異世界からの友好的侵略者にバカ惚れしたのでひたすら口説く

浦門

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少し未来のこと 短編

学習中の異世界人 1

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 夜中に珍しく目が覚めた。寝苦しい。薄暗い中で目を凝らすと、腹の上にクソ重たいものが乗っている。鉄の塊のように重い。寝る前にこんなものを乗せた覚えはない。
 こいつは横で寝始めた筈だ。ということは寝相が悪いんだろうか。身体も鉄のように重いが、金属質の髪も重い。腹の上に柔らかい金属が乗り上げていて、広がった長い髪がおれの腕や足にも覆いかぶさっている。
 この髪、切ってもらうわけにはいかないだろうか。見た目の好みとしては長い方が好きかもしれない。でも短いのを見たわけじゃないからわからない。こいつが好きで伸ばしているのなら、そのままでも、いいか。こいつが本当に寝相が悪いのなら、そのうち朝を迎える前におれの内臓が破裂している日も来るかもしれないが。どうせ人間の身体なんてすぐ治せるんだろう。
 ぼんやり考えているうちに重さに慣れてきてまた寝た。
 で、明け方にもう一度重さで目が覚めた。
 じっとしてりゃいいのに、ごそごそ動いている。考えるまでもないが、もちろん、その方が押し潰されている側の負担は大きい。
「人体が耐えられる重量を超えてる」
「超えていない。少なくともお前の身体なら耐えられる」
「人体実験でもした?」
「このくらいのこと、するまでもない」
「肘立てるのやめて」
 肋骨に頭の重量の乗った肘が刺さっている。もう少しで骨が軋むような気がする。肺が潰れそうな気がする。
 しかし、やっぱり今のおれの身体にとってこのくらいはどうってことないんだろう。どうにかなる気配はない。ただ重い。動けない。会話をするなら顔を見たいが、少し首を起こすのでやっとだ。
「眠っていればいい。次の瞬間に備えて体力を回復しろ」
「重くて寝れないよ。つーか何やってんの? あんたは寝ないの?」
「慣れない姿勢で眠ったせいで早く目が覚めた」
「そういやいつもどうやって寝てんの」
 ふと考えるような間が空いて、おれの肋骨に刺さっていた肘が崩された。相変わらず腹の上に横たわっているし腕も乗せられているけど、鋭利な部分を乗せられてないだけマシ。少しは動ける。
 上半身をどうにか少し起こして顔を覗き込むと、そいつは傾いたおれの腹の上からずり落ちそうになった雑誌を反射的に強く押さえた。
「人間が床に座っているときの体勢に近い」
「いや、ていうかそれおれのじゃん!」
「これか?」
 顔を上げておれを見上げる。まだカーテンも閉め切った明け方の室内にしては、髪も目も肌も眩しいような金属光沢を放っている。特に目。今の瞬間に少し見開かれてギラついた。獲物を期待し瞳孔を開いた野生動物の目に近い。
「お前が焦るのは珍しいな」
「どっから出した?」
「伝統的な隠し場所があると聞いた」
 トントン、と雑誌のページを指で叩く。示してるのはその下だ。おれの腹でもなくベッドの上でもなく、ベッドの下。どこで知ったんだ。どこでも知る機会はありそうだけど。興味があるとは思わなかった。
「この部屋のものは好きにしていいと言っただろう」
「んー、まあ、まあ確かに言ったけど。そんなん読んで面白い?」
「お前にとって不都合な内容が書かれているということを今知った。充分に価値がある」
 不都合というわけじゃない。いややっぱり不都合かも。
「エロ本だよ?」
「カテゴリーは把握している」
 この状態はおれにとって不都合か? 恥ずかしいってのは不都合と呼ぶには充分だが、そもそも恥ずかしがるような事態かどうか。今更? さっきからこいつ楽しそうだし、いいんじゃないかな、別に。でもやっぱり正直なんか嫌だ。てゆうか重い。
「後ろめたい」
「ん」
 おれの独り言だかなんだかわからない一言に、そいつは少し視線を上げて返事だかなんだかわからない声で返した。
「それは浮気じゃない」
「その概念はわからない。そんなことより学習中だ。眠っていろ」
 そう言われても物理的にも精神的にもこの状態で安眠できるか?
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