16 / 25
色欲も良いことばかりでは無い
《十五之罪》腹の虫は呪いではない
しおりを挟む
自分の知らない自分の弱みを他人から教えられる...どれほど屈辱的なのだろう。
自分が呪われていると知ったエーシュは、悲壮感に満ちた顔をするが、なんとか泣かずに留まっているようだ。
「治す方法は...ありますか...?」
「ない。呪われた身体は、死ぬまで呪われたままだ...。」
...。
黙ってしまった。
彼女に掛かった呪いは、一言で言えば
『周囲の視線を集める』と言ったところだ。
詳しく言えば見る人によって過程は異なるがそれは必ず、彼女を見る、という結果に繋がるのだ。
例えばで言うならあの男達は、賭けに負けたむしゃくしゃを晴らそうと考えていた所に、エーシュを発見してしまった。
すると呪いによって彼の中で、『あの女を殴って晴らそう』という結論になったのだろう。
結果として、エーシュは彼らの憂さ晴らしの対象にされたのだ。
更にこの呪いの嫌なところは、彼女を見る周囲の人全ての人が、操られている訳ではない、というところだ。
操られている訳でも無く、魔力や何かに魅られている訳でもない。
故に、周囲の人たちは何の疑問も、対策も、出来ないのだ。
更に付け加えるならば、この呪いに気付いた人は、彼女をどういう目で見れば良いのかが分からなくなる事が辛い。
呪いに気付けたとしても対策が出来ない。つまり、自分の真実の目か、呪いによる偽りの目、どちらで彼女を見ているのか、自覚が無くなるのだ。
幸いな事に、死ぬような呪いでは無いし、傍から見たら気にしなければいい、ただそれだけの呪いでもある。
だが、常に誰かに見られているというのは、結構キツイものがある。
「あー、落ち込む気持ちも分かるが、今更落ち込むことも無いぞ?今日の大通りを忘れたか?」
そう、この呪いは嬉しい事に魔法的に対策がとれたのである。
そこから分かったのは呪いの発動条件。
詰まるところ、エーシュが、人に見えているのが問題なのだ。
これは秘密なのだが、大通りでの迷彩は、はっきり言って自信が無かった。
もし失敗したら、『私の腕とエーシュが光ってるから、みんな気になってるだけ』などと言う馬鹿げた言い訳をするつもりだったのだが...。
ところが綺麗なまでに成功。
認識齟齬さえすれば、呪いは周囲に影響を与えない。
もっとも、迷彩をかけた本人である私には呪いの効果があるようだが...。
「まぁ、要するに、だ。エーシュ、君は私たちと行動を共にするべき、だと思う。」
「えっ...」
エーシュが言葉を詰まらせる。
まぁ、予想通りの反応だ。
「生憎豊かな生活は保証出来ないが、君の命と自由な生活だけは保証しよう。」
「で、でも...。」
「いいよ、まだ答えはいい。けどまぁ、取り敢えず選抜戦が終わる頃くらいには、いい返事を期待してるからな?」
「......ん...。」
そう、今はその相槌だけでいい。
「さて、私は明日の本番の為に今から寝るよ。君も、早い内にな...。」
「は、はい...。」
時間はもう夕刻だ。今から寝たとしてもおかしくは無いだろう。
そう言えば昨日、一昨日から何も食べていない。
寝ようとしたところで私の腹の虫が鳴り、それを思い出す。
と、丁度その時、私のお腹ではないところからも小さく、音が聞こえた。
まさか、と思い、エーシュの方を見る。
エーシュは視線に気付くと、頬を少し赤く染めて俯いてしまった。
「なんか、食べに行くか?」
「...。」
彼女は俯いたまま小さく頷く。
私は起き上がると、エーシュを連れて宿を出たのだった...。
───────────────
自分が呪われていると知ったエーシュは、悲壮感に満ちた顔をするが、なんとか泣かずに留まっているようだ。
「治す方法は...ありますか...?」
「ない。呪われた身体は、死ぬまで呪われたままだ...。」
...。
黙ってしまった。
彼女に掛かった呪いは、一言で言えば
『周囲の視線を集める』と言ったところだ。
詳しく言えば見る人によって過程は異なるがそれは必ず、彼女を見る、という結果に繋がるのだ。
例えばで言うならあの男達は、賭けに負けたむしゃくしゃを晴らそうと考えていた所に、エーシュを発見してしまった。
すると呪いによって彼の中で、『あの女を殴って晴らそう』という結論になったのだろう。
結果として、エーシュは彼らの憂さ晴らしの対象にされたのだ。
更にこの呪いの嫌なところは、彼女を見る周囲の人全ての人が、操られている訳ではない、というところだ。
操られている訳でも無く、魔力や何かに魅られている訳でもない。
故に、周囲の人たちは何の疑問も、対策も、出来ないのだ。
更に付け加えるならば、この呪いに気付いた人は、彼女をどういう目で見れば良いのかが分からなくなる事が辛い。
呪いに気付けたとしても対策が出来ない。つまり、自分の真実の目か、呪いによる偽りの目、どちらで彼女を見ているのか、自覚が無くなるのだ。
幸いな事に、死ぬような呪いでは無いし、傍から見たら気にしなければいい、ただそれだけの呪いでもある。
だが、常に誰かに見られているというのは、結構キツイものがある。
「あー、落ち込む気持ちも分かるが、今更落ち込むことも無いぞ?今日の大通りを忘れたか?」
そう、この呪いは嬉しい事に魔法的に対策がとれたのである。
そこから分かったのは呪いの発動条件。
詰まるところ、エーシュが、人に見えているのが問題なのだ。
これは秘密なのだが、大通りでの迷彩は、はっきり言って自信が無かった。
もし失敗したら、『私の腕とエーシュが光ってるから、みんな気になってるだけ』などと言う馬鹿げた言い訳をするつもりだったのだが...。
ところが綺麗なまでに成功。
認識齟齬さえすれば、呪いは周囲に影響を与えない。
もっとも、迷彩をかけた本人である私には呪いの効果があるようだが...。
「まぁ、要するに、だ。エーシュ、君は私たちと行動を共にするべき、だと思う。」
「えっ...」
エーシュが言葉を詰まらせる。
まぁ、予想通りの反応だ。
「生憎豊かな生活は保証出来ないが、君の命と自由な生活だけは保証しよう。」
「で、でも...。」
「いいよ、まだ答えはいい。けどまぁ、取り敢えず選抜戦が終わる頃くらいには、いい返事を期待してるからな?」
「......ん...。」
そう、今はその相槌だけでいい。
「さて、私は明日の本番の為に今から寝るよ。君も、早い内にな...。」
「は、はい...。」
時間はもう夕刻だ。今から寝たとしてもおかしくは無いだろう。
そう言えば昨日、一昨日から何も食べていない。
寝ようとしたところで私の腹の虫が鳴り、それを思い出す。
と、丁度その時、私のお腹ではないところからも小さく、音が聞こえた。
まさか、と思い、エーシュの方を見る。
エーシュは視線に気付くと、頬を少し赤く染めて俯いてしまった。
「なんか、食べに行くか?」
「...。」
彼女は俯いたまま小さく頷く。
私は起き上がると、エーシュを連れて宿を出たのだった...。
───────────────
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
5
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる