転生して竜人に育てられた俺は最強になっていた (旧題 two of reincarnation )

カグヤ

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第一章 ルード皇国 編

転生の果て

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高校受験合格発表日。
受験番号表を握りしめて、自分の番号を探す。
『666、666・・・』
自分の番号を頭で復唱しながら、近くの番号の列を探す。
『659、662、663、666・・・あった。やったぞ。受かった』
学区でもトップの公立高校で、その競争倍率は3倍を超えていたので、受かったことが信じられないほど嬉しかった。
1年前まではD判定というところから、この1年で努力して合格を勝ち取ったのである。この1年の苦労が走馬灯のように蘇り、意識せずガッツポーズをとってしまっていた。
『人生のツキを使い切ってしまったんじゃなかろうか。なんてな。早く帰って報告せな』
携帯で報告するよりも、自分の口から報告してびっくりさせてやろうと、急いで自転車に乗って帰宅した。

 その帰り道、俺は車にはねれらて死んだ。
 急いでいた俺も悪かったのだろうか、青信号が点滅しているところを自転車で駆け抜けようとしたところを、左折してきた車にぶつかったのだ。車はスピードを減速して曲がっていたため、当たったことは致命傷とはならなかったのだが、宙を舞って頭から着地をしたことがまずかった。

『人生のツキを使ったなんてフラグ立てるんじゃなかった・・・』

  宙を舞ってる間そんなことを考えたと思った次の瞬間、自分の体からもう一人の自分が宙に浮き上がった感覚があり、下を見ると血を一滴も流してない自分の姿と、車から降りてきた運転手、さらにその周りにたくさんの人が集まってるのが見えた。

『綺麗な顔してるだろ。嘘みたいだろ。死んでるんだぜ。それで・・・。たいしたキズもないのに、ただ、ちょっと打ちどころが悪かっただけで・・・もう動かないんだぜ。な。ウソみたいだろ』

 この台詞を自分自身にいう時が来るとは・・・


 それから、あたり一面雲のような場所で意識を取り戻した。と言っても体はなく意識だけがあるという状態。視界もあまりよくなく、霧がかかったかのような状態であった。自分の姿がどうなってるかもよく分からない。 

 前を見ると10歳くらいの鬼の面をした子が、左手に持った板を見ながら、右手を、右へ、左へと指差していた。その姿を見ていると、だんだんとその鬼の面をした子との距離が近づいてきているのを感じた。

 その子が俺に近づいているわけではなかったので、どうやら近づいているのは自分らしかった。自分とその鬼の面をした子の間が1メートルくらいになった時だろうか、その鬼の面をした子は右を指差した後、頭を抱え困った仕草をしているようだった。しかし、今度は左を指差した。その指差した左の方を見ると穴のようなものがあった。そこには、宇宙が広がっていた。暗黒の空間に無数の光る点。そこに自分は吸い込まれて行った。


 次に気づいたのは大きな森の中だった。空を見ると、大きな木々の葉に覆われ、光が所々しか差し込んで来なかった。

『これは転生ってやつか・・・ん』

 自分の姿を確認しようと、頭を動かし手足を確認しようとしたが、どうにもうまくいかなかった。

『もしかして、下半身不随で、全く動けない状態で転生しちゃったのか。さらに場所は森って。無理ゲーだろ。俺が知ってる転生モノはすごい強くて無双するって相場が決まってるのに』

 そんなことを考えていると、左手の方からガシャガシャという金属音がした。

『誰か、誰か助けてください』
俺はそう叫んだつもりだったのだが、

「オギャー、オギャー。」

『んん??』
 病気で動けないのではなく、赤ん坊であったのだ。何故、森の中なのかは分からないが、ちょっと希望が出ててきた。

『赤ん坊で意識があるというのは、この世界でリードしてるということや。頑張ってこの世界で成り上がったる。前の世界では最後の1年でやる気を出して挽回したのだから、もっと早い段階で頑張ればもっとすごいことができるはずや。あとは、お金持ちさんに拾われるだけや』
 金属音が近くで止まったと思ったら、物騒な会話が聞こえてきた。

「なんでこんな所に人間の赤ん坊が?」

「なんにせよ、持って帰って、奴隷にするか?」

「いや、赤ん坊の肉は新鮮でうまいらしい。なんでも赤ん坊の脳みそを食べれば、ワシらの知能が上がるらしいぞ」

「なんだと。では、持って帰らずここで2人で食べてしまうか?持って帰っても、この量では全員食べることはできないだろう」

「そうだな・・・」
そう言うと2人のうちの1人が俺を覗き込んだ。

 その顔を見て俺は驚愕した。豚の顔だったのだ。そして、豚が甲冑を着て槍を持っていたのである。頭を動かすことができないが、確実に2足歩行を行なっているようである。

 この転生した世界は、前の世界とは違うファンタジーの世界のようだった。しかし、事実は小説より奇なり。いや。小説より鬼なり。実際オークと言う種族に出会ったら、グロすぎてホラーすぎる。俺はちびってしまった。そして、クソも漏らしてしまったようである。転生していきなり死とか・・・笑えないよ。今度死んだら、

『原型のない肉片だろ。ウソみたいだろ。ついさっきまでは誰もが微笑みたくなる赤ん坊だったんだぜ。たいしたキズもないのに、ただ、産まれたところが悪かっただけで・・・もう食われちまったんだぜ。な。ウソみたいだろ』
これが最後の言葉になりそうだな。

 諦めの感情で自分の最後を受け入れようとした次の瞬間、右の方から巨大な炎の塊が飛んできて2人のオークを一瞬で黒焦げにしてしまったのである。

『な、なんや。魔法か?』
炎の飛んできた方向を見ると、細身でイケメンな男が自分に近づいて来た。

『助かった。人や。いや、まだ、分からん』

「ウー、オギャー、オギャー」
 俺は、精一杯助けを求めた。そして、祈りが通じたのか、そのイケメンは俺の方に近寄ってくると、両手で俺を抱え上げ、元来た道へと戻って行った。

『助かった。この世界でやっていける』
 安堵から、急激な睡魔に襲われて眠りについてしまった。

 そのイケメンの後ろに尻尾のようなものが生えていたのだが、俺にはそのことを知る術はなかったのである。
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