うちのペットはもしかしたら地球を侵略するかもしれない。

ハコニワ

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一章 侵略者と地球人 

第6話 農家の手伝い

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 今日は、二匹の宇宙人と委員長をつれて俺たちは、親父の親戚ところにいる。毎年この季節になると、親戚の叔父さんところにの農家を手伝うことになる。今年は人手が必要と言われたので、俺は、コスモたちを連れて行くことに。
「なにするの?」
「西瓜を植えるんだ」
「西瓜て?」
「赤くて冷たくて、美味しいものだ」
「今日食べれるの?」
「残念ながら、食べれるのは夏だな」
 キラキラしたコスモの目がどんより沈んだ。ダラダラ垂れていた涎がピタと止まる。
「一樹くん、私も連れてきてくれてありがとう」
 前の座席に座っている委員長が、くるりと振り返った。
「いや、こっちは人手が必要だったし、委員長こそ休みの日なのに来てくれてありがとう」
 委員長は照れ臭そうに笑った。
 
 今、親戚の叔父さんところに行くためにバスにいる。朝早い時間帯だから、車内にいるのは俺たちと早起きのおじさんおばさん。

 バスがガタガタ揺れる。コスモとスターは、初めて乗った。地球に降りて初めて乗る乗り物がバスで、バスを目の前にして、二人して「生物」だの「この土地の主」だの、田舎から来た人間みたいで可笑しかった。
 初めて乗り物に乗っているから、二人とも、最初は緊張していた。
「ガタガタ震えている。わたしたちが静かにしないから、この土地の主が怒っているんだわ」
 とスターが、座席に縮こまる。心なしか、頭の触覚も垂れ下がっている。一方、コスモは緊張したのは最初で、今はなんともない。いつものように窓の外を大口開けてボォーとしていた。

 都会から田舎へ。窓の外から見える景色がだんだん、灰色のコンクリートだらけが大自然の緑に包まれる。バスに揺られるこどニ時間。そうして、たどり着いたのは都会から離れた田舎。

 見渡すばかり田畑。高くそびえたつのはビルではなく、大きな木で、深く息を吸うと田舎でしか味わえない爽やかな空気が肺に入ってくる。バスから降りた俺たちは、親戚の叔父さんがいる家に向かった。

 叔父さんは、畑を何枚も持っている。ナスやキュウリ、西瓜など。夏食べれるように今植える時期。叔父さんが収穫したそれらは、毎年送ってきてくれる。
 店で売っているよりも、叔父さんの野菜は美味しい。今年は宇宙人がいるから、大量に送ってくるかも

 叔父さんの家に辿りつくと、叔父さんが出迎えてくれた。
「よお来よった。女の子ばっか連れてきて、この中に本命がいるんが?」
「叔父さん、そんなのいねぇよ」
 叔父さんの独特の笑い声を聞いて、久しぶりに再会したと直感する。黒焦げになった肌に、麦わら帽子が特徴的な人。昔はよく遊んでくれた人。
 叔父さんは、俺の後ろにいる触覚のある宇宙人をチラッと見た。
「この子かい? 家にやってきた新しい子と言うもんは……その、触覚はなんだい?」
 叔父さんは、コスモの触覚を触ろうと手を伸ばした。コスモはその腕が届くまで、じっとしている。
「叔父さん、触覚みえるの!? それじゃあ、この二匹、二人はどう見える?」
 両親や姉貴の前では動物。外に行くときは十二歳の人間の女の子としてみえるコスモたち。当然、他の人には触覚は見えない。一部の人を除いて。
「触覚?」
 叔父さんの体が自然と止まった。そのすきをついたスターが、コスモの手を引っ張っていく。叔父さんはキョトンとした表情。分かっているのか、分かってないのか、曖昧にしたまま、叔父さんが話をそらした。
「まぁ、いいさ。早くしねぇと日が暮れるぺ」
 叔父さんはシャベルを持って、スタスタと歩く。俺たちも仕方なく、背をついていく。

 畦はもう出来上がっていた。あとは目印のところに種を植えればいい。ほんとにこんな簡単なことでもいいのかと戸惑う。でも、簡単だと思って侮っていた。西瓜を植えるのに、一反で、四人がかりでもしんどい。

 大まかに言うと、俺と委員長しか動いていない。あの二匹は、というと――。

 スターは種ををかかえて、穴があくほどそれを見ている。
「地球はほんとに空気と水と環境に優遇されてるわね。こんなの、わたしらの星じゃ植える前に土が乾燥している」
「そうなんだ。それじゃあ、作物とかないんだ」
 委員長とスターが話している。スターは初めて見るものには、警戒だらけで宥めるのが委員長。そっちは、委員長がついているから、割と進んでいる。

 コスモは一箇所に種を植え付けたものの、そこから一歩も動かない。
「何してんだ」
「芽が出てこないかな?」
「そんな早く出てこねぇよ」
「ゲームではすぐに出た」 
「これはリセットボタンを押せるゲームじゃないぞ」
 俺はため息ついた。
 コスモは懐からリモコンを取り出した。赤いボタンと青いボタンしかないリモコンで、俺はすかさず止めた。
 まさかそれで「再生ボタン」を押す気じゃないよな。コスモの顔は本気だった。こいつが本気になると恐ろしいな。
「こういうのは、愛情を与えながら大きくなるまで育てるんだ。愛情を与えた野菜を食べたろ? 美味しかったろ?」
「うん。美味しかった」
「だから、大きくなるまで待つんだ」
「人間て我慢強いんだね」
「そうだな」
 コスモは一つ一つ種を植えると「大きく育ってね」と言う。四人の力をかりて、昼頃には半分ほど出来上がった。俺たちは叔父さんの家で昼飯を食べることに。
 ご飯は全部、叔父さんが育てた野菜ばかり。こんなものを毎日食べているなんて、羨ましいな。

 コスモとスターは、いっぱい働いたから、ガツガツ食べていく。机にある料理がどんどんなくなっていく。このままじゃ、取られる。俺も気にせず取っていく。すると、足の指をつままれた。
 叔父さんに足の指をつままれたのだ。俺は食べながら叔父さんのことを睨んだ。叔父さんも睨んでいる。
『気遣いができん子じゃ。彼女さんがろくに食べてなかろうが!』
『彼女?』
 叔父さんが指差す方向には、委員長がいる。俺たちのやり取りはアイコンタクト。だから他の人には勿論聞こえるはずもなく。コスモとスターがガツガツ料理を取っていく中で、委員長は戸惑いながらも小さな野菜だけを取っていく。

 確かに委員長は頭いいし、気が利く。俺が喧嘩に明け暮れている頃、委員長は勉強をしていた。それを踏まえて、委員長とは真逆の世界の人間だ。

『彼女じゃねぇし』
『疲れたのにご飯も作ってくれて、しかも装ってくれて、気が利くし、可愛いし、お前には確かにもったいないいい子だ』
『それ聞くと、叔父さんが好きなタイプだね』
 俺は叔父さんから目をはなして、委員長のほうに体を向けた。委員長の皿は一つ二つしか両親が盛っていない。俺はまだ手につけていない野菜漬けやご飯を皿に盛って、委員長に差し出す。
「委員長、いっぱい食べないと倒れるぜ。俺の、取っていいから」
「え、あ、ありがとう」
 委員長は、目を見開いて皿と俺の顔を交互に見る。委員長はゆっくり腕を伸ばし、その皿を受け取った。

 委員長はすらりとした華奢な体。普段食べているのか疑うほどの小柄。服から覗く肌は真っ白。俺が強く腕を握れば、折れそうな体だ。


 さて、昼飯も食ったことだし、後半頑張るか。昼飯も食べて休憩したからなのか、あの二匹がいきなりスイッチが降りたように気怠けになった。ゴロゴロと畳の上でずっと寝転んで、起こしても「だるい」「疲れた」だの。
 あともう少しなんだから、がんばってほしい。そもそも宇宙人なんだから、体力の底はないだろ。

 すると、委員長がコスモたちに布団をかけてやった。
「コスモちゃん、スターちゃん。寝てていいよ。あとは私たちが頑張るから!」
「おーよろしく」
「麻美、ありがと」
 コスモとスターの体をポンポンと宥めると、二匹は寝心地良かったのか、目をつぶってすぐに寝息をたてた。手なれた様子だ。そういえば、委員長には下の子がいるんだった。確か、同じ学校にも姉弟がいるから、下の子の面倒は割と慣れているのかも。

 俺のほうにくるりと振り向くと、申し訳なさそうに微笑んだ。
「ごめん。あとは私たちがやるからって、勝手なこと言って」
「え、別にいいよ。まぁ、こいつらがいても即戦力にはならないしな。委員長、頑張るか」
 委員長のホッとした表情を見て、俺はにっと笑った。俺たち二人は後半をやる。委員長も中々、コツが分かってきて、ぐんぐん進んでいる。毎年やっている俺よりも早いスピード。

 そのかいあって、コスモたちが目を覚ますころには終了した。叔父さんは、働いたお礼として籠いっぱいのトマトを渡してくれた。バスに揺られ、目を覚ましたコスモたち。気がついたら、車内にいて二匹ともびっくりした様子。来年こそは、完膚なきまでに種を植えると宣言するスター。

 来年も来るつもりなのか、と内心ヒヤヒヤしている。コスモは、じっと、かごいっぱいのトマトを見た。真っ赤に熟したトマトに、コスモの顔が映っている。車内で食べ物を食べない、と乗る前に約束したから、恐らく我慢しているのだろう。 
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