終わらない夏

第2章：電話が繋がらない

第2章：電話が繋がらない
「遥、頼む、出てくれ…」
健太は何度も携帯を取り、彼女に電話をかけ続けた。震源が沖合という情報を耳にした瞬間から、遥が住む地域が津波の影響を受ける可能性を強く感じていた。しかし、何度かけても、電話は繋がらない。呼び出し音だけが耳に残り、焦りが増していった。
「どうして出ないんだ…」
目の前に流れるニュース映像では、津波警報が発令され、避難指示が出されていた。街の様子を映すカメラからは、次々と人々が避難している姿が映し出されるが、遥の姿はどこにも見当たらない。
健太は冷静を保とうとするが、心の中では恐怖と不安が渦巻いていた。何度も携帯を確認し、かけ直してみるが、全く繋がらない。まるで遥の存在が遠くなっていくような気がして、胸が締め付けられた。
その時、テレビのニュースで「津波警報が発令されました。最寄りの避難所への避難を強く呼びかけています」というアナウンスが流れる。健太は震える手で再び携帯を取り、遥にメッセージを送った。
『遥、今すぐ避難して！津波が来るかもしれない。連絡をください。』
そのメッセージを送信した後、健太はただ無力に画面を見つめるしかなかった。