魔女は世界を救えますか?

ハコニワ

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Ⅱ 誘発の魔女 

第21話 座学

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 マリア先生から驚きの話を聞けて、わたしたちは修学旅行一日目の終了を告げた。
 
 深夜にふと叩き起こされる。
 眠い目をこすり、辺りをキョロキョロした。部屋は広い畳状で、女子全員が眠っている。薄暗い。一つの明かりがついてて、まだ夢中なのか現実なのか判断できない頭で、思考を張り巡らせた。
 わたしを叩き起こしたのは、ナノカだ。
 薄暗い部屋の中、起きてるのはわたしとナノカ。隣で寝ているシノは、くぅくぅ寝息たてて寝ている。
「なぁに」
 ややつり上がった口調で訊いた。
 ナノカはにこにこ屈託なく笑い、人差し指を唇に翳した。
『ふふっ、恋バナしよ!』
「なんでこの時間帯に?」
 わたしは叩き起こされて、不服しか感じない。せっかく心地いい夢を見てたのに。
『この時間帯だからだよ!』
 楽しそうに目を細め、肩まで覆ったわたしの布団を剥いだ。ぶるっと寒気が襲った。
「もお返してよぉ」
『お願いお願い!』
 ナノカの必死の請いに、仕方なく付き合う。というか、彼氏もちのナノカが、彼氏なしイコール年齢のわたしと、恋バナするなんて、わたしを侮辱するつもりなのか。
 恋とか、ナノカが一番知ってるのに。

 頭もだんだん冴えてきて、二度寝できない。ナノカも自分の話を聞いてほしくて、わたしを起こしたのだろう。わたしが目をしょぼしょぼさせるたび、ナノカが叩くので、そもそも二度寝もできない。
『でね、でね、あたし思いっきて告白してみたらすぐにオーケーだったの! すごくない?』
「あーうんすごいねー」
 恋バナというより、自慢話だ。
 ナノカは、キャキャ甲高い声でそれを言ってた。楽しそうだから、あまり逆らえない。  
 すると、廊下から足音が聞こえた。懐中電灯の小さな光が近づくにつれ、薄暗かった室内が明るくなる。
「やばっ! 布団布団!」
 わたしは、剥がれた布団をもう一度体に覆った。ナノカも慌てて布団の中に潜る。カツカツ、と軽快に歩く足音が通り過ぎ、だんだん通り過ぎると、ほっと安堵をつく。
 ナノカがもぞっと布団から顔をだし『危なかったねー』と呑気に言うので、わたしはむっとした。「危なかったねー、じゃないよ。見つかったら大目玉だよ」と怒鳴ると、ナノカは、さっきので懲りたのか、恋バナをやめた。
 
 やっと一息つく。
 わたしは今度こそ、深い眠りに入った。案外早く眠りにつけた。

 夢の中で何かを見たかもしれない。はっきりと覚えていない。けど、見たような断末魔の記憶がある。けど、どうしても思い出せない。目が覚めると、その夢を忘れてしまうから。
 ざわざわしてる室内。
 耳障りがする。
 朝日を浴び、白く輝く室内。
 目が痛い。
 朝だ。ぼんやりした頭でそれが分かった。深夜ではナノカに起こされ、今度はシノに叩き起こされた。
「いつまて寝てるの、早く起きなさい」
 冷めた表情で見下ろすシノの顔が。
 わたしは、重い体を起こし猫のように体を伸ばした。一緒に欠伸が出る。体が随分重いのは、昨日の疲れが取れてないからなのか、寝すぎたのか。
「おはよーう」
「おはよう。さっさと支度しないと、下の部屋でもう集まってるわよ」
 そう言って、わたしの隣で寝ているナノカも叩き起こした。昨夜夜遅く起きてたから、中々起きない。
 ナノカのことはシノに任せよう。
 わたしは、自分の身支度を整えた。顔を洗って、ボサボサになった髪の毛を整え、制服に着替える。
 その間、まだナノカはくぅくぅ寝息たてて寝ている。なんと幸せにみちた表情で。どんな夢見てんだろう。
 室内の中は、あっという間に人がいなくなり、シノとわたしとナノカだけになってしまった。
 広い畳状の部屋で、布団が敷いてあるのは、たった一個。昨夜はみんながぎゅうぎゅう詰めて、布団敷いてあったから狭く感じたけど、改めて見渡すと広く感じ、殺風景になる。

 シノが何度も叩くも、一項に起きてこない。時計に目をやると、集合時間三分前だ。わたしもやけになって、ナノカを起こす。
 ピクリと体が反応し、やっと目を覚ます。
 寝ぼけた目が、こちらに向く。
「さっさと起きて支度してちょうだい」
 シノが呆れて言った。
「えぇ朝ぁ?」
 目をこすり、曖昧な返事を返す。これが夢なのか現実なのか、思考が動いていない。上体をゆるゆる起こし、キョロキョロ辺りを見渡す。
 とりあえず、ナノカには身支度を整えてもらって、あとは集合場所に行くだけ。
 あと一分しかないけど、走っていけば間に合う。なのに、ナノカたら、のんびりのんびりしている。
 そりゃ、目が覚めて起きたときってあまり体が身軽に動けないけど、こういうとき動いてほしい。
 
 ゆるゆるナノカが身支度整え、わたしたちは急いで下の階まで走った。もう間に合わないと思ったけど、割とギリギリセーフ。
 遅刻したことがバレないように、こそこそ輪の中に入る。
 すると、はかったかのようにして甲高いサイレンの音が鳴り朝礼が始まる。まず始めの挨拶は、ハヤミ先生。
 魔女学校の理事であり、魔女協会にも顔が知れ渡っている、偉い人。今回、ハヤミ先生は来ていない。大人の事情ってやつだ。
 大きなテレビ画面に映し出された。毎回、堅苦しいスーツを着て、この人は実際存在しているのか、疑問だったけど、実際顔を合わしたあの日、本当に存在していたことに感慨深かった。
 おはようからの、長々とくだらないお話。欠伸が出るほど、真面目でくだらない話。話してるとき、堅苦しいスーツが似合うなと思った。
 挨拶を終え、わたしたちはようやっと、朝食だ。ずっと胃が乾いててぐるぐる鳴ってた。ようやくご飯にありつける。
 班のみんなで、朝食を食べた。
 朝から好きな砂糖ジュースと、ハンバーグ食べてわたしは嬉しい。
「ガキかよ。ハンバーグて、朝から太るぞ」
 それを見てたリュウがわたしをからかってきた。わたしは、好きなものにありつけて満足。リュウの意地悪には乗らないもん。
 リュウは、わたしがのっかってこないことに、あからさまにむっとした。いつものお返しだ。
 わたしは、ふふんと笑いリュウを逆にからかってやろうと、リュウの朝食の御盆を見下ろした。
 トーストパンにコーンスープ、一見朝らしい軽い朝食だ。男子って、こう、育ち盛りなんだからもっとガツガツ系を食べない? 肉とか。リュウが細いのは、これのせいだよ。
 対して同い年のダイキのほうは、男子らしく、ガツガツした肉もの。わたしと同じハンバーグだ。
 ダイキとは「このハンバーグ美味しいよな」と意気投合。やっぱりダイキとは考え方とか合ってるかも。お互いイェーイと手を合わせた。
 シノとリュウには「子供」と冷めた目で見下されたけど。

 朝食を食べ、早速班行動。
 今日は、魔女についての歴史学習だ。学校の授業とそう変わらない。むしろ、変化なし。場所が変わっただけで、学ぶものは同じ。つまんない。
 せっかく修学旅行なのに、楽しいことしたい。リュウが呆れて「楽しいことって?」と訊く。
「例えばこの山でしかやれないこととか、魚釣りとか?」
「虫取りとか」
『取り敢えず、動きたい!』
 わたしのほかに、ダイキ、ナノカが賛同してきた。二人とも、外で泥んこになって遊ぶ活発的な子。椅子にただただ座っている現状に、納得しかねない表情。二人がわたしに賛同してくれて、嬉しかった。
 リュウはやれやれ、とため息を吐いた。
 白いボードに書き込まれた、難しい単語をつらつらとノートに書き写して、それ以上に分かりやすく書いてたシノが、顔をあげた。 
「それは、たぶん他のみんなも思ってるはずよ。だけど、これが修学旅行で最もマシな時間よ。ちゃんと修学旅行のしおり見た?」
 リュウが何も言わず、わたしたちの前に、自分のしおりを出した。わたしたちは、恐る恐るページをめくり、日程が載ってあるページを確認する。
 信じがたい記述が載ってある。
 座学の次はなんと、訓練。ここは班行動じゃない。別々に別れ、魔女とバディで組む。来るその日を迎え撃つのに、魔女たちの新技を考え訓練する、なんら楽しいキャンパスライフの修学旅行の日程ではない。
 わたしたちは目を白黒させた。
 しおりは前日に渡されて、もちろんパラパラめくった。でもこんな、細かな記述に目を通してない。
『バディと組むて、ふざけんの!?』
 ナノカが怒鳴り散らした。
 ナノカのバディは別の班にいて、ここにはいない。普段ナノカとも交流してないし、ナノカも交流する気ない。お互い好きな人がいて、付き合っている人がいて、二人とも背を向けている。
 ナノカが言うには、不細工。わたしはそう思わないけど。
 それよりも、これはやばい。よりにもよって、リュウと組むのか。そりゃ、バディだから組むのは必然。でも、新技て何があるの。今からドキドキしてきた。 
 わたしたちの雲行きが怪しくなるが、時間は止まってはくれない。時一刻とその時間が迫っている。
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