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ゴーストライター
4裏
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私は戸惑っていた。
コーヒーショップで椎名さんと話していると、彼女のところに一本の電話が入った。
電話の相手の声までは聞こえなかったけれど、なにか線引屋さんが絡んだ話をしていることだけは聞き取ることができた。電話の内容を盗み聞きしていたみたいで、聞いていいのか迷ったけど、結局我慢できずに、電話を終えた椎名さんになんの話だったのか聞いてみることにした。
すると、彼女は一瞬考え込んでから、「加須浦さんも一緒にきますか?」と聞いてきた。
その問いかけが私の質問に対する答えなのだとしたら、ついて行った先で線引屋さんに会えるかもしれない。そう思うと、自然と首が縦に動いていた。
店を出て、向かった場所は電車に乗って二十分ほどで到着する工場地帯だった。工場地帯を少し歩いた先にある倉庫のような建物。寂れてはいるが、薄汚れているというよりもどこかレトロな雰囲気が醸し出されていて、そこが芸術家集団『ファランクス』の拠点だという言葉にも不思議と納得がいった。
倉庫の中に入ると、数多くの絵画やオブジェが置かれていて、一見するとどこかの美術館のようにも見える。でも、それらの作品はどれも奇抜で、一般大衆向けというよりマニア受けしそうな尖った感性から生み出されたものばかりだった。椎名さんが言うカウンターカルチャーの定義は、一般大衆に受け入れられず、文化に吸収されていない物を指すようだから、『ファランクス』の活動内容がそれら奇抜な作品を生み出すことに偏るのも納得がいった気がする。
目を奪う作品群が並ぶ通路を抜けると、広い部屋に繋がる。その部屋の壁は真っ白な布で覆われていて、どこか異様な雰囲気を感じさせる。
「ーーーお待たせいたしました」
椎名さんが、部屋で待っていた人たちにそう告げる。
その異様な部屋で待っていたのは、見るからに柄の悪い男性が数人と、若い女性―――とても可愛らしい女の子だった。
柄の悪い男の人が一人、口を開く。
「おい椎名、わざわざこの俺を呼びつけたということは、例の計画、うまくいったと思っていいんだな?」
この施設に来るまでの間に、椎名さんは誰かに短い電話をかけていた。それが恐らく、この男性に向けたものだったのだろう。
「ええ、もちろんですわ、門倉さん。手に入れましたよ、最強の切り札に成りえるカードを」
そう言って、門倉と呼ばれた男性から目を離した椎名さんは、今度は女の子の方に目をやった。
「宗田さん。さっそく見せていただけますか?」
椎名さんの言葉に頷いた少女―――宗田さんは、無骨なカバンを開き、中からレザーでできた衣服のような物を取り出し、机の上に置いた。それがパーカーであることを確認した私は、次に少女がカバンから取り出した物を見て、衝撃を受けた。
ドクロを模したガスマスク。
一目見ただけでわかる。その特徴的なデザインのガスマスクは、言うまでもなく線引屋さんが被っている物と同じ。取り出したパーカーも、その特徴的な素材に見覚えがあった。間違いなくそれは、線引屋さんが身につけているものだ。
なぜ、そんな物がここにあるのだろう。
私の疑問は解消されないまま、門倉という男性が言った。
「ほう、それが例の代物か。本当に手に入るとはな。線引屋の存在は、この界隈の不良たち、もちろん千葉連合を含めていまや無視できないカードになりつつある。たかが絵描き風情ではあるが、その影響力は凄まじい。そんなジョーカーを鍛島の手元に置いておくのは危険だ。ヤツは以前からやり手ではあったが、近頃、鍛島のチームマサムネは勢いがあり過ぎるからな。同じ千葉連幹部として、これ以上あいつの発言力を高める訳にはいかない。わかるな、如見」
それまでずっと黙っていた男性が、小さく頷いた。
その姿を見て、門倉さんという怖い見た目の男性が、更に言葉を続けた。
「如見。お前の幹部入りの話を通すためにも、鍛島の力を削ぐ必要がある。認めたくない話だが、線引屋っていう絵描き風情にはそれだけの力がある」
「絵描き風情だなんて、酷い言い方ではありませんか、門倉さん。我々芸術家をまるで侮辱するかのような言い方は聞き捨てなりません」
「言葉の綾だ、聞き流せよ椎名。むしろ俺は感心してるんだぜ。腕力も財力も持ち合わせていない、ただの絵描きが不良界のカリスマと言われるまでになったんだからな」
「さすが、腕力だけで千葉連合の幹部にまで上り詰めた男の言葉は違いますわね」
「ふん、財力使って俺たちチーム『麒麟児』を雇った美大生のお嬢様がなに言ってやがる」
椎名さんと門倉という男性は、そう言うと不敵に笑い合った。
私は、口を挟んでいいものかわからなかったが、机に置かれたパーカーを椎名さんが手に取り、それに腕を通し初めたのを見て、思わず言葉が出た。
「あ、あの。どうして椎名さんが、線引屋さんの服を着るんですか?」
私の問いかけに対して、椎名さんは息をついた。
「線引屋が何者かは知りませんが、まさにいまのネット社会が生み出したカリスマです。どれだけの腕を持っていたとしても、陽の目をあびる機会を与えられなければただの犯罪者でしかありませんわ」
そう言うと、次にドクロを模したガスマスクを手にし、顔に近付けた。
「残念ながら、線引屋本人は自分の存在がどれほどの価値を生み出すのか、いまいち理解できていないようです。ですから私が、線引屋を本当のカリスマーーーいいえ、英雄にしてみせますわ」
それだけ言った椎名さんは、ガスマスクを被ると周囲を見渡した。そして、用意されていたスプレーインクを手にすると、壁に向かって線を引き始める。やがてその線が折り重なり、『線引屋』の文字が壁に設置された白い布に描き出された。
その様子をカメラで収めていた少女。宗田と呼ばれた彼女は、いったい何者なのだろうか。線引屋さんと酷似した衣装を持ってきたことも含めて、謎の多い少女だった。
そもそもからして、私にはなにもかも理解できない。この状況も含め、頭の中が混乱していた。
だけど、一つだけ確かに言えることがある。目の前にいるガスマスクを被った椎名さんは、本物の線引屋さんではない。スプレーインクの扱いや手際、描かれたタグの筆致がそれを物語っている。あれは偽物だ。それだけは、確かに言えた。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「ちょっと、自分の食べた食器くらい片付けなさいよ」
「う、うっせババァ。専業主婦なんだから、し、仕事しろ」
俺は吐き捨てるようにそう言うと、部屋を出る。
すぐに通話中のケータイを耳に当てた。
「ご、ごめん廣瀬。お、お待たせ」
『俺はぜんぜんいいけどさ。それにしても意外なんだけど、中西って家だとかなり強気な態度なんだな。相変わらずどもってたけど』
「は、母親にだけ強気とか、お、俺って引きこもり予備軍じゃね?」
『俺らがそういうこと言うと洒落になんねえからやめようぜ』
そうして、俺と廣瀬は溜息を吐いた。
直視したくない現実は見ない主義。だから、すぐに虚構の世界に逃げる。
「そ、それよりご飯食べ終わったし、さっそくやろうぜ。『ロ、ロードアークギア』」
俺と廣瀬がいまはまっているネトゲ。飯とネットサーフィン以外の時間、ずっとやっていると言っても過言ではないくらいはまりにはまっている。昨日話した感じ、マクベスはあんまり乗り気じゃないようだけど、始めたらきっと好きになるに決まってるから、そのときは三人でパーティ組んで遊ぶとしよう。
俺も廣瀬もまだ始めたばかりで、お互いにキャラのレベルは一桁台だ。俺がキャラメイクで選択した属性はアンデットで、初期は亡霊という骸骨から始まり、屍、悪霊、邪神へとレベルに応じてクラスチェンジが行われる。アンデット属性は白魔法を習得できない代わりに、初期の段階から黒魔法をいくつか覚えているのと、毒や混乱といった状態異常を受けないという効果を持っているため、扱いやすい種族なのだ。
見た目重視で戦士なんていう捻りのないキャラクターを選択する廣瀬と違い、俺は実用性を重視する。
二人でパーティ組んでダンジョンに繰り出し、ある程度進んだところで、俺のケータイにSNSの通知が入る。机の上に置かれているケータイの画面をちらと覗き見ると、アイドルグループ『ティーンズ・ティアラ』のみんとすこと、宗田明都ちゃんの書き込みを知らせる通知だった。
みんとすの書き込みともなると、すぐに確認せずにはいられず、俺はゲームの手を一旦止めてケータイを手にした。書き込みの内容は、定期的に行われる動画配信の更新だった。
最新動画は五分ほどだったので、廣瀬に時間を貰ってそれを確認することにした。
ケータイを手に、動画の再生ボタンを押す。
すると、そこにはみんとすの姿は現れず、その代わりにガスマスクを被った人物が、スプレー式のインクで壁に文字を描く姿が一貫して映し出されていた。
なんなんだ、いったい?
書き込みのタイトルは、『噂の線引屋とのコンタクトに成功!』
そういえば、昨日アップされたコスプレイベントの動画にも、このガスマスクの人物が映り込んでいた。
線引屋って、確かあれだろ? なんか不良たちの間で話題になってるっていう、壁に落書きするDQN。ネットのまとめサイトなんかでときどき名前を目にしてはいたけど、このガスマスクの人物がそうなのか。
興味もなにも沸かないまま、動画を最後まで見終わる。
この人物が何者なにか知らないし、ぜんぜん知りたいとも思わない。みんとすがアップした動画でなければ、途中で見るのをやめていただろう。
なぜこんなものがネットを中心に話題を呼ぶのか、不思議でならなかった。
それよりも、次にみんとすが参加するイベント情報の方がずっと気になる。
調べてみると、週明けの火曜日に再び動画をアップする予定らしい。今日アップされた動画の続き、という書き込みと共に、正式なイベントの告知がされていた。
火曜日の夜間。
線引屋によるグラフィティが披露されることが予定されていると書かれていて、そのイベントにみんとすも参加する予定だというのだ。
線引屋は不良たちから絶大な支持を受けているようだから、集まるのは柄の悪い連中ばかりかもしれない。だけど、みんとすがその場に来るというなら、一ファンとして行かなければならないかな。
俺は予定日時と場所をメモすると、再びパソコンの画面に向かい、ゲームを再開した。
コーヒーショップで椎名さんと話していると、彼女のところに一本の電話が入った。
電話の相手の声までは聞こえなかったけれど、なにか線引屋さんが絡んだ話をしていることだけは聞き取ることができた。電話の内容を盗み聞きしていたみたいで、聞いていいのか迷ったけど、結局我慢できずに、電話を終えた椎名さんになんの話だったのか聞いてみることにした。
すると、彼女は一瞬考え込んでから、「加須浦さんも一緒にきますか?」と聞いてきた。
その問いかけが私の質問に対する答えなのだとしたら、ついて行った先で線引屋さんに会えるかもしれない。そう思うと、自然と首が縦に動いていた。
店を出て、向かった場所は電車に乗って二十分ほどで到着する工場地帯だった。工場地帯を少し歩いた先にある倉庫のような建物。寂れてはいるが、薄汚れているというよりもどこかレトロな雰囲気が醸し出されていて、そこが芸術家集団『ファランクス』の拠点だという言葉にも不思議と納得がいった。
倉庫の中に入ると、数多くの絵画やオブジェが置かれていて、一見するとどこかの美術館のようにも見える。でも、それらの作品はどれも奇抜で、一般大衆向けというよりマニア受けしそうな尖った感性から生み出されたものばかりだった。椎名さんが言うカウンターカルチャーの定義は、一般大衆に受け入れられず、文化に吸収されていない物を指すようだから、『ファランクス』の活動内容がそれら奇抜な作品を生み出すことに偏るのも納得がいった気がする。
目を奪う作品群が並ぶ通路を抜けると、広い部屋に繋がる。その部屋の壁は真っ白な布で覆われていて、どこか異様な雰囲気を感じさせる。
「ーーーお待たせいたしました」
椎名さんが、部屋で待っていた人たちにそう告げる。
その異様な部屋で待っていたのは、見るからに柄の悪い男性が数人と、若い女性―――とても可愛らしい女の子だった。
柄の悪い男の人が一人、口を開く。
「おい椎名、わざわざこの俺を呼びつけたということは、例の計画、うまくいったと思っていいんだな?」
この施設に来るまでの間に、椎名さんは誰かに短い電話をかけていた。それが恐らく、この男性に向けたものだったのだろう。
「ええ、もちろんですわ、門倉さん。手に入れましたよ、最強の切り札に成りえるカードを」
そう言って、門倉と呼ばれた男性から目を離した椎名さんは、今度は女の子の方に目をやった。
「宗田さん。さっそく見せていただけますか?」
椎名さんの言葉に頷いた少女―――宗田さんは、無骨なカバンを開き、中からレザーでできた衣服のような物を取り出し、机の上に置いた。それがパーカーであることを確認した私は、次に少女がカバンから取り出した物を見て、衝撃を受けた。
ドクロを模したガスマスク。
一目見ただけでわかる。その特徴的なデザインのガスマスクは、言うまでもなく線引屋さんが被っている物と同じ。取り出したパーカーも、その特徴的な素材に見覚えがあった。間違いなくそれは、線引屋さんが身につけているものだ。
なぜ、そんな物がここにあるのだろう。
私の疑問は解消されないまま、門倉という男性が言った。
「ほう、それが例の代物か。本当に手に入るとはな。線引屋の存在は、この界隈の不良たち、もちろん千葉連合を含めていまや無視できないカードになりつつある。たかが絵描き風情ではあるが、その影響力は凄まじい。そんなジョーカーを鍛島の手元に置いておくのは危険だ。ヤツは以前からやり手ではあったが、近頃、鍛島のチームマサムネは勢いがあり過ぎるからな。同じ千葉連幹部として、これ以上あいつの発言力を高める訳にはいかない。わかるな、如見」
それまでずっと黙っていた男性が、小さく頷いた。
その姿を見て、門倉さんという怖い見た目の男性が、更に言葉を続けた。
「如見。お前の幹部入りの話を通すためにも、鍛島の力を削ぐ必要がある。認めたくない話だが、線引屋っていう絵描き風情にはそれだけの力がある」
「絵描き風情だなんて、酷い言い方ではありませんか、門倉さん。我々芸術家をまるで侮辱するかのような言い方は聞き捨てなりません」
「言葉の綾だ、聞き流せよ椎名。むしろ俺は感心してるんだぜ。腕力も財力も持ち合わせていない、ただの絵描きが不良界のカリスマと言われるまでになったんだからな」
「さすが、腕力だけで千葉連合の幹部にまで上り詰めた男の言葉は違いますわね」
「ふん、財力使って俺たちチーム『麒麟児』を雇った美大生のお嬢様がなに言ってやがる」
椎名さんと門倉という男性は、そう言うと不敵に笑い合った。
私は、口を挟んでいいものかわからなかったが、机に置かれたパーカーを椎名さんが手に取り、それに腕を通し初めたのを見て、思わず言葉が出た。
「あ、あの。どうして椎名さんが、線引屋さんの服を着るんですか?」
私の問いかけに対して、椎名さんは息をついた。
「線引屋が何者かは知りませんが、まさにいまのネット社会が生み出したカリスマです。どれだけの腕を持っていたとしても、陽の目をあびる機会を与えられなければただの犯罪者でしかありませんわ」
そう言うと、次にドクロを模したガスマスクを手にし、顔に近付けた。
「残念ながら、線引屋本人は自分の存在がどれほどの価値を生み出すのか、いまいち理解できていないようです。ですから私が、線引屋を本当のカリスマーーーいいえ、英雄にしてみせますわ」
それだけ言った椎名さんは、ガスマスクを被ると周囲を見渡した。そして、用意されていたスプレーインクを手にすると、壁に向かって線を引き始める。やがてその線が折り重なり、『線引屋』の文字が壁に設置された白い布に描き出された。
その様子をカメラで収めていた少女。宗田と呼ばれた彼女は、いったい何者なのだろうか。線引屋さんと酷似した衣装を持ってきたことも含めて、謎の多い少女だった。
そもそもからして、私にはなにもかも理解できない。この状況も含め、頭の中が混乱していた。
だけど、一つだけ確かに言えることがある。目の前にいるガスマスクを被った椎名さんは、本物の線引屋さんではない。スプレーインクの扱いや手際、描かれたタグの筆致がそれを物語っている。あれは偽物だ。それだけは、確かに言えた。
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「ちょっと、自分の食べた食器くらい片付けなさいよ」
「う、うっせババァ。専業主婦なんだから、し、仕事しろ」
俺は吐き捨てるようにそう言うと、部屋を出る。
すぐに通話中のケータイを耳に当てた。
「ご、ごめん廣瀬。お、お待たせ」
『俺はぜんぜんいいけどさ。それにしても意外なんだけど、中西って家だとかなり強気な態度なんだな。相変わらずどもってたけど』
「は、母親にだけ強気とか、お、俺って引きこもり予備軍じゃね?」
『俺らがそういうこと言うと洒落になんねえからやめようぜ』
そうして、俺と廣瀬は溜息を吐いた。
直視したくない現実は見ない主義。だから、すぐに虚構の世界に逃げる。
「そ、それよりご飯食べ終わったし、さっそくやろうぜ。『ロ、ロードアークギア』」
俺と廣瀬がいまはまっているネトゲ。飯とネットサーフィン以外の時間、ずっとやっていると言っても過言ではないくらいはまりにはまっている。昨日話した感じ、マクベスはあんまり乗り気じゃないようだけど、始めたらきっと好きになるに決まってるから、そのときは三人でパーティ組んで遊ぶとしよう。
俺も廣瀬もまだ始めたばかりで、お互いにキャラのレベルは一桁台だ。俺がキャラメイクで選択した属性はアンデットで、初期は亡霊という骸骨から始まり、屍、悪霊、邪神へとレベルに応じてクラスチェンジが行われる。アンデット属性は白魔法を習得できない代わりに、初期の段階から黒魔法をいくつか覚えているのと、毒や混乱といった状態異常を受けないという効果を持っているため、扱いやすい種族なのだ。
見た目重視で戦士なんていう捻りのないキャラクターを選択する廣瀬と違い、俺は実用性を重視する。
二人でパーティ組んでダンジョンに繰り出し、ある程度進んだところで、俺のケータイにSNSの通知が入る。机の上に置かれているケータイの画面をちらと覗き見ると、アイドルグループ『ティーンズ・ティアラ』のみんとすこと、宗田明都ちゃんの書き込みを知らせる通知だった。
みんとすの書き込みともなると、すぐに確認せずにはいられず、俺はゲームの手を一旦止めてケータイを手にした。書き込みの内容は、定期的に行われる動画配信の更新だった。
最新動画は五分ほどだったので、廣瀬に時間を貰ってそれを確認することにした。
ケータイを手に、動画の再生ボタンを押す。
すると、そこにはみんとすの姿は現れず、その代わりにガスマスクを被った人物が、スプレー式のインクで壁に文字を描く姿が一貫して映し出されていた。
なんなんだ、いったい?
書き込みのタイトルは、『噂の線引屋とのコンタクトに成功!』
そういえば、昨日アップされたコスプレイベントの動画にも、このガスマスクの人物が映り込んでいた。
線引屋って、確かあれだろ? なんか不良たちの間で話題になってるっていう、壁に落書きするDQN。ネットのまとめサイトなんかでときどき名前を目にしてはいたけど、このガスマスクの人物がそうなのか。
興味もなにも沸かないまま、動画を最後まで見終わる。
この人物が何者なにか知らないし、ぜんぜん知りたいとも思わない。みんとすがアップした動画でなければ、途中で見るのをやめていただろう。
なぜこんなものがネットを中心に話題を呼ぶのか、不思議でならなかった。
それよりも、次にみんとすが参加するイベント情報の方がずっと気になる。
調べてみると、週明けの火曜日に再び動画をアップする予定らしい。今日アップされた動画の続き、という書き込みと共に、正式なイベントの告知がされていた。
火曜日の夜間。
線引屋によるグラフィティが披露されることが予定されていると書かれていて、そのイベントにみんとすも参加する予定だというのだ。
線引屋は不良たちから絶大な支持を受けているようだから、集まるのは柄の悪い連中ばかりかもしれない。だけど、みんとすがその場に来るというなら、一ファンとして行かなければならないかな。
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