うちのペットはもしかしたら地球を侵略するかもしれない。

ハコニワ

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一章 侵略者と地球人 

第8話 銀行強盗

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 コスモたちは、人通りが少ない路地裏にいた。ガーディアンと向き合っている。薄暗い湿った場所で、狭い空間。吹き荒れる風が隙間風のように冷たい。三人の中、真ん中にいた女子がまず口を開いた。
「あたしはアポロ。あたしたちは侵略者を許さない!」
「ふん。望むところよ! 侵略する前にガーディアンを滅ぼせって、ギャラクシーが言ってたもの」 
 スターが足元にある石ころを宙に浮かせた。二人は火花を散らせて睨み合っている最中、コスモは空を見上げてた。路地裏から見える景色は、普段の景色と違って、狭まってて曇天の空が遠い。

 どうしていきなり、天気が変わったのかはてなマークを浮かせていた。
「コスモやるわよ!」
 スターが叫んだ。かつてないほどに、気合いに満ちている。その背後では、ゴォゴォと炎が燃えていた。
「何を?」
 コテンと首をかしげて聞く。スターは憤怒で体を震わせている。
「やりあうのよ!」
「誰と」
「あーもう! だから、こいつらと……」 
 言葉を言い終わる前に、スターはピタリ止まった。目をカッと見開いた状態で憤怒していたが、急に浴場した目となり、顔を真っ赤にさせた。
「人のいないこんな薄暗い場所で、ヤりあう……あ! だめ! 女の子同士でソコを刺激したら、あ! 嫌なのに体が勝手にんぅ……だめよだめだめ」
「え、こいつら大丈夫?」
 ガーディアン機関たちが別の意味で、後退りしている。コスモは変わらずボォーとしているし、スターはR指定の妄想をしている。
「一旦、ここは退いたほうがいいと思う」
 アポロの右隣にいた女子が耳打ちする。アポロは、それに従うように踵を返したとき、二匹はそれを見計らったかのようにその場から立ち去った。

 瞬きした瞬間に消えて、気づいたら侵略者はいなくなっていた。
「あいつら、まさかこれを狙って!? ルナ!」
「分かっている」
 ルナと呼ばれた右隣にいた女子がタブレットを出した。そのタブレットには、侵略者の居場所を突き止めるGPS機能がついていた。アポロと睨み合っている最中に、服のどこかにつけたのだ。


 うまく逃げ切ったコスモたちは、路地裏から人通りの多い場所へ。スターは大きくため息ついて、しゃがみこんだ。
「はあぁ。危なかった」
「危なかった」
「ダスクがいない今、わたしたちだけでガーディアンと戦っても勝ち目ないもの」
 超能力を使えば、ガイアは滅ぼせる。けど、ガーディアンもまた同じ。人を超えた集団であり、超人集団。それを相手にニ対三は敵わない。現時点で戦うのは無理。三人そろえばの話だ。
「それにしても、コスモもノってくるとは思わなかったわ。おかげで切り抜けた」 
「ノる? バスに乗ってない」
「その乗るじゃなくて、空気を読んでノるかどうかの話よ」
 スターは再び重いため息をついた。あれはたまたま切り抜けたわけか。コスモの性格を考えれば、逃げる選択よりも攻撃の手段を取るものね。

 スターはやれやれと立ち上がり、ガーディアンに見つからないようにお互い家に帰ろうと提案した。コスモは一つ返事で承諾。

 銀行を通り抜けたとき、コスモがよろめいた。今夜の夕食のことを考えてて、結果何かに躓いた。スターはびっくりしてコスモの腕を掴みかけるが空回り。コスモは吸い込まれるようにして銀行内に入った。スターもその後を追う。

 コスモたちが銀行内に入るのと同時に、雷鳴が落とされた。平和になったこのご時世に物騒なものが昼間に鳴り響いた。そして、武装集団が入ってくるや、中にいた人たちをロープで縛りつけ、銀行内は完全に敵の包囲となった。こんな黄昏時に銀行強盗とは、よくやれるものだ。しかも、侵略者が地球人に捕まっている始末。
「サターン様に報告出来ないわね」
「地球人て強い」
 当然この二匹も、縄に縛りつけ座らされている。銃を持った武装集団が威厳を出している。宇宙人も捕まっている一方で、何故か、ガーディアンたちも捕まっていた。同じように座らされている。
「どうして捕まってんのよ」
「追ったらこうなったの。もうどうしてくれんの」  
 アポロは涙を流し、ルナは目が死んでいる。黒髪のショートカットで、真面目そうな雰囲気のルナ。
「……どうして、こうなった?」
 茶髪の三つ編みした女子、レイが喋った。第一発生がこれ。立ったままでも寝ていたし、今までも鼻ちょうちんをつくって爆睡していた。コスモと同じくらいマイペースな子。 
「もうどうすんの」
 アポロが半分発狂寸前に泣いた。
「考えならあるよ」
 そう言ったのは、コスモだった。アポロはピタリと泣くのをやめ、ルナの目に再び光が入った。
「この間テレビで見たんだけど、銀行強盗が入ってきたとき、中にいた人が武装集団と戦って、人質を一人ずつ逃して最後は警察がくるんだけど、その時一樹が『俺ならこいつら三分でやれるぞ』『どうやって』『敵の中心人物を殴る。これで終いだ』だって」
 言い終わったあと、アポロは再びしくしく泣き出し、ルナは再び目が死んだ。レイは鼻ちょうちんをつくって爆睡。
「それ、誰でもやれることじゃない。具体的に言いなさいよ。殴るまでの過程がほしいの!」
 スターが叫ぶと、二発目の弾丸が飛んだ。女性の甲高い叫び声がこだまする。

 分厚いカーテンに覆われた窓の隙間から、赤い毒々しいランプが見えた。恐らく、警察がここを包囲しているのだろう。銃弾を聞いて動き出すかも。ここは、警察が動いてくれるのを待とうと提案したアポロ。

 その提案に、コスモとスターはのらなかった。宇宙人としてのプライドがあり、地球人に助けられたことを流石に報告できない所業。警察が動く前に、武装集団を鎮圧するのは、宇宙人がさきだった。

 ピコピコ頭の触覚を動き、全方位の空気を探る。スターの探索は、侵略者三匹の中でずば抜けている。スターの頭の中は、時間が止まったように人が止まっていた。周囲のものが透けてみえる。
「敵は全部で五人。五人のうち、一人は銃を持っていない。巨漢で腹に大きな傷がある。敵の大玉はそいつ。右に二人。左に三人。左の三人はわたしらがやるから、右の二人はあんたらに任せた」 
 すっと目を開ける。
 その覚悟に満ちた表情に、アポロも首を頷いて承諾した。

 スターはコスモに耳打ちした。やりすぎないように少し暴れてと。コスモは分かったと一つ返事。

 さて、宇宙人とガーディアンが協力して銀行強盗を鎮圧する。作戦開始。

 消火器が突然暴れて、白い煙が一面に広がる。これには、強盗犯もなにがどうなったのか分からない。五人は左右に別れて、強盗犯を鎮圧する。

 左方向の人間を鎮圧したのはコスモ。相手の持っている銃をすべて分解し、バラバラし、カウンター奥にあるペンなどで足を突く。強盗犯たちは、地味に痛いと膝をつく。背後から「右方向はやった! そいつだけよ!」とスターの声が聞こえる。霧にまみれた状態で、スターの声だけが響いている。

 残っているのはこの巨漢だけ。
 巨漢は、仲間が次々と膝をつく中で唯一立っていた。しどろもどろに慌てる。巨漢の持っているのは、銃とかの武器じゃない。己の肉体のみ。血管を爆発させたら、スター怒るかも。

 奥にあった、もう一つの消火器を男の方に投げた。命中するまで、絶対逃さない。男はこの霧の中でそれを避けている。早く倒れてくれないかな、コスモは面倒臭くなって投げる速さを速くした。そのかいあって、消火器は男の顔面に。鼻血を出して倒れた。

 霧がモクモクと広がりつつあったが、外から警察がきて、扉が開いた際にその霧は晴れていった。警察の人たちもびっくり。なんせ、強盗犯たちは、何もしてないのに膝をついているのだから。
 
 コスモたちはすぐに店内を出ていった。見つかると色々面倒臭いので、透明バリアを張って。銀行の前には野次馬と警察の人たちがいっぱい。お祭りみたいな人だかり。透明バリアを張ってても、ガガーディアンには見つかった。彼女たちにも、特殊なものが視えるのだ。

 銀行を出て、人だかりも少なくなった道路。辺りは赤くなっていて。太陽が射し、建物の影が伸びている。ちょうど、コスモたちは太陽が刺す方向にいて、ガーディアンたちがコスモたちの影を踏んでいる。

 アポロがふっと微笑んだ。腕を伸ばす。
「侵略者は全員悪みたいなものだと思っていた。けど違った。一瞬だったけど、協力して強盗犯を倒して人質を助けた。人間を守ったことには変わりない。あたし、あんたたちのこと好きになっちゃった! 仲良くしよう!」
 アポロが歯を出してニカと笑った。
 差し伸ばした手は握手みたいなもの。コスモとスターは、恐る恐るその手をすくうと、アポロはぎゅと握った。

 後日、銀行強盗犯は十二歳くらいの少女にやられたと証言。だが誰も信じない。知っているのは、一部のみ。このあと、帰ってきたら一樹がいっぱいお菓子を買っててくれた。お留守番を頑張ったご褒美だそうだ。部屋も荒らしてないし、冷蔵庫の中のラップが敷いたものしか食べてないから、上機嫌。お菓子貰えるように、頑張ろう。
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