一目惚れしました。

月夜 雪姫

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一目惚れ

一目惚れ・③

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 サッカー部のマネージャーを始めて一週間が経った。
初めて来たときはゴミ屋敷のようだった部室もある程度綺麗になり、汚れたボールも全部磨き終えた。

 マネージャー。それは漫画とかアニメとかでよくみる憧れの存在。到底私には務まらないだろうと思っていたが、顧問の先生が女性であったのが救いの手となったのか、マネージャーに勧誘してくれた春瑠の存在があるからかは多少曖昧だが、なんとか上手くやっていけている。

 それに、ある女の子に話しかけられるようにもなった。どうやらその子の彼氏はサッカー部員らしく、そういう理由もあってかよく私にくっついてくるようになった。

 そんなある日、三年生の先輩でありサッカー部の部長でもある蒼太先輩に今日の放課後、練習に付き合って欲しいと言われたので部室に待ち合わせすることになった。

 授業が終わり、春瑠に「先帰ってて。」というメールを送る。
メールが“何件かきていた”が、それは後にすることにした。
そして、部室へと向かった。

 しかし、そこに蒼太先輩はいなかった。
約束の日にちを間違えたのかなと考え込んでいると、春瑠が入って来た。
「どうしたんだ?今日は部活、休みだろ。」

「ちょっと、蒼太先輩の練習付き合う約束してて。」

「え??川口先輩なら、さっき帰ってたよ。なんか、浮かれてんじゃねぇーよ、ブスが!みたいな感じの独り言言いながら。」

川口先輩というのは蒼太先輩のことで、本名は川口蒼太だから、部員は皆川口先輩と呼んでいる。

 まぁ、そんなことはどうでもよくて、、、。
多分、その独り言っていうのは私に向けた言葉だろう。
私が何をしたっていうのか。浮かれてる?何を言っているんだろう先輩は。

「紫乃?どうかした?まぁ、川口先輩のことは気にするな。今日は帰ろうぜ。」

気にするなとか言われても、、ね、、、。

「うん。」

私はその一言しか返すことができなかった。

 結局、春瑠に言われるがままに帰ることになった。

その時、紫乃はメールの通知に“春瑠以外の名前”があることに気付かないのであった。


一目惚れ・④に続く。
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