愛してくれない人たちを愛するのはやめました これからは自由に生きますのでもう私に構わないでください!

花々

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6.接近

4話

「マルグリット様は、フェリクス様がここに隠れていることを知ってらしたんですか?」

「ええ、最初からね」

 マルグリット嬢は躊躇なくそう答えた。

 私が言葉を失っていると、彼女はつかつかこちらに歩み寄る。


「ねぇ、エル。私あなたに頼みがあるのよ」

「な、なんですか。フェリクス様のことで何かする気なら聞けませんよ」

「違うわ。あなた自身に頼みたいことがあるの」

 マルグリット嬢は、じっと私の目を見つめて言う。

 その宝石のような赤い目に見つめられると、なんだか頭がぐらぐら揺れる気がした。


「私自身に頼みたいこと……?」

「ええ。エル、私と一緒にディーゼの地へ行ってくれないかしら」

「え……っ」

 思わず後退る私の腕を、マルグリット嬢がぎゅっと掴む。


「この前ね、フルリール王国のジルベルト殿下が王宮にいらっしゃったのよ」

「え……な……」

「ジルベルト殿下、あなたのことを必死で探していたみたいよ。私があなたに似た人物を見かけたと話したら、教えて欲しいと懇願してきたんだから」

「マルグリット様、何を言って……」

「あなたが聖女エルシーリアなんでしょう?」

 マルグリット嬢はそう言って微笑んだ。

 逃げなくてはと頭が警鐘を鳴らすのに、足が凍りついたかのように動かない。


「ち、違います、私は」

「隠さなくていいのよ。全てわかっているから。エルシーリアにお願いがあるの。ジルベルト殿下によると、ディーゼの地へ行くためには、聖女が同行しないと辿りつけないらしいの。私、ディーゼの地の魔獣を使い魔にしたいから、あなたに協力して欲しいのよ」

 マルグリット嬢は甘い声で言う。

 私は混乱する頭を必死で鎮めた。

 ディーゼの地へ行くには、聖女の同行が必要?

 だからフェリクス様がいくら探しても、辿りつくことができなかったのだろうか。


「……あなたに協力することはできません!」

 私はマルグリット嬢に掴まれた腕を振り払い、彼女から逃げようと駆け出した。

 しかし、なぜだか異様に体が重くて、足がうまく動かせなかった。

 早く、早く逃げなきゃ。

 しかし、そう思っても体が自分のものではないかのようにぎこちなくしか動かせない。


 すると、突然体からがくんと力が抜けた。

 私は地面に倒れ込む。

 体と頭が重くて、意識を保っていることすら難しくなる。


 後ろからゆっくりと足音が近づいてきた。

 足音は私の前で止まる。


「エルシーリア、私と一緒に来てちょうだいね」

 マルグリット嬢の柔らかな声が頭に響く。

 私の意識は、そのままそこで途絶えてしまった。

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