、トイレの水を流す音が聞こえた。出てくるのを待ってみる。トイレから出てきたその生徒は、先程の幻影とよく似ていた。
「ちょっと、君、そこで何してたの?」
「何って、トイレですけど……二階が満員だったので仕方なく。すみません」
「ああ。そうか。ところで君、名前は?」
「灯火 零です」
その名前は異名と共に、脳裏に刻まれた記憶から蘇る。
「君が……”劣弱の天才”か」
すると零は不思議そうな顔をする。
「なんですか?それ」
「君の二つ名だよ、凄いね。試験満点だなんて」
「恐縮です」
「カルネ主任看守も喜ぶね」
「そうですね。ところで、貴方の名前は?」
「ああ、僕は篝。最近ここに異動してきたんだ」
「なるほど、篝看守、よろしくお願いいたします」
火災報知機、劣弱の天才、何か怪しい感じがした。あとでバトロ主任看守に伝えておこう。
7『脱獄の時』
「劣弱の天才……か、そういえばそんなこと言ってる奴がいたわー」
「そんなことより、奴らの出方は伺えた。これならパターン4で詰められるはずだ。不味いのは、星の顔を看守に見られたことだ。そして問題は、資料に載っていなかった看守長の魔法が分からなかったことだ。表に出てこなかったのか?」
「まぁそれは私も答えを知らないんだけどなぁ」
「どういうことだ? カルネ先生」
「言葉の通り、私も知らないんだよ、看守長の魔法はな」
星が不思議そうな顔をする。
「僕へ放った魔法はたしか、インフェルノブラストとか言ってた……」
「インフェルノブラスト……恐らく扱った魔法は”爆発”だ。それならそいつは篝という名のはずだ。そして、さっき俺が話してたのは篝看守だ。状況からして、ほぼ同時刻だ」
「……二人いたのか?」
「そういう魔法があるということだ。これは非常に厄介な物だ。そいつの頭脳次第で、俺の戦略は一瞬にして瓦解する」
零がそっと目を閉じる。
「ふーん。そこまで言うとはね」
「俺の想定はあくまで資料に載っている魔法一つずつを同時に相手する場合だけだ。それが例えば、氷結と爆発魔法の二つずつとか来られるとちょっと厳しい」
「お前みたいな頭脳派はイレギュラーが弱点だからなー」
煽る様な態度だ。
「あと処理しきれる情報が多すぎると俺の頭が破裂します」
「お前にしては人間らしいこと言うじゃねえか」
カルネ先生がケラケラと笑う。
「どんな魔法使いも分身出来るとなっては、組むべきパターンが多すぎる。時間が足りない……。なるべく全てのケースに対応できる最小限のパターンを用意しよう」
「……リスクは?」
珍しく、零の喉元に言葉が詰まる。
「……リスク無き戦略にミライは無いんだ」
「零お前、少し謙虚になったみたいだな」
昔と変わった親友を見てニコッと笑う。
「はぁ?何を言ってるんだ、星」
「戦略を伝える時の大口はどこ行った?」
「あれは心理効果を狙ったまでだ」
「心理効果?」
零はこくりと頷く。
「大声かつ強い口調で話されると、人は従うだろ」
「だからカースで音量を……」
「隣の部屋にどのくらい音が通るかわからなかったからな」
星が意外そうな顔をする。
「案外細かいところまで考えてたんだな……ごめん怒って。零一人に戦略を任せているのに」
「ああ、別に良いんだ。俺はそんなの気にしない」
零はただ一点を見つめていた。
「……寝てないんだろ?」
「2時間は寝てる」
「死ぬぞお前!もっと自分の体を労れよ」
「愚か者が。そんなことしてたら時間が足りないんだ」
「……お前は何をする気なんだ?」
「脱獄を決意した時から、俺には目標が出来てしまった」
「零ちゃんは前まで脱獄なんて興味なかったもんね」
未来が付け加える。
「命は有限だからな」
「なのにお前、リスクを負わせるんだな」
星がいつもの調子で皮肉る。
「出来るだけ少なく済ませるよ」
「いつ決行するんだ?」
「今パターン五十四まで組めたのだが……もうちょっとスマートかつ低リスクな戦略がありそうなものなんだがな……」
「待て待て待て、この話してるうちに組んでたのか?」
星だけじゃなく、カルネ先生や未来まで驚いている。
「まぁ三十個程度かな」
「やっぱ人間じゃねえわ。コイツ……」
「「同感」」
カルネ先生と未来が口を揃えて言う。
「星」
ん?と星が零の方を向く。
「明日、決行する」
その場にいた三人が驚いた。
「死ぬなよ」
「そうならないように戦略を練っておけ」
「無論だ」
――分身の魔法は、資料になんてなかったはずだ。となるとあれは、看守長なのか?
***
――翌日。
「これより、クラスメイト全員での脱獄を決行する」
教室がざわついた。誰もが夢のまた夢だと思ってたから。それは、零達でさえも。
「作戦は星と未来の二人に行ってもらう」
「たったの二人……?」
「誰かさんが囮作戦は駄目って言うからな……」
「とは言え流石に少なすぎるんじゃ」
「今回は全員脱出させることが最終目標だ。よって、全員インカムと未来の氷剣を着用してもらう。そして今回は、殺害まで視野に入れてもらう。辛い役目だが、この役目は星に命じる。他生徒は襲撃された場合のみ殺害を許可する」
「本当に出来るのかー?」
「貴女の六百年生きた知恵に俺の知略は敵わないのでしょう。ですがこれは言っておきます」
「なんだ若僧。言ってみろ」
「犠牲を伴わずして結果は生まれない」
「私の尊敬するかの戦略家はこう言ったよ」
「……ほう」
「犠牲を生まない戦略を考えるのが戦略家の仕事だ」
「その戦略に応えるのが兵士の役目だ」
「な……お前……」
「もし俺がその戦略家なら、きっとそう続けます」
「ああ、そうか。好きにしろ……」
「作戦概要は、未来の水蒸気爆発による監獄上階の爆破と恐喝、人質作成。対象に青緑色の看守を選ぶ」
「選ぶって言ったって、どうやって」
「誘導するんだよ。それが戦略だ」
「まぁ、とっととみせてくれや、奇跡を。みんなもそれを望んでいる」
「奇跡がそう簡単に起きたら苦労しない。イレギュラーが発生しない限り、すべて計算だ」
そう言うと、零は隣の教室へ入って行く。
「少し待っててくれ。最後の準備がある。星、手筈通りに」
「了解」
***
私はヒサメ。ヒサメ・アルテミス。兄以外のすべての人間を”ゴミ”だと思っている。特に女の子。
事が起きたのは、見回りをしていたある日のことだった。
……ん?あれがお兄ちゃんの言っていた氷の剣を持った”ゴミ”か。すぐに始末してやりましょう。
「おい、そこで何をしている……待て!」
私は氷の剣を持った”ゴミ”を追い、階段を駆け降りていく。
しかし余りにも彼の足が速すぎて、距離は一向に縮む気配がない。仕方なく私は発砲する。彼は壁や剣を駆使して弾丸を振り払う。そうした末に、空き教室に逃がしてしまった。
私は勢いよくその教室の扉を開け、右手に銃を構える。
扉を開けた直後、私は右手を掴まれ、不意に銃を落としてしまう。
「ようこそヒサメ・アルテミス看守、咎人達の住む檻の中に。お兄様はお元気ですか?」
お兄ちゃんの名前を”ゴミ”が呼ぶなという憤怒は、私の手足が凍らされた冷たさによって冷静さを取り戻す。
「お前、よくも……」
「しばらくそこで待っていろ」
どうする……手を凍らされてしまっては、通信機器を使えない。
「今だ未来、地点Aを爆破しろ!」
とある男子生徒の声を受け、「未来」と思わしき生徒が廊下に出る。その直後、心臓を揺るがすかのような爆発音が轟いた。地震でも起こったかのような振動が全身に響く。
「ああっ」
私は揺れに耐えられず転んでしまった。
「お兄ちゃん……”ゴミ”共を……排除……」
そのまま意識が暗闇の向こう側に吸い込まれて行った。
***
「今だ未来、地点Aを爆破しろ!」
激しい轟音と共に、天井が崩落する。
「うわっ!?」「なんだ!?」
指示した地点を爆破すると、崩れた足場から看守たちが降ってきた。人が降る場面を目撃したは初めてだ。
「やはりそこが看守室か……予想通り。特徴的な青緑色の髪の看守、見回り時間を覚えておいて正解だったな。資料を見るにヒサメ看守はブラザーコンプレックス。というか資料に好きなものを記載するな、しかもお兄ちゃんとか書くな……」
「さて、後は交換条件で大好きなお兄様を支配してやる」
そう考えていた時だった。恐れていた事態が発生した。
「まずい、星!」
「了解!!」
教室に向かってくる人影は、紛れもなく看守だった。しかし他の看守とは違い銃じゃなくて剣を持っている。恐らく木刀なのだろう。
「なんでこんなに早く……一定の範囲に星の幻影を見せているはず。そもそも無駄に高いこの場所から不意打ちで落としたのに何故生きている?」
【星、相手の魔法は”瞬間移動”だ】
「瞬間移動!? ……やってやる」
「わたくしはリンドウ。看守として貴方を迎え撃つ。黒宮 星、ご覚悟を」
そう言って、星とリンドウ看守は刃を交える。数回、互いに空を切る。両者の実力は伯仲している。互いの命運を賭けて鎬を削りあう。
「こいつ、強い……」
「監獄育ちの子供とは思えない強さだな」
互角の両者勝敗は、事前準備によって明暗を分けた。
【星、間合いを取れ】
「……わかった」
星は身軽に後方へ跳んだ。
【初撃は間合いを詰めて真横に斬ってくる。回避しつつ隙ができた左半身に叩き込め】
そう、零が鋭いのは相手の癖や細かい動きも同様だ。
「喰らえ!」
星はがら空きになった脇腹に渾身の一撃を叩きこむ。
「ガアッ!?……ッハァ……」
余りの痛みに、リンドウは吐血した。お腹を抱えて俯せになっている。
【星、そのまま廊下を直進して校庭に行くぞ】
「え、みんなは?」
【とりあえず二人だけで行くぞ。あんな大人数で抜け道すら無いのに脱獄なんか出来るか。未来と俺は先に行っている】
「ああ、わかった」
8『戦果』
校庭では未来がヒサメ看守を抱えている。
「ヒサメを離せ」
「条件を飲んでくれたらいいぞ」
「ふざけるな。どの立場で言ってる」
「それ以上喋ったら大事な妹の命は無い」
「お前……看守を舐めるな!!」
「爆発魔法:【インフェルノブラスト】!!」
辺りを途轍もない熱気が包む。そして、零はニヤリと微笑む。
「未来、あれを頼む」
「わかった。カース:温度【絶対零度】」
「篝看守、化学はお好きですか?」
「何言ってんだこんな時に……」
「その炎と彼女の氷が交わったとき、水蒸気爆発が起こり、妹も監獄も、ましてや俺達も吹き飛ぶ」
「そんなのハッタリだ!」
「先程看守室の床を爆破したのは超小規模の水蒸気爆発です。それでも信じられないのですか?」
「クソッ……お前らなんかに……」
篝が炎を司った右腕を振り上げたのと同時に、星が後ろから切りかかる。
「ガアッ!?」
「さてと、こいつも人質にするか……」
すると、遠くから岩が飛んできた。
「危ない!!」
星が剣で撃ち落とす。
「いやー長らく脱獄なんて起きていなかったからねぇ。完全に油断したよ」
「お前は……」
その顔を見たとき、零はハッとした。こいつは資料に載っていない。即ち、看守長だ。
「おやおやこれは看守長様……。まさかお目にかかれる日が来ようとは夢にも思いませんでした」
「そのようだな、劣弱。さて、弱者の君は何がお望みだ?」
「監獄の鍵を頂くとしましょう。さもなければ……」
「全員爆破するんだろ?」
「わかってるじゃないですか。なら早く……」
「私は一向に構わない。困るのは君達さ」
「ほう?というと?」
「まだわからないか天才。所詮ガキだな。大人の厳しさを知らない」
「カルネ主任看守に唆されたのかな?」
「……まさか!?裏切ったのか、カルネ!?」
「正確にはちょっと違う。裏切ったのは彼だよ」
「叢雲……魁斗!?なんでお前が……」
「彼は看守側のスパイだ。君達を見張っていたんだよ」
「残念でしたーwww」
「ちなみに、カルネも失望してたさ……期待されていたのにね」
「違う、俺は……」
「もういいよ!……もういいよ零ちゃん。負けたんだよ、私達は……」
「ただ、お前は腐っても”劣弱の天才”と呼ばれるだけのことはあるんだ」
「何をする気だ、独房か?それとも懲罰房か?」
「出番だよ、トリネコ」
「はぁーい。待ってましたー」
トリネコ……その名前を聞いて悪寒が走る。
「まずい、こいつの魔法は……逃げろ、星、未来!」
その時、零の目には、そそくさとトリネコから離れていく看守長が映った。
「服従魔法:【ハートチェーン】♡」
零は二人を突き飛ばした。自らの犠牲を厭わずに……。
第一次脱獄戦争、結果
首謀者:B組
断罪者:篝・トリネコ
概要:灯火 零【行方不明】
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。
ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。
真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。
引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。
偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。
ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。
優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。
大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。
再婚相手の連れ子は、僕が恋したレンタル彼女。――完璧な義妹は、深夜の自室で「練習」を強いてくる
まさき
恋愛
「初めまして、お兄さん。これからよろしくお願いしますね」
父の再婚によって現れた義理の妹・水瀬 凛(みなせ りん)。
清楚なワンピースを纏い、非の打ち所がない笑顔で挨拶をする彼女を見て、僕は息が止まるかと思った。
なぜなら彼女は、僕が貯金を叩いて一度だけレンタルし、その圧倒的なプロ意識と可憐さに――本気で恋をしてしまった人気No.1レンタル彼女だったから。
学校では誰もが憧れる高嶺の花。
家では親も感心するほど「理想の妹」を演じる彼女。
しかし、二人きりになった深夜のキッチンで、彼女は冷たい瞳で僕を射抜く。
「……私の仕事のこと、親に言ったらタダじゃおかないから」
秘密を共有したことで始まった、一つ屋根の下の奇妙な生活。
彼女は「さらなるスキルアップ」を名目に、僕の部屋を訪れるようになる。
「ねえ、もっと本気で抱きしめて。……そんなんじゃ、次のデートの練習にならないでしょ?」
これは、仕事(レンタル)か、演技(家族)か、それとも――。
完璧すぎる義妹に翻弄され、理性が溶けていく10日間の物語。
『著者より』
もしこの話が合えば、マイページに他の作品も置いてあります。
https://www.alphapolis.co.jp/author/detail/658724858
覚悟は良いですか、お父様? ―虐げられた娘はお家乗っ取りを企んだ婿の父とその愛人の娘である異母妹をまとめて追い出す―
Erin
恋愛
【完結済・全3話】伯爵令嬢のカメリアは母が死んだ直後に、父が屋敷に連れ込んだ愛人とその子に虐げられていた。その挙句、カメリアが十六歳の成人後に継ぐ予定の伯爵家から追い出し、伯爵家の血を一滴も引かない異母妹に継がせると言い出す。後を継がないカメリアには嗜虐趣味のある男に嫁がられることになった。絶対に父たちの言いなりになりたくないカメリアは家を出て復讐することにした。7/6に最終話投稿予定。
冤罪で辺境に幽閉された第4王子
satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。
「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。
辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる