狂気のカルト

ねこわんこ

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第1章

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「ここから先、失礼の無いようにね。」
やけに大きくて重たそうな扉の前で暁さんは立ち止まった。きっとこの中に偉い人がいるんだろう。
「はい、気をつけます。」
扉を開けると広い空間があって、中央にテーブルがあり、人が座っていた。

「待っていたよ、月城 紘くん。」
その人の声を聞いた瞬間全身に鳥肌がたった。猫に出くわしたネズミのように、身体が動かなくなる。
あんまり特殊能力には詳しくないけど、分かる。この人は相当強いんだ。静かに微笑んでいるけど、その奥には計り知れないほどの狂気を感じた。

「君のことは偃月から聞いていた、歓迎しよう。」
「ありがとうございます!」
「君の特殊能力は興味深いよ、今まで1度も聞いたことのない能力だ。だから是非この後の仕事は頑張ってもらいたい。」
「でも、まだ使いこなせなくて、」
「いいんだ、最初から自分の能力を使いこなせる人なんていない、大切なのは数をこなしていくことだ。」
「はい。」
「この道を進んだ君の人生は、普通とはかけ離れたものになるだろう。幸運を祈る。」
「お力になれるよう、精一杯努めます、宜しくお願いします。」

悪い人では...なさそうだな。



「お話し中失礼いたします。挨拶が終わったところで、この後の予定について櫻木様とお話ししておきたいことがあります。」
「分かった。私も偃月に伝えることがある。」

「あ、月城くん、少し席を開けてもらってもいいかい?」
「じゃあ、先に出てますね。」
「ありがとう。」


「櫻木様、先ほど挨拶に来た月城 紘ですが、彼には能力者としての特別な才能があると僕は思います。」
櫻木は全てを察したかのごとく、静かに呟いた。
「奇遇だね、私もそう感じていた。」
「ただ、その真の力はまだ発揮していません。力を解放したときにどうなるか検討がつかないのです。彼自身の制御が効かなければ、最悪の事態になることもありえます。」

「だから、教育係は君に頼もうと思っていてね。しばらく仕事は同行してあげてくれ。彼を拾ってあげたのも君だったろう?」
「はい、引き受けさせてていただきます。」

「先ほど新しい仕事が入ってきたみたいでね。今までのように宜しく頼む。月城くんも連れて行きなさい。」
「はい、櫻木様。」






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