王族に転生した俺は堕落する

カグヤ

文字の大きさ
37 / 71

第37話 昆虫食

しおりを挟む
 このファンタジーな世界にも四季のようなものがある。今はすっかりと、太陽の日差しが燦燦と照り付ける夏の季節になっている。王族である俺の家には魔道具による冷暖房設備が完備されており、家の中にいれば外界の熱気から遮断され極楽な生活を送ることができる。
 しかし、俺は今、暑い気温の中部屋の外に出てきていた。それも、来たことのない森の中だった。森の中は背の高い木々が林立しており、太陽の日差しが直接届くのを防いでおり、いくらか王都の街中の気温よりはましになっていた。
 何故、こんな森に来ているかと言われれば、エドガエル君と昆虫採集に来ているのだ。あれから、エドガエル君は昆虫採集にはまった模様で何度か一緒に前の場所で昆虫採集を行っていたのだが、今回はエドガエル君の案内で来たことない王都の近くの森へとやって来ていた。この森には訓練の一環で親と一緒に来たことがあるらしい。森で修行するなんて、エルフっぽい感じがする。その時に前の場所では見た事がなかった蝶を発見したらしい。
 目をキラキラさせながら一緒に行こうと誘われたので、暑いから嫌だと断ることができなかったのだ。
「この辺で見つけた」
 案内が終わった場所は、森がちょうど無くなって少し叢になっており、目の前には切り立った崖があった。崖の上を見上げると、その上にも木々があるのが見える。崖の左右を見渡すとかなりの距離が続いており、探せば洞窟なんかがありそうな雰囲気が感じられる。
 今日は洞窟を探すのがメインではないので、俺は早速【ブラックホール】のから虫取りの網と虫かごを取り出して、一つをエドガエル君に渡す。
「ありがとう」
 エドガエル君は相変わらずエルフ語でしか喋らない。ラズエルデ先生によれば、エルフの寿命は長いから、そのうち覚えるの精神で言語を学ぶから、よっぽどの事がない限り他言語の習得はかなり遅いものとなるらしい。
 俺のエルフ語の勉強にもなるから、エドガエル君とは常にエルフ語で喋るようになってしまっている。
「じゃあ、捕まえようか」
「うん」
 パッと見たところ、前の場所にはいなかったような蝶がたしかに飛んでいる。エドガエル君は蝶を追いかけて走り出した。しかし、木の無い場所なので、俺にとってはかなり暑い。俺は木のある森の中に入って、蝶以外の昆虫を捕まえることにした。木に止まっている蝉が今日のターゲットだ。
 俺はゆっくりと蝉の止まっている木に近づき、網を振り上げる。逃げようとするが、その軌道を予測していたので、丁度蝉を網の中へと捕獲することに成功する。
 やってみると意外に楽しくなってきてしまって、気付いたら虫かごの中は大量の蝉で溢れていた。俺は一度エドガエル君と合流しようと、崖のある場所へと戻ってみると、エドガエル君の虫かごも蝶で溢れていた。
「どこ行ってたの?」
「森の中で蝉を捕まえてたんだ」
「蝉? 本当だ!! お腹が減っていたの?」
「食べないよ? 蝉って食べれるの? 蝶と一緒で捕まえて標本を作ろうかなって」
 エドガエル君の目は大きく見開かれた。
「蝉でも標本って作れるのかぁ。僕も捕まえようかなぁ。蝉って食べ物だと思っていたよ」
 おおう。エドガエル君は蝉を食べているのか。エルフなら当たり前なんだろうか。エビの味がするって聞いた事もあるけど、それならエビを食べた方がいいからな。無理に蝉を食べようという気にはならない。エルフの食生活を否定する気はないのでここはスルーだ。
「昆虫なら何でも標本にできるよ。もしかしたら、小さな魔物なんかも標本にできるかもしれない。大きな魔物なんかも、骨の標本とかなら作れるかもしれないよ」
「そうなんだ。いろいろ集めてみたいなぁ」
 凄く昆虫採集の沼にはまってしまっているようである。
「ひとまず虫かごがいっぱいになったから、あっちで、標本を作ろう」
 俺は岩の陰になっているところを指さす。
「そうだね」
 俺達は大きな岩の陰に入った。
「ちょっと待ってね。【ウィンドカッター】」
 地面の草を刈り取って、作業ができる場所を作る。もうこのくらいの魔法ではエドガエル君は手を振って喜んだりはしなくなってしまった。ちょっと切ない気もする。
 俺は【ブラックホール】の中から針と展翅版と標本ケースを取り出した。俺はエドガエル君にそれを渡す。
「ありがとう」
 颯爽と標本づくりに取り掛かる。俺も折角なので、セミの標本造りにとりかかる。セミは蝶より簡単で
、殺してピンで刺せば標本が出来上がる。色などを綺麗にしたいなら、死んで固くなったものをお湯につけてから標本にした方がいいはずだが、そこまで凝ったものにするつもりはない。
 俺達は篭の中のものを全部標本にし終わったところで、お互いに標本を見せ合った。
「すごい綺麗にできてるね」
 エドガエル君の作った蝶の標本は色とりどりの蝶が並んでいる。対して俺の蝉の標本はあまり綺麗ではない。綺麗にできている事を褒めるとエドガエル君は嬉しそうにしていた。
「蝉も標本にするとそんな風になるんだね。僕も蝉の標本を作ろうかな」
「そうだね。いろいろな昆虫の標本を作るといいよ」
 集めだすと止まらなくなってしまうのが、コレクター心理というものだ。気分はリアルポケモ○というところだろう。俺達が岩陰でそんなことを話していると、がさがさと言う音と共に森の茂みが揺れた。
 エドガエル君は剣の柄に手をかけて、戦闘態勢をとる。俺は虫籠や標本セットを収納魔法で闇の空間に収める。
 音のする方を見ると、そこから皮の鎧を着こんだ冒険者風の女性が現れた。
 
しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

『異世界ごはん、はじめました!』 ~料理研究家は転生先でも胃袋から世界を救う~

チャチャ
ファンタジー
味のない異世界に転生したのは、料理研究家の 私!? 魔法効果つきの“ごはん”で人を癒やし、王子を 虜に、ついには王宮キッチンまで! 心と身体を温める“スキル付き料理が、世界を 変えていく-- 美味しい笑顔があふれる、異世界グルメファン タジー!

『白い結婚だったので、勝手に離婚しました。何か問題あります?』

夢窓(ゆめまど)
恋愛
「――離婚届、受理されました。お疲れさまでした」 教会の事務官がそう言ったとき、私は心の底からこう思った。 ああ、これでようやく三年分の無視に終止符を打てるわ。 王命による“形式結婚”。 夫の顔も知らず、手紙もなし、戦地から帰ってきたという噂すらない。 だから、はい、離婚。勝手に。 白い結婚だったので、勝手に離婚しました。 何か問題あります?

異世界に転移したら、孤児院でごはん係になりました

雪月夜狐
ファンタジー
ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。 気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。 剣も魔法も使えないユウにできるのは、 子供たちのごはんを作り、洗濯をして、寝かしつけをすることだけ。 ……のはずが、なぜか料理や家事といった 日常のことだけが、やたらとうまくいく。 無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。 個性豊かな子供たちに囲まれて、 ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。 やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、 孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。 戦わない、争わない。 ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。 ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、 やさしい異世界孤児院ファンタジー。

辺境貴族ののんびり三男は魔道具作って自由に暮らします

雪月夜狐
ファンタジー
書籍化決定しました! (書籍化にあわせて、タイトルが変更になりました。旧題は『辺境伯家ののんびり発明家 ~異世界でマイペースに魔道具開発を楽しむ日々~』です) 壮年まで生きた前世の記憶を持ちながら、気がつくと辺境伯家の三男坊として5歳の姿で異世界に転生していたエルヴィン。彼はもともと物作りが大好きな性格で、前世の知識とこの世界の魔道具技術を組み合わせて、次々とユニークな発明を生み出していく。 辺境の地で、家族や使用人たちに役立つ便利な道具や、妹のための可愛いおもちゃ、さらには人々の生活を豊かにする新しい魔道具を作り上げていくエルヴィン。やがてその才能は周囲の人々にも認められ、彼は王都や商会での取引を通じて新しい人々と出会い、仲間とともに成長していく。 しかし、彼の心にはただの「発明家」以上の夢があった。この世界で、誰も見たことがないような道具を作り、貴族としての責任を果たしながら、人々に笑顔と便利さを届けたい——そんな野望が、彼を新たな冒険へと誘う。

なぜ、私に関係あるのかしら?

シエル
ファンタジー
「初めまして、アシュフォード公爵家一女、セシリア・アシュフォードと申します」 彼女は、つい先日までこの国の王太子殿下の婚約者だった。 そして今日、このトレヴァント辺境伯家へと嫁いできた。 「…レオンハルト・トレヴァントだ」 非道にも自らの実妹を長年にわたり虐げ、婚約者以外の男との不適切な関係を理由に、王太子妃に不適格とされ、貴族学院の卒業式で婚約破棄を宣告された。 そして、新たな婚約者として、その妹が王太子本人から指名されたのだった。 「私は君と夫婦になるつもりはないし、辺境伯夫人として扱うこともない」 この判断によって、どうなるかなども考えずに… ※ 中世ヨーロッパ風の世界観です。 ※ ご都合主義ですので、ご了承下さい、 ※ 画像はAIにて作成しております

断罪後のモブ令息、誰にも気づかれずに出奔する

まる
ファンタジー
断罪後のモブ令息が誰にも気づかれないよう出奔して幸せを探す話

処理中です...