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彼らは今..(後編)

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崩れ落ちる本棚。

そして、彼の両腕。

さらにそのまま倒れこむ。


それを見た奴はフハハハ! と高々に笑う。



「貴様が我を利用しようものなら、対抗せねばな。

『アイテム』を使って自滅してくれるとは」



ーさっきまでは演技だったのか..ー



また、気付くのが遅くなった。


亡くなった部分の傷口がプルプルと動くのを見て、



「まだ命はあるようだが、これじゃあ使い道にならんな。」


もう一人の彼女には被害は無かったが、

部活仲間の死んだ腕達を見て、戦意を喪失してしまった。



それを見て、悪魔の提案する。


「その女は、使い道があるな。

元から顔が良いから、神創作オリジナルエルフにしたら

売り飛ばせる。」



連れて行け、と膝をついたゴブリンに命令する。

流石に三度目の正直ということわざ通り、

今度はしっかりと立ち上がり、彼女の方へ向かって行く。



嫌..嫌! と声だけの抵抗をする。

何をされるか、察しがついたようだ。



彼は相変わらず倒れていたが、目には闘志が宿っている。



王は興味を無くしたのか、奥のドアを開け、

別の部屋へ足を踏み入れた。


小鬼は、さっきとは全く違うスキップのような歩き方をみせる。

体を縛り上げようと、 手首を掴む。


恐怖で声すら出なくなった。

目にはもう、あるはずの光が無い。



神は彼らを見放したのだろうか。

きっとこれからおぞましい事が、待ち受けているのだろう。

もう、脱出など不可能。勝負の続きは永遠に出来なくなるのか。


いいや違う。しっかりと、チャンスを与えていた。

彼に...."能力"を。




お前らの..好きに...は..させねぇ! 




血が混じっているような、今にも消えそうな声で、断言する。




瞬時、爆散した箇所が今まで通りの形に復活した。

その手は、奴の頭を掴んで締める。



  グギァァァァ!!!



砕ける骨と、こだまする断末魔。

最後に響く頃には、喉すらも潰れていた。


王にも、その音の知らせは届いていた。


急いで戻ってくると、

そこには見るに絶えない程醜い顔をした部下と、

王よりも鬼らしい目をした彼が、立っていた。


流石の彼も、目を丸くする。

そのまま、今度は拍手をした。





「素晴らしい! そして美しい。

我らの仲間になる気はないか? そうすればお前は助けてやろう」


その自分勝手な言い方に、とうとう怒りが爆発した。


     ─ふざけるな─


全身が震えている。

立つのがやっとになっている。


もうやめて、 彼女が言い沿って止めようとしたが、

彼はそのまま続ける。




「俺は仲間を見捨てない。絶対だ!」


そう言いながら、後ろで女性にサインを送る。


     

    *に、げ、ろ。*



爆発で破れた窓を指差しながらそう言い、

一人で、立ち向かっていった。


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