異世界からの友好的侵略者にバカ惚れしたのでひたすら口説く

浦門

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二 最上霞は沈んでいる

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「それも、なくはないけど。それだけじゃないよ。ちょっと前に親とか死んだからさ、大学どころじゃなくなったんだよ」
「家族が?」
「うん、そう。経歴全部、履歴書みたいなのに書いて提出した覚えがあるんだけど。読んでない?」
「いや、読んだ。覚えている……」
「人間に対して興味なくても、表向きだけは興味あるフリしといた方が上手くいくと思うよ。上から命令するだけにしてもさ」
「違う、興味がないわけではない。その、家族の件と、今のお前の状況が結びついていなかった。だから、そう無理な行動を取るのか? おい、どこに行く」
「おれは階段使うって言ったじゃん」
 そいつの横を素通りして、エレベーターの裏にある重たい鉄のドアを開く。午前に来たときと同じ薄暗く狭い階段。二人で並んで歩けるほどの幅もない。
「四階の休憩室使おう」
「その話はいい。お前の経歴はきちんと覚えている。お前は半年ほど前に裏側の異世界人らの襲撃を受け、家族を奪われた――」
「家族だけじゃない。結構規模が大きかったからね。エレベーター使ったら?」
 問いかけには無言で返された。この狭い階段ですぐ後ろに追っかけてくる。狭いせいで追い抜かれることはない。だからといって手を出して引き止めるような場面でもない。背中にもどかしそうな足音。エレベーター裏と繋がる鉄の扉が自動的に閉まった。上から下まで全ての扉が閉じられ、窓もなく行きの詰まるような閉鎖感だ。こんなところでしたい話じゃない。
「奴らに復讐を望んでいるのか?」
「別に。そのときの奴はその場で殺されてたから、相手いないし」
「では、その怒りは我々に向いているのか」
「なんでそう思う?」
「我々の助けが遅すぎたことも、お前の家族の死の要因の一つだ」
「なんかしおらしいね。意外だ」
「やはり、そうなのか」
 四階まで、そう遠くない。話をしながら、には短すぎるぐらい。扉はすぐそこだ。さっきエレベーターが上に行っていたのを思い出す。誰かが休憩室に居たら気まずいな、と。今日エレベーターに乗っていたんだがから、部隊の他の四人じゃない。事務の人とかだろうか。そうなると余計に、こんな話を聞かせたくはなかった。
 愉快な話じゃない。二人で話す分には、まだいいけど。できればもう少し陰鬱じゃない場所で――でも、仕方ない。
「おれがあんたらを恨んでいるって言ったら、立場上まずいんじゃないの」
「……そんなことはない。我々はあなた方の精神の自由を保証している」
 四階のドアの前で振り向いて返事をした。どうしても癖で、はぐらかすような事を言ってしまう。今となっては口にできないほど思いつめているわけではないと、自分自身考えているんだけど……どうだろう?
 階段の踊り場の天井では古びてまだらに陰影の入った照明が、こいつの頭上から足元までを照らしていた。
 相変わらずこの距離で見ても、皮膚や髪が発光しているように見える。金属質の髪はともかくとして、皮膚にも銀色が混じっているような。実際にそうなのかもしれない。だからこそ石みたいな顔なんて言われているわけで。殴っても嬲っても壊れそうにない、触れたところでなんの意味も持てなそうな――あまりに遠い位置にある。
 それが思いがけず本当に痛ましく顔を歪めている。振り向いてはぐらかすように答えて、その返事を聞いて、それからやっと気がついた。
 それこそ、初めて見る顔だ。これは、おれのせいか?
 共感性が高い、というのは人類だけが持つ特性ではなさそうだ。だからこそついさっきそれに言及して、苛立ちを見せたってことか。
「今の、気にしないでいいよ。恨んでるってのとも違うし」
 薄ら笑いながら否定した。頭ん中で色々考えてる。割と焦ってる。そういう顔されるのは気分がよくない。こうしておれに見せている共感というものが、要するに同情であったとして、それが欲しいとは微塵も思えない。
 悲しい顔しないで欲しいというか、正直言って実際その顔嫌いじゃないけど、できればもうちょっと楽しそうにして欲しいというか、言い争ってるときの方が断然楽しそうでいいとか。
 なにこれ。おれ本当に恋愛してんのかな。マジで?
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