異世界からの友好的侵略者にバカ惚れしたのでひたすら口説く

浦門

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二 最上霞は沈んでいる

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「仮に恨んでるとしてもおれは何にもしないよ。あんたにも、あんたらにも、裏側の奴らにもな。復讐みたいなことは」
「何故だ」
 訝しむ。同情してやったのに何を言っているんだ、と思っていたりするだろうか。そんなことないか。そんな損得勘定、似合わない。
「だっておれに得なんかないじゃん。命かけて復讐なんてさ、そんな危ないこと」
 眉をひそめて、信じられないって顔をする。こいつらがどんな表情をしていても、見分けがつかないなんて言う人間は多いけど、おれは少なくともこいつの顔は見分けられる。こうしておれの前で悲しんだり憤ったりしてくれるから。
 白い額にわずかにシワが寄っている。そういう顔の方が、同情して悲しんでるなんてものよりずっといいし、興味深くもある。表情が硬いなってのはご多分に漏れずおれもそう思うけど、その眉間に力入ってるとこ、柔らかそうだ。
 向き合って話をしている。あっちの方が真剣になって、前のめりに噛みつきそうな感じ。それなりに至近距離だ。その眉間のシワのとこ、つっついてみたくなるけど、まだ駄目かな。触れられそうとは思えない。
 おれの頭ん中、割と理性的だと思う。でもとりあえずやってみないとわかんないし、とか考えてしまう部分もあって、とりあえずちょっとだけ試しに手をこいつの額にかざしてみる。下心。
 が、もちろん額には触れられない。その前に払いのけられた。きっと下心なんてものすら伝わってない。手の甲が、冷たい。
「自身が所属していた家族に報いようとは思わないのか?」
「あんたらに家族って考え方はあるの?」
「それに相当するものはない。しかし団体に所属することの重要性は、我々にも理解できる」
 だからこそ、そんなに憤っている、ってことか。
 でもちょっと興ざめだ。その解るってセリフ。
 どうせ違う世界の存在にはわかるはずもない、なんて捻くれたことを考えたわけじゃない。人間と異世界人の感覚の違いがどうだってことより、おれとあんたの事情が違うってことの方が、おれにとっては重要に思えるからだ。
 違っているのが問題なわけじゃなく、相互不理解を理解してくれてないのが、つまんない。
 わかりあえないってわかりあいたいじゃん。まずそこから、お互いのこと知っていきましょうね? みたいな。そっちがおれに興味ないのはわかってるから、これは一方的なおれの願望なんだけど。
 恋愛なんじゃないかな、これってつまり。
「何を考えている?」
「目の前にいる相手のこと」
 さらに強く眉をひそめる。
「最低だ」
 と小さく呟いたが、すぐにばつの悪そうな顔をして、下唇を軽く噛むように口を閉ざした。人間の精神の働きを否定するのは推奨されない行為である――とでも言うのだろう。
 こんな個人的な話に、規律なんかどっかに捨てて欲しいんだけど。
「死んだ同族のことも忘れて、己の利益ばかりを考え、そう笑って暮らしていくつもりなのか」
「そうだよ。だってもう居ない人間のことだし。そりゃ生きてたら復讐でもなんでもしてただろうけどさ。家族とか、それで誰か喜ぶような奴……まあ、居たから。でももう全部、何もないんだ」
 そしてこんな話をするのも、変に同情されたり侮蔑の目で見られたりわかりあえないことをわかりあえてないと理解してしまったり、どう考えても最悪だ。だからといってこいつが喜ぶように話を合わせて、自分自身にありもしない復讐心をもう死んだ連中をダシに語るのだって最低もいいところだろう。
 おれは素直に思ってることを言ってるだけ。
「そういうわけで最近やることなくて暇でさ。面白いこと探してるんだ。だからさ、セックスしよう」
 大いに眉をひそめた侮蔑混じりの怪訝な顔から、一瞬でぽかんと驚いて顔の全部が緩む。で、すぐに今度は純粋に怒りに満ちて、きっちりおれを睨みつけた。
 最低最悪の会話だとしても、この顔が動くのが見れてるから、今の所トータルでは得してるな。
「西川カイ、貴様まさか今までのは全て冗談だとでも――」
「おれはあんま冗談言わないよ」
 最後まで言われる前に言い返した。が、最後まで言い返す前に、特大の警報音が鳴って話が遮られた。
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