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第11話:初デート
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「ぼ、僕の車は、こ、これだよ。」
そう言って、男が指差したのは、カーキのN-BOXスラッシュだった。ゴツゴツしたモノや大型のモノだったらどうしようと思った女だったが、男が軽自動車と知ってホッと一安心した。
「やっぱり、軽自動車だよね。」
「ご、ごめん!軽自動車ダメ、かな。一応、四駆だから普通の軽よりは走ると思うんだけど。」
「そうじゃなくて、軽四で安心したの。」
「そう、良かった。」
男は、安堵して、助手席のドアを開ける。
「どうぞ。」
「あっ、ありがとう。」
男は運転席に戻ってエンジンをかけた。
「じゃあ、ゆめタウンに行こうか。」
「この車、ナビ、無いんだね。」
「ナビついてない方が安いし、あったら、バージョンアップが面倒くさいし、ナビはスマホあるし、場所も取らないしね。」
車はコインパーキングを出てゆめタウンへ向かった。
「ゆめタウン、どこ行こうか。」
「私、映画見たいな。」
「分かった。映画館のある建物から入るね。」
16時20分、ゆめタウンに着いた。
映画館のスケジュールを見ると、今から見れる時間が恋愛ものばかりだった。
「どれにしようか。」
「私、これが、良い。青春もの。」
「分かった。チケット買ってくるね。」
「うん。ベンチで待ってる。」
男は、発券機でチケットを買って戻ってきた。
「ごめん、お待たせ。映画は16時45分からだって。真ん中が席2つ空いてからそこにしたよ。」
「ありがとう。ねぇ、飲み物何が良い?飲み物とかは私が買ってくるよ。」
「ドリンクも、僕が、買うよ。」
「良いよ。私が払いたいんだから。」
「ありがとう。」
続いて女がフードドリンクのコーナーで飲み物を買って戻ってきた。
「お待たせ。勝手に映画はコーラかなと思って、コーラにしちゃったけど、良かった?」
「うん。僕も映画の時は、コーラだから大丈夫。ありがとう。入れる時間だから、行こうか。」
「うん。」
二人は、映画のやるシアターに入っていった。
19時15分、映画が終わり、2人が、シアターから出てきた。
(「お揃いにすると、私のこと、意識してくれるかな」)
映画を見た、女は、そんなことを思い、男を誘う。
「ねぇ、健吾くん。」
「うん?」
「私、健吾くんとお揃いのものが、欲しいな。」
そう言う女の頬は紅潮していた。
「お揃い?良いよ、何にする?」
「マグカップとか、どう?」
「良いね。私、丁度、会社用のマグカップ欲しかったの。(本当は、そんなんじゃなくて、ペアアクセとか、ペアルックとか、身につけるものでお揃いしたかったけど、徐々に、だな。)」
二人は、映画を終えて、雑貨屋に移動した。
そこで、マグカップをお揃いで買って、ゆめタウンを出た。
「晩ご飯、何にする?」
「ねぇ、ドームの前のラーメン屋行きたいな。」
「ラーメンで良いの?」
男は、女の意外な答えに少し戸惑いを見せた。
女は、続けて答える。
「ラーメンが、良いの。というか、2人で、あのラーメンを、私は食べたいの。」
女は、含みを入れながら、男に訴えかけたんだが、届かない様子。
「ひ、久しぶりに、た、食べると美味しいよね。」
(「そういうこっちゃ、無いんだってば!」)
女は、心の中で、男に思いっきりツッコミを入れた。
食券を買って、席に座る。
対面に座ることがない、男は、目の前に、座った女を見て、緊張してしまっている。
そこへ、店員さんがやって来て、食券の半券を千切り、水を持ってきた。
「お水、置いときますね。」
「あ、あ、ありがとうございます!」
緊張のあまり、語尾が裏返ってしまった男は、顔を紅潮させて、下を向いた。
「どうしたの?」
女は、優しく、声をかける。
「た、た、た、対面、き、き、緊張、し、し、しちゃって。な、な、情けない、、、。」
そう、男が、言うと、女は、店員さんに声かける。
「すみません。」
「はい。なんでしょう。」
「カウンターに席、変わっても良いですか?」
「良いですよ。水も新しいのにしときますね。」
「ありがとうございます。さっ、健吾くん行こっ。」
二人はテーブル席からカウンター席に移った。
これで、正面至近距離での近さに怯えなくて良くなった男は、引きつった顔がようやく、緩んだ。
しばらくして、注文していたラーメンが届いた。
「「いただきます。」」
女は、久しぶりの味に噛み締めていた。
13年振りの味、変わらない味に、一番一緒に食べたかった人が隣にいて、本当は同じテーブルで食べたかったモヤモヤとか、色んな感情が麺を啜っていると湧いてきて、ふと、涙が出そうになる。
「「ごちそうさまでした。」」
食べ終わった2人は店を出て車に乗り込んだ。
車内の時計は21時を指していた。
「そろそろ、帰ろうか。送るよ。」
「え?」
(な、何を言ってるんだ?この人は。未だ21時だよ。明日も休みなら、これからじゃないの?もしかして、これ、私が試されてる?だとしたら、素直に従ったほうが、良いよね。)
女は、男の言葉に動揺して、頭の中が、こんがらがってしまう。とりあえず、素直に応じた。
「うん。お願いします。」
「み、み、ミカさん。い、い、家どこ?」
「私は、神社の斜向かいにあるアパートだよ。」
「えー!」
男のびっくりした反応に、女も驚く。
「健吾くん、どうしたの?」
「そこのアパートって、メゾネットの物件の?」
「うん。そうだよ。「フォレストハイツ」ってとこ。」
「ぼ、ぼ、僕も、同じだよ。」
「えー!」
女は、自分と男が同じアパートに住んでいることに驚きを隠せなくなっている。
車はアパートに到着した。
「着いたよ。」
「あ、ありがとう。私、A棟だからこっち。」
「ぼ、僕はC棟で奥の棟だから、こっち。」
「健吾くん、また連絡しても良い?」
「うん。僕もまた連絡するね。」
二人は「バイバイ」と言って手を振ると、男は、自分の棟に向かって歩いていった。男が、自分の棟に入ったのを確認して女は部屋に戻っていった。
-続く-
そう言って、男が指差したのは、カーキのN-BOXスラッシュだった。ゴツゴツしたモノや大型のモノだったらどうしようと思った女だったが、男が軽自動車と知ってホッと一安心した。
「やっぱり、軽自動車だよね。」
「ご、ごめん!軽自動車ダメ、かな。一応、四駆だから普通の軽よりは走ると思うんだけど。」
「そうじゃなくて、軽四で安心したの。」
「そう、良かった。」
男は、安堵して、助手席のドアを開ける。
「どうぞ。」
「あっ、ありがとう。」
男は運転席に戻ってエンジンをかけた。
「じゃあ、ゆめタウンに行こうか。」
「この車、ナビ、無いんだね。」
「ナビついてない方が安いし、あったら、バージョンアップが面倒くさいし、ナビはスマホあるし、場所も取らないしね。」
車はコインパーキングを出てゆめタウンへ向かった。
「ゆめタウン、どこ行こうか。」
「私、映画見たいな。」
「分かった。映画館のある建物から入るね。」
16時20分、ゆめタウンに着いた。
映画館のスケジュールを見ると、今から見れる時間が恋愛ものばかりだった。
「どれにしようか。」
「私、これが、良い。青春もの。」
「分かった。チケット買ってくるね。」
「うん。ベンチで待ってる。」
男は、発券機でチケットを買って戻ってきた。
「ごめん、お待たせ。映画は16時45分からだって。真ん中が席2つ空いてからそこにしたよ。」
「ありがとう。ねぇ、飲み物何が良い?飲み物とかは私が買ってくるよ。」
「ドリンクも、僕が、買うよ。」
「良いよ。私が払いたいんだから。」
「ありがとう。」
続いて女がフードドリンクのコーナーで飲み物を買って戻ってきた。
「お待たせ。勝手に映画はコーラかなと思って、コーラにしちゃったけど、良かった?」
「うん。僕も映画の時は、コーラだから大丈夫。ありがとう。入れる時間だから、行こうか。」
「うん。」
二人は、映画のやるシアターに入っていった。
19時15分、映画が終わり、2人が、シアターから出てきた。
(「お揃いにすると、私のこと、意識してくれるかな」)
映画を見た、女は、そんなことを思い、男を誘う。
「ねぇ、健吾くん。」
「うん?」
「私、健吾くんとお揃いのものが、欲しいな。」
そう言う女の頬は紅潮していた。
「お揃い?良いよ、何にする?」
「マグカップとか、どう?」
「良いね。私、丁度、会社用のマグカップ欲しかったの。(本当は、そんなんじゃなくて、ペアアクセとか、ペアルックとか、身につけるものでお揃いしたかったけど、徐々に、だな。)」
二人は、映画を終えて、雑貨屋に移動した。
そこで、マグカップをお揃いで買って、ゆめタウンを出た。
「晩ご飯、何にする?」
「ねぇ、ドームの前のラーメン屋行きたいな。」
「ラーメンで良いの?」
男は、女の意外な答えに少し戸惑いを見せた。
女は、続けて答える。
「ラーメンが、良いの。というか、2人で、あのラーメンを、私は食べたいの。」
女は、含みを入れながら、男に訴えかけたんだが、届かない様子。
「ひ、久しぶりに、た、食べると美味しいよね。」
(「そういうこっちゃ、無いんだってば!」)
女は、心の中で、男に思いっきりツッコミを入れた。
食券を買って、席に座る。
対面に座ることがない、男は、目の前に、座った女を見て、緊張してしまっている。
そこへ、店員さんがやって来て、食券の半券を千切り、水を持ってきた。
「お水、置いときますね。」
「あ、あ、ありがとうございます!」
緊張のあまり、語尾が裏返ってしまった男は、顔を紅潮させて、下を向いた。
「どうしたの?」
女は、優しく、声をかける。
「た、た、た、対面、き、き、緊張、し、し、しちゃって。な、な、情けない、、、。」
そう、男が、言うと、女は、店員さんに声かける。
「すみません。」
「はい。なんでしょう。」
「カウンターに席、変わっても良いですか?」
「良いですよ。水も新しいのにしときますね。」
「ありがとうございます。さっ、健吾くん行こっ。」
二人はテーブル席からカウンター席に移った。
これで、正面至近距離での近さに怯えなくて良くなった男は、引きつった顔がようやく、緩んだ。
しばらくして、注文していたラーメンが届いた。
「「いただきます。」」
女は、久しぶりの味に噛み締めていた。
13年振りの味、変わらない味に、一番一緒に食べたかった人が隣にいて、本当は同じテーブルで食べたかったモヤモヤとか、色んな感情が麺を啜っていると湧いてきて、ふと、涙が出そうになる。
「「ごちそうさまでした。」」
食べ終わった2人は店を出て車に乗り込んだ。
車内の時計は21時を指していた。
「そろそろ、帰ろうか。送るよ。」
「え?」
(な、何を言ってるんだ?この人は。未だ21時だよ。明日も休みなら、これからじゃないの?もしかして、これ、私が試されてる?だとしたら、素直に従ったほうが、良いよね。)
女は、男の言葉に動揺して、頭の中が、こんがらがってしまう。とりあえず、素直に応じた。
「うん。お願いします。」
「み、み、ミカさん。い、い、家どこ?」
「私は、神社の斜向かいにあるアパートだよ。」
「えー!」
男のびっくりした反応に、女も驚く。
「健吾くん、どうしたの?」
「そこのアパートって、メゾネットの物件の?」
「うん。そうだよ。「フォレストハイツ」ってとこ。」
「ぼ、ぼ、僕も、同じだよ。」
「えー!」
女は、自分と男が同じアパートに住んでいることに驚きを隠せなくなっている。
車はアパートに到着した。
「着いたよ。」
「あ、ありがとう。私、A棟だからこっち。」
「ぼ、僕はC棟で奥の棟だから、こっち。」
「健吾くん、また連絡しても良い?」
「うん。僕もまた連絡するね。」
二人は「バイバイ」と言って手を振ると、男は、自分の棟に向かって歩いていった。男が、自分の棟に入ったのを確認して女は部屋に戻っていった。
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