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恋人でも不安なときはある
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「オレがいるんだから、これは読む必要がないよね」
遥の目の前にいる咲良は、手紙を細かくちぎりゴミ箱へ落とす。
ひらりひらりと落ちていく、小さな紙は音もたてずに目の前から消えた。
咲良は遥の幼馴染で、いろいろあったけれど……今は恋人同士。
そう考えるのなら、ラブレターを捨てる気持ちはよくわかる。
理解できる。
わざわざ遥の手紙を読むふりをして便せんを出した。
けれど読みもしないで、封筒と便せんを重ねて細かくちぎったのだ。
満面の笑みで手紙を破った。
「あのな、それの手紙は僕に来たんだけど? 返事くらいはさせてくれよ」
ため息をつくけれど、すでに破かれた手紙は元に戻らない。
ゴミ箱を覗き込んでも、いまさら読めないだろう。
「断るつもりだったんだから、そんなに怒るなよ」
「遥が断るなら、そもそも手紙を読む必要はなかっただろう?」
確かに断るのはとても面倒だ。
相手が女性なら、目の前で泣き出す。
男性なら、咲良とともに断りに行かないと身の危険がある。
「遥はもっと危機感を持った方がいい。断ったときに襲われそうになったのは何度あったか覚えているか?」
「……それは」
「だったら、手紙はオレに預けたと言えばいい」
「男女問わずに?」
「男女問わずに」
耳が痛いだけに遥は、強く言えない。
遥かの細い腕で抵抗するのは、かなり無理がある。
咲良が駆けつけてくれたから助かった。
そのあとからは、男女問わずに咲良について来てもらっていた。
「遥は手紙を断ることを覚えろ」
「断るにも、手紙を押し付けて逃げるんだ……オレだって頑張っているさ」
「とりあえず、この手紙はオレが預かったと言っておけばいい」
「いつもありがとう」
助かっているのは本当なので、そこは素直に感謝を伝えた。
自慢じゃないけど、咲良は遥の笑顔に弱い。
ありがとう、ごめんね。これに笑顔を付けるだけで、大体は許してくれる。 *
小学生のときまでは、いつも一緒だった咲良。
中学生の時に、親の転勤で手が届かない人になった。
失って知る「寂しい」という感情。手紙や電話なんかいらない。
咲良がそばにして欲しかった。
(その感情は友情であり、愛情ではなかったはずなのに)
再び高校で再開できたとき、それが奇跡ではなく咲良自身の努力の結果だった。
再開できた喜びと共に、心の中に何かが沸き上がってきたのを、今でもよく覚えている。
未成年が親を説得するのは、不可能だろう。
それでも遥のもとへ帰って来てくれた。
そして告白されるままに、咲良と付き合うことになる。
(ちょっと考えなしだったけどさ……)
男同士で体を求められたときは、本気で動揺した。
恋人ならそういう行為があると気づいたのが、この時だった。
快楽を覚えるとともに、心も情に流されていく。
そんな日々を過ごしてきて、二年がたつ。
流された関係でも、今は幸せだと遥は思う。
穏やかな日常と、ちょっとしたトラブル。
恋人ならいろんなことがある。それは咲良も遥も同じだろう。
「遥、そろそろ手紙を頑張って断って欲しいな」
「なに、急にどうしたの?」
「いつもオレばかりが、嫉妬しているみたい」
「え……咲良が嫉妬? 僕に嫉妬するの?」
「遥はオレのことをどう見ているんだよ。オレだってただの男なんだ」
それは見れば分かる。
咲良と再会して一番驚いたのは、遥より背が高く男らしかったところだ。
「男なのは理解してるよ。咲良は僕より背が大きいし」
「――――今夜はオレの部屋に、泊りにおいで」
咲良の笑顔とは裏腹に、遥の背中は震える。
(なにか、怒らせた……?)
怒らせて部屋に呼び出されるのは、これで何度目だろうと、遥は遠くを見つめた。
言葉は難しい。
多すぎても、少なすぎても、誤解を招く。
(怒った顔も好きだから、困るんだ)
結局、遙は咲良自身が好きで仕方ない。
叱るときも怒るときも、甘やかされるときも。
とはいえ、こんなときのお誘いは……経験上あまり良い記憶がない。
逆らうのが怖いから咲良の部屋に行くけど……結局は咲良が好きだから、そばにいたい。
遥のラブレターを破いたくらいだから、まだ愛されていると思う。
短い間でも、離れていたことが心のどこかで不安として転がっている。
また、遥の目の前からいなくなる不安。
いまは学生だけど、遥も咲良も進学して就職をするだろう。
(同性でいつまでそばにいられるのかな?)
そんな不安が遥は拭えずにいた。
だからこそ、できるだけそばにいたいと願う。
誰だか知らない人に貰ったラブレター。
(咲良にはばれているだろうな。わざと貰って、咲良に見せたことを)
こんな試すようなことしか出来ない遥の弱さも、きっと咲良は気づいている。
荷物をまとめた遥は、母親へ咲良のところで泊まることをメールで送る。
そして、玄関を出た。
空を見上げれは青い空と、白い雲。
絵に描いたような空模様。
そんな空に遥は胸が痛んだ。
咲良が住んでいるマンションに入り、エレベーターへ乗り込む。
咲良が一人で戻ってきた時に、ここへ越してきたという。
(広い部屋なんだよな……)
一人で住むには広い家族用マンション。
家族が転勤先から戻ってきた時は、ここで共に生活するんだろうな……と何となく遥は思う。
今更ながら同性で恋人になったことを寂しく思う。
いつまで、そばにいられるのだろうか。
世の中そんなに甘くないことくらい、遥も知っている。
「遅い」
咲良に言われる。
インターホンを押してすぐ玄関を開けたことを考えると、玄関先で待っていてくれたことを遥は知った。
「悪い、遅くなった」
遥は嬉しさで、にやけそうになる。
(幸せだなぁ)
咲良と目が合う度に、そう思う。
我慢できなくて遥は、嬉しくて笑顔になってしまう。
そんな遥を見て、咲良は抱きしめた。
彼の体温、香り、腕の力強さ。全てが愛おしい。
「咲良、好き」
遥はそう呟き咲良を抱きしめ返す。
背中の筋肉を服越しに触り、遥の体温が上がった。
心の中で何度も呟く。大好きと。
この幸せが永遠続けばいいのにと。
**
「遥に大切な話がある。……少し落ち着こう」
咲良から低い声でそう言われ、遥は怯える。
遥に背を向けた咲良は気づかない。
幸せなのに不安がつきまとう。
黙っているのもつらくて、遥はどうでもいいことを話す。
「毎回思うんだけどさ、この部屋で一人暮らしは広過ぎないか?」
「まぁ……確かに広いかな」
シンプルなソファーとローテーブル。
これがワンルームなら、納得するけれど……この部屋の他に個室があるのだから、贅沢だなと感じる。
(やっぱり、家族が戻ってくるのかな?)
ここに咲良の家族が戻ってくるなら、気軽にこうして泊まりに来るのは難しい。
ただの友人なら気にしないけど、遥にとって咲良はすでに失えない恋人だから。
嘘でも友人だと言われたくないし、言いたくない。
遥はふかふかのソファーに座る。
包み込まれるようなソファーは遥のお気に入り。
薄いベージュ色も。
この部屋はナチュラルな色合いに整えられて、観葉植物がアクセントになっている。
(自分の部屋より居心地が良いから、タチが悪い)
日々、咲良に…咲良の空間に遥は飲み込まれていく。
それもまた幸せだ。
咲良が遥の隣に座る。
いつもの事なのに、今日はどことなく緊張した気配が伝わる。
その気配に遥もまた緊張した。
「あの…さ、大事な話って何?」
いつまでもこの空気に耐えられない。
遥は両手を組み、咲良の言葉を待つ。
咲良は一呼吸置いて、隣の遥かに向き合った。
真剣な表情。
決意をした目。
「大切な話をするから、よく聞いて欲しい」
遥は頷く。咲良は続けた。
「一生……遥のそばに居たい。一緒に生きていきたい。遥さえ良ければ……籍も」
だから、と咲良は繋げる。
「だから、もう手紙とか受け取らないでくれ。オレは遥から離れないから、試すようなことはしないで欲しい」
「何言って……?」
「高校を卒業したら、ここで一緒に住んで欲しい。大学卒業したら……籍を一緒にしよう」
予期しない言葉が咲良の口から、紡がれていく。
言葉が出ない遥かに咲良は、苦笑して言葉を足す。
「オレからのプレゼントは、プロポーズだよ。遥、誕生日おめでとう。生まれてきてくれて、本当にありがとう。……遥の返事は?」
ほんの少しだけ気弱な疑問形。
答えなんて一つしかないけど、そしてそれは咲良も知っている。
それでも、一生となると咲良は不安になのだろう。
(そうか、不安なのは僕だけじゃなかったのか)
安堵、喜び、幸せが遥の胸に溢れた。
「遥の返事は?」
「……ありがとう、とても嬉しい。喜んで一生そばにいたい」
この部屋でずっと一緒にいられる。遥は嬉しさに涙をこぼした。
【End】
遥の目の前にいる咲良は、手紙を細かくちぎりゴミ箱へ落とす。
ひらりひらりと落ちていく、小さな紙は音もたてずに目の前から消えた。
咲良は遥の幼馴染で、いろいろあったけれど……今は恋人同士。
そう考えるのなら、ラブレターを捨てる気持ちはよくわかる。
理解できる。
わざわざ遥の手紙を読むふりをして便せんを出した。
けれど読みもしないで、封筒と便せんを重ねて細かくちぎったのだ。
満面の笑みで手紙を破った。
「あのな、それの手紙は僕に来たんだけど? 返事くらいはさせてくれよ」
ため息をつくけれど、すでに破かれた手紙は元に戻らない。
ゴミ箱を覗き込んでも、いまさら読めないだろう。
「断るつもりだったんだから、そんなに怒るなよ」
「遥が断るなら、そもそも手紙を読む必要はなかっただろう?」
確かに断るのはとても面倒だ。
相手が女性なら、目の前で泣き出す。
男性なら、咲良とともに断りに行かないと身の危険がある。
「遥はもっと危機感を持った方がいい。断ったときに襲われそうになったのは何度あったか覚えているか?」
「……それは」
「だったら、手紙はオレに預けたと言えばいい」
「男女問わずに?」
「男女問わずに」
耳が痛いだけに遥は、強く言えない。
遥かの細い腕で抵抗するのは、かなり無理がある。
咲良が駆けつけてくれたから助かった。
そのあとからは、男女問わずに咲良について来てもらっていた。
「遥は手紙を断ることを覚えろ」
「断るにも、手紙を押し付けて逃げるんだ……オレだって頑張っているさ」
「とりあえず、この手紙はオレが預かったと言っておけばいい」
「いつもありがとう」
助かっているのは本当なので、そこは素直に感謝を伝えた。
自慢じゃないけど、咲良は遥の笑顔に弱い。
ありがとう、ごめんね。これに笑顔を付けるだけで、大体は許してくれる。 *
小学生のときまでは、いつも一緒だった咲良。
中学生の時に、親の転勤で手が届かない人になった。
失って知る「寂しい」という感情。手紙や電話なんかいらない。
咲良がそばにして欲しかった。
(その感情は友情であり、愛情ではなかったはずなのに)
再び高校で再開できたとき、それが奇跡ではなく咲良自身の努力の結果だった。
再開できた喜びと共に、心の中に何かが沸き上がってきたのを、今でもよく覚えている。
未成年が親を説得するのは、不可能だろう。
それでも遥のもとへ帰って来てくれた。
そして告白されるままに、咲良と付き合うことになる。
(ちょっと考えなしだったけどさ……)
男同士で体を求められたときは、本気で動揺した。
恋人ならそういう行為があると気づいたのが、この時だった。
快楽を覚えるとともに、心も情に流されていく。
そんな日々を過ごしてきて、二年がたつ。
流された関係でも、今は幸せだと遥は思う。
穏やかな日常と、ちょっとしたトラブル。
恋人ならいろんなことがある。それは咲良も遥も同じだろう。
「遥、そろそろ手紙を頑張って断って欲しいな」
「なに、急にどうしたの?」
「いつもオレばかりが、嫉妬しているみたい」
「え……咲良が嫉妬? 僕に嫉妬するの?」
「遥はオレのことをどう見ているんだよ。オレだってただの男なんだ」
それは見れば分かる。
咲良と再会して一番驚いたのは、遥より背が高く男らしかったところだ。
「男なのは理解してるよ。咲良は僕より背が大きいし」
「――――今夜はオレの部屋に、泊りにおいで」
咲良の笑顔とは裏腹に、遥の背中は震える。
(なにか、怒らせた……?)
怒らせて部屋に呼び出されるのは、これで何度目だろうと、遥は遠くを見つめた。
言葉は難しい。
多すぎても、少なすぎても、誤解を招く。
(怒った顔も好きだから、困るんだ)
結局、遙は咲良自身が好きで仕方ない。
叱るときも怒るときも、甘やかされるときも。
とはいえ、こんなときのお誘いは……経験上あまり良い記憶がない。
逆らうのが怖いから咲良の部屋に行くけど……結局は咲良が好きだから、そばにいたい。
遥のラブレターを破いたくらいだから、まだ愛されていると思う。
短い間でも、離れていたことが心のどこかで不安として転がっている。
また、遥の目の前からいなくなる不安。
いまは学生だけど、遥も咲良も進学して就職をするだろう。
(同性でいつまでそばにいられるのかな?)
そんな不安が遥は拭えずにいた。
だからこそ、できるだけそばにいたいと願う。
誰だか知らない人に貰ったラブレター。
(咲良にはばれているだろうな。わざと貰って、咲良に見せたことを)
こんな試すようなことしか出来ない遥の弱さも、きっと咲良は気づいている。
荷物をまとめた遥は、母親へ咲良のところで泊まることをメールで送る。
そして、玄関を出た。
空を見上げれは青い空と、白い雲。
絵に描いたような空模様。
そんな空に遥は胸が痛んだ。
咲良が住んでいるマンションに入り、エレベーターへ乗り込む。
咲良が一人で戻ってきた時に、ここへ越してきたという。
(広い部屋なんだよな……)
一人で住むには広い家族用マンション。
家族が転勤先から戻ってきた時は、ここで共に生活するんだろうな……と何となく遥は思う。
今更ながら同性で恋人になったことを寂しく思う。
いつまで、そばにいられるのだろうか。
世の中そんなに甘くないことくらい、遥も知っている。
「遅い」
咲良に言われる。
インターホンを押してすぐ玄関を開けたことを考えると、玄関先で待っていてくれたことを遥は知った。
「悪い、遅くなった」
遥は嬉しさで、にやけそうになる。
(幸せだなぁ)
咲良と目が合う度に、そう思う。
我慢できなくて遥は、嬉しくて笑顔になってしまう。
そんな遥を見て、咲良は抱きしめた。
彼の体温、香り、腕の力強さ。全てが愛おしい。
「咲良、好き」
遥はそう呟き咲良を抱きしめ返す。
背中の筋肉を服越しに触り、遥の体温が上がった。
心の中で何度も呟く。大好きと。
この幸せが永遠続けばいいのにと。
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「遥に大切な話がある。……少し落ち着こう」
咲良から低い声でそう言われ、遥は怯える。
遥に背を向けた咲良は気づかない。
幸せなのに不安がつきまとう。
黙っているのもつらくて、遥はどうでもいいことを話す。
「毎回思うんだけどさ、この部屋で一人暮らしは広過ぎないか?」
「まぁ……確かに広いかな」
シンプルなソファーとローテーブル。
これがワンルームなら、納得するけれど……この部屋の他に個室があるのだから、贅沢だなと感じる。
(やっぱり、家族が戻ってくるのかな?)
ここに咲良の家族が戻ってくるなら、気軽にこうして泊まりに来るのは難しい。
ただの友人なら気にしないけど、遥にとって咲良はすでに失えない恋人だから。
嘘でも友人だと言われたくないし、言いたくない。
遥はふかふかのソファーに座る。
包み込まれるようなソファーは遥のお気に入り。
薄いベージュ色も。
この部屋はナチュラルな色合いに整えられて、観葉植物がアクセントになっている。
(自分の部屋より居心地が良いから、タチが悪い)
日々、咲良に…咲良の空間に遥は飲み込まれていく。
それもまた幸せだ。
咲良が遥の隣に座る。
いつもの事なのに、今日はどことなく緊張した気配が伝わる。
その気配に遥もまた緊張した。
「あの…さ、大事な話って何?」
いつまでもこの空気に耐えられない。
遥は両手を組み、咲良の言葉を待つ。
咲良は一呼吸置いて、隣の遥かに向き合った。
真剣な表情。
決意をした目。
「大切な話をするから、よく聞いて欲しい」
遥は頷く。咲良は続けた。
「一生……遥のそばに居たい。一緒に生きていきたい。遥さえ良ければ……籍も」
だから、と咲良は繋げる。
「だから、もう手紙とか受け取らないでくれ。オレは遥から離れないから、試すようなことはしないで欲しい」
「何言って……?」
「高校を卒業したら、ここで一緒に住んで欲しい。大学卒業したら……籍を一緒にしよう」
予期しない言葉が咲良の口から、紡がれていく。
言葉が出ない遥かに咲良は、苦笑して言葉を足す。
「オレからのプレゼントは、プロポーズだよ。遥、誕生日おめでとう。生まれてきてくれて、本当にありがとう。……遥の返事は?」
ほんの少しだけ気弱な疑問形。
答えなんて一つしかないけど、そしてそれは咲良も知っている。
それでも、一生となると咲良は不安になのだろう。
(そうか、不安なのは僕だけじゃなかったのか)
安堵、喜び、幸せが遥の胸に溢れた。
「遥の返事は?」
「……ありがとう、とても嬉しい。喜んで一生そばにいたい」
この部屋でずっと一緒にいられる。遥は嬉しさに涙をこぼした。
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