「初めての恋」

キジとら猫

文字の大きさ
1 / 1

「初めての恋」

しおりを挟む
 私の初めての恋は、中学一年の時だった。
それは突然始まった。ラブレターを貰ったその日から。
 
 僕はその日、ラブレターを貰った。
それまではその人のことを何も知らなかった。
その人と僕は、小学校も違うし学年も一つ上だったので、名前すら知らなかった。
 それなのに僕は、その人に恋をした。
ラブレターを貰ったその日から、その人のことを意識し始めた。
 なぜだろう?その人を意識したその日から、その人のことを好きになっていった。
 そのラブレターには返信用の手紙が入っていて、僕は数日後その手紙に、                 『僕も好きです。』と書いてその人に返していた。
 ただ、僕たちの手紙は直接手渡したものではなく、その人と同じ小学校の、僕のクラスメートの女の子を仲介してのやりとりだった。
 その後もその子経由で手紙のやりとりをした。
その人からの手紙はいつもいい香りがした。今でも鮮明に覚えている。
 
 休み時間に廊下からその人が僕を見ていた。
僕はそれに気づいていたけど、気づかないふりをして友達とふざけていた。
その人が僕を見ていてくれたことは嬉しかった。でも少し恥ずかしかった。
友達にバレたらいけないという気持ちもあった。(実はバレていたのだけど)
 
 その人は手紙で僕の好きな色を聞いてきた。僕はそれに手紙を返した。
するとその人は次の日、僕の好きな色のゴムで髪を束ねていた。嬉しかった。
 
 学校のマラソン大会があった。グラウンドに戻って来たとき、その人の姿が見えた。
僕は一位の人を追い抜いた。
その人は手紙で僕のことを褒めてくれた。嬉しかった。

 二年生の時、僕は修学旅行に行った。
そこで僕は、その人のためにネックレスを買った。もちろん安物だけど。
そのネックレスのハートの部分に、その人の名前を刻んで貰った。
後で考えると、そこには僕の名前を刻んで貰うべきだったんじゃないかと思った。少し後悔した。
 
 クリスマス、野球部の練習が終わった後、その人が体育館の裏で待っていた。
僕は緊張しながら歩いて行き、角を曲がるとその人が待っていた。
その人が差し出すプレゼントを受け取り、僕は戻ってきた。
その人に「ありがとう」も言えず、その人の顔も見ることもできずに。
僕も緊張していたけど、その人の緊張も伝わってきた。
 そして、二人っきりになったのも、その時のほんの短い時間だけだった。

 僕は風邪をひいて学校を休んだ。その日電話がかかってきた。
家にいるのは僕ひとり。僕は電話に出た。
受話器の向こうから聞こえてきたのはクラスメートの女の子の声だった。
そして、その人の声に変った。予想外のことでびっくりして、緊張して、何を話したか全く覚えていない。
 その人と話すのは、この時が初めてだった。最後でもあった。

 その人が卒業した。それと同時に僕たちの恋も終わった。

 その後その人と手紙のやりとりもしなくなった。
彼氏、彼女の関係にはなれなかった。だからこそ別れようと言える関係でもなかった。
 今思えば、言いたいことは山ほどある。
でも、あの頃の僕たちは精一杯だった。
あれが精一杯だった。
 「好きだ」なんて、面と向かって言えない、恥ずかしがりやで、臆病な、そんな二人だった。

 でも、私は今も覚えている。あの時の気持ちを、あの時の情景を、そして、
あなたを好きだったことを。
しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

【完結】仲の良かったはずの婚約者に一年無視され続け、婚約解消を決意しましたが

ゆらゆらぎ
恋愛
エルヴィラ・ランヴァルドは第二王子アランの幼い頃からの婚約者である。仲睦まじいと評判だったふたりは、今では社交界でも有名な冷えきった仲となっていた。 定例であるはずの茶会もなく、婚約者の義務であるはずのファーストダンスも踊らない そんな日々が一年と続いたエルヴィラは遂に解消を決意するが──

離婚すると夫に告げる

tartan321
恋愛
タイトル通りです

離婚した妻の旅先

tartan321
恋愛
タイトル通りです。

あなたへの恋心を消し去りました

恋愛
 私には両親に決められた素敵な婚約者がいる。  私は彼のことが大好き。少し顔を見るだけで幸せな気持ちになる。  だけど、彼には私の気持ちが重いみたい。  今、彼には憧れの人がいる。その人は大人びた雰囲気をもつ二つ上の先輩。  彼は心は自由でいたい言っていた。  その女性と話す時、私には見せない楽しそうな笑顔を向ける貴方を見て、胸が張り裂けそうになる。  友人たちは言う。お互いに干渉しない割り切った夫婦のほうが気が楽だって……。  だから私は彼が自由になれるように、魔女にこの激しい気持ちを封印してもらったの。 ※このお話はハッピーエンドではありません。 ※短いお話でサクサクと進めたいと思います。

失った真実の愛を息子にバカにされて口車に乗せられた

しゃーりん
恋愛
20数年前、婚約者ではない令嬢を愛し、結婚した現国王。 すぐに産まれた王太子は2年前に結婚したが、まだ子供がいなかった。 早く後継者を望まれる王族として、王太子に側妃を娶る案が出る。 この案に王太子の返事は?   王太子である息子が国王である父を口車に乗せて側妃を娶らせるお話です。

有名俳優の妻

うちこ
恋愛
誰もが羨む結婚と遺伝子が欲しかった そこに愛はいらない

婚約破棄されたので、もうあなたを想うのはやめます

藤原遊
恋愛
王城の舞踏会で、公爵令息から一方的に婚約破棄を告げられた令嬢。 彼の仕事を支えるため領地運営を担ってきたが、婚約者でなくなった以上、その役目を続ける理由はない。 去った先で彼女の能力を正当に評価したのは、軍事を握る王弟辺境伯だった。 想うことをやめた先で、彼女は“対等に必要とされる場所”を手に入れる。

不倫の味

麻実
恋愛
夫に裏切られた妻。彼女は家族を大事にしていて見失っていたものに気付く・・・。

処理中です...