異世界からの友好的侵略者にバカ惚れしたのでひたすら口説く

浦門

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一 第21緋連雀隊

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 手と手を取り合っていることになっている。しかしここは地球で、そこを守るために最前線で命を張っているのはおれのようなか弱い人間だ。
 相手は異世界からやって来た連中だから、これまで地球上で運用されていたような兵器はあまり通用しない。無意味でもないけど。それよりもっと効率よく、奴らを殺って地球を守るための武器がある。表の連中が地球人にも扱えるように調整した代物だ。表側からのありがたいサポートの一つ。連中はそいつを上手く扱える見込みのある人間に持たせて、前線に送り出している。
 おれの手の中には先月からそいつが握らされている。が、今、そいつが邪魔になったので消した。
『カイ、撤退だ』
 短い通信が入った。同時に目の前に電柱が倒れてきた。武器を消して身を守るものもない状態だから躱すのに神経を使う。コンクリートが軋む、割れる、轟音が響く。砂煙が舞う。返事をしそこねた。
「ごめん、生きてるよ」
 ワンテンポ遅れて、一応通信を入れる。
『見ればわかる』
 耳に入れてる通信機のスピーカーと肉声が少しぶれて重なった。声の方、見上げると平屋建ての住宅の屋根の上に細身で長身の人影が現れて、あっという間に後ろ走りで飛び退いた。背景の青い空に黒い長い髪の残像が目に焼き付く。ナユさんだ。
 それを追うように、白い触手が伸びてくる。電柱と同じぐらいの太さ。上から叩きつけて屋根を割った。古びた屋根瓦が砕けて飛ぶ。あれ一本なら武器があれば受け止められそうだが。
『対象本体の下部から十数本伸びているのを確認した。こっちの手数が足りない』
「逃げるって命令出た?」
『まだ』
 と、かなり冷静に言い放って、更に遠くへと屋根伝いに走っていく。忍者みたいだ。
 撤退ってのは、どうやら最前線に出ていた彼女の個人的な判断らしい。だけどそれならむしろ信頼できる。絶対安全、僅かでも無理はしない、がナユさんの戦い方だ。彼女が引くべきだと言うのなら、あっちの戦力はこっちを上回っている。
「おれ見つかってないっぽいんだよね。早めに武器消したから」
『やめとけ、こんなとこで頑張っても無駄だよ』
 通信回線にナユさんのため息まで乗っていた。それと前後して、やはり『撤退』の信号が隊長から送られてきたのを確認する。
 視界の端に赤い光が点滅する。眼球に埋め込まれた生体ディスプレイの上の微かな通知。たったそれだけ。ささやかで、無感情だ。こっちは地球外生物と殴り合ってゴチャゴチャしてんのに。一緒になって慌ててくれたら面白そうなんだけど。
『カイさん撤退ですよ! 刺激しないようにしましょうね!』
 ――別の回線。小さい女の子の甲高い声が割り込んだ。本人は、おれらよりも対象と少し距離をとって背後の高台に待機している。
「ミリちゃんあのさ、エネルギー残ってる?」
『緊急用しか残りないです! 敵強いです! 逃げましょう!』
「二、三発でいいからあの辺にぶち込んで欲しいんだけど」
『話聞いてました!? 撤退命令ですよ!?』
 子供特有の耳に突き刺さるような声、通信回線通すと更に刺さる。普通に喋ってたら別にいいけど、すぐ叫ぶからイヤホン通すと――どうやらおれが叫ばせてんだけど。
「安全に逃げるために援護射撃して欲しいんだよ。ナユさん追いかけてるやつと、本体の手前の二、三、四本」
『ええー、そういうことなら……。ホントに必要なんですか? 増えてませんか?』
「必要必要。合図するから」
『やっぱ触んないほうがよくないですか?』
「五、四、三……」
『思ってたより急すぎる! もう撃ちます! ファイヤー!』
 最後までカウントする必要もなかったし、住宅街の瓦礫の影で息を潜めた。頭上を真っ赤に燃える銃弾が複数通り過ぎる。一発目が屋根の上の触手に着弾する。ナユさんを追っかけてたヤツ。中身の白い血液が青い空の下に飛散する。二、三、四発目は更に遠くへ、住宅の瓦礫の中で白い靄に覆われた本体の方へ走る。
 音速の弾丸が今日はかなりゆっくり見えた。いい調子だ。よく冴えている。
 隠れていた塀の影から飛び出して、銃弾の下を走った。当然、人類の足で弾丸には追いつけない。でも普通の人類よりは、おれの足はそこそこ早い。今日は調子もいい。追いつけるような、気分。
 弾丸は本体を守っていた触手に着弾する。触手三本、きっちり弾けたように見えた。そしてその奥から、反撃を始めようと更に無数の触手と、本体が姿を表す。
 デカい。その辺の破壊を免れている一般住宅の何倍もある。やべえな。
 ナユさんがギリギリ無理だと判断しただけはある。おれの読みもだいたい同じ。でも足は止めない。
『ぎゃーこっち来てる! 狙われてる!』
『ミリちゃん回収します。カイさん? 撤退大丈夫ですか? エネルギーなければシールド分お送りします』
 また回線に別の声。
「欲しいけど無理でしょ」
『カイさん? 今どこに……』
『カスミさん、そいつほっといていいよ』
『え?』
 通信回線が騒がしくなってきた。女の子が二人、男が一人、ナユさんは発言してないけど鼻で笑ってるのが時々混じって聞こえる。神経削って走ってると、こういう雑音で頭が気持ちよく回る。
 靄の中から姿を現した対象本体とそれを守る触手は、住宅街の屋根の上から自分を撃った相手をターゲットに変えて移動を始めている。もしもそれで少し地面から浮き上がってくれれば、その下をくぐれるんじゃないか。
 それは割といい考えだ。まあ、個人的な判断として――おれはそのまま本体に向かって突っ込んだ。
『カイ!』
 通信回線にもう一人分の怒声が加わった。珍しく一緒に慌ててくれてる。この声は結構好きだ。
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