転生して竜人に育てられた俺は最強になっていた (旧題 two of reincarnation )

カグヤ

文字の大きさ
91 / 123
第二章 魔導士学園 編

アバロン湯けむり殺人事件 ~真相編 sideーC

しおりを挟む
ハリス殺害事件より1週間前

~十二柱の一人・アスタロスの視点~

4回の呪いによって、この温泉内部で殺人が起きることがなくなってしまったようね。5回目の呪いは発動するまでかなり時間がかかってしまったわ。外部から呼び寄せるのに多少の時間がかかるようだけど、もう一度念のために呪いをかけておこうかしら。

『 司書室の少女ザ・クイーン・オブ・ミステリー 』

それにしても今回の事件笑っちゃうわね。犯人なんて一目瞭然だというのに誰も犯人を見つけ出すことができないでいるのよね。
今回の犯人は死んだ男が連れていた奴隷に決まってるじゃないの。そんな事見ないでも分かる事だわ。人族は『隷属の首輪』だとかいう大昔に作られたおもちゃなんかで奴隷の行動を縛っているみたいだけど、私の固有呪術にはそんな過去の遺物の力なんて何の意味もなさないのよね。
奴隷の恨みが私の呪いで増幅されるのだから、そりゃご主人様を殺しちゃうわ。ま、私にとってみればどうでもいいことだから、犯人を教えてあげるなんて事はしないけどね。
それにしても『隷属の首輪』をつけているというだけで容疑者から除外されるなんて本当にバカみたいね………

そして、また馬鹿な旅行客が訪れたようね。この私の固有呪術内に奴隷をつれてやってくるなんて本当にバカの極みね。それも3人も。確実にあいつが死ぬのは間違いないことだわ。人族的に言うと死相が見えるってやつかしらね。殺害される前から犯人を当てることもできるわ。あの奴隷のうちの誰かよ。もしくは全員かもしれないわね。

それにしても、2カ月も温泉に浸かっていたら流石に飽きてきたわね。3カ月は少々長すぎたかしら。何か面白い事はないかしら。

いつものように温泉に浸かっていると、面白い妖精猫ケット・シーが温泉に入ってきたわ。何が面白いかって、普通に南の大陸の言語を操っているのよね。私くらいになると何種類もの言語を使うことができるんだけど、妖精猫でとなると聞いたことがないわ。
私はその妖精猫を観察した。
すると、妖精猫は魔法を詠唱しだした。
あれは、ベルゼブブと同じ時空魔法………
その妖精猫は温泉には浸からずに何かを時空間から取り出したのだ。時空魔法を使えるなんて本当に珍しいわね。

しかし、私の意識は妖精猫の取り出したものにくぎ付けになった。丸い輪っかのようなものを美味しそうに食べ始めたのだ。
私はその食べ物に興味が湧いた。

「猫ちゃん。猫ちゃん。それは何なの?」

「何ですかにゃ?これですかにゃ。これはドーナツというものにゃ。とてもいいものにゃ。」
初めて聞く食べ物ね。私はあまりに美味しそうに食べるのを見て自分も食べてみたくなった。先ほどの時空間にまだあるかもしれない。

「それ、美味しそうね。私にも1つくれないかしら?」

「この一つで最後にゃ。」
妖精猫は残りを一気に食べきってしまった。………そう、仕方ないわね………
私が諦めていると、妖精猫はもう一つ時空間からドーナツを取り出した………
「まだあるじゃない。」

「これはさっきとは違う味にゃ。さっきの味は本当にもう最後だったにゃ。」

「じゃあ、その手に持ったやつでいいから私に頂戴よ。」

「これは貴重なものにゃ。マスターが新しく店をオープンした時に出すための試作品にゃ。あっちには味を分析する重要な役目があるにゃ。」

「………私が味を評価してあげるわ。」

「素人には無理にゃ。マスターの使い魔であるあっちにしかできない事にゃ。」

「じゃあ半分でいいから、これと交換しましょう。これがあれば何でも買うことができるわよ。」
私は首にかけた袋から金貨一枚を渡した。

「にゃ?金貨一枚ですかにゃ。わかったにゃ。半分だけにゃ。ちゃんと感想を言って欲しいにゃ。マスターに伝えるにゃ。」

「わかったわ。」
私は半分になったドーナツというもの口に入れた。その時私の口の中に得も言われぬ幸福感が広がった。何なのこの気持ちは。
「なんなのこの味は。」

「気づきましたかにゃ。隠し味にスライムが使ってあるにゃ。」

「??スライム?スライムって食べものじゃないんじゃないの。じゃあ、このドーナツの周りを覆っているのは何なの?」

「それがスライムにゃ。」
いや、全然隠れてないじゃないの。というより、何故スライムがこんなに美味しくなるの?あなたのマスターって何者なの。

「それで味の感想はどうでしたにゃ?」

「えっ、そうね。今まで味わったことがない味だったわ。口に入れた瞬間に幸福感に包まれてしまうような、そんな味だったわ。」
悪魔族は基本食事はあまりしなくてもいいのよ。だから味を表現する言葉をあまり知らないのよね。

妖精猫は私の評価を聞いてやれやれという顔で首を振った。なんか腹が立つわね、この猫。
「じゃあ、あんたの感想を言ってみなさいよ。」

「あっちですかにゃ。このドーナツは凄く美味しいにゃ。とてもいいものにゃ。」
あんたさっきのドーナツもとてもいいものとか言ってたじゃない。
まあいいわ。そんな事よりあんたのマスターとやらに興味があるわね。さぞ高名な料理人に違いないわ。

「あなたのマスターに会わせてよ。女湯にいるの?」

「マスターは男湯か、混浴にいると思うにゃ。」
使い魔のくせにご主人様から離れてるなんて本当におかしな妖精猫ね。
「いつまでこの宿にいるの?」

「明後日の朝には帰るにゃ。」

「そう………」
私は考えた。温泉も飽きてきたし、そのマスターとやらの家に何とか転がりこめないかしら。
スライムですらこんなに美味しくしてしまう技術を持っているなら、他にもいろいろと期待できるんじゃないかしら。

私は妖精猫を頭に乗せたマスターが帰る時を見計らって声をかけることにした。最初に見てびっくりしたのは、想像していたよりずいぶん若かったことだ。どう見ても少年の顔つきをしていた。まだ料理人の見習いなんだろうか。でも、あの味を出すなんて天才料理人なのかもしれないわね。
「私、迎えが来るまで帰る場所がないの。だから、お兄ちゃんのところに行ってもいい?」
断られても無理やりついていっちゃうけどね。少年は少し考えたあと言った。
「わかった。じゃあ、迎えが来るまで俺のところにいてもいいよ。」

「本当に?ありがとう。」
話の分かる少年ね。

「名前は何というの?」
少年が聞いた。

「私? ………私の名前はアス………」
そこで私は自分の名前を言うのをためらった。私の名前を知っている人族もいるかもしれないしね。私の事を知ったら怖がらせてしまうわ。私は嘘の名前を教えることにした。

「私はアスカよ。迎えが来るまでよろしくね。」
私はアギラと名乗る少年のところへ転がり込むことに成功した。
そして、アギラの仲間たちと一緒に馬車へと乗った。私はこの人族の作る料理を楽しみにしながら眠りについた………

私は目を覚ました場所を見て驚愕した。こ、ここはメガラニカ王国の魔導士学園??どうしてここに………私は全身が震えた。
「こ、ここは?」
私はアギラに尋ねた。

「ここは魔導士学園だよ。俺はここの生徒なんだ。」
えっ。えっ。あんたは料理人じゃないの?
その時、私はベルゼブブの話を思い出した。どうせ魔王に会うつもりがなかったので、あまりちゃんと聞いていなかったが、目の前の少年はベルゼブブの話に出てきた魔王の特徴と一致している気が………
私の震えはおさまらなかった。

「どうしたんだ?俺の部屋が嫌だったら、先生の部屋にするか?頼めば泊めてくれるんじゃないかな。」
?? ………私はそこで冷静になって考えた。アギラに出会ってから私は一度も『魔王の支配デモンズ・ルール』を受けた様子はなかったのだ。その証拠に今でも自由に私の意志で動くことができる。
それに魔王なら私のことを知っているはずだから最初に見た時に何らかのリアクションがあるはずよね。それがなかったということは………
もしかすると、ベルゼブブの勘違いだったんじゃないかしら。魔王の魔力を探ったていう悪魔族は下級悪魔だって聞いたわ。大方、魔導士学園の生徒の魔力を魔王だと勘違いしたんじゃないかしら。雑魚ならありえる話ね。きっとそうよ。そうに違いないわ。
なーんだ。じゃあ、必要以上に恐れる必要なんてなかったってことね。

なんなら1カ月後の待ち合わせの時に私が魔王を倒したって言って驚かせようかしら。いや、それよりも魔王を下僕にしたって言おうかしらね………私は十二柱達が驚く姿を想像して自然と笑みがこぼれた。
このアギラという少年なら私の言う事なら何でも聞いてくれそうじゃない。ベルゼブブの前に連れて行って何か演技してもらえばいいわ。私の想像は膨らんだ。

「で、どうする?」
おっと、返事をしなくちゃね。

「いやよ。お兄ちゃんと一緒がいいわ。」
アギラは少し照れた顔をしていた。ちょろいわね。

私はそれからアギラのご飯を毎日食べて過ごした。アギラの作る料理はどれも素晴らしく、いくら食べても飽きることがなかった。本来悪魔族はあまり食事などせずとも生きていくことができる。だからこそ今まで味わったことない料理を食べて、私は生まれて初めて食べるという事に夢中になった。

そして私はあまりに夢中になりすぎて、約束の場所へと行くのを忘れてしまった………






しおりを挟む
感想 18

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします

Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。 相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。 現在、第四章フェレスト王国ドワーフ編

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

戦場の英雄、上官の陰謀により死亡扱いにされ、故郷に帰ると許嫁は結婚していた。絶望の中、偶然助けた許嫁の娘に何故か求婚されることに

千石
ファンタジー
「絶対生きて帰ってくる。その時は結婚しよう」 「はい。あなたの帰りをいつまでも待ってます」 許嫁と涙ながらに約束をした20年後、英雄と呼ばれるまでになったルークだったが生還してみると死亡扱いにされていた。 許嫁は既に結婚しており、ルークは絶望の只中に。 上官の陰謀だと知ったルークは激怒し、殴ってしまう。 言い訳をする気もなかったため、全ての功績を抹消され、貰えるはずだった年金もパー。 絶望の中、偶然助けた子が許嫁の娘で、 「ルーク、あなたに惚れたわ。今すぐあたしと結婚しなさい!」 何故か求婚されることに。 困りながらも巻き込まれる騒動を通じて ルークは失っていた日常を段々と取り戻していく。 こちらは他のウェブ小説にも投稿しております。

詠唱? それ、気合を入れるためのおまじないですよね? ~勘違い貴族の規格外魔法譚~

Gaku
ファンタジー
「次の人生は、自由に走り回れる丈夫な体が欲しい」 病室で短い生涯を終えた僕、ガクの切実な願いは、神様のちょっとした(?)サービスで、とんでもなく盛大な形で叶えられた。 気がつけば、そこは剣と魔法が息づく異世界。貴族の三男として、念願の健康な体と、ついでに規格外の魔力を手に入れていた! これでようやく、平和で自堕落なスローライフが送れる――はずだった。 だが、僕には一つ、致命的な欠点があった。それは、この世界の魔法に関する常識が、綺麗さっぱりゼロだったこと。 皆が必死に唱える「詠唱」を、僕は「気合を入れるためのおまじない」だと勘違い。僕の魔法理論は、いつだって「体内のエネルギーを、ぐわーっと集めて、どーん!」。 その結果、 うっかり放った火の玉で、屋敷の壁に風穴を開けてしまう。 慌てて土魔法で修復すれば、なぜか元の壁より遥かに豪華絢爛な『匠の壁』が爆誕し、屋敷の新たな観光名所に。 「友達が欲しいな」と軽い気持ちで召喚魔法を使えば、天変地異の末に伝説の魔獣フェンリル(ただし、手のひらサイズの超絶可愛い子犬)を呼び出してしまう始末。 僕はただ、健康な体でのんびり暮らしたいだけなのに! 行く先々で無自覚に「やりすぎ」てしまい、気づけば周囲からは「無詠唱の暴君」「歩く災害」など、実に不名誉なあだ名で呼ばれるようになっていた……。 そんな僕が、ついに魔法学園へ入学! 当然のように入学試験では的を“消滅”させて試験官を絶句させ、「関わってはいけないヤバい奴」として輝かしい孤立生活をスタート! しかし、そんな規格外な僕に興味を持つ、二人の変わり者が現れた。 魔法の真理を探求する理論オタクの「レオ」と、強者との戦いを求める猪突猛進な武闘派女子の「アンナ」。 この二人との出会いが、モノクロだった僕の世界を、一気に鮮やかな色に変えていく――! 勘違いと無自覚チートで、知らず知らずのうちに世界を震撼させる! 腹筋崩壊のドタバタコメディを軸に、個性的な仲間たちとの友情、そして、世界の謎に迫る大冒険が、今、始まる!

少しの間、家から追い出されたら芸能界デビューしてハーレム作ってました。コスプレのせいで。

昼寝部
キャラ文芸
 俺、日向真白は義妹と幼馴染の策略により、10月31日のハロウィンの日にコスプレをすることとなった。  その日、コスプレの格好をしたまま少しの間、家を追い出された俺は、仕方なく街を歩いていると読者モデルの出版社で働く人に声をかけられる。  とても困っているようだったので、俺の写真を一枚だけ『読者モデル』に掲載することを了承する。  まさか、その写真がキッカケで芸能界デビューすることになるとは思いもせず……。  これは真白が芸能活動をしながら、義妹や幼馴染、アイドル、女優etcからモテモテとなり、全国の女性たちを魅了するだけのお話し。

処理中です...