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再々
第78話〈完〉人形劇
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四葉さんの言っているあのときのこと、とは一発で分かった。印象的で、鮮明ですぐに脳裏によぎるのはあのときのことだからだ。
「あれって、結局何だったんだろうね。どうしてわたしたちが救えたんだろう。わたしたちは何者でもないのに。それからパタリと世界が変わったじゃん。なんか、大きなことをしたような感じで気が気じゃないの」
四葉さんは俯いて言った。
あれは誰に聞いてもみんな口を揃えて「分からない」だ。あの日のことは鮮明に、目に、頭に焼き付けるように覚えている。きっと一生忘れないだろう。
「きっと、帰っただけすよ」
「かえった?」
俺の言葉をオウム返しで訊く四葉さん。
「あの呪文で叩き起こされてきっと、帰ったんすよ。単純に考えましょ」
「……ふ、そうね」
俺はポジティブ思考で纏めた。四葉さんは言い返さなかった。笑ってその場を収める。
「四葉さん、卒業したらどこ行くんすか」
「国際大学に行くの」
「ほぇー。国際、これまたどでけぇ所に」
「英語だけじゃなくて、他の言語も勉強するためにね。4年制。その間にみんな卒業してるね」
「四葉さん、卒業しても応援してます」
本心だった。
四葉さんは足を止めてじっと、俺の顔を見た。「ありがとう」と小さく呟く。彼女の目元がほんのり寂しそうに揺れた。
寒く冷えた夜の道を共にして歩く。
そうして待ちに待った文化祭当日。
準備したきたものを披露するこの日。小さな部室の中には保護者や小さな子供たちが揃っていた。琉巧が先に前に出てマイクでこの物語の序盤を語る。言い終わったら登場だ。胸がドキドキして死にそう。心臓の音しか聞こえない。
「みんなで楽しみましょ」
四葉さんがみんなの背中を叩く。四葉さんは本番に本当に強い人だ。
「――姫、一緒に逃げよう。大きな湖も真っ広く広がる花畑も君と一緒に見たいんだ!――」
「――あぁ、そんな――ここから逃げたらお父様に殺されますわ!」
「――そんなの構わない! 君と一緒になら生きるのも死ぬのも同じだ!――」
「――そうして二人は城を抜け出したのである。だがすぐに追ってがかかる――」
「――ハーハッハ‼ 我が名は三ケ族を従えし男爵! 我が娘を誑かすとは、この者、即刻幽閉せよっ!――」
人形劇が始まると辺りは食い入るように一点に集中する。観客の中には富美加や、進くんに、ソラちゃん、大地くんが最前列に座っていて俺たちの演技に目を奪われていた。
「盛り上がってるね」
ボソッと隣にいた四葉さんが笑う。
「半分有斗先輩の過剰な演技すっけど。まぁ楽しいし」
「んふ、そうだね」
背景が変わると電気がパッと落ちた。
暗い塔にいるみたいな気分を観客に合わせるため。二人は別々に塔に閉じ込められた。だが、それでも青年は諦めることはしない。姫が幽閉された塔の在り処を知ると、すぐさま脱獄し姫と駆け落ちしたのだ。
「――わたし、ずっとずっとあなたのこと会いたかったの!――」
「――僕もだ!――」
二人は追手に追われる中、手を繋いで国境まで走った。そうして二人は幸せになりましたとさ。
「――こっちだ! 2人とも!――」
「――二人は協力者のおかげで、その国で仲睦まじく過ごしましたとさ。めでたしめでたし――」
劇が終わると拍手が鳴り止まなかった。
小さな部室が揺れるほどの拍手で、観客一同、歓喜に満ちて幕を閉じた。
探索部としての出し物は評判で廊下にはみ出るぐらいお客さんが寄ってきた。時間を別けて劇を行う。初めての出し物は成功、と言っていいだろう。劇が終わったらみんな、最初の頃の不安と緊張に押しつぶされた顔していない。目はキラキラと輝き笑いあう。
「この部で、みんなで一緒になって何かをやるのは最後です。色々ありがとうございました。一人の部がこんなにも楽しく活動できたこと、そして今日の活躍、誇らしく思っています」
四葉さんは涙を流して語る。最後の部長としての挨拶だ。四葉さんには内緒で花束を用意し手渡したら、ポロポロと泣き出した。そうか、これが最後なのか。ふと思ったら無性に寂しく感じた。
文化祭は二日ある。一日目の出し物は成功。次の日はそれぞれで回ることにする。
「お兄ちゃん行こう!」
富美加がグイと手を握ってきた。でもそれをやんわり断った。昨日は部長として、今日は生徒会長の顔して校舎を回っている四葉さんを発見した。
「一緒に回らんか?」
「え? 富美加ちゃんは?」
「富美加は、その、ソラちゃんたちと回るべ。余り物には福があるって昔から、言うんべ……俺は、四葉さんと回りたい」
「あ、わ、わたしは全然構わない。嬉しい」
四葉さんは幸せそう笑うものだからこっちがドキリとした。
文化祭二日目は、それぞれで回る。
琉巧は富美加とソラちゃん。有斗先輩は伊礼と進くんに大地くん。簡単アドベンジャーをクリアしていたり、お菓子売り場に行っていたり。
そして二人はプラネタリウムやお化け屋敷を回ったり。一瞬一瞬の青春を謳歌する。それはいつまでも、春を咲かせるもの。
ソレによって再々を与えられた人間たちをヤミとヒカリは眺めていた。三柱も崩壊した世界で、神が残したものは神話のみ。
ヤミは一神閣議で裁判で裁かれた。だが、二度と地獄に閉じ込められることはない。ヤミの恐ろしさを知ったから、もあるが、裁判でソレが頭を下げたから。神がもう、ヤミに何もできない。することは不可能になった。
ソレとヤミとヒカリは、また以前のように旅に出た。いつか、自分たちの役割を知るため。そして二人はソレに名を与えた。
「僕らの光。全ての神様。アイ様」
―完―
「あれって、結局何だったんだろうね。どうしてわたしたちが救えたんだろう。わたしたちは何者でもないのに。それからパタリと世界が変わったじゃん。なんか、大きなことをしたような感じで気が気じゃないの」
四葉さんは俯いて言った。
あれは誰に聞いてもみんな口を揃えて「分からない」だ。あの日のことは鮮明に、目に、頭に焼き付けるように覚えている。きっと一生忘れないだろう。
「きっと、帰っただけすよ」
「かえった?」
俺の言葉をオウム返しで訊く四葉さん。
「あの呪文で叩き起こされてきっと、帰ったんすよ。単純に考えましょ」
「……ふ、そうね」
俺はポジティブ思考で纏めた。四葉さんは言い返さなかった。笑ってその場を収める。
「四葉さん、卒業したらどこ行くんすか」
「国際大学に行くの」
「ほぇー。国際、これまたどでけぇ所に」
「英語だけじゃなくて、他の言語も勉強するためにね。4年制。その間にみんな卒業してるね」
「四葉さん、卒業しても応援してます」
本心だった。
四葉さんは足を止めてじっと、俺の顔を見た。「ありがとう」と小さく呟く。彼女の目元がほんのり寂しそうに揺れた。
寒く冷えた夜の道を共にして歩く。
そうして待ちに待った文化祭当日。
準備したきたものを披露するこの日。小さな部室の中には保護者や小さな子供たちが揃っていた。琉巧が先に前に出てマイクでこの物語の序盤を語る。言い終わったら登場だ。胸がドキドキして死にそう。心臓の音しか聞こえない。
「みんなで楽しみましょ」
四葉さんがみんなの背中を叩く。四葉さんは本番に本当に強い人だ。
「――姫、一緒に逃げよう。大きな湖も真っ広く広がる花畑も君と一緒に見たいんだ!――」
「――あぁ、そんな――ここから逃げたらお父様に殺されますわ!」
「――そんなの構わない! 君と一緒になら生きるのも死ぬのも同じだ!――」
「――そうして二人は城を抜け出したのである。だがすぐに追ってがかかる――」
「――ハーハッハ‼ 我が名は三ケ族を従えし男爵! 我が娘を誑かすとは、この者、即刻幽閉せよっ!――」
人形劇が始まると辺りは食い入るように一点に集中する。観客の中には富美加や、進くんに、ソラちゃん、大地くんが最前列に座っていて俺たちの演技に目を奪われていた。
「盛り上がってるね」
ボソッと隣にいた四葉さんが笑う。
「半分有斗先輩の過剰な演技すっけど。まぁ楽しいし」
「んふ、そうだね」
背景が変わると電気がパッと落ちた。
暗い塔にいるみたいな気分を観客に合わせるため。二人は別々に塔に閉じ込められた。だが、それでも青年は諦めることはしない。姫が幽閉された塔の在り処を知ると、すぐさま脱獄し姫と駆け落ちしたのだ。
「――わたし、ずっとずっとあなたのこと会いたかったの!――」
「――僕もだ!――」
二人は追手に追われる中、手を繋いで国境まで走った。そうして二人は幸せになりましたとさ。
「――こっちだ! 2人とも!――」
「――二人は協力者のおかげで、その国で仲睦まじく過ごしましたとさ。めでたしめでたし――」
劇が終わると拍手が鳴り止まなかった。
小さな部室が揺れるほどの拍手で、観客一同、歓喜に満ちて幕を閉じた。
探索部としての出し物は評判で廊下にはみ出るぐらいお客さんが寄ってきた。時間を別けて劇を行う。初めての出し物は成功、と言っていいだろう。劇が終わったらみんな、最初の頃の不安と緊張に押しつぶされた顔していない。目はキラキラと輝き笑いあう。
「この部で、みんなで一緒になって何かをやるのは最後です。色々ありがとうございました。一人の部がこんなにも楽しく活動できたこと、そして今日の活躍、誇らしく思っています」
四葉さんは涙を流して語る。最後の部長としての挨拶だ。四葉さんには内緒で花束を用意し手渡したら、ポロポロと泣き出した。そうか、これが最後なのか。ふと思ったら無性に寂しく感じた。
文化祭は二日ある。一日目の出し物は成功。次の日はそれぞれで回ることにする。
「お兄ちゃん行こう!」
富美加がグイと手を握ってきた。でもそれをやんわり断った。昨日は部長として、今日は生徒会長の顔して校舎を回っている四葉さんを発見した。
「一緒に回らんか?」
「え? 富美加ちゃんは?」
「富美加は、その、ソラちゃんたちと回るべ。余り物には福があるって昔から、言うんべ……俺は、四葉さんと回りたい」
「あ、わ、わたしは全然構わない。嬉しい」
四葉さんは幸せそう笑うものだからこっちがドキリとした。
文化祭二日目は、それぞれで回る。
琉巧は富美加とソラちゃん。有斗先輩は伊礼と進くんに大地くん。簡単アドベンジャーをクリアしていたり、お菓子売り場に行っていたり。
そして二人はプラネタリウムやお化け屋敷を回ったり。一瞬一瞬の青春を謳歌する。それはいつまでも、春を咲かせるもの。
ソレによって再々を与えられた人間たちをヤミとヒカリは眺めていた。三柱も崩壊した世界で、神が残したものは神話のみ。
ヤミは一神閣議で裁判で裁かれた。だが、二度と地獄に閉じ込められることはない。ヤミの恐ろしさを知ったから、もあるが、裁判でソレが頭を下げたから。神がもう、ヤミに何もできない。することは不可能になった。
ソレとヤミとヒカリは、また以前のように旅に出た。いつか、自分たちの役割を知るため。そして二人はソレに名を与えた。
「僕らの光。全ての神様。アイ様」
―完―
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