娼館で元夫と再会しました

無味無臭(不定期更新)

文字の大きさ
4 / 8

再会



会いたくなかったのに。
元夫と娼館で再会なんて、なんという不運なの?

私は心のなかで嘆いた。


「アリス、君はどうしてここで働いているんだ?」


しかしそんな私の焦りとは裏腹に、元夫シークの声は怒気を孕んでいた。
途端に寒気がしてくる。

どうしてこんなに怒っているの?


「お金を稼ぐためですけど…」


私は正直にそう答えた。


「僕という夫がいるのに、娼婦として働いていたのか?」


「離婚届を机に置いといたはずですよ、家を出た私が何をしようと貴方にはもう関係ないですわ。」


元夫が怒っているのを初めて見た。
いや、そもそも元夫が感情を露にしている姿を見たことがなかった。

でも、そちらが怒るのはおかしいんじゃないかしら?


「君は…僕がサインするとでも思ったのか。」


一体なんなの。
まるで心外、とでもいうように私を見る元夫。


「そう思ってましたけど?
そんな風な態度だったじゃありませんか。
どうしてここに来たんですか?
それにそもそもどうやって私の居場所を…
まさか連れ戻すとか考えていませんよね?
私は一人で生きていくと決めたんです。
あなたの妻に戻る気はないですから。」 


私は今までの鬱憤を晴らすように、捲し立てた。


「そんな風に誤解されるような態度をとったことはないが?」


はい?
なに入ってるの…とりまくりじゃない。


「朝食のとき、いつも無言でしたよね。
夫婦の食事風景があんなのとは思いませんでしたわ。私とは話したくないんだなと思わざるをえませんでしたわ。
私が家を出る前は、夜の営みも失くなってましたよね。てっきり私は、愛人でもできたのではないかと思いましたけど。
私だって若いんだから性欲だってあります。
夫から求められないのは、私に不満があったんだと思いますわ。
だから…」


「僕は不満なんて感じてない。
愛人だって作ったことはない。」


私の言葉を遮るようにして、彼は強い口調でそう言い切った。


「食事中に話さなかったのは、緊張で話せなかったから。
君を求めるのを止めたのは、君の体の負担になると思ったからだ。
その前まで頻度も多かったから、自制しなければと…」


「言葉で言ってくれないと分かりませんわ。」


私の体を心配?
そんなの微塵も気付くわけない。
だっていつも寡黙で何を考えてるのか分からなかったのよ?

そんなことを今さら言われても困る。
私の早とちりだというの?
私が、悪いの?
ただの私の身勝手?

この半年は私が、私が…夫から逃げて不貞を働いていただけだったということ?


「困るわ、後からそんなこと言われても。
改めて言いますわ、私と離婚して下さい。」


これじゃあ私の半年が台無し。
これからの人生だって…私は幸せになりたいのよ。
私にとっての幸せは寡黙な夫との結婚生活ではないから。
感想 6

あなたにおすすめの小説

余命1年の侯爵夫人

悠木矢彩
恋愛
余命を宣告されたその日に、主人に離婚を言い渡されました

初対面の婚約者に『ブス』と言われた令嬢です。

甘寧
恋愛
「お前は抱けるブスだな」 「はぁぁぁぁ!!??」 親の決めた婚約者と初めての顔合わせで第一声で言われた言葉。 そうですかそうですか、私は抱けるブスなんですね…… って!!こんな奴が婚約者なんて冗談じゃない!! お父様!!こいつと結婚しろと言うならば私は家を出ます!! え?結納金貰っちゃった? それじゃあ、仕方ありません。あちらから婚約を破棄したいと言わせましょう。 ※4時間ほどで書き上げたものなので、頭空っぽにして読んでください。

婚約者が義妹を優先するので私も義兄を優先した結果

京佳
恋愛
私の婚約者は私よりも可愛い義妹を大事にする。いつも約束はドタキャンされパーティーのエスコートも義妹を優先する。私はブチ切れお前がその気ならコッチにも考えがある!と義兄にベッタリする事にした。「ずっとお前を愛してた!」義兄は大喜びして私を溺愛し始める。そして私は夜会で婚約者に婚約破棄を告げられたのだけど何故か彼の義妹が顔真っ赤にして怒り出す。 ちんちくりん婚約者&義妹。美形長身モデル体型の義兄。ざまぁ。溺愛ハピエン。ゆるゆる設定。

「仕方ない」には疲れました ~三年続いた白い結婚を終わらせたら、辺境公爵の溺愛が待っていました~

ゆぷしろん
恋愛
 「仕方ない」と白い結婚に耐え続けていた伯爵夫人エリス。  彼女の誕生日、夫は幼なじみのセシリアを屋敷に連れ帰り、エリスが大切にしてきた猫を彼女に見せろと言う。冷めた晩餐の前で心が折れたエリスは、ついに離縁を宣言し実家へ戻った。  彼女の薬草知識と領地経営の才は、北方を守る公爵ディートリヒが目を留める。流行り病に苦しむ公爵領を救うため奮闘するエリスは、初めて努力を認められ、大切に扱われる喜びを知っていく。一方で彼女を失った元夫の伯爵家は傾き、身勝手な幼なじみの嘘も暴かれて――。  我慢をやめた傷心令嬢が、辺境公爵に溺愛され、自分らしい幸せを選び直す逆転愛されファンタジー。

(完)妹の子供を養女にしたら・・・・・・

青空一夏
恋愛
私はダーシー・オークリー女伯爵。愛する夫との間に子供はいない。なんとかできるように努力はしてきたがどうやら私の身体に原因があるようだった。 「養女を迎えようと思うわ・・・・・・」 私の言葉に夫は私の妹のアイリスのお腹の子どもがいいと言う。私達はその産まれてきた子供を養女に迎えたが・・・・・・ 異世界中世ヨーロッパ風のゆるふわ設定。ざまぁ。魔獣がいる世界。

余命わずかな私は、好きな人に愛を伝えて素っ気なくあしらわれる日々を楽しんでいる

ラム猫
恋愛
 王城の図書室で働くルーナは、見た目には全く分からない特殊な病により、余命わずかであった。悲観はせず、彼女はかねてより憧れていた冷徹な第一騎士団長アシェンに毎日愛を告白し、彼の困惑した反応を見ることを最後の人生の楽しみとする。アシェンは一貫してそっけない態度を取り続けるが、ルーナのひたむきな告白は、彼の無関心だった心に少しずつ波紋を広げていった。 ※『小説家になろう』様『カクヨム』様にも同じ作品を投稿しています ※全十七話で完結の予定でしたが、勝手ながら二話ほど追加させていただきます。公開は同時に行うので、完結予定日は変わりません。本編は十五話まで、その後は番外編になります。

〖完結〗愛人が離婚しろと乗り込んで来たのですが、私達はもう離婚していますよ?

藍川みいな
恋愛
「ライナス様と離婚して、とっととこの邸から出て行ってよっ!」 愛人が乗り込んで来たのは、これで何人目でしょう? 私はもう離婚していますし、この邸はお父様のものですから、決してライナス様のものにはなりません。 離婚の理由は、ライナス様が私を一度も抱くことがなかったからなのですが、不能だと思っていたライナス様は愛人を何人も作っていました。 そして親友だと思っていたマリーまで、ライナス様の愛人でした。 愛人を何人も作っていたくせに、やり直したいとか……頭がおかしいのですか? 設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。 全8話で完結になります。

婚約破棄された令嬢が記憶を消され、それを望んだ王子は後悔することになりました

kieiku
恋愛
「では、記憶消去の魔法を執行します」 王子に婚約破棄された公爵令嬢は、王子妃教育の知識を消し去るため、10歳以降の記憶を奪われることになった。そして記憶を失い、退行した令嬢の言葉が王子を後悔に突き落とす。