57 / 74
6.接近
4話
「マルグリット様は、フェリクス様がここに隠れていることを知ってらしたんですか?」
「ええ、最初からね」
マルグリット嬢は躊躇なくそう答えた。
私が言葉を失っていると、彼女はつかつかこちらに歩み寄る。
「ねぇ、エル。私あなたに頼みがあるのよ」
「な、なんですか。フェリクス様のことで何かする気なら聞けませんよ」
「違うわ。あなた自身に頼みたいことがあるの」
マルグリット嬢は、じっと私の目を見つめて言う。
その宝石のような赤い目に見つめられると、なんだか頭がぐらぐら揺れる気がした。
「私自身に頼みたいこと……?」
「ええ。エル、私と一緒にディーゼの地へ行ってくれないかしら」
「え……っ」
思わず後退る私の腕を、マルグリット嬢がぎゅっと掴む。
「この前ね、フルリール王国のジルベルト殿下が王宮にいらっしゃったのよ」
「え……な……」
「ジルベルト殿下、あなたのことを必死で探していたみたいよ。私があなたに似た人物を見かけたと話したら、教えて欲しいと懇願してきたんだから」
「マルグリット様、何を言って……」
「あなたが聖女エルシーリアなんでしょう?」
マルグリット嬢はそう言って微笑んだ。
逃げなくてはと頭が警鐘を鳴らすのに、足が凍りついたかのように動かない。
「ち、違います、私は」
「隠さなくていいのよ。全てわかっているから。エルシーリアにお願いがあるの。ジルベルト殿下によると、ディーゼの地へ行くためには、聖女が同行しないと辿りつけないらしいの。私、ディーゼの地の魔獣を使い魔にしたいから、あなたに協力して欲しいのよ」
マルグリット嬢は甘い声で言う。
私は混乱する頭を必死で鎮めた。
ディーゼの地へ行くには、聖女の同行が必要?
だからフェリクス様がいくら探しても、辿りつくことができなかったのだろうか。
「……あなたに協力することはできません!」
私はマルグリット嬢に掴まれた腕を振り払い、彼女から逃げようと駆け出した。
しかし、なぜだか異様に体が重くて、足がうまく動かせなかった。
早く、早く逃げなきゃ。
しかし、そう思っても体が自分のものではないかのようにぎこちなくしか動かせない。
すると、突然体からがくんと力が抜けた。
私は地面に倒れ込む。
体と頭が重くて、意識を保っていることすら難しくなる。
後ろからゆっくりと足音が近づいてきた。
足音は私の前で止まる。
「エルシーリア、私と一緒に来てちょうだいね」
マルグリット嬢の柔らかな声が頭に響く。
私の意識は、そのままそこで途絶えてしまった。
「ええ、最初からね」
マルグリット嬢は躊躇なくそう答えた。
私が言葉を失っていると、彼女はつかつかこちらに歩み寄る。
「ねぇ、エル。私あなたに頼みがあるのよ」
「な、なんですか。フェリクス様のことで何かする気なら聞けませんよ」
「違うわ。あなた自身に頼みたいことがあるの」
マルグリット嬢は、じっと私の目を見つめて言う。
その宝石のような赤い目に見つめられると、なんだか頭がぐらぐら揺れる気がした。
「私自身に頼みたいこと……?」
「ええ。エル、私と一緒にディーゼの地へ行ってくれないかしら」
「え……っ」
思わず後退る私の腕を、マルグリット嬢がぎゅっと掴む。
「この前ね、フルリール王国のジルベルト殿下が王宮にいらっしゃったのよ」
「え……な……」
「ジルベルト殿下、あなたのことを必死で探していたみたいよ。私があなたに似た人物を見かけたと話したら、教えて欲しいと懇願してきたんだから」
「マルグリット様、何を言って……」
「あなたが聖女エルシーリアなんでしょう?」
マルグリット嬢はそう言って微笑んだ。
逃げなくてはと頭が警鐘を鳴らすのに、足が凍りついたかのように動かない。
「ち、違います、私は」
「隠さなくていいのよ。全てわかっているから。エルシーリアにお願いがあるの。ジルベルト殿下によると、ディーゼの地へ行くためには、聖女が同行しないと辿りつけないらしいの。私、ディーゼの地の魔獣を使い魔にしたいから、あなたに協力して欲しいのよ」
マルグリット嬢は甘い声で言う。
私は混乱する頭を必死で鎮めた。
ディーゼの地へ行くには、聖女の同行が必要?
だからフェリクス様がいくら探しても、辿りつくことができなかったのだろうか。
「……あなたに協力することはできません!」
私はマルグリット嬢に掴まれた腕を振り払い、彼女から逃げようと駆け出した。
しかし、なぜだか異様に体が重くて、足がうまく動かせなかった。
早く、早く逃げなきゃ。
しかし、そう思っても体が自分のものではないかのようにぎこちなくしか動かせない。
すると、突然体からがくんと力が抜けた。
私は地面に倒れ込む。
体と頭が重くて、意識を保っていることすら難しくなる。
後ろからゆっくりと足音が近づいてきた。
足音は私の前で止まる。
「エルシーリア、私と一緒に来てちょうだいね」
マルグリット嬢の柔らかな声が頭に響く。
私の意識は、そのままそこで途絶えてしまった。
あなたにおすすめの小説
婚約破棄された聖女は、愛する恋人との思い出を消すことにした。
石河 翠
恋愛
婚約者である王太子に興味がないと評判の聖女ダナは、冷たい女との結婚は無理だと婚約破棄されてしまう。国外追放となった彼女を助けたのは、美貌の魔術師サリバンだった。
やがて恋人同士になった二人。ある夜、改まったサリバンに呼び出され求婚かと期待したが、彼はダナに自分の願いを叶えてほしいと言ってきた。彼は、ダナが大事な思い出と引き換えに願いを叶えることができる聖女だと知っていたのだ。
失望したダナは思い出を捨てるためにサリバンの願いを叶えることにする。ところがサリバンの願いの内容を知った彼女は彼を幸せにするため賭けに出る。
愛するひとの幸せを願ったヒロインと、世界の平和を願ったヒーローの恋物語。
ハッピーエンドです。
この作品は、他サイトにも投稿しております。
表紙絵は写真ACより、チョコラテさまの作品(写真のID:4463267)をお借りしています。
結婚しても別居して私は楽しくくらしたいので、どうぞ好きな女性を作ってください
シンさん
ファンタジー
サナス伯爵の娘、ニーナは隣国のアルデーテ王国の王太子との婚約が決まる。
国に行ったはいいけど、王都から程遠い別邸に放置され、1度も会いに来る事はない。
溺愛する女性がいるとの噂も!
それって最高!好きでもない男の子供をつくらなくていいかもしれないし。
それに私は、最初から別居して楽しく暮らしたかったんだから!
そんな別居願望たっぷりの伯爵令嬢と王子の恋愛ストーリー
最後まで書きあがっていますので、随時更新します。
表紙はエブリスタでBeeさんに描いて頂きました!綺麗なイラストが沢山ございます。リンク貼らせていただきました。
婚約者が妹と結婚したいと言ってきたので、私は身を引こうと決めました
日下奈緒
恋愛
アーリンは皇太子・クリフと婚約をし幸せな生活をしていた。
だがある日、クリフが妹のセシリーと結婚したいと言ってきた。
もしかして、婚約破棄⁉
【完結】記念日当日、婚約者に可愛くて病弱な義妹の方が大切だと告げられましたので
Rohdea
恋愛
昔から目つきが悪いことをコンプレックスにしている
伯爵令嬢のレティーシャ。
十回目のお見合いの失敗後、
ついに自分を受け入れてくれる相手、侯爵令息のジェロームと出逢って婚約。
これで幸せになれる───
……はずだった。
ジェロームとの出逢って三回目の記念日となる目前、“義妹”のステイシーが現れるまでは。
義妹が現れてからの彼の変貌振りにショックを受けて耐えられなくなったレティーシャは、
周囲の反対を押し切って婚約の解消を申し出るが、
ジェロームには拒否され挙句の果てにはバカにされてしまう。
周囲とジェロームを納得させるには、彼より上の男性を捕まえるしかない!
そう結論づけたレティーシャは、
公爵家の令息、エドゥアルトに目をつける。
……が、彼はなかなかの曲者で────……
※『結婚式当日、婚約者と姉に裏切られて惨めに捨てられた花嫁ですが』
こちらの話に出て来るヒーローの友人? 親友? エドゥアルトにも春を……
というお声を受けて彼の恋物語(?)となります。
★関連作品★
『誕生日当日、親友に裏切られて婚約破棄された勢いでヤケ酒をしましたら』
エドゥアルトはこちらの話にも登場してます!
逃走スマイルベビー・ジョシュアくんの登場もこっちです!(※4/5追記)
前世の旦那様、貴方とだけは結婚しません。
真咲
恋愛
全21話。他サイトでも掲載しています。
一度目の人生、愛した夫には他に想い人がいた。
侯爵令嬢リリア・エンダロインは幼い頃両親同士の取り決めで、幼馴染の公爵家の嫡男であるエスター・カンザスと婚約した。彼は学園時代のクラスメイトに恋をしていたけれど、リリアを優先し、リリアだけを大切にしてくれた。
二度目の人生。
リリアは、再びリリア・エンダロインとして生まれ変わっていた。
「次は、私がエスターを幸せにする」
自分が彼に幸せにしてもらったように。そのために、何がなんでも、エスターとだけは結婚しないと決めた。
殿下、幼馴染の令嬢を大事にしたい貴方の恋愛ごっこにはもう愛想が尽きました。
和泉鷹央
恋愛
雪国の祖国を冬の猛威から守るために、聖女カトリーナは病床にふせっていた。
女神様の結界を張り、国を温暖な気候にするためには何か犠牲がいる。
聖女の健康が、その犠牲となっていた。
そんな生活をして十年近く。
カトリーナの許嫁にして幼馴染の王太子ルディは婚約破棄をしたいと言い出した。
その理由はカトリーナを救うためだという。
だが本当はもう一人の幼馴染、フレンヌを王妃に迎えるために、彼らが仕組んだ計略だった――。
他の投稿サイトでも投稿しています。
最愛の人に裏切られ死んだ私ですが、人生をやり直します〜今度は【真実の愛】を探し、元婚約者の後悔を笑って見届ける〜
腐ったバナナ
恋愛
愛する婚約者アラン王子に裏切られ、非業の死を遂げた公爵令嬢エステル。
「二度と誰も愛さない」と誓った瞬間、【死に戻り】を果たし、愛の感情を失った冷徹な復讐者として覚醒する。
エステルの標的は、自分を裏切った元婚約者と仲間たち。彼女は未来の知識を武器に、王国の影の支配者ノア宰相と接触。「私の知性を利用し、絶対的な庇護を」と、大胆な契約結婚を持ちかける。
【完結】さようなら、婚約者様。私を騙していたあなたの顔など二度と見たくありません
ゆうき
恋愛
婚約者とその家族に虐げられる日々を送っていたアイリーンは、赤ん坊の頃に森に捨てられていたところを、貧乏なのに拾って育ててくれた家族のために、つらい毎日を耐える日々を送っていた。
そんなアイリーンには、密かな夢があった。それは、世界的に有名な魔法学園に入学して勉強をし、宮廷魔術師になり、両親を楽させてあげたいというものだった。
婚約を結ぶ際に、両親を支援する約束をしていたアイリーンだったが、夢自体は諦めきれずに過ごしていたある日、別の女性と恋に落ちていた婚約者は、アイリーンなど体のいい使用人程度にしか思っておらず、支援も行っていないことを知る。
どういうことか問い詰めると、お前とは婚約破棄をすると言われてしまったアイリーンは、ついに我慢の限界に達し、婚約者に別れを告げてから婚約者の家を飛び出した。
実家に帰ってきたアイリーンは、唯一の知人で特別な男性であるエルヴィンから、とあることを提案される。
それは、特待生として魔法学園の編入試験を受けてみないかというものだった。
これは一人の少女が、夢を掴むために奮闘し、時には婚約者達の妨害に立ち向かいながら、幸せを手に入れる物語。
☆すでに最終話まで執筆、予約投稿済みの作品となっております☆