KAОRU-マタニティ・デビル ~ボクに世界が救えるの?~

齋木カズアキ

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二度目のデート(これも戦い?)。前編

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 妊娠五か月に当たる十六週目を過ぎて安定期に入ると、妊婦らしく成長した腹部の膨らみもさることながら、カオルの身体全体から沸き立つ若々しさには目を見張るものがあった。
 顔の表情や肌艶が透き通るような輝きを増したことで、濡れたように妖しい艶が自然に異性を誘う雰囲気を醸し出している。パートナーである自分でさえ、見つめるのを躊躇うほど、さらに美しさが蘇った。
 
 それはまるで、ある映画をリアルタイムで観ているような錯覚に陥らせる。

 老人の姿で生まれ、歳を重ねる毎に若返る人生を与えられた男の一生。

 梅雨明けの知らせも聞こえて来ない七月始め、カオルはわざわざマタニティ専用の水着を購入した。
 暑くなったらプールに行きたいとねだったのだが、ボクは返事を渋っていた。
 独り身で半生記近くを過ごした私生活に興味を抱き、かつて季節を問わずプール通い(安上がりな市民プールです)に嵌っていた過去をボクの記憶からカオルは強引に引っ張り出した。
 交際期間が全くないまま夫婦の契約を交わしたのを気遣い、子供が生まれるまでの僅かな時間に恋人気分を味合わせたいと考えたのだろうか。デートの誘いは手放しで嬉しいが、手放しで事を勧められない状況が何とももどかしかった。
 
 かかりつけ産婦人科医にこの時期なら問題ないと承諾を得た安定期に入ったとは言え、胎児は順調に母の身体に負担をかけ、ボクの心配も比例して大きくなった。
 それにプールとなれば他人の目も大いに気になる。
 年齢を聞けば、尻込みもするのだろうが、世代を問わず、外見の美しさだけを評価されたがるその手の女性と比較しても決してカオルは見劣りしない。永年培われた内面からあふれ出る色香も相まって、妊婦であるという事実を超越した美しさが、飢えた肉食男たちの欲望を掻き立て、奪われてしまう恐怖心がボクのゴーサインを躊躇わせた。
 プールに行くぐらいで、そんな大げさなと嘲笑しないでほしい。
 自らの行いによって突然カオルを守るナイトに抜擢されてしまったひ弱で貧弱な中年男にとって、『回避』は最大の防御と言わざるを得ないのだ。

 そこには明らかにあの幻想が関与している。

 だがどんなに御託を並べて、世間の目を避けようとも、実力行使に打って出た彼女の強い意思表示に、確固たる意志のないあやふやな迷いは当然のごとく太刀打ちできない。易々と白旗を上げる自分の心は、日に日に美しさを増すカオルの前では最早成す術がない。

 まるで洗脳されてしまったように、麻里奈の言葉が脳裏をかすめた。

 とはいえ、過去の自分を踏襲して彼女を市民プールに連れ出すというのは些か気が引けた。
 どうせならセレブが集うような高級ホテルのガーデンプールにでも連れて行きたいと進言したのだが、『特別はいらない』と宣言したカオルは、案の定首を縦には振らなかった。

 結局カオルを市営の屋内プールに連れて行くことにした。天気予報は梅雨明けの見通しを報じていないが、手元に水着が届いてからは暑さに関係なく毎日のように強請られていた。『もっとたっくんが大好きなカオルになる』と宣言しながら、時折わがままな性格も顔を出す。ボクは適度に振り回されている。認めたくはないが二人の関係は麻里奈の言う通りに深まっているようだ。

 これで本当に人類滅亡の危機がやって来るのだろうか?

 夏休みも近い七月中旬の水曜平日。カオルを連れ出しプールに向かった。
 そこは自治体の施設としては珍しく、レーンが五つある二十五メートルプールの他に、娯楽の遊泳施設が充実していた。
 まるで屋外プールのような高さが五メートルほどあるウォータースライダーや、その周囲を一周約二〇〇メートルの流れるプール、他にも岩の間を滑るマウンテンスライダーやジャグジーまで完備され、多くの家族連れで賑わいを見せている。
 だが家族のいない自分がその施設を利用することは一度もなかった。専ら異なるエリアの二階にある二十五メートルプールで制限時間二時間をただひたすら自己流の平泳ぎで泳ぎ続けるだけだった。確かに終了後の気分は爽快だ。だがよくよく考えれば決して楽しいとは言えない。デスクワークで肩こりが酷かった。だから健康増進を兼ねた単なる暇つぶしでしかなかった。彼女がこの施設の中でボクと一緒に何をしたいのかがはっきり判らない。だが、一緒に行くと言い張るのだから連れて来るしかなかった。

 ロッカールームで着替えを済ませ、施設入口でしばしカオルを待った。子供たちの歓声がこだまして聴こえる。平日の昼下がり。加えて小雨が降る悪天候だが、蒸し暑さを回避するため予想以上に多くの利用者が訪れていると、すぐに推察できた。

「たっくんお待たせ」
 思ったよりも早くカオルの声が聞こえた。
「着替えにもう少し時間がかかると思った」
 お腹が大きくても膨らむのは少しづつだから着替えの時間は妊娠前とそんなに変わらないのと彼女は小さく微笑んだ。

 改めてカオルの全身を舐めるように拝んだ。
 以前家で試着して見せてはくれたが、やはり水際で身に着けるアイテムだけあってまるで印象が違っていた。
 トップスとショーツに分かれたデニムのフリル水着。色はブルー。胸には大きなリボンモチーフ。ふんだんにあしらわれたティアードフリルが、絶妙な丈でデザインされて自然に脚長の印象を与える。それらのロマンティックなディテールをデニム生地の仕上げが上品で可愛い大人の女性を演出し、一瞬で目を引く美しさを醸し出していた。
 カオルはショーツの上に、セットのショートパンツを着けてプールサイドに登場した。
 腹部の膨らみもまるで狙っていたかのように絶妙なバランスの曲線を描き、サングラスを付けた立ち姿は、まるで大富豪が射止めたモデル上がりの若妻妊婦のよう。彼女はリゾート地にある別荘でのんびりとバカンスを楽しむような、些か場違いな高級感を漂わせている。
 確かにこの姿でリゾートホテルのプールサイドに登場すれば、誰もが色めき立つかもしれない。だが一地方都市の市営プールに飢えた肉食男たちが獲物を求めて出没するはずもない。雰囲気に圧倒されるような反応を見せ、振り返る大人たちを見て、取り越し苦労は度が過ぎたと苦笑いするしかなかった。

 隣りに立つボクは雰囲気も体型も明らかに貧弱で、とてもカオルに釣り合うパートナーには見えなかっただろう。
「カオルちゃん、凄く注目されてるね」

「そう?でも私にはたっくんしか見えないよ」

 彼女の言葉は、たとえ本心でなくても、ボクの気持ちを落ち着かせてくれる。

「屋内なのに結構凄いのね」
 天井の低い入口を抜けるとそこには大空間が広がる。歓声と水しぶきが建物三階建てほどの高さを誇る室内に止めどなく響き渡っていた。

 東南二面の壁は天井まで一面ガラス張りで、晴天には太陽光がふんだんに射し込んでいた。残念ながらこの日は自然の恩恵を授かれなかったのだが、それでもブールの片隅にはパラソルを広げた小さな丸いテーブルと椅子がセットで三か所配され、少しでも非日常を感じさせようと涙ぐましい努力をしている。
 先にも触れた通り、ボクは毎回この場所を素通りして二階にある二十五メートルプールに向かう。西側に位置する階段の勾配は妊婦に優しいとは言えないし、滑る危険性も孕んでいる。一人では考えない安全性も二人になると蔑ろにできない。いちいち立ち止るのは煩わしくもあるが、これを世間は嬉しい悩みだと解釈するようだから、何のわだかまりもなくカオルの意向を訊ねた。 

「私も一緒に二階に行く。それでプールサイドでたっくんが泳ぐの見てる」
「見てるだけなら、あのパラソルの下で座っていてもいいよ」
「それじゃ、一緒に来た意味ないでしょ?」
 ずっとそばにいたいから来たんじゃないと腕を掴まれ顔を覗き込まれては、首を縦に振るしかない。
 足元を注意しながら階段を上りきると、プールサイドにスチール製の折り畳み式リクライニングベッドが三つ並んでいる。利用者が泳ぎの合間に休憩する為のものだがカオルをそこで見学させることにした。泳がないのに座らせておくのは些か気が引けるが、幸せの膨らみに気付かせて納得してもらうしかない。

 さほど負荷のかからない形だけの全身ストレッチを軽く済ませ、プールに飛び込んだ。
 コースはウォーキング専用二つと、泳ぎの速さによって、初心者用、上級、それに浮き輪が使用可能な小学校低学年生が戯れる五つに分かれている。
 混雑する日は余り間隔を置かず、一つのコースに数珠繋ぎで泳ぐ場合もあるが、今日はそれ程でもなかった。自己流だが二十五メートルは難なくクリアできるので泳ぎが達者な利用者が多い上級コースで泳ぎ始めた。
 水中に身を投げ出すのは久しぶりだった。忘れかけていたフォームも身体全体に水の流れを感じると瞬く間に蘇った。しばらくは無の境地で泳いでいた。そうさせるのはカオルの存在があるからだと感じた。未だに近い将来人類滅亡の危機が訪れるなんて実感できないでいる。だがいつもそばにいたいと囁くカオルは間違いなくボクに心の平穏を齎してくれる。だから今はただ二人の時間を幸せだと肯定したい。
 二十五メートルを休まず往復した。スタート地点に戻る度、リクライニングベッドに座るカオルは、水面に顔が上がると笑顔で手を振っていた。ボクも応えて思い切り笑顔を作ったのだがゴーグルを着け水しぶきを浴びている状態で表情に気付いていたかは分からない。それでもカオルの手を振る姿が見たくてボクは何度も二十五メートルの旅に出た。
 五度目の帰還が近付くと、カオルはスタート台の脇にしゃがみ、何かを訴えようとボクを待っていた。

「たっくん私も泳ぎたい」

 ゴーグルを外して、スタート地点でひと息ついた瞬間、頭の上から声がした。見上げると四つん這いになったカオルが物欲しそうにボクの顔を覗き込んでいた。

「えっ、泳ぐの?」
 ボクは一度確認した。
 カオルは黙って頷いた。
「ちょっと待って」
 一番端にあるウォーキング専用のコースに設置されたプール内の階段をゆっくり上がり、濡れたまま彼女の許へ向かった。
「大丈夫?」
「今、準備運動したから大丈夫」
「身体は冷えない?」
「大丈夫、真剣に泳ぐと人間の身体って汗かくくらい暖かくなるから平気」
「でもどうして急に?」
「たっくんが真剣に泳いでるの見てたら、何だかカッコイイなって思って。私も入りたくなっちゃった」
 あどけない少女のようにカオルはペロッと舌を出した。
「ボクの泳ぎなんて全然カッコよくないでしょ?」
 ボクは自分を卑下した。
「ううん、違うの。たっくんて何でも一生懸命なんだなって……」
 カオルの言葉が、ボクを有頂天にさせる。
「分かった。心配だから後から付いて行こうか?」
 そう訊ねると、カオルは不敵な笑みを浮かべた。
「いいよ、でもたっくん付いて来れるかな?」
        
 えっ……?

 ボクは彼女の手を取り、ウォーキング専用コースの階段を使ってプールに入った。カオルは上級者専用で泳ぐと言って、そのコースのスタート台の前に立った。少し驚いたが、スポーツは得意だと話していたのでボクは黙って頷いた。

「それじゃあ、泳ぐね」

 カオルは黒のゴーグルを着けるとまっすぐ前方に手を伸ばし身体を水中に沈め、軽く壁を蹴った。両手が外側に開くのを確認し、ボクは彼女を追って身体を沈めた。
 
 この時如何わしい妄想を巡らせていた。
 平泳ぎはカエルのように両脚も開いて水をかく。その瞬間後方の泳者には無防備の股間が否が応でも目に飛び込んでくる。混雑したプールでは近距離で度々遭遇する光景。過去には密かに楽しんだ経験が何度もあった。だが、見知らぬ女性の後を意図的に、そして極端に近付いて追うような輩がいれば、それは明らかに犯罪行為になる。
 だが、今ボクの前を泳ぐ女性とは互いの性器を慈しみ合う中。公衆の面前で犯罪スレスレの行為をしても容認してくれるはずだ。

 予想通りカオルは平泳ぎでスタートした。頭を水中に沈めると、彼女の股間が目の前にある。突然欲情してあからさまに触れることはないが、非日常的な角度から拝むその部分を密かに楽しむのも悪くないと思った。
 
 ところが思惑は見事に崩れ去った。
 力感のない両手のかきと脚の蹴りが一つ終わる度に距離がどんどん離れて行った。ボクは呆気に取られ、中央で立ち止った。彼女の泳ぎは常人離れしていた。我流の一般客では太刀打ちできない見事なフォームと動きのキレで身重の身体を容易くそして力強く前方へと運んでいた。華麗にターンを決め、戻る泳ぎはクロールに変わっていた。中央で立ち尽くすボクに見る見る近付き、あっという間に通り過ぎた。振り向くと、既にカオルの身体はゴール手前五メートル付近。速度を緩めずそのまま二往復目のターンをした。
 ボクはコースを外れ、ただ彼女を眺めていた。往路は平泳ぎ、復路はクロールと、最初と同じパターンで二往復目を終えると再びターンし、今度は背泳ぎを始めた。かく腕は二回毎に入れ替えていた。浮力を強化され、水面に浮かぶ腹部の膨らみの上でデニムのティアードフリルが水しぶきを浴びながらも軽やかに揺れていて、なぜか扇情的に映った。
 背泳ぎも二往復したカオルの動きは突然荒々しさと力強さが加わった。力感のないそれまでの泳ぎも相当速いと感じていたが、再び挑むクロールの速度はさらにアップした。
 ボクは心配になった。妊婦の経験がない男には別の命を抱えたまま全力を出す瞬間の身体の過酷さを想像できなかった。

「カオルちゃんもうその位にして!」  
 
 ボクは思わず叫んでしまった。彼女の泳ぎを食い入るように見つめている周囲の人たちはその声に全く反応していない。
 カオルは素早く反応して一旦背泳ぎの体勢でボクを見るとすぐに身体を戻して今度はゆったりとしたフォームでクロールを続けた。それはアスリートが練習を終えるためにクールダウンしているようにも見えた。
 ボクはスタート地点の壁に立ち彼女を出迎えた。
 カオルの華麗な泳ぎにその場にいた全員が無言のまま彼女を見ていた。そして泳ぎを止め、水中に立ち上がった瞬間、ウォーという歓声と併せて多くの拍手が沸き起こった。
 カオルはゆっくりゴーグルを外すと、周囲に手を振って笑顔を振りまいた。 

「大丈夫?疲れてない?それにしてもカオルちゃん凄いね。まるで水泳選手みたいだったよ」
 清々しい表情を見て邪な考えの自分が恥ずかしかった。
「ありがとう。私水泳部にいた時期もあったの」
「何かメニューがあるみたいな泳ぎだったけど?」
「プールに行くって決めた時、妊婦の身体にいい水泳メニューがないか調べたの。で
も本当は泳ぐ積りはなかったんだ。たっくんが心配するかなと思って。でも……」
「でも?」
「でも、たっくんの泳ぎ見てたら何だか燃えてきちゃって……。久しぶりだからさすがに最後は疲れちゃったけどね」
 もう泳がないから安心してと呟き、カオルはプールの階段をゆっくり上がって再びリクライニングベッドに腰掛けた。すると小学校低学年の女児がおばさんスゴイねと声をかけおばさんじゃないでしょ、お姉さんて言いなさいと母親らしき女性が諫め、でも赤ちゃんいるからおばさんでしょと反論。周囲は笑いに包まれていた。
 ボクは再び泳ぎを始めた。カオルの前を通り過ぎる他の客は、その多くが立ち止り気軽に声を掛けていた。彼女も快く反応し笑顔を見せていた。ドームの時と同様、カオルの社交的な一面が今日も顔を出した。騒ぎを聞きつけ若い青年も周りに姿を見せるとボクは俄かに危機感を抱き始める。
 再び蔑ろにされてしまう事を恐れ、彼女をウォーキングに誘いにプールから上がった。

 ボクは妊婦を気遣う夫の体で、水中をカオルと並んで歩いた。
「ねえ、たっくん……」
 艶のある湿った声が耳に届いた。
「ココ触って」
 カオルは不意に左手の指先を掴み、ショーツの中へと導いた。
       
(!)

 指先にぬめりを感じた。
「泳いだら興奮してきちゃった」
 言葉通りカオルの横顔が紅潮していた。
「私ね、中学生の時から運動して身体が火照るとオナニーしたくなっちゃうの。だからクラブ活動の時はいつも途中でトイレに駆け込んでた。野球の時もグランド観てたら、急にその時のこと思い出しちゃったんだ」
 カオルはゆっくり目を伏せた。
「ねえたっくん・・・」
「な、何?」
 嫌な予感がする。
「水の中でエッチしない?」
「な、何言ってるの?こんな公共の、しかも衆人環視の中で出来る訳ないじゃん!」
 気付くと辺りの人影はまばらになっていた。
「私がさあ、歩きながらたっくんのモノしごいてあげるから、イキそうになったら私のショーツ下ろして、差し込んで、中に出して……」
 艶のある囁きに溺れまいと、必死に正気を保ちながら、利用者の多さを理由にきっぱり拒否しようと、もう一度辺りを見回した。
 するとつい一分前まで奇声を発していた、保護者に付き添われて来た小学生たちもまるで集団下校のように一斉に姿を消していた。

「ねえ、たっくん……」

 カオルは左腕を掴んだまま、ショーツの中のボクの指を操っている。水の中でもあふれ出る粘り湯を感じている。
 監視員は間違いなくプールを監視しているのだが、カオルの甘い囁きが常識やモラルを麻痺させていく。
「だ、ダメだよ。そんなコト出来る訳ないよ!」
 言葉では否定しながらも、心の中では観念してボクの視線は辺りの様子を伺っていた。二人の遥か前を中年のご婦人が二人ウォーキングに集中している以外、プールの中に人はなく、プールサイドにも人影はまばら。状況がボクを誘っている。カオルの手の動きは止まらず、膨張と湧き出る泉に気付く人間は誰もいなかった。
「だ、ダメだよ。でも出ちゃう。かおるちゃんもう止めて!」
 ボクの叫びは悲痛だった。セックスには至らなくてもこんな場所で糊のような浮遊物を吐き出す訳にはいかない。
 その時だった。
「分かった。でも、待って。私が飲んであげるから」
 そう言うとカオルは突然、水中に顔を沈めた。いきなりボクのパンツを下ろし、暴発寸前の男性器を口に含んだ。躊躇っていた律動は舌先で促され、瞬く間に射精が始まった。腰が脱力して崩れ落ちそうになるのを彼女が下から支えている。一滴たりとも外に漏れてはいけない。カオルは両手で強く握り、全ての排出を促進した。誰にも気付かれない内に早く収束させたい。ボクは焦るが当然の如く下半身の動きは至ってマイペース。自然に止まるのを待つしかない。その間カオルは顔を上げることなく水中の作業に集中していた。心配になったが、事なきを得るにはカオルに全てを委ねるしかない。ボクは監視員に悟られないよう平静を装った。

 しかし、そう上手くはいかなかった。

「お連れの方どうしたんですか?」
 監視員の声が聞こえた。閑散としたプール内で質問が向けられた先はボクたちしかいない。
「あの、突然何秒潜ってられるか時間計ってって言うもんだから・・・」
「でも大丈夫ですか?妊娠されてますよね?」
「彼女、元水泳部なんで潜水は得意なんです」

(うっ……)

 カオルの微妙な舌先がさらに放出を促し、第二波が始まった。オナニーでさえ、こ
んな経験はない。今までにボクは必死に平静を装い、監視員に向かって愛想笑いを浮かべていた。
 そうですかと監視員がやや怪訝そうな表情をした瞬間、カオルは水面を力強く揺らして顔を上げた。

「ふう、もう大丈夫。全部私が飲んだから……。それにしても、たっくんの量すごいね。あんまり多くて、死ぬかと思ったわ」 
 カオルは収束した昂りを素早くパンツに納め、惨事になるのを防いでくれた。というより『自ら蒔いた種を奇麗に掃除してくれた』と表現した方が正しいのかもしれない。

「飲んだ?」
 監視員は再び眉をひそめた。
「あ、いや、潜水中に我慢しすぎて水飲んじゃったってことみたいで……」
 苦しい言い訳だったが、カオルが笑顔を見せたことで、気を付けてくださいねと声を掛けられ、二人から視線を外してくれた。

「もう無茶しないでよ!」
「でも、スッキリしたでしょ?」
「こんなところでスッキリしようとは思わないよ!」
 カオルは舌を出して少女のようにお戯けていた。冷静に考えれば少女はこんな処でヤろうとは思わないだろう。大胆な行動には呆れるばかりだが、二人だけの時間を楽しみたいと考え、束縛したいと考える潜在意識の奥深くを抉り出すような態度がどうしても憎めなかった。
 
 彼女は世界滅亡を画策しているというのに。

 カオルとボクはウォーキングを終了し、そのままプールの階段へと向かった。
 その時、ふと気付いた。

「あれ、カオルちゃんの火照りは納まったの?」
「うん、たっくんの飲んだら落ち着いちゃった」
「そういうものなの?」

 黙って頷くカオルの言葉を信じるしかなかった。
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