192 / 202
トイの青空
193.
****
「とい」
「トイだー!」
「みんなー! 久しぶり」
トイの姿を見つけた途端、駆け寄ってくる子どもたちを抱きしめる。
「トイ、どうして、なんで、いなかったの?」
「ごめんな、ちょっと体調悪くなっちゃって休んでたんだ」
泣き出しそうな顔をくしゃりと歪ませて、結局泣き出してしまったアンナが首にしがみ付いてきたので、そのまま抱き上げて小さな背を撫でてやる。
「トイ、もういなくならない?」
「おう! 帰って来たぜ。心配かけちゃってごめんなメアリー」
「ふーんだ、そんな心配してなかったもん!」
「はは」
とは言いつつメアリーの目尻も赤い。くいと袖を引っ張って来たのはトニーだ。
少し茫然とした顔でトイを見上げているのは暫く顔を見せなかったトイが突然現れたことに驚いているのかもしれない。
アンナを抱きしめながらよしよしとトニーの頭を撫でると、徐々にその丸っこい頬が震え、ぼたぼたと大粒の涙が流れ始めた。
「と、い」
「トニー、ごめんな。ずっと来られなくて」
「う~……」
トイの脚に顔を埋めて、ぐずぐずと鼻を鳴らし始めたトニー。
ここに来られなかったのは1週間だ。その間ずっとトイが来るのを待ってくれていたのかと思うと、トイも思わず涙腺が緩んでしまう。
一人ずつ抱きしめて宥め終えてから、アンナが悲しそうな顔でトイの服を引っ張った。
「トイ、ディアナがね、いなくなっちゃうのよ」
「……うん、聞いたよ」
だから、間に合うように今朝急いで育児院を訪れたのだ。
「トイ……」
「ディアナ」
唯一の友達を顔を合わせるのも、一週間以上ぶりだった。
「よかった、間に合って」
完全に体力も回復し歩けるようにもなったのだが、如何せんソンリェンの屋敷にずっといたため、外を歩くことに未だ慣れていない。ゆっくりと地面を踏みしめながらディアナの傍へ駆け寄る。
二歩ほど離れた距離で顔を見合わせる。互いに言いたいことはあるのに押し黙ってしまう。
ディアナにソンリェンとの、凄惨極まりない現場を見られた。
ここ1週間ディアナにあの時のことをどう話そうかとずっと考えていたのだが、いざディアナを前にするとどう切り出したらいいのかわからなくなる。
改めて蒸し返して此方から話してもいいものなのだろうか。
数秒の間、沈黙が広がる。ふいに視線の先に小さな車と、シスターと話し込む男性の姿が見えた。
「……あれ、お父さん?」
「え? あ、うん、そうなの」
ディアナと同じ茶髪に、遠くからなのでよくは見えないが確か目の色も同じだと言っていた。トイには一瞬でわかった、あれがディアナの父親なのだと。
だって雰囲気が柔らかい。
「ディアナに、似てるな」
「そうかな、そんなこと、ないよ」
「あるって」
「どこらへんが?」
「優しそうな雰囲気とか」
ゆっくりとディアナが顔を上げた。強張っていた表情が少しだけ柔らかくなる。
ディアナは真剣な顔をしたトイに仄かに笑い、しかし顔をくしゃりと歪ませた。トイの方から近寄り、ディアナの手を握る。
ころりと涙を一筋零したディアナが、ぽすんとトイの肩に顔を埋めてきた。背中に腕を回し華奢な身体をそっと抱きしめる。ディアナもトイを抱きしめてきた。
出会ってから今日に至るまでたった1ヶ月と少しだった。
けれどもトイにとって、ディアナはとても大切な女の子になった。
「トイ……」
「うん」
「……お見送り、来てもらえないんじゃないかって、思ってたの」
以前ディアナがトイに言いかけていたのは、このことだった。
あなたにおすすめの小説
身体検査
RIKUTO
BL
次世代優生保護法。この世界の日本は、最適な遺伝子を残し、日本民族の優秀さを維持するとの目的で、
選ばれた青少年たちの体を徹底的に検査する。厳正な検査だというが、異常なほどに性器と排泄器の検査をするのである。それに選ばれたとある少年の全記録。
【短編集】こども病院の日常
moa
キャラ文芸
ここの病院は、こども病院です。
18歳以下の子供が通う病院、
診療科はたくさんあります。
内科、外科、耳鼻科、歯科、皮膚科etc…
ただただ医者目線で色々な病気を治療していくだけの小説です。
恋愛要素などは一切ありません。
密着病院24時!的な感じです。
人物像などは表記していない為、読者様のご想像にお任せします。
※泣く表現、痛い表現など嫌いな方は読むのをお控えください。
歯科以外の医療知識はそこまで詳しくないのですみませんがご了承ください。