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【4】女装すると化ける平凡な同僚にコスプレさせて魔法少女縛りの写真集を制作し、コ○ケに出る話
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伊紀は先日撮った俺の魔法少女コスプレ写真をSNSにアップしていたらしい。
「おい、凄い反響だぞ、鹿江!」
「なんだよ! いつの間にそんなものアップしてたんだよ! 俺に許可ぐらいとれよな。肖像権、肖像権!」
「それもそうだけど、それより反響の大きさに反応してくれ」
わかった、と言って俺は伊紀が開いているスマホの画面を覗き込む。そして、口を開けて固まった。
「大したことないと思ったか?」
「思ったわけないだろ。そういう固まり方じゃねーよ。お前じゃあるまいし」
「なあ、これいけるよな? 鹿江となら遠くへ行けるよな? 俺を高いところに連れてってくれるよな?」
「俺が連れていくんじゃなくて、伊紀と一緒に登っていくんだろ。俺は伊紀の隣で歩きながら見る景色は結構好きだぜ」
「そこまで言うんだったら最後まで道連れだ」
伊紀は意地が悪いとも不敵とも素直とも言える笑みを浮かべた。
「伊紀って語彙がいちいちなんとなく暗いよな」
その後、俺は伊紀の家で伊紀のおすすめ魔法少女アニメを二人で見ていた
今回の話の主人公は小柄で華奢(貧相)な三つ編みメガネの大人しそうな外見の女の子でありながら、口調は粗暴でかったるげに喋る。父子家庭だが父親に対してツンデレでありながら関係性は良く、幸せな日々を送っている。
主人公の専らの悩みは家族関係でも学校生活でもなく、人類を脅かす死霊が見えてしまうこと。見えるからには戦わなければならない、それがこの世界の宿命だ。
ある時、主人公は美人でスタイル抜群、大人っぽい雰囲気で腹黒く、口の上手い、自分とは対照的な魔法少女に出会う。彼女は主人公の持っていない強力な魔力を有していながら、主人公の持っているような幸せを何一つ手にせずに生きてきた子だった。主人公は彼女に嫉妬から執着されてしまう。彼女は観察するようにして主人公に付きまとう。
しかし、その強大な魔力で主人公を助けてくれることも度々あり、次第に二人の距離は縮まっていく。
そうして戦いを続けるうちに二人はこの世界の残酷な真実を知っていく。
死霊とはつまり、死した人間の魂なわけだがその魂が入っていた肉体はラスボスの体内に取り込まれており、魂が体内に戻ることでその人間は蘇生することができる。
言うなれば、主人公たち魔法少女は罪なき人々を死霊から守ると同時に、罪なき人々の蘇生のチャンスを阻害してもいたのだ。とはいえ、一度、肉体をラスボスに取り込まれた者は、ラスボスの体内にラスボスの栄養源となる魂のコピーを取られており、魂の原本ごと完全に滅ぼされるまでラスボスの活動の糧にされつづける。
最終話間近、父子家庭の育ちである主人公はラスボスの体内に自分の母親の肉体があることを知る。ラスボスの活動を止めるためにはラスボスの体内に肉体がある人間たちの死霊と化した魂を全て殲滅する必要があるのだが、主人公は亡くなった母親ともう一度、共に暮らせるかもしれないチャンスに目が眩んで戦闘の手を緩めてしまう。その時、相棒の魔法少女が言う。
『私はあなたを親友だと思う。あなたも私を親友と思ってくれていると信じている。もしあなたが私を愛してくれているのならば、叶うことならば、いえ、非道なことを言っているのは分かっているけれど、私にも幸せというものをくれないかしら。こいつを倒して、私は自分が立派な大きなことを成し遂げたというただそれだけひとつ、人生において満足できる思い出がとにかく欲しい』
懇願されて主人公の武器を持つ手は震える。主人公が悲しみと未練に震える手で母親の死霊に攻撃を浴びせようとした瞬間、親友は『やっぱりいい!』と叫んで主人公に後ろから抱きつき、母親への攻撃を阻止する。
『私はあなたに出会えただけで十分幸せだった! これ以上を望む必要なんてなかった!』
大好き。彼女はそう言って主人公をきつく抱きしめた。
しかし、主人公は次の瞬間、母親の死霊を攻撃した。
『アタシだってもう十分! 十分すぎるくらいだよ! アンタはアタシと出会えたっていう一個だけなんかじゃなくて、もっともっと欲張っていっぱい幸せになりな! いや、なれ! 親友命令だ!」
そう叫びながら主人公は号泣していた。台詞での説明がなくても二種類の涙が同時に流れているとすぐにわかった。
俺は母親を亡くした主人公の境遇に共感して泣いたが、伊紀は……俺以上に号泣していた。伊紀にとって大切な作品なんだろう。そういう作品というのは何度見ても泣けるものだもんな。
泣いている俺を鹿江がチラ見したのがわかった。改めて今、観返すと、この子たちは俺たちみたいだ。というか、俺が鹿江に抱いている感情はきっとこの親友ポジが主人公に抱いている感情と同じなんだ。
鹿江がどんな家庭環境で育ったかは知らない。でも、鹿江には光の中で育ってきていてほしいという勝手な思いが俺の中にあるから、幸せな家庭環境で育っていてくれたらいいなと非常に勝手ながら思う。
「おい、凄い反響だぞ、鹿江!」
「なんだよ! いつの間にそんなものアップしてたんだよ! 俺に許可ぐらいとれよな。肖像権、肖像権!」
「それもそうだけど、それより反響の大きさに反応してくれ」
わかった、と言って俺は伊紀が開いているスマホの画面を覗き込む。そして、口を開けて固まった。
「大したことないと思ったか?」
「思ったわけないだろ。そういう固まり方じゃねーよ。お前じゃあるまいし」
「なあ、これいけるよな? 鹿江となら遠くへ行けるよな? 俺を高いところに連れてってくれるよな?」
「俺が連れていくんじゃなくて、伊紀と一緒に登っていくんだろ。俺は伊紀の隣で歩きながら見る景色は結構好きだぜ」
「そこまで言うんだったら最後まで道連れだ」
伊紀は意地が悪いとも不敵とも素直とも言える笑みを浮かべた。
「伊紀って語彙がいちいちなんとなく暗いよな」
その後、俺は伊紀の家で伊紀のおすすめ魔法少女アニメを二人で見ていた
今回の話の主人公は小柄で華奢(貧相)な三つ編みメガネの大人しそうな外見の女の子でありながら、口調は粗暴でかったるげに喋る。父子家庭だが父親に対してツンデレでありながら関係性は良く、幸せな日々を送っている。
主人公の専らの悩みは家族関係でも学校生活でもなく、人類を脅かす死霊が見えてしまうこと。見えるからには戦わなければならない、それがこの世界の宿命だ。
ある時、主人公は美人でスタイル抜群、大人っぽい雰囲気で腹黒く、口の上手い、自分とは対照的な魔法少女に出会う。彼女は主人公の持っていない強力な魔力を有していながら、主人公の持っているような幸せを何一つ手にせずに生きてきた子だった。主人公は彼女に嫉妬から執着されてしまう。彼女は観察するようにして主人公に付きまとう。
しかし、その強大な魔力で主人公を助けてくれることも度々あり、次第に二人の距離は縮まっていく。
そうして戦いを続けるうちに二人はこの世界の残酷な真実を知っていく。
死霊とはつまり、死した人間の魂なわけだがその魂が入っていた肉体はラスボスの体内に取り込まれており、魂が体内に戻ることでその人間は蘇生することができる。
言うなれば、主人公たち魔法少女は罪なき人々を死霊から守ると同時に、罪なき人々の蘇生のチャンスを阻害してもいたのだ。とはいえ、一度、肉体をラスボスに取り込まれた者は、ラスボスの体内にラスボスの栄養源となる魂のコピーを取られており、魂の原本ごと完全に滅ぼされるまでラスボスの活動の糧にされつづける。
最終話間近、父子家庭の育ちである主人公はラスボスの体内に自分の母親の肉体があることを知る。ラスボスの活動を止めるためにはラスボスの体内に肉体がある人間たちの死霊と化した魂を全て殲滅する必要があるのだが、主人公は亡くなった母親ともう一度、共に暮らせるかもしれないチャンスに目が眩んで戦闘の手を緩めてしまう。その時、相棒の魔法少女が言う。
『私はあなたを親友だと思う。あなたも私を親友と思ってくれていると信じている。もしあなたが私を愛してくれているのならば、叶うことならば、いえ、非道なことを言っているのは分かっているけれど、私にも幸せというものをくれないかしら。こいつを倒して、私は自分が立派な大きなことを成し遂げたというただそれだけひとつ、人生において満足できる思い出がとにかく欲しい』
懇願されて主人公の武器を持つ手は震える。主人公が悲しみと未練に震える手で母親の死霊に攻撃を浴びせようとした瞬間、親友は『やっぱりいい!』と叫んで主人公に後ろから抱きつき、母親への攻撃を阻止する。
『私はあなたに出会えただけで十分幸せだった! これ以上を望む必要なんてなかった!』
大好き。彼女はそう言って主人公をきつく抱きしめた。
しかし、主人公は次の瞬間、母親の死霊を攻撃した。
『アタシだってもう十分! 十分すぎるくらいだよ! アンタはアタシと出会えたっていう一個だけなんかじゃなくて、もっともっと欲張っていっぱい幸せになりな! いや、なれ! 親友命令だ!」
そう叫びながら主人公は号泣していた。台詞での説明がなくても二種類の涙が同時に流れているとすぐにわかった。
俺は母親を亡くした主人公の境遇に共感して泣いたが、伊紀は……俺以上に号泣していた。伊紀にとって大切な作品なんだろう。そういう作品というのは何度見ても泣けるものだもんな。
泣いている俺を鹿江がチラ見したのがわかった。改めて今、観返すと、この子たちは俺たちみたいだ。というか、俺が鹿江に抱いている感情はきっとこの親友ポジが主人公に抱いている感情と同じなんだ。
鹿江がどんな家庭環境で育ったかは知らない。でも、鹿江には光の中で育ってきていてほしいという勝手な思いが俺の中にあるから、幸せな家庭環境で育っていてくれたらいいなと非常に勝手ながら思う。
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