私には、大切な人がいます。でも、この想いは告げないつもりです。――そのつもりだったのですが……まさかの展開です。

茉瀬 薫

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エピローグ

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 日向と気持ちを伝え合い、結ばれてから三年の月日が経った。
 日本に一時帰国した当初は、こんなに充実した日々を過ごせるだなんて思いもしなかった。
 でも、時というのは儚いもので、あっという間に過ぎ去ってゆく。

 私達は再び、あの道路橋の下に来ていた。
 一週間ほど前に、フィギュアスケートのオリンピックが開催された。
 そして、私はそこで優勝した。
 子供の頃からの夢だった。
 だから、とっても嬉しかった。
 リンクサイドで腕を広げて待っていてくれた日向の姿が、ひどく歪んで見えたくらいに。

 欧州に渡って、スケート一筋に努力を始めてから八年。
 幼馴染への恋慕を諦めて、彼から離れる決意をしてから八年。
 夢を叶えることを決意して八年。
 日向から告白されて三年。
 日向と結ばれて三年。
 日向が欧州の大学に入学して二年。

 本当に色々あったけど、何があっても日向は私に優しく寄り添ってくれた。
 私は、あんまり『 if 話 』は好きじゃないんだけど。
 でも、もし。
 もしあの時、日向と話せなかったら。
 きっと、今の私はなかっただろう。
 ただひたすらに、がむしゃらに努力を続けて。
 なんの充実感も得られないまま、虚脱感を胸に抱いて。
 どっかで限界が来ていたと思う。

 でもやっと、これまでの努力が実を結んだんだ。
 不意に、涙がこぼれた。
 隣に並ぶ日向が、私の手に彼の手を重ね、そっと胸に引き寄せてくれた。

 私が帰る場所は、あの時からいつも、彼の腕の中。
 そして、彼と二人で、幸せをかみしめながら歩いていくんだ。
 今日も、明日も、一週間後も、一ヶ月後も、一年後も。
 一生、永遠に――。
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