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第二章:明らかになっていく真実

第35話 九州沖縄チーム

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 サトルたちが鳥の森をクリアし、2つ目の狼の谷ダンジョンに挑み始めたころ、九州沖縄チームの4人は5つ目のダンジョンである猿の島に来ていた。

 このチームは戦士のアツシ、魔法使いロミ、僧侶アサコ、魔法戦士マサの4名で構成されており、4名は福岡、沖縄、鹿児島、熊本出身だ。

 レベルは全員が76で日本から惑星エヌに来た20名の中ではレンジャーチームに次ぐ強さを誇っており、すでに4つのダンジョンをクリアしてきたことから熟練度もコンビネーションもかなりのものになっている。

 その4人の中でリーダー格であり、中心なのが僧侶のアサコだ。

 アサコはソーマジック・サーガのプレイヤーとしては最も古く、サトルと同じくらいにやりこんできたプレイヤーでもある。ゆえにこの世界のトリックやダンジョンの謎についても、おおまかにその内容を分析していた。



 今4人は猿の島77階層で何かを探している。

「本当にここでもあるんですかね?」

 魔法使いロミがアサコに問いかける。

「あると思うの。ここを作った人の性格が、あのソーマジック・サーガの制作者と同じであればね」

「確かにアサコの言った通り、24階層も34階層もあのお宝があった。少し時間に余裕もあるし、ここで探しておいて損はない」

「ソーマジック・サーガは、レベルが23と33と76になった時に、隠しアイテムが発生するというやつですよね。自分がプレイしていた時はまったく知りませんでしたよ。攻略サイトにも載っていませんでしたし」

「あのアイテムは先着で数に限りがあったみたいだからね。わざと載せなかったんじゃないかな」

「レベルが23になった後の24階層はまさかの炊飯器で、33になった後の34階層では黄金の冠。次は何が出ますかね~」

「まとまりも関連性もないところが面白いですよね。しかし炊飯器は驚きました。魔力で動くとはいえ、こんなものがここで出てくるとは。おかげで助かりましたけど」

「マサ、探索で何か変わったものは見つけられないかな?」

「ん、ちょっと待ってください、よっと。う~ん、何かヒントはありますか?」

「24階層では獅子のような石像、34階層では巨人のような石像、77階層もやはり生き物の石像じゃないかな…」

 この77階層を歩き始めて1日近くが経過する。その間に遭遇した魔物はすべて倒してきた。彼らに疲労は見られず、やはりかなりの手練れといっていいだろう。

「ん?あれじゃないかな、あそこ。崖の上の方の窪みに何かがある」

 マサが何かを見つけ指をさした。

「鳥か何かのように見える」

「そうね大型の猛禽類といった印象かしら」

「ちょっくら登ってみる」

 俊敏性に優れた魔法剣士はこういった場合に便利だ。マサは脚に力を溜めると、一気に開放して高く飛び上がった。

 そして高さ10mほどの崖に手をかけ、その上にある窪みに到達する。



「これは鷲だな。今までと同じような作りだ。アサコ、触ってみて大丈夫か?」

「えぇ大丈夫よ。でも、念のため警戒しておいてね」

 マサは下の3人に手を振ると、一呼吸おいて鷲の石像に触れた。するとその石像が輝きだし、音もなく消えていく。

 石像があった場所に残されていたのは一振りの剣だった。




 その剣を手にしたマサが下に降りると、アサコがさっそく鑑定する。

「流星剣と出たわ。当たりね」

「今回は武器か。これはどれぐらいの価値があるんだ?」

「ソーマジック・サーガでは魔法剣士にとって最高レベルの武器。加速の補助魔法が付与されているし、たしか24連撃といった高速コンボができるはずよ」

「それは凄いな。魔法剣士向けならマサが持つべきだな」

「いいのか?」

「もちろんよ。しっかり働いてもらうからね」

「ははは、そうなるか。まぁ任せてくれや」




 アサコの知識に加え、隠しアイテムを得たチームの攻略速度は飛躍的に向上した。

 流星剣を使いこなしたマサの攻撃力は戦士にも匹敵し、ほとんどの相手に初撃で致命傷に近いダメージを与えた。

 相手が多ければロミの広範囲殲滅魔法で追撃し、体力が多ければ戦士のアツシが強力な一撃でとどめを刺す。

 その動きすべてを回復や補助をかけながら適切にフォローするアサコ。

 現時点のレベルはレンジャーチームがはるかに上だが、同じ魔物を相手にした時の攻略時間は、この九州沖縄チームなら半分とかからないだろう。



 4人が80階層を攻略するのはこの11日後となる。


「狼の谷ダンジョン」へつづく
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