異世界からの友好的侵略者にバカ惚れしたのでひたすら口説く

浦門

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二 最上霞は沈んでいる

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「暇なんだよ。やることなくて」
 自動ドアを入ってすぐ正面に、エレベーターがある。あいつはその正面で立ち止まり、振り向いておれを――それかおれが持ってる昼飯か、どっちかを律儀に待った。
 ビルの内部は黄色に色あせた照明が付けられているものの、昼間の屋外の眩しさに負けている。その薄暗い中にそいつが立っていると、その外皮が鈍く光っているようにさえ見えるのが、不思議だ。白い顔なんか特に。
「何をしている。また意味のない提案を考えているのか」
「それ乗りたくないんだよね」
 そっち行ったら普通にそれに乗って上の階に戻る流れだろうな、と思うと気が進まない。ビルの自動ドア前に立ったまま、自動ドアは開いたまま、おれは少し声を張り上げて喋っている。
 向こうはいつもの低い声。まあ、でも、ちゃんと聞こえる。平日昼間の市街地の片隅は静かだから。
「お前たちがこの設備の老朽化を懸念していることは聞いているが、検査では問題ないとされている。何より仮にこれが壊れて最上階から落ちたとしても、お前たちが死ぬことはない。大きな外傷を得ることもないはずだ」
「それは、わかってるけどね」
 外に出るときに、二人で乗った。でまた二人で乗る……と。定員三人ぐらいの小さなエレベーターだ。身の危険とか感じないんだろうか、こいつは。おれは確かに以前はっきりと言ったつもりだったんだが。人類には頭でも力尽くでも劣ることはないという自負なのか、それともおれの言ったことがおれの意図した通りに伝わってないってことなのか。
 どちらにしろおれはそれに二人で乗りたくない。ちょっと距離が近すぎる。まるで中学生みたいな反応だけど。だいたい自分のこの好奇心が、おれがこいつに言ったものと実際に同じなのかどうかわからない――それこそ中学生ぐらいのレベルの話で。
 好きだというのは――そっちに感覚が傾いてるのは間違いない。でも好奇心の内側なのか、それともまさに「やれるかやれないか」って話よりも踏み込んだものだとして、例えばこいつが服を脱いだら中から巨大なナメクジ系宇宙人みたいなのが出てきたとしたら、流石にやれないから困るかもしれない。いや、それはそれで面白いかな。
「人間の執着心が理解できない」
「おれ個人の? それとも人類全体と相容れないって?」
「貴様個人のだ」
「それはよかった。なあ、上まで飛んで連れてってくれないなら階段で行こうよ。ちょっとしたトレーニングにもなるしさ」
 こいつらの身体能力なら五階まで階段を登るのがきついなんてことはないだろう。おれだってすぐ慣れたぐらいだし。でもこいつは少し考えてから、またおれに背を向けてエレベーターの上ボタンを無言で押した。
「なんで?」
「時間の無駄だ」
「言うほどじゃないでしょ。頑固だね」
 エレベーターがゆっくり降りてくる。コンビニに行ってる間に、誰かがビルの上の階に行ったらしい。
「暇つぶししたいんだ」
「それならここに来なければいい。お前たちには普段は以前の生活に戻っていいと伝えたはずだ。最上霞と坂井ミリは学校に通うと言っていたし、貴様もそういう年齢ではないのか」
「おれはもうちょっと上だよ。海外の大学行くつもりだったけど、駄目になったからさ」
「何?」
 振り向いた。そして訝しげな、かすかに痛ましげに陰った視線でおれを睨んだ。
「それは――我々に召喚されたためか」
 つまり、このエリアを防衛する部隊に配属されたのが理由で、大学に行けなくなったということか、と。
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