私を捨てて本当に後悔しませんか?

花々

文字の大きさ
21 / 24
5.心機一転

3話

しおりを挟む
「ダリウス様、事情とはなんなのですか?」

 気になって、リアムの後ろから尋ねる。ダリウス様は忌々しそうに答えた。

「結界になかなか魔法がかからないのだ。お前のおまじない程度の強化魔法でも案外役に立っていたらしい。また遠征に同行させてやるから、ルシア聖国に戻ってこい」

「はぁ……」

 先ほどまでわけがわからなかったけれど、ようやく納得出来た。

 つまり、結界を維持するのにノーラの補助だけでは無理だったから、私を連れ戻して今まで通り働かせたいのだ。

 光魔法を覚えたばかりのノーラで大丈夫かとは思っていたけれど、やはりうまくはいっていなかったらしい。

 私はその答えに納得してしまったけれど、ちらりと見上げたリアムの顔は引きつっていた。


「ダリウス様。申し訳ありませんが、私はもうルシア聖国に帰る予定はございません。ほかの解決策を見つけて下さらないでしょうか」

「な……っ! 俺が直々に迎えに来てやったのだぞ!? それを断るのか!?」

「ええ。もう私たちは赤の他人になりましたし……」

 躊躇いがちに答えると、ダリウス様は怒りに顔を歪ませて言う。


「祖国を捨てて帝国に寝返るなど呆れた女だ! お前は我が国が他国に攻め入られ、魔獣の被害に遭っても構わないと言うのか? それでも我が国の貴族なのか!?」

 結界を張るのに同行しなくていいと言ってきたのはそちらの方なのにと、納得のいかない思いでダリウス様を見ていると、リアムがダリウス様の前に出て彼の腕を掴んだ。


「ダリウス様。スカーレットを侮辱するのはおやめください。彼女は私と婚約してこの国に移り住むと言ってくれました。もうアウロラ帝国の人間です」

「そんなこと認められるか! スカーレットは俺の……」

「俺のなんです? スカーレットはすでに私の婚約者になったと申し上げたはずですが」

 リアムは氷のように冷たい目でダリウス様を見下ろし、腕をぎりぎり締め上げながら言う。ダリウス様の顔が痛みに歪んでいくのがわかった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

「身分が違う」って言ったのはそっちでしょ?今さら泣いても遅いです

ほーみ
恋愛
 「お前のような平民と、未来を共にできるわけがない」  その言葉を最後に、彼は私を冷たく突き放した。  ──王都の学園で、私は彼と出会った。  彼の名はレオン・ハイゼル。王国の名門貴族家の嫡男であり、次期宰相候補とまで呼ばれる才子。  貧しい出自ながら奨学生として入学した私・リリアは、最初こそ彼に軽んじられていた。けれど成績で彼を追い抜き、共に課題をこなすうちに、いつしか惹かれ合うようになったのだ。

「いらない」と捨てられた令嬢、実は全属性持ちの聖女でした

ゆっこ
恋愛
「リリアーナ・エヴァンス。お前との婚約は破棄する。もう用済み そう言い放ったのは、五年間想い続けた婚約者――王太子アレクシスさま。 広間に響く冷たい声。貴族たちの視線が一斉に私へ突き刺さる。 「アレクシスさま……どういう、ことでしょうか……?」 震える声で問い返すと、彼は心底嫌そうに眉を顰めた。 「言葉の意味が理解できないのか? ――お前は“無属性”だ。魔法の才能もなければ、聖女の資質もない。王太子妃として役不足だ」 「無……属性?」

〖完結〗私は旦那様には必要ないようですので国へ帰ります。

藍川みいな
恋愛
辺境伯のセバス・ブライト侯爵に嫁いだミーシャは優秀な聖女だった。セバスに嫁いで3年、セバスは愛人を次から次へと作り、やりたい放題だった。 そんなセバスに我慢の限界を迎え、離縁する事を決意したミーシャ。 私がいなければ、あなたはおしまいです。 国境を無事に守れていたのは、聖女ミーシャのおかげだった。ミーシャが守るのをやめた時、セバスは破滅する事になる…。 設定はゆるゆるです。 本編8話で完結になります。

私は愛する人と結婚できなくなったのに、あなたが結婚できると思うの?

あんど もあ
ファンタジー
妹の画策で、第一王子との婚約を解消することになったレイア。 理由は姉への嫌がらせだとしても、妹は王子の結婚を妨害したのだ。 レイアは妹への処罰を伝える。 「あなたも婚約解消しなさい」

記憶喪失になった婚約者から婚約破棄を提案された

夢呼
恋愛
記憶喪失になったキャロラインは、婚約者の為を思い、婚約破棄を申し出る。 それは婚約者のアーノルドに嫌われてる上に、彼には他に好きな人がいると知ったから。 ただでさえ記憶を失ってしまったというのに、お荷物にはなりたくない。彼女のそんな健気な思いを知ったアーノルドの反応は。 設定ゆるゆる全3話のショートです。

あなたが「消えてくれたらいいのに」と言ったから

ちくわぶ(まるどらむぎ)
恋愛
「消えてくれたらいいのに」 結婚式を終えたばかりの新郎の呟きに妻となった王女は…… 短いお話です。 新郎→のち王女に視点を変えての数話予定。 4/16 一話目訂正しました。『一人娘』→『第一王女』

平民とでも結婚すれば?と言われたので、隣国の王と結婚しました

ゆっこ
恋愛
「リリアーナ・ベルフォード、これまでの婚約は白紙に戻す」  その言葉を聞いた瞬間、私はようやく――心のどこかで予感していた結末に、静かに息を吐いた。  王太子アルベルト殿下。金糸の髪に、これ見よがしな笑み。彼の隣には、私が知っている顔がある。  ――侯爵令嬢、ミレーユ・カスタニア。  学園で何かと殿下に寄り添い、私を「高慢な婚約者」と陰で嘲っていた令嬢だ。 「殿下、どういうことでしょう?」  私の声は驚くほど落ち着いていた。 「わたくしは、あなたの婚約者としてこれまで――」

冤罪で婚約破棄したくせに……今さらもう遅いです。

水垣するめ
恋愛
主人公サラ・ゴーマン公爵令嬢は第一王子のマイケル・フェネルと婚約していた。 しかしある日突然、サラはマイケルから婚約破棄される。 マイケルの隣には男爵家のララがくっついていて、「サラに脅された!」とマイケルに訴えていた。 当然冤罪だった。 以前ララに対して「あまり婚約しているマイケルに近づくのはやめたほうがいい」と忠告したのを、ララは「脅された!」と改変していた。 証拠は無い。 しかしマイケルはララの言葉を信じた。 マイケルは学園でサラを罪人として晒しあげる。 そしてサラの言い分を聞かずに一方的に婚約破棄を宣言した。 もちろん、ララの言い分は全て嘘だったため、後に冤罪が発覚することになりマイケルは周囲から非難される……。

処理中です...